4月20日。
6時起床。顔を洗ってiPhoneを充電しているコンセントのところへ行くと、ある男性にグッドプラグだねと言われたので、いぇあ…そうだろ…?デュアルポートだぜ…とドヤ顔しといた。
そして朝食のパンを静かにもぐもぐと、ただもぐもぐと食べていたら近くの人たちも起きた。
可愛いくしゃみをしていたレカにヨーレゲルットと朝の挨拶をすると、笑いながら挨拶を返す彼女に、(その隣のベッドにいた)ドミニクが、それ何?と質問していた。レカは、彼がわたしの国の言葉でグッドモーニングを覚えてきて、ある日わたしを追い越すときに披露してくれたのと説明していた。
他の単語を見ても正直ハンガリー語難しすぎだろとしか思わないけど、周りにほとんど話者がいないなら、一つフレーズが聞こえるだけでも嬉しいものなのかも。
この旅はいつ誰かと、どこで、会えなくなるかはわからない。つまり、今会っている人と接するのが今が最後になるかもしれない。今日の道の途中でも会わないかもしれない。だからレカに昨日のお返しとしてチョコを渡した。
今日の服装に悩む。具体的に言うとシャツを着るかどうかなんだけど、標高的に峠越えはあるみたいだがどうしようかな…という内容の悩み。
リーは今朝もレンタカーに乗ろうと誘ってくる。お金はいらないから一緒に行こうと。あ、もしかしてリーが運転するレンタカーに他の韓国ズの荷物を載せているのか。
飼い主さんは巨漢だがピンク色の服をいつも着ていてたっぷり日焼けをした明るい女性。彼女に触っていい?と聞くと、いいわよと返ってきたのでもふもふを堪能した。
撫でていると本当に気持ち良さそうで、撫で終えて手を離すと、おねだりみたいなポーズ(芸のちん●ちんの仰向けver)をするので、飼い主さんは「もっと撫でてって言ってるわ」と。笑いながらそのおかわり要求に応えてまた撫でてあげた。人懐っこい子で最高に癒された。飼い主さんもワンちゃんもありがとう。
アルベルゲの前に広い駐車場があったので車はここに停めてるのかな…?なんて思っていたら、普通に荷物を持って歩き始めるリーに、いや、歩くんかいと心の中でツッコミを入れるしかなかった。嘘がお上手な人たちですこと。君たちのおばあさんたちも嘘ついてないかな?大丈夫?
今日はソナたちも荷物サービスを使わないみたいだ。リーは忘れ物があると一度アルベルゲに戻ったので、すぐにソナとフンの3人で歩く形になった。特に痛いというわけではなさそうだったが、フンは足にコールドスプレーを吹きかけていた。
今日は距離的には大したことないが、登りの日。風邪の調子は微妙。荷物が重い気がするが原因は満杯にしている水なのか何なのか。
韓国ズは地元の人たちに挨拶をしない。僕は日本人なのでブエノスディアスと挨拶をする。昨日宿で一緒だった新たな韓国ファミリーもまた挨拶をしない。地元の人だけでなく巡礼者ともしない。
文化って残酷だな。中国人もそうだが人前でタンを平気で吐くのも気になる。同じアジア人として見られる日本人ってどれだけ不幸なんだろうか。
でもまあ、近くにいる相手に嫌悪感丸出しで絡んだりはしないので、ちょくちょく話しながら歩いた。ソナは漫画のアイアムヒーローが好きらしい。そういえば昨日はリーたちとドラゴンボールの話をしたな。
このザビエルさんを追い抜いた辺りでそれぞれ一人で歩き始めた。
残り580kmか。1日20km計算でも1ヶ月を切った。
この女性2人を追い抜くときに話すことになった。結果的には違ったのだが、右側の女性は四国の話をしたフランス女性かと最初思った。随分会っていないのでもっと後ろにいると考えていて、また会うなんて予想していなかったが、帽子を被っていてもわかる美人系の雰囲気、声も含めて、似ている気がした。でもよく考えたら、さっきの女性の方が背が低いし、年齢も若いなと気付いたけど。
昨日はワインを飲んだ?とても美味しかったわ。と言っていた。彼女のことは全然知らないが、今日の目的地はサントドミンゴと同じだからまた会うだろう。
今日は肩が死ぬほど痛い。腕組みも効かない。
帽子を外した状態だと、くたびれた髪が見えるから、前にいるのがジョンだとすぐわかる。
カフェないかな…。リパックしないと肩が折れそうだ。
前の女の子は多分日焼け止めで(日向だと特に)足がピッカピカに輝いていた。
さんきゅううううううううう
一気に飲んでしまったスモデナランハ。追いついてきたリーとソナはアイスクリームを食べていた。1€らしい。知っていたらオレンジではなくアイスにしただろうな。
このカフェ滞在中に荷物を弄り直して少し楽になった。またサングラスも掛けたので日差しの眩しさも軽減された。
リーがアリアリという言葉を知っているのは平昌オリンピックで送迎のドライバーをしていたかららしい。そのドライバーをしていたというのも嘘かもしれないが。
BARCA?
リーとフンと再度一緒になったのでくだらない話をしながら歩いた。犬夜叉とかの漫画やアニメの話から、韓国ではネットゲームが盛んなので、韓国産のSUDDEN ATTACKしたことあるよーと言うと、韓国産だけに限らずLeague of LegendsやSteamなどの話にもなった。2人ともそれらについて当然のように知っていてさすがネトゲ大国だなと感じた。
男しかいないから、というかリーが話すので、それから徐々に卑猥な方に進んで下ネタになっていた。昨日アオイソラアオイソラ言っていたので、日本のAV女優についてまあ…。韓国産AVはないようなものなので、韓国人男性は日本かアメリカのポルノを見るしかないらしい。まあ人種的に近いのは当然日本なので詳しくなるのだろう。
道端に動物の屍骸があったが、腐敗が酷く、蝿の数もおびただしかった。尻尾はそのまま残っていたが、ほとんどの部位は白骨化していて何の動物かもわからなかった。
肩が痛すぎて、もはや楽しくない。でも痛みを紛らわすためになんとか試行錯誤をした。ベルトを外したり、ずらしてみたり。
あくびが出て、なんだか元気がないなと気付いた。朝食不足かな。昨日スーパーでパンなどもっと買っておけばよかったなと後悔すると、今朝ソイジョイを食べているときにアレクがそれ美味しいよねと話しかけてきたのを思い出した。
チョン・テセ知ってる?とリーから質問されて、サッカー選手のチョン・テセ?と聞き返したらYesと。なんか彼は韓国ではテレビタレントをやってるらしく、でも韓国・北朝鮮・日本という3国のパスポートを持つファック野郎だと。在日朝鮮人のサッカー選手である彼が、韓国でも知名度があることを知らなかったし、韓国人からそんなに嫌われているということにも驚きだった。
他には篠崎愛が韓国で人気だという話もした。江南スタイルを自分が歌うと、リーがPPAPを歌ったので、振り付けを真似してふざけたおしてやった。何が元ネタかは知らないが、リーが「オレハヤクザダ!」と言うのでヤクザについても少し教えた。
後ろを振り返ると見えた景色。
休憩スポットがあった。(あの3人家族ではない)韓国家族にアニョハセヨ~と挨拶すると、そのあと麦わら帽子を被った娘が近寄ってきて、ナマエハナンデスカ?と日本語で話しかけてきた。彼女はミジュという名前らしい。
ゴミ箱も水場もリクライニングチェア()もある場所だった。
おういぇ。
さっきまで汗ばむくらい暑かったのに、ここで休憩していると寒くなってきた。
そしてなぜか石焼き芋が食べたい気分だった。でも残念ながら芋はないのでカロリーメイトを食べた。そのうちスニッカーズなんかを補充しないとな。
前の町からそう離れずにまた町があるとは知らなかった。アルベルゲがない(少ない)町はガイドマップに名前が載っていないこともある。
菜の花畑の前ではソナがフンに写真を撮ってもらっていて、撮り終えると交代していた。そのフンを笑いながら見ていたら、トゥギャザー!と誘われた。誘いは断ったが、でも今となってはおとなしいフンが一番可愛い。口は災いの元ですよ皆さん。
ゴルフ場。これは打ちっぱなしだったかな。
特にこれといった用はなかったのでそのまま町を抜けた。
足を乾かすべきだが、靴下を一度脱いでしまえば今日も絶対歩きづらくなるんだろうなあ。
フンと一緒に快調に歩みを進めていると、ソノコ!と突然フンが言うので、先を見てみたらソノコさんがいた。彼女は出発前に一言声を掛けたり等はないので神出鬼没。昨日と同じく7時に出たらしい。
他には鳴かないトンビもいたし、やたらと薄いサンダルで歩くマルティンもいた。
この日は菜の花が最も美しい日だったと思う。この季節を選び、この道を通った巡礼者の多くがそう感じたはず。
アジア女子の中ではミジュはシンジュの次に可愛い。顔の系統的に少し鈴木明子が入っているし、彼女の父親は頻尿でよく立ちションをしてるけど。
桜のような木。
菜の花畑の先に大きな町が見えてきた。あれがサントドミンゴなら登りは想像より遥かに楽だった。
フンはマドリードから東京経由で札幌に行くらしい。Do you like to travel? が通じない相手だっただけど、いろいろと単語を駆使して会話をした。
葉の花畑は一度視界から消えて、
再び現れる。これが最後だが。
町に近づいていく。
町の外れに停まっていたポテトと、
サッカー場。
道端に置かれたベンチにフンの知り合いの白人男子2人が座っていて、自分たちが近づくとスペースを空けてくれて、デカいペットボトルに入ったオレンジ味のアクエリアス少しとチョコビスケットをくれた。
彼らはアイルランドから家族で来たらしい。名前はアダムとマシューで、弟のマシューは自分が日本人だとわかると、日本の車が好きだと言っていた。日産が特に好きと。(昨晩アルベルゲでリーにブエンカミーノと言ってたのもマシュー)彼らのことは以後アイリッシュブラザーズと呼ぶ。実は三兄弟なのでもう一人出てくる。
そのあとはソナに続いて、リーとソノコとマルティンが3人で来た。ソノコとマルティンはそのまま進んだが、少し先で立ち止まってマルティンのスマホでアルベルゲを検索していた。
自分は教会近くには必ずあると思っているからいつも歩いて探す。
サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダという名前の町。人口は約6000人で、聖ドミンゴというこの辺りの巡礼路を整備した聖人が開いた町。
小さな女の子が泣いていた。なぜ泣いていたのかはわからない。
気になる自販機コーナー。
13時前にアルベルゲを見つけたと思ったら、その入り口前にアリアリファミリーや他の夫婦、久しぶりの青いジャケットのおっちゃんなど韓国人がやたらと沢山いた。ミジュの家族もいたし、リーたちも来た。
後ろにいるからもう会えないと思っていた人たちと会うことになるとは。移動手段は歩き以外もあることはあるけど。
半径15mに20人以上のコリアンがいたので、受付の際には当然のようにFrom Korea?と聞かれた。
ミジュがオツカレサマデシタと言ってきた。話せるレベルではないが、日本語の言葉を少し知っているらしい。
ジョンはもうラフな格好に着替えている…早いな。ワープしたんだろうか。でも抜かれる場所って今日そんななかったと思うけどな。カフェに入っているときくらいか。
リーたちと同部屋になった。スウェーデン夫婦もまた一緒だ。ペースや諸々のタイミングがかなり近いんだろう。
自分がスパッツ姿になったときに、リーが自分よりソナの方が足が太いんじゃないかと言い出して比べる流れになった。ごめんソナ…なんかごめん…。
下のベッドは誰だろうな。このメーカーの寝袋の持ち主は知っているぞ…と誰かを予想してみたが、レカではなく普通におっちゃんだった。
この日シャワーを浴びるときに初めて知ったのだが、リーは背中に「李」とタトゥーを彫っていた。え、まじか、おもしろ…と写真を撮らせてもらったが、その写真をリーが確認したら、背中のぶつぶつを指差して、ファック…と呟いていた。本人が言う通り美しい絵ではないので写真は載せない。
手洗いで洗濯をする際に、洗濯石鹸を韓国ボーイズと白人夫婦に貸した。メイドインジャパンかどうかはわからないが、日本製の実力を見せつけた。どやどやっ。
ひたすら鳴き続けるニワトリが飼われていたが、この町とニワトリにはある伝説があり、教会でも飼われていたりするらしい。その伝説の内容はこう。
無実の罪で絞首台で処刑された息子が、聖ドミンゴの力により奇跡的にまだ生きていたので、両親は役人に息子を下ろしてくれと頼んだ。しかし、役人は生きているわけがないと信じず「そんなのはテーブルの上のニワトリの丸焼きが歌い出すようなものだ」と答えたのだが、なんとそのテーブルの上のニワトリが生き返り鳴き始めて、息子の命を救わったという話。
真偽の程は置いておいて、ニワトリが生き返ったときにどんな状態だったのかは気になる。焼けた状態で歌っていたらホラーじゃ済まないし。
一緒にディナーを作って食べるからスーパーマーケットに行こうという流れになった。韓国料理を作ってくれるらしい。断る理由もないし、熱心に誘ってくるし、まあいいか。
気になっていた自販機コーナーで何が売っているかを見てみた。ヤバいやつだった。AHHHH!
完全にコリアンの1人と思われながら買い物をした。ソナがステーキ肉を4人分頼んだのだが、想像以上に大きかったからか、やっぱり3人分でいいと頼み直した。でも店員はもう切ったよと。完全に舐められたような感じで、コリアは北かい?南かい?と聞かれていた。
商品はまとめてレジに持って行っていたので後で払えばいいのだろうと思っていたが、どうやら翌朝の分は別々で買うとのことで急いで選びに行った。そしてパン、カステラ、オレンジジュース、チーズケーキというわけのわからない組み合わせになった。
おっと。
レジの店員に(もちろんスペイン語で)マイバッグを持っているのか聞かれたと思い、ノーと答えたが、結果レジ袋を貰えなかった。逆でしたか…残念…。
ここのスーパーは大型の店舗で品揃えも良く、1人でもいろいろとできそうな気がした。余裕があればだけど。
帰り道の曲がり角では(あのパーマっぽい髪型の旦那さんの)フレンチ夫婦に会って、ボンジュールと挨拶してからハイタッチをした。
アルベルゲに戻るとレカを上の階に見つけて、この吹き抜けの上と下で少し話した。
キッチンの中に自販機もあった。有能だ。冷蔵庫も大きいし、レンジ等もいろいろと揃っていた。
フンが利用していたのでその後に、自販機でホットチョコを買って飲んだ。紙コップや飲み物だけでなく、マドラーも落ちてきたのは面白かった。
料理は韓国人3人がするから良いよとのことだったので、自分はテーブルセッティング(+皿洗い)担当。セッティングといってもナイフやフォークなどを用意しただけだが。
全然韓国料理ではなかったし、肝心のステーキは自分のが特に焼けてなくてソナとリーに謝られた。でも問題ないさ。ソナに苦笑いされるほど切るのが大変だったのは間違いないけど。
そのソナから、日本人男性はつまらないのばっかりだけどあなたは違うわと言われた。いったい何人の日本人と接したことがあるのかは知らないが。
近くで食事をしていたミジュの家族は自分たちがあげたニンニクの代わりとしてご飯を分けてくれた。ほぼノリの延長線上というか、ソナに連れていかれた感じで、カムサハムニダオモニとお礼を言ったらミジュがグー!と自分を見ながらサムズアップしていてた。
食材費は1人5€で、会計担当のフンに払った。隣の席だったのでスマホの電卓で計算するのを見ていたが、切り捨てて皆に値段を伝えていた。フンは良い子だ。
長男も合流したアイリッシュブラザーズが三兄弟で近寄って来た。もう空気感が完全にボーイズ。誰が一番筋肉あると思う?強そうに見える?と力こぶを作って競い合ったかと思ったら、次の瞬間には腕相撲を始めていた。でも自信満々で乱入したリーが一番強くて笑った。リーは以前はサッカーをやっていたらしいが腕力もあるみたいだ。
自分が食器を洗うときにレカは他の女性と料理をしていた。パスタを作るのと楽しそうに教えてくれたが、彼女とは何度も同じ宿になっているのでわかる。多分この旅で初めての経験だからだ。
部屋に戻ると今にも死にそうないびきをかくおじいちゃんがいた。部屋でのWi-Fiの電波は微妙だし、なんだか眠たい。
カテドラル(大聖堂)へ一緒に行こうと誘われていたのに、韓国ズはまだお話に夢中だったから髭を剃った。
この後聞いてわかったことだが、ただカテドラルへ行くわけではなく、ミサに参加するから向かうのは午後8時とのことだった。しかしこのときはまだ5時台で、長い待ち時間だな…と思いながら時を過ごした。
面積の広いサロンには、テーブルと椅子が並んでいる実質食事会場のような空間と、その反対側にはソファがいくつも置かれている場所があり、ソファの横にはタコ足コンセントもあったのでそこで過ごす時間が長かった。
甘い物が食べたくて買っていたチーズスフレケーキを冷蔵庫から取り出して食べていたら、フンが来たので食べる?と分けてあげるとTWICEの新曲のMVを見せてくれた。話題になるからと名前を出しているだけでメンバーも曲も一切知らないんだけどなんかありがとう。(今はTTはわかります。勉強しました。制御しよう~)
向こうのテーブルには、香港人っぽい雰囲気のアジア系のハゲた40代くらいの男性(初めて見るのにどこか既視感のある顔だった)がいて、かなり流暢な英語を話す彼とレカが話しているのを見ていると、昨日ドキュメンタリーズと彼女が話しているときのことを思い出した。
もっと英語力が欲しいなと思った。レカだけじゃなく、英語圏やネイティブ並に話せる人と深く会話をするにはその手段しかない。恥ずかしながら自分はある程度は話せても、それ以上は話せない。だから簡単な会話の簡単なノリでは繋がれても、心の奥というか、そういった深い場所では繋がれないような気がする。
単純に、日本語以外でももっといろんな表現で話ができたら面白いだろうし、語り合えるような対象の相手が増えるというのはメリットだらけだと思う。でもこの現状を招いているのは他でもない、もっと勉強しなくちゃといつも思いながらもサボる自分のせい。そんな情けない自分のまま、若干ロストイントランスレーションのような気分になっていた。
みんなそれぞれの楽しみ方で楽しんでいる。これからどんな風に自分は過ごすだろう。顔馴染みは多くいるけど、親友みたいな存在が欲しいな。
うん、最高の仲間と出会いたい。ドキュメンタリーズとかともっと仲良くなれば楽しそうだけど、まあね。今の自分に無理なことは無理だし、なんとかうまい具合でやっていくしかない。韓国ズ以外とももっと仲良くなりたい。
でも考えてみれば、たった1人で、誰も知らない状態で来たのに、今それなりに楽しめているように、また新たに誰かと出会い、楽しい時間を過ごせたらいいな。
なんてことを思いながら、部屋に戻るとリーとソナが一緒のベッドで寝転がったまま密着していた。最初本気で行為をしてるのかと思ったが、イチャついていただけかな。
Wowwowwowwow…..え、なに?セックスしてんの?とか、さあ、そのままをキープするんだ…!下からiPhoneを持ってきて、撮影して、それをXv●deosにアップロードするから…!とふざけて茶化したけど、お邪魔をするのも悪い気がして部屋から出た。
それにしても、リーはソナのブスいじりはするけどイチャつきはするんだな。まあ性欲を満たすタイミングというのもなかなか旅中にないとは思うが。
それからサロンに戻ると、(顔のパーツが丸っこい)フンと(麦わら帽子の)ミジュと(眼鏡を掛けたお兄さん分の)TJがいる席に呼ばれたので、そこに座って話した。
ミジュに自分の年齢を聞かれたので聞き返したが、韓国で女性に年齢を聞くのはタブーと教えてくれなかった。でも年齢は少し上かな。TJが確か28と言っていたので、それと同じくらいか数個上だと思う。
TJが膝を痛めているのが気になっていたので状態を尋ねた。大丈夫だけど、旅が終わって帰国したら病院に行ってみるとのことだった。
近くにはデンマーク人の男性もいて、彼は大学ではクラシック専攻で、ピアノやギターをやっていると話していた。是非演奏をするところが見たかったな。
こちらの韓国ズ(主にミジュ)からワインを勧められたが断った。なんで飲まないのー?と日本人でもあるあるの反応だったが、体質的に飲んでも楽しめないと毎度説明するのは本当にダルい。でも飲む人にとっては一緒に楽しもうと誘ってるだけで悪気なんて一切ないし、理由云々の前に断ること自体が(ノリが悪いと)白ける可能性があるし困った話だ。世の中にはお酒が楽しめない人もいるのです…。
道の途中でも、宿の中でも、多くの人がいて、顔を合わされば話しかけてくれる知り合いが何人もいる状況。今の自分はとても楽しい空間にいるような気がするけど、でもふとした瞬間にとても孤独を感じるようなことがある。
何を求めて自分はここにいるんだろう。巡礼だ。でも自分の知っている巡礼とは違いすぎて戸惑いや違和感が何度も襲ってくる。そもそも、この旅を巡礼だと思って歩いている人自体少ない気がする。
キリスト教は自分には合わないということなのかな。楽しいは楽しいんだけど、今このディナーが行われている会場をソファから眺めていると、なんかね。隣にフンがいたりはするんだけども、なんかね。
再び部屋に一旦戻ると、今度は白人カップルもイチャイチャで忙しそうだった。スウェーデン夫婦はベッド上下別で過ごしているけど。
一人で過ごしている人も少なくはないが、みんなどんな気持ちで過ごしているのだろう。
恋人作りを目的として日本の巡礼路を歩いている人なんて一人もいなかった。カップルの思い出作りもほぼ皆無。そういった面でのギャップを感じているのだろうか。
自分の求めているものとは違う。もしくはまだ現れてないというだけだ。でも明確な目標というものを持たずに旅をスタートさせたので、それについてはよくわからない。
教会に入ったり、神聖な何かを感じる瞬間はきっと求めていたものに近いけど、残念ながらそんな瞬間はほとんどない。巡礼というよりはむしろ酔っ払いたちのパーティーみたいな場面や、イチャついている男女を目撃する方が多い。AVトークをするのも神聖さとはかけ離れている。
そうか、神聖なものと向き合う時間じゃないから戸惑いを感じているんだ。そういった時の中に包まれるのを期待していたのに、実際は違ったからこうして違和感を感じているんだ。
ナーバスとも言える心情だったが、こうして内省的な時間を過ごすことは重要だとは思った。
なぜ旅に出たか、何を感じたか、このカミーノという旅がどんな旅なのか。
終わってみればこの僕の旅も何かしらの形にはなっているだろう。自分の足で歩き、自分の頭で考えているわけだから。
洗濯物を見に行ってパーカーとトレッキングパンツ、スパッツ以外の物を取り込んだ。しかし、なぜかタオルが別の位置に移動されていたし、洗濯バサミは1つ行方不明になっていた。
ミサの前にはミジュと話した。あのアリアリファミリーの娘にも同じことを言ったが、家族と歩くって素敵だねと彼女にも言った。でも彼女は両親といることに疲れていると。両親+叔母?とともに行動する気苦労があるのだろう。若者たちと過ごすとよりそれを感じるんじゃないかな。
そしてやっとミサに行けたが、想像より200倍は小さな場所で正直落胆はあったし、地元の人も参加しているミサの序盤に、韓国ズが喋りまくっていてどうしたもんか…と困ったがそのうちおとなしくなったので無事には済んだ。
交わりの儀と呼ばれる儀式の祝福の際には、自分以外もソナとフンが、形だけと、前には行かず席に残っていた。(自分が行かないのは異教徒だからと拒むわけではなく、恐れ多くてなんだか申し訳ないから)そのとき隣に座っていたソナが恋人のように顔を寄せてきたのだが、リーは正直モテなさそうだからこういうのにコロッといくんだろうなと思った。
巡礼手帳は持ってきていなかったので韓国ズのようにスタンプは貰えていないけど、準備不足で前はできなかった寄付と、巡礼者だけが前に集められる儀式には出られた。だから悔いはない。
でも教会から出た瞬間に、もうミサには出ないかもしれないと思った。やはり場違いのような気持ちになる。
アルベルゲに戻ると韓国のおっちゃんから「グッドモーニング…オハヨウ…グッドイブニング?」と聞かれたので、コンバンハと教えたら、ああ!コンバンハ!といかにもおやすみのような感じで言われた。
いくらでも時間はあったのに、明日どこまで行くかと計画を練ったり、どんな道なのか下調べをしたりなどをしていないことに気付いた。なんとかなるだろうけど。
今日も充電する位置が遠いなと思っていたが、よく見ると近くにあった。下のベッドのおっちゃん(英語話者ではなさそうだった)に自分のプラグで一緒にコンセントを共有しようとジェスチャーで伝えたら、いいよ自分は使わないからという風に最初譲ってくれたけど、一緒にできるとわかったらサムズアップでグラッチェとお礼を言われた。イタリア人だったか。
近くにいるお兄さんが腰を痛そうにしていた。ああ、彼はさっきイチャついていた男性じゃないか。何かで腰を使いすぎたんだなきっと…うん…。
聖なる旅と思っていたが、実状は違った。それに対しての失望は確実に存在している。過去の経験を経て、巡礼に対して持っていた先入観・固定概念が揺らいだことへの動揺もまた同じ。
交流を望んでいたが、中途半端に多数の人たちと接しているがゆえに、孤独を感じるときがある。(孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の『間』にある。という三木清の言葉を思い出した)
しかし、このまま、今の気分のままでは、カミーノどころか観光さえも楽しめそうにない。葛藤を抱えながらでは、心から笑えない。だから、なんとか、気持ちを切り替えないといけない。
サンティアゴまで歩くということに関しては、肉体的に頑張るしかないけれど。
3日目のパンプローナでの待ちぼうけの辛さと同じように、この日の寂しさは今も色濃く思い出せる。大勢の人がいる中でとても寂しかった。いったい自分は何をしているんだろうという後悔に近い感情すら持っていた。
なんだか楽しくないなと思いつつも、こうして思考を巡らせる時間を持てていなかったのは、意図的に考えなかったというより、タイミング的な問題だ。歩いているときでさえ、いつだって人が溢れているから、何かをじっくりと考えられる環境になかった。だから、一人じゃないけど一人だったこの日(午後)は自分にとって重要だったと思う。
揺れ動く感情はすぐに消えるわけもなく、しばらくは残ることになるが、でもこの日は間違いなく大きな転換期だった。神聖さはどうやらこの旅にはないみたいだから、もう楽しむしかないだろうと、心の持ちようを変える日になった。
最後に一つ。
巡礼というのは(信仰を含めて)自分を見つめる、それこそ内省的な時間を過ごすことだと考えているが、文字通りそういった時間がこの日訪れた。求めていたものと違う…と落ち込んでいたのに、なんとも皮肉な話だ。こんなの巡礼じゃないと否定をすることもできないし。
今日の歩み
Nájera – Santo Domingo de la Calzada / 21km