サンティアゴ巡礼報告会(2018年秋)

本当はこの記事はカミーノ巡礼をすべて書き終えて投稿したかったんだけど、まだ9日目の段階なんですよね。人はこれを怠惰と呼びます。
ブログを現在進行系で追ってくれている人からすると、本編にまだ出ていないキャラのスピンオフを読まされるみたいな形になって申し訳ない。でも溜めとくのもあれだし、しょうがない。

報告会とは、日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会という団体が主催する、巡礼に行った人が体験談をプレゼンするようなイベント。
自分が巡礼中行動を共にした当時20代の女性(えりこさん)がその報告会で発表するということで、10月20日に東京の下北沢で行われたその会に参加してきた。ちなみに、彼女と同じように知り合ったのりさんと、ゆみこさんという2人も応援に来ていた。(2人はリタイア世代)
友の会や報告会についてえりこさんに教えたのはのりさん。彼は友の会が開いた説明会に旅前に参加していて、報告会の存在を知ったえりこさんが、じゃあ私それ出る!と言っていたのは旅の間に聞いていたんだけど、まさか本当に出るとは、ちょっと驚いたよね…!
今回の報告会の詳細は以下のURLで。プログラムの内容も書かれているので、気になった方は是非。
http://camino-de-santiago.jp/wp_blog/archives/6739 (サイトリニューアル?で公開終了したみたい)

実はこの報告会に参加するには一波乱あって、まあ正直に言うと、そんなに人が集まるイベントだとは想像していなくて、あれだったら当日受付でも大丈夫だろうと軽く考え、詳細も10月になるまで確認していなかった。
しかし、なんと、その確認した日(10月1日)には既に40席の座席チケットは売り切れで、もう募集は締め切られていた。
移動や宿の手配だけ先に済ませておけば問題ないだろうと、事前に航空券等は取っておいたのに、肝心のイベントに参加できないとはありえない…どうしよう…と困り果てたあげく、運営の方に嘆願メールを送ってみることにした。
内容は、立ち見でいいからどうか参加させてください、といった感じ。一緒に歩いていた人が報告する機会なんてもう二度とないだろうし、どうしても行きたかったからひたすらお願いした。
でも返ってきたのは、定員を越えての入場は禁じられているからご容赦くださいとのメール。その後どうかお助けくださいとのメールを再度送るも、それも駄目で、毎年2回開催されているので次回でもどうぞと。
え…どうすればいいんだ…どうしようもない…と途方に暮れていた。落ち度は確認していなかった自分に100%あるのだけど、でも立ち見ですら断るって何だよ…何が友の会だよ…もうZOZOTOWNにでも改名したらいいのに…と落胆というか、苛立ちというか、絶望というか…。自分の馬鹿さ加減にもしばらく落ち込んでいた。
今回の会にどうしても参加したいのに、もう参加する方法が残されていなかったから、実際諦めていたし、当日はショックを抱えっぱなしだろうけど、何をしようかな…と考えていたりもした。
だが奇跡的に?キャンセル者が出たとメールが入り、参加できることになった。本当に救われた。

当日ちょっと早く着きすぎたんだけど、集合時間が他の参加者より早い報告者のえりこさんはもう会場入りしていたので、かなり緊張している彼女に半年ぶりに再会した。

ボタフメイロ(というある儀式)の動画を流したいがホールにWi-Fiがなくて送れないとのことで、テザリングを貸したりと、ちょっとお手伝いできたので良かった。

まあそれから続々と参加者は集まり、一般席40+報告者とスタッフ10くらいでだいたい約50人程がいたかな。

来場者の大半は60代以上のおっちゃんおばちゃん。大学生がいたりもしたけど、若者と呼ばれるような年齢の人は二桁いなかったと思う。

えりこさん以外も発表があったので、興味深く聞いていた。でも1人目2人目は導入の部分(フランス到着からサンジャン出発まで)に熱が入りすぎて、時間が足りなくなっていた。
カミーノと遍路の違いを発表する予定の方も、遍路という言葉は一回も出ないまま終わったっていうね。素人で緊張も当然するだろうから仕方ないし、こちら側は楽しく聞けたので問題はないんだけど、本人たちが少し残念そうな表情をしていたのは印象的。

お昼休憩を挟み、前2人の報告が参考にできたというのもあるだろうけど、えりこさんの発表は素晴らしかったと思う。
身内贔屓無しでは見られなかったのは事実だが、時間もほぼぴったりで、内容も充実していたし、お酒や年齢のネタで笑いもしっかりと取れていた。
巡礼中お互いに腐るほど話したので自分の知っているエピソードばかりではあったが、でも改めて彼女の巡礼が素敵な時間であり、旅を楽しめたんだなというのが伝わってきた。聞いていた他の参加者たちにも絶対にそれは伝わったはず。
出番前は、絶対に声震えてgdgdになる…と彼女は言っていたけど、その隠しきれない緊張感すらも、ある意味演出のような形で、人々を引き込んだような気がする。いや、本当に。

出番を終えた彼女に、これで完結感ない?と聞いたが、いや、ないと返ってきた。中盤グダったからやり直したいと。
まあ、発表の時間は限られているので、話したいエピソードが他にもあったのはわかる。(写真は写っていたが、フィステーラのアルベルゲでのエピソード等もきっと話したかったはず)
でも彼女自身がどう思うかは置いておいて、この日一番良い発表だったとみんな感じたと思う。いや、本当に。

ちと話は逸れるが、彼女のプログラム概要に、3年前に他界した父への追悼の意味も込めて歩いたと書かれてある。
「これ遺影にSNOWかけてみたw」みたいな感じで写真を見せてもらっていたので、彼女の父親が亡くなっていることは知っていたし、もしかしたら遍路の自分と同じような意味を持って歩いているのかなと少し考えたが、そのことについて旅の間話すことはなかった。こっちから聞くようなことでもないし。
でもそれも、(勝手な想像ではあるが)グダったという中盤で話したかったことの一つなんじゃないかなと思った。というのも中盤は、怪我気味の彼女が初めて一人で歩いた区間だから。
こういった巡礼の、一人で歩いている時間じゃないと考えられないようなことは間違いなくある。
死者となった大切な誰かのことを想いながら、悼みながら歩いた時間があったのなら、それがどんなものだったかは気になった。話したくても話しづらいことは当然あるわけで、彼女の心の中がどうだったかは彼女しかわからないけども。(ちなみに自分の遍路のときは、場の雰囲気が重くなりそうだったら理由も言えなかったし、歩いている最中は思い出して悲しくなったりしていた)

その後は自分と同い年の男性や自転車カミーノ、特別企画として桜美林大学の学生による発表もあった。(発表者全員の感想を書いてもいいんだけどキリがないので止めておく)
自分はフランス人の道しか歩いたことがないけれど、その同じ道でも、人によって違った物語があり、他の道もやはり違った景色、違った想い出を皆持っていることがわかった。そのどれもが聞いていてとても楽しかった。
桜美林大学は2人の男女での発表だったのだが、男の子の方は日本生まれ日本育ちのフィリピン人。ビザがなかなか下りなくて合流が遅れたとのことで、歩けるのは当たり前だとは思わないでくださいと話していた。確かに海を渡った先の国で巡礼ができるなんて恵まれていることだ。

報告会のあとは懇親会で、お菓子が置かれたテーブルを囲み、ワインやお茶などのドリンクを手に、それぞれで話に花を咲かせた。
参加者の多くが巡礼経験者なので共通の話題も多く、初対面の人でも自然と会話も弾んだし、諸々の情報交換もできた。
懇親会で自分はえりこさんと一緒にいたのだが、近くに小さな若い(まだ旅には出ていない)女の子がいたので、Sonokoちゃんって子がそうだったように、小さい日本人の女の子は可愛がられると思うよと二人で教えた。なんかウケる。
友の会のメール対応をしてくれた方が話しかけに来てくれて、もしかして中西さんですか…?と聞いてから、彼にちゃんとお礼を言えたのも良かった。見せてあげたいけど(きちんとした公共の施設なので定員オーバーは)難しい…どうしたらいいか…と彼も悩んでくれていたみたい。結果的にお互いハッピーな気持ちになれたのでもう万々歳ですよ。今はもう感謝しかない。

最後は、受付の際に貰っていた紙に描かれたマークによって振り分けられるプレゼント抽選があった。
景品はUSBやパスケース、ナップザック等があったのだが、自分が当たったのは参加賞的位置のボールペン…(照)

えりこさんもボールペンだったけど、バッグいらないって人と交換をしてもらっていた。嬉しそうだったので何よりです。

元から知り合いがいた(自分が登場するエピソードの発表もあった)というのももちろんあるが、想像よりもずっと楽しい時間を過ごせた。(伝えきれないけど、めちゃくちゃ楽しかった)
そして、旅を終えてからも、こうして繋がれる機会があるというのは純粋にナイスアイデアだと思った。他の巡礼路でもあるのだろうか。個々の集まりは様々ありそうだけど、わからない。
ゴールした旅の先にまた楽しみを見出だせるという意味で、特に旅を終えた方にお勧めしたい会だった。きっと楽しめると思う。

ここからは余談になるけど、えりこさんの発表中に、今日はりょうくんが遥々福岡から応援に来てくれました!と紹介されると、おぉぉ…と驚嘆の声が上がっていて、懇親会でもなんだかやたらと驚かれたんだけど、いや…あんたらスペインまで歩き旅しに行く人たちやろ…なんやその反応は…驚きすぎやろ…逆に傷付くわ…と、まるで異国から来たかのような想像以上のリアクションにこっちまで驚かされた。
今自分が福岡に拠点を置いてるのは事実だけど、関東にはちょくちょく来てるというか、放浪癖のせいで暮らしているみたいに長期滞在することもあったりするのに、でも来られる側の人間には衝撃を、来る側の人間には疎外感を与えるような距離があるらしい。
要はあまり良い気分にはならない反応だったという話だけど、でも自分からしてみたら、いや行くでしょ…国内だし…、こんなチャンス二度とないでしょ…ってくらい行きたい機会でしたとさ。
うん、まあ、心から楽しめたのも、その機会を作ってくれた方たちのおかげだけどね。特にえりこさんには感謝したい。不安もあっただろうに、よく発表してくれたと思う。

会が終わってからは3人(えりこさん、のりさん、ゆみこさん)に、のりさんの(街道歩き)友達のおっちゃん、ゆみこさんが旅前の説明会?で知り合ったご夫婦2人と一緒にバーへ行った。
でもえりこさんは程なくして抜けた。というのも彼氏が来て2人でデートに行ったから。
独身アラサー女ヨーロッパひとり旅(笑)とか、歩きながら散々煽ってたから(自虐もしてたけど)、へー、旅前から彼氏いたんだ!と意外だった。んで彼女はサバサバしてる方だから、おっとりってくらい物腰柔らかそうな、優しそうな彼氏を連れてきたのも意外だった。もっとオラオラ系が好きなのかと思ってたし。
のりさんの友達が、よく彼女がひとり旅するの許したね!と言っていたが、彼氏さんは「行くって言うんで…(苦笑)」みたいな感じだったから、尻に敷かれてそうな雰囲気はあったけど、良い感じでしたよ!ええ!
タイミング的に被っちゃったから仕方なく紹介したのか、のりさんゆみさんを安心させたくて連れてきたのかはわからないけど、結婚できますようにと願っております。
2人が去ったあとにゆみこさんが「結婚できるかしらねえ」と言うので、「できたらいいですね、えりこさん何気に良い年っすからね」と返して笑ってたけど、聞かれたら殺されたかもしれないので危ないです。これ読んでたらどうしよう怖い。

2人がすぐにその場を離れたのは得策だったと思う。すぐに大雨が降り出したし、フェスで知り合ったってのはゲロらされてたけど、酔っ払ったおっさんの悪ノリで根掘り葉掘り質問されて大変だっただろうし(といってもキャラ的に聞くのはのりさんの友達だけだったと思うが)。
そこからは60代以上のグループに20代自分1人だけ加わるという謎の構成。そのグループが下北のバーの店先でワイン樽を囲む姿を想像してください。そのシュールさを。
でもその6人での会話も楽しかった。印象的だった話題を挙げるなら…
のりさんの友達が自分に、同世代と話合わないでしょと言ってきたこと。彼自身同級生とかと集まっても仕事とか昔の話ばかりで、今ここにいるような人たちと話している方が、次どこに行こうなど、未来の話をするから楽しいと。

雨が降ってきて軒下に避難した後半はゆみこさんと長く話した。
自分の彼女の心配もしてくれた。先程の会場で慶応大の女子2人と話したというのを教えてくれて、少ないとは思うけどあなたと理解し合える子もきっといるはずと。
大切なことに若いうちから気付けたあなたは偉い等々沢山褒めてもらった。その評価に見合った人間でありたいものです。
本来はえりこさんに渡すつもりだったらしいけど、稲庭うどんも頂いてありがたい限り。

うん、窒息してしまわないように、ゆっくりと歩いていきたいと望んだ自分が歩いているのは、自分の選んだ道。だから責任は全部自分にある。さあ、これからどうなるかな。
気付いたら自分も奴隷のように働くしかなくなっている可能性もあるけど、今のこのやり方はそんなに辛くはないので、ある程度維持してはいたいと思う。

最後は全員と握手をして別れた。皆さん次はポルトガルの道を歩くらしい。何一つ決めていないけど、君の次の冒険を楽しみにしてるよと言われた自分はどこを歩くんだろうね。
とりあえず、楽しい一日だったし、また旅の余韻に浸れて嬉しかった。参加できて本当に良かった。


追記。
友の会のFacebookページで今回の報告会の写真がアップされていた。僕のアホ面もちゃっかり写ってます。
https://www.facebook.com/camino.de.santiago.japan/posts/2364363893590334


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