サンティアゴ巡礼 -フランス人の道- Day 10

4月21日。
ニワトリが朝を知らせてくれて、何時かはわからなかったが目が覚めて、少し経ってから起きてみると5時半前だった。2時や3時じゃなくて助かった。
部屋を出て洗面所へ行くと、韓国の大人グループや同部屋のジョンも起きてきた。アジア人の朝は早い。正直、朝が早いということは一切苦ではないので、もっと巡礼者の行動リズムが早くなっても構わない。まあ、ヨーロッパ基準で進むからそうはいかないんだけど。
あの流暢な英語を話すアジア系男性はテニスのマイケル・チャンに似ていることに気付いた。中華系アメリカ人などそちらの人種かもしれない。

昨晩は正直落ち込み気味だったが、これからの時間を大切に使うために、何か大きなことを考えようと思った。時間はあるんだから、その長い時間を掛けてアイデアを練ったり、考え事をしたらいい。

朝食タイム。左はカステラの形はしているがザラメはついていなかったが、右のパンは中にクリームが入っていた。温かいものが欲しくなって、コーンスープでも買っておけばよかったと思った。

キッチンにある自販機が使えないと白人のおっちゃんと韓国人妻が少し困惑していた。故障なのかどうかはわからない。

部屋に戻っても真っ暗だったしほとんどみんな寝ていたから、ジョンが電気つけないだろうかと期待した。でも部屋に戻った瞬間に一番気になったのは部屋の臭い。なんていうか、人間の匂いが充満している。悪臭とまではいかないが、人間といっても歩き旅をしている人間だし、換気扇もなさそうだし、ご想像あれ。
そして何もしていないというくらい、寝袋をまとめたりといった負担の少ない作業をしているだけなのに肩が痛かった。そりゃ10kg以上を担いでいたら死ぬほど痛くもなる。
ソナが目を覚まして時刻を尋ねてきたのは6時14分。韓国ズにはうんざりしているが、無理にペースを変えて彼らから逃げてもどうせ違う韓国人がいるだけ。体力を消耗して韓国ガチャをするのも面倒だ。
韓国人についてだけでなく、勉強になることは多い旅ではある。そういった面では収穫を得ている。
でも遍路だって100%楽しいというわけじゃなかった。今は上手く思い出せないが、どんなだったっけな。

6時48分に荷物をまとめて広間のある階へと下りた。昨日確認はしていたが、ほとんど日本人の形跡のないノートに日本語で書き込んだ。(Pop…)

荷物サービスで運ばれる大量のバックパック。韓国の大人グループが泊まっていたので大半は彼らの物だろうが、巡礼って何なんだろうねと考えさせてくれる。各々の意味を持つわけだからまったく巡礼とは思っていないというならそこまでだけど。

フランス夫婦に挨拶をすると、旦那さんから握手を求められたのだが、トイレで手を洗ったあとだったので急いでズボンで拭いてから応じた。奥さんからはサングラスをかけてると誰かわからないわ!と言われて笑いながら謝った。この2人は本当に温かい。

それなりに準備を済ませて広間に戻ると、朝食中の韓国の若者たちがテーブルにはいて、ソナから呼ばれ席に着くとオレンジやパンを、TJやフンからも少し貰った(フンは昨晩の残りのコーラをくれた)。昨日のディナーで自分のステーキだけ半焼けだったことをみんな申し訳なく思ってるんだろうな。悪い子たちではない。彼らのおかげでかなりお腹が膨れた。
じゃんけんで負けてパンの残り(容器)は持つことになったが、最終決戦の相手だったリーのことをマイリトル金正恩…と言ったらウケたから良しとしよう()
出発の準備ができてから出発までに時間は掛かったが、韓国ズ以外の他の人たちとも話すきっかけになったからこれも気にすることじゃない。

「イキマス」と日本語で宣言したフンと2人で出た。左足首には若干違和感がある。


キスをする老夫婦。素敵やん? 夫婦じゃなかったらあれだけど。
キスをする老夫婦。素敵やん? 夫婦じゃなかったらあれだけど。


道の向こう側が海に見えたが、正体は山だった。時刻は8時ちょうど。

道には片方の耳栓や生理用ナプキンが落ちていた。どうやったらナプキンを落とすんだ…。あ、やっぱ今日いらねえわと捨てたのか…?

サンダルを履いたレカを追い抜くときに残り565(km)!と声を掛けたら、まだまだあるわと冷静に返された。フンが隣にいたからあまり喋れなかったけど、自分を見かけたらいつも手を振ってくれたり何かしら反応してくれるレカさんはグッドフレンドです。

今日も葉の花が綺麗だ。



フンと話しながら歩いた。内容はもっぱら、兄弟や姉妹は日本語でなんて言うの?と質問される日本語講座的なもの。


気球が見えたのが8時46分。数分経って振り返るとさらに高度を上げていた。あれにリーとソナが乗ってるはずと言うとフンは笑っていた。結構他の人を笑わせてるんですよ、どうも。

このおっちゃんは後々話すことになる。このときの絡みは挨拶程度だが。

TJの後ろ姿。

9時前に町に到着したが、町に入る前がやたらと臭かった。田舎の宿命だろうか。


ムーディーな音楽が流れていたカフェ。

距離はまだ5km程度だったが、フンがリーたちを待ちたいと言っているし、上のカフェと教会付近で休憩を取ることにした。(TJは先へ進んだ)
鼻水は少し出るけど体調はそんなに悪くないと思う。レカはおじいちゃんと来た。リーたちは20分頃に来て、それから何分か置いて再出発。

TJが前から引き返してきたので忘れ物か?と思ったら、次の町に行くより戻って済ませた方がいいと判断したらしい。まあ、あれのことですよ…。ある意味忘れ物ですよ…。

前を歩くジョンはムンジェインに似ているとリーが言うので、ドナルドトランプ…チーズバーガー。安倍晋三…寿司。ムンジェイン…???みたいな流れになったけど、何を当てはめるべきだったのか。キムチ!と即座に言えなかったのは侮辱に当たらないかと気になったから。
ソナは近くにいたけど彼女も下ネタはいける口なので()、また下ネタになった。お気に入りのAV女優を聞かれたので、Yui HatanoとAiri Suzumuraの名前を挙げといた。このあたりは鉄板でしょうよ、ええ。大半の日本人男性はもうSora Aoiは見てないんすよ。

この看板でレオンという地名を見つけた。ここでもまた小休憩を取った。
サイドポケットから水が入ったペットボトルを取り出していたら、その水をフンが普通に飲み始めて驚いた。別に飲むのは構わないんだけど、 リーは一応聞いて来た。でもそのリーは空になったパンの箱をそのまま地面に置くっていう。ゴミ箱はこの場にないからまた自分のバッグに戻さなきゃいけないのに…土ついちゃうんすけど…。
ってかさっきからとんこつラーメンを作れとうるさい。昨日は俺たちが作ったんだからと。半焼け気にしてないわこれ。スーパー次第でなんとかなるかもしれないが、田舎村で作るのは困難でしょ…。

サッカー選手知ってる?と聞かれて、いろいろ名前を挙げて知ってるか知ってないかみたいなクイズのような流れになった。
自分からアン・ジョンファン、パク・チソン、ク・ジャチョル、ソン・フンミン、キム・ボギョンなど名前を知っている韓国の選手を(後に韓国料理名も)羅列すると、その度におぉ!おぉ!と彼らは喜んでいた。
向こうがホンダの名前を出したとき、ACミランのケイスケホンダ?と聞いた。活躍したかは置いておいてACミランという所属チームはやはりかっこいい。リーは、シンジカガワが日本人でナンバーワンだと言っていた。

さっきからフンが自分のストックのカーボンやアンチショックに興味津々で、貸してと頼まれたので貸してからは、本気で腕組みをして歩いた。

写真のインフォメーションセンターの役割を持つ建物でスタッフのおばちゃんからスタンプを押してもらった。コリアに続いて、どこからか聞かれたのでハポンと答えると、あら、スペイン語知ってるのね!というような表情だった。





町の教会。


いかにも巡礼者向けな、足の処置グッズなどが揃った自販機。



ストックが返ってきたので少しペースを上げた。たまにふっと足が軽くなって、ペースが上がる瞬間がある。
しばらくして振り返ると韓国ズ3人も縦にバラバラになっていた。フン、リー、ソナという順番で。その後また一緒になって歩いていたけど。
さっきフンは今日の歩行距離が10kmを越えたと言っていたが、自分のヘルスケアはまだ8.8kmだった。でもフンの方がApple Watchも付けているし正確な気がする。一日の総距離から考えると僅かな違いだが、実際彼が正しい方が心理的にも体力的にも嬉しい。



スペインの猫はあまり逃げない。カミーノの道(町)に現れる子たちが、食べ物を貰ったりして人慣れしているだけかもしれないが。

マイケル・チャン似の男性が休んでいた。昨日まで一度も見かけなかったが、ちらほら見かけるようになった。

まだまだ道は続く。

11時11分。さすがに疲れてきた。見えてきた次の町で休むところがあってほしいな。
前方には以前何かの絵を描いていた女性を抜いた。荷物を減らしたから調子は良いらしい。

フンが後ろから走ってきて、アルベルゲの予約を一緒にするかと尋ねてきた。プールもあるよ!と言われても、別にそれはいらないんだけど、うーん、どうしよう。

簡易的なカフェが併設されているアルベルゲの屋外で休憩することにした。トイレ行きたいなーと話していたら、フンが率先してトイレの場所を聞いてくれた。(宿泊スペースがある二階にあった)

スモデナランハこと手絞りオレンジジュースを売っていたので、後ろ髪長い系おばちゃんにいくらか聞くとドネーションとのことだった。箱の中には1€が多いが、ちょうど切らしているので50¢+20¢+もっと細かい¢を集めて入れたんだけど、スペイン語でキレられながら文句を言われた。どうやら足りなかったらしい。
まあ、このおばさん最高に感じ悪くて、財布から取り出しているときもオレンジ絞りながらずっと覗いてきてたし、お金を入れた後もわざわざ箱を開けて確認していた。
ほとんど出した値段他の人と変わらないやろ…おまけに量も少ないのに…と思ったが、萎縮してしまうような剣幕で怒鳴られて、なんでオレンジジュース一杯でこんな嫌な思いをしなけりゃいけないんだ…と悲しかった。文句を言うなら最初から値段設定しとけばいいのに。善意ではなく下心のドネーションにしやがって。
とりあえず、こういうアルベルゲには泊まりたくないなあと強く思った。

ミジュもちょうど休憩していたので彼女の家族から韓国ズ経由でいろいろ貰った。朝自分が貰っていたコーラはここでみんなで分けた。
フンが誘ってきていたアルベルゲは予約しなかった。トラウマがあるから予約は嫌いなのだ…。パンプローナでのエピソードを笑いに変えて自然に断れたのはよかった。

ソナが膝が痛むけど、この痛みもカミーノの一部よねと言ってきた。カミーノを構成するものを(寂しさ等)いくつか挙げていたので、その中にラブも加えといた。
そしてそのラブで戯れ合うリーとソナ。それを見守るTJ。

それでは再出発。

おばあちゃんの近くに犬が寄ってきて、その光景に目を合わせて笑った。ブエンカミーノ!

イヤホンをして歩いている青年が青い花を一輪摘んで眺めていた。その姿は美しかった。

フンと一緒に歩くのはペース的に悪くない。誰かと(お互いにストレスなく)歩くというのは実は難しいことだから、なかなかレアな存在ではある。
麦わら帽子のミジュの家族も近くを歩いていて、彼女のお父さんが立山を登ったことがあると聞いた。どこの国も同じだとは思うが、覚えた言葉を披露するとみんな喜んでくれる。
しばらくしてからリーも追いついて3人で歩く時間があった。楽しいは楽しい。

今思っていることをどう書くだろう。旅を終えた自分次第だろうが、どんな感じかな。


この下を通っちゃうよねやっぱり。

草の上の犬。屋根の上の猫。

クラブ…。

遠くに見える墓地。

アルベルゲの宣伝として巡礼者にペットボトルの水を配っている車が来た。その車を運転していたおっちゃんから貰った水。

フンからTDRとUSJはどっちが好きか聞かれた。距離的にはUSJの方が行きやすいかな、でもディズニーランドのジェットコースターも好きだよと答えた。
日本語講座では出てきていない単語も彼は覚えている。スマホで調べているんだろうか。カゾクとか。

ジョンはほんとに疲れてます…みたいな歩き方だけど、ちゃんと歩き続けている。昨日もワープはしてなさそうだ。

うん、韓国ズのいつもの三人は良い子だよ。TJもナイスガイだし、みんな嫌いなんかではないんだ。
でも何か考え事や創作をしようと思っていたのに、お喋りや歩きで忙しくて考える余裕がない。

このアルベルゲの看板で13時24分。900mだから町も近そうだ。


プールのあるアルベルゲの看板。ホテルのような部屋もあるみたいだ。

村にある最初のアルベルゲに行く自分。受付前には顔舐めレトリーバーがいて可愛いかった。

受付ではイベントで使われるような紙のリストバンドを手首に巻かれて、それに部屋とベッドの番号が書かれてあった。

アイリッシュブラザーズも来た。ミジュファミリーも写真には写っているが、アルベルゲは別だった。

受付兼レストランと、宿舎としてのアルベルゲは別の建物。出入り口付近にフランス夫婦がいて、また一緒だね!と再会を喜んだ。

下!はい、優勝!って自分がこの部屋には一番乗りだったけど。

程なくしてアイリッシュブラザーズが入ってきて、Konichiwaと自分に向かってお辞儀をした。少し日本文化を知っている様子。コリアンたちは一緒じゃないの?と聞いてきてから、へへへ、ビスケットがあるぜ!とまた分けてくれた。
先に行ったと思っていた韓国ズはこちらで休憩していて、返金して同じアルベルゲに行こうと誘ってきていた。返金するのはアルベルゲの人に申し訳ないし、明日も明後日も多分一緒だからごめんねと断った。
そして同部屋のアイリッシュブラザーズもやたらと誘ってきた。町に下りるんだけど一緒に行かないかって。ゆっくりしたかったし、今からシャワー行くからと下2人の誘いを断ったら、今度は長男が来て、じゃあ今度行こうぜ!と。
ノリが完全に元気の良い、はっちゃけた十代のそれだから面白い(アイルランド英語はめちゃくちゃ聞き取りづらいけど…)。Byeって日本語でなんて言うの?と質問されたので、Sayonaraだよと教えると「Oh、誰か俺に嘘を教えたぜ!これあげる!」とまたチョコのビスケットをくれた。

ホットシャワーはやはりサンキュー。シャワールーム内のカーテン(支え棒だったかな?)はミニバッグのぶら下げに耐えられず、着替え等の荷物が濡れた床に落ちてしまったけど。
シャワーの次は洗濯。しかしバスルームの入り口でどっちが出るか入るかみたいなあの駆け引きが繰り返されて、実はこのアルベルゲに来た際も同じ人と同じ譲り合いがあったのでさすがに苦笑いだった。相手はベルギー人のおっちゃん。「コリア?」「ジャパン!」「オハヨ」

レストランの方へ行ったらレカさんが受付中だった。絶対来ると思ってた。ホットシャワーだったよと教えると笑顔でサムズアップ。その後も廊下の遠くから手を振ってくれたりしていた。

受付をしてくれたおばちゃんではなく、テイラースイフトみたいなお姉ちゃん店員から飲み物を買って外で過ごした。
その時間がとても素晴らしいものだった。近くには菜の花畑が見えていて、心地良い風が吹いていて、人はほとんどいないから、聞こえる音は鳥の鳴き声くらい。こういう時間よ!としみじみ。

お腹が減っていたのでピザを頼もうかなと考えたが、でもディナーがあるしと、結局朝も食べた正直美味しくないカステラのようなものを食べた。

少し辺りを散策した。ここにもプールがあるじゃないか。(もっと暖かい日に)巡礼者たちがくつろいでいる光景が想像できる。

思っていたよりも人(巡礼者)が来ない。完全に町の外れだから、もっと町中に泊まろうと考えるんだろうな。

Wi-Fiありと書いてあったがパスワードがどこにも書かれていなかったので、テイラー(似の店員)にパスワードを聞いたら、ブエンカミーノだと教えてくれた。
でも部屋に戻って試しても繋がらず、ブエンカミーノって言われても、大文字小文字だとかスペースだとかわかんねえ…と数十回試したが成功せず。まあいいや…と諦めていたが、レストランの方に戻ったら繋がった。あちらの建物限定なのか…?クール系というか、かなりツンツンした雰囲気なので、なんだか話しかけづらく聞けなかったが。

同室のおっちゃんが来るまで少しベッドで寝ていた。その男性には、靴はそのままでも(部屋内で履いていても)オッケーで、干すなら靴箱が入り口のとこにあるよと教えた。
起きたので少し外へ行ってみたが気温が寒くなっていて、天気も曇っていた。明日の天気はどうなのかな。レストランにはまた後で行くからWi-Fiで調べられるが。

イヤホンをつけて久しぶりに音楽を聴きながら、今までに撮った写真を振り返ってみた。ブレが少なく多くの写真が使えそうだ。それなりの枚数あるが、これからもっと増えるだろうな。メモが追いついているのは良いことだ。
日本にいると、常時スマホを触りまくっちゃうけど、このネットに繋げない環境も面白い。実際にこのときも既に入れている音楽を聴くことぐらいしかできなかったし。(聴いていたのはビョークのHyper-Ballad)

それにしても新しい人たちとあまり出会わないな。このサンティアゴ巡礼のペースというのも難しい。
巡礼中お馴染みの指のさかむけだけでなく、右手首や左足首などいろんなところにダメージがある。どれも重症ではないが、10日間の疲労がもたらすものではあるだろう。
だが悪いことばかりでもない。クレデンシャルの増えてきたスタンプもその歩みがもたらしたものだ。

レストランの建物に洗濯機コーナーがあることを今更知った。この近くでレカさんが電話をしていて気付いた。歩き終えてから彼女が電話をしている姿をよく見かけるが、いつもどんな相手と話しているのだろう。

ディナーの時間になったのでレストランへ向かった。テイラーからコリア?と聞かれてジャパンと返した。コリアンメニューはあるけどジャパニーズメニューはないとのこと。そもそもあると思ってないので、大丈夫っす。

ワインor水では水を頼むが、この日は注ぐのにちょうどいいコップはなく、元々テーブルに置かれているワイングラスのみだったので、水をグラスに注ぐべきなのか…?と迷ったが、でもペットボトル直飲みははしたない気がするので、少し恥ずかしい気持ちになりながらも水をグラスに注いだ。

いつもパスタを頼むので、たまには他のものもと今日はガーリックスープを頼んだ。店内は禁じられた遊びなどのギターミュージックが流れている。

ポークとポテト。

デザートはアイスクリームにした。チョコソースはちと洒落てるぶちまけ方だけど、お皿に置かれているのは袋を破って出てくるやつだ。

巡礼者メニューには含まれておらず、実は有料だった食後の紅茶をもらうくらいのタイミングでレカさんが来て、ここ座っていい?と尋ねてきたので、もちろんと。隣の席は何度かあったけど向かい合うのは初めてかも。
近くで見ることで彼女のブロンドの髪が地毛ではなく染めているのだとわかった。この時間で沢山の話をすることになった。

歩いてるときに何を考えてるか聞いてみた。ときに無心で、ときに考え事をしていて、痛みなどを感じるときもあると。退屈?と聞き返された。答えはノー。すると、私も退屈じゃないことに驚いてると。
カミーノピーポーはどう思う?とも聞いた。基本的に良い人が多いと思うとのこと。
彼女はカミーノへはバケーションで来たのではなく、今は大学を休学しているから来たと話していた。薬学部に入っていて、学校は10月から再開すると。
YouTubeの話は以前していたので、なんて検索したらあなたのチャンネル出てくる?打って!とiPhoneを渡されて、入力しようとしたら検索候補にAviciiが出てきたので、Avicii…と呟くと、彼が死んだの知ってる!?と聞かれた。まあ知ってはいたけど、そのニュースにはかなり驚いたし、LINEの友達のグループでも話題になっていた。(このときはドラッグかな?そう思う、と話していたけど、実際は自殺だった模様)

食事をしている数人を見てから、このアルベルゲあまり人来ないねとレカさん。多分もっと町の中心部に近づいてるから来ないんだろうね、でも君がここに来ることは知ってたよと言って笑った。2人とも最初のアルベルゲに行くことが多いから。
あ、そういえば、車から水貰った?と聞かれたのも笑った。ごめん、あのおじさん…違うアルベルゲに泊まることにしたよ…。 レカ曰く、水自体は良かったらしいが。
昨晩は近くの人のいびきがうるさくてあまり眠れなかったみたい。ずっと一人部屋で寝てきたから、こういう場所で寝るのは初めての経験で大変と。でも早寝早起きなんて全然してなかったのに、今では6時に起きて8時には眠くなると言っていた。彼女もすっかり巡礼者だ。
今日が土曜日って知らなかったよと自分が言うと、わたしもたまに今日何曜日だったっけ…ってなると。これも長期の歩き旅あるあるだろう。

明日登りだね、ハッピーデイだねえと皮肉っぽく言うと、そうね、わたしはMiss Going Upだしと言うから面白かった。ミスゴーイナップて。
彼女がデザートのカラメルプリンを食べているときに、それ美味しい?と聞くと、食べてみて!と言われた。いや、いいよと遠慮したが、いいから食べてみて!と結構強く勧められたので一口貰ったが、美味しかった。ほんまや…。
わたしのワイン(どうせ余すし)飲んでいいよとも言われたが、嫌ってはないけど飲んだら顔が赤くなっちゃったりするからやめとくよと断ると、わたしも同じ、わたしたちにはワインはイマイチねと。実際ヨーロッパ人では珍しく、レカもすぐ顔が赤くなっていた。
一人で歩くのと誰かと歩くのどちらが好き?と聞かれた。うーん、Whichever…と答えた。レカも一人で歩く方がいいときと、誰かと話しながら歩くのがいいときがあるらしい。まあ、同じだな。

彼女も沢山の写真を撮っていて既に2000枚以上あると。歩いていても他の人はそんなに撮っていないっぽいし、自分と同じくらい撮る人がいるとは驚きだった(来る前に全部消したので一番最初が飛行機の中からの雲の写真だった)。
撮った写真は家族に見せているらしい。いつも心配してるから毎日写真を送って電話をしているとのこと。そりゃそうか、同じヨーロッパとはいえ、異国を20代の娘が一人で歩き旅をするって、そりゃ親は心配だよな。
ビューティフルな女の子がビューティフルな橋の上でセルフィーを撮ってたのは見たよとクサいことも言った。レカも自分が写真を撮ってるところを見たと言っていた。自撮りはほとんどしないけど、まあ撮りまくってますからね。
ブログのために写真やメモを取りまくってるんだと教えた。ベッドの上ではすべて思い出せないからと説明すると、良いアイデアだと言ってくれた。他の人たちとはちょっと違うカミーノ。 カミーノwith iPhone。現代的なマイカミーノ。
それから、綺麗だったり、お気に入りの写真の見せ合いっこをした。自分が黒いレトリーバーっぽい犬のカミーノピーポーを見せたら、彼女がログローニョで撮った野生のリスの写真を見せてくれた。触れるくらいの距離にいるリスの写真が何枚かあった。
他にはスタート地点のサンジャンや菜の花の道に沢山の巡礼者の姿が見える写真などを見せてくれた(おまけに日焼け写真も)。自分も綺麗に撮れている写真をいくつか見せた。ロスアルコスを出て振り返った朝焼けだとか。
自然を感じるよねと自分が言うと、毎日感じるわとレカは言っていた。

テーブルのシートを少し汚しちゃったわと罪の告白をされたので、いや、自分もだよとナプキンで隠していた汚れをちらっと見せてお互いに笑った。
落ち着いて様々なことを話せて良かったと思う。こんな風にカミーノの巡礼者と真面目に話すことって今までなかったし、楽しかった。雰囲気的には普通に同世代の女の子と雑談するような感じだったけど。

一緒にレストランを出て、洗濯物の乾き具合を確認したがあまり乾いていなかった。これからレカはボディクリームを塗ってマッサージをして寝るらしい。
アルベルゲへのその短い帰り道で、道中にもたまに生えているこの木知ってる?Weirdじゃない?と聞かれた。意識して見てなかったが、言われてみると確かに気持ち悪い。

また明日、おやすみミスゴーイナップと言うと笑っていた。食べ物はあるからここでは朝食は多分取らないと話していたので、じゃあ明日の朝は6時出発だね?とふざけて聞いたら、7時か7時半よとまた笑いながら返された。

ベッドルームに一旦戻ったが、そのままにしておくわけにもいかないので洗濯物は取り込んだ。
歯磨きを終えるとフランスの旦那さんとタイミングが同じだったのでおやすみを言った。そういえば今日はスウェーデン夫婦はいないな。
明日は24kmで登りもある。多分アイリッシュブラザーズが部屋に帰ってきたら、うるさくて起きてしまうだろうけど、早めに寝てしまいたい。

この旅も4分の1が終わったが、レカに会えて良かったと思う。これから先あまり良い出会いがなくても、彼女に出会えた事実は変わらない。
次に印象的なのはアリアリ家族含む韓国の大人グループかな。フランス夫婦もいつも笑顔で自分を見つめてくれるし、太陽のように明るいベネズエラのヘススも好きだ。
ちょっと苦手だなって人もいることはいるけど、レカと同じ考えで、基本的にはみんな良い人だと思ってるし、好きなんだろう。

旅が終わるタイミングで出会えたことへの感謝を伝えられる人がそこにいるとは限らない。伝えられるとは限らない。
別れは突然やってきて、住んでいる国も違うし、もう二度と会えないかもしれない。そう考えると切ないけれど、でも歩いて行こう。
終わるのが惜しい、振り返ればとても楽しかったと思えるような旅にしたい。そうなってほしい。

ペースがあまり変わらないので新しい出会いがあるとはあまり思えない。逆に、レオンで休憩を取ってしまうと完全にペースが同じ人たちと一緒にゴールできず、それを気にするだろうか。
いや、大丈夫だろうきっと。今それについて悩むのは得策じゃないし、なんとかなるような気はする。


今日の歩み
Santo Domingo de la Calzada – Belorado / 22.9km


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