サンティアゴ巡礼 -フランス人の道- Day 19

4月30日。
目を覚ます→まだ早いよなあ→また寝よう、のあるあるを何度か繰り返しながらも、韓国の平野さんが白人男性に、私歩くの遅いから6時半には出るねと話していたことを覚えていたので、彼女が動き出したのを見てからスマホを取りに行った。しかし、そのスマホを置いていた場所が鍵で閉められていて、6時半にならないと開かないので取りに行けないという罠にかかった。
みんなぼちぼち起き始めて、洗面台のコンセントで充電していた機械(モバイルバッテリー?)を取りに来たシンに何時かわかる?と聞いても、寝ぼけているのか「これはエレコム」と返ってきた。
ケイ君も起きたので取りに行けなかったことを伝えると、今何時だろと。次はスキンヘッドのスペイン人男性に聞いたら6時半と教えてくれた。
ケイ君のも取ってこようか?と聞いてから一緒に持ってきた。時刻は6時29分だったので、ジャストじゃないならもうちょい早く開けてくれてもいいのにと思ったり思わなかったりラ。

テレビではバルセロナ優勝のニュースが放送されていた。

ハートのラテアート。注いでくれたのはハゲたおっちゃんだけど。

朝食後も焦ることなく準備を進めた。白人の顔馴染みのおばちゃんと外かなり寒そうだね…!と会話をしながら。
靴紐はのりさんのアドバイスを意識してみたがどうなるかな。雨具はレインカバーだけつけた。

7時半に玄関に出た。えりこさん、シン、マッサージチンチンマンがその場にはいた。えりこさんは今日はゆっくり行きましょうと、シンはアトデネと言ってくれた。朝はオハヨウとも。
(昨日も思ったことだが、えりこさんはケラケラと笑うから、外人男性たちもたまらないだろうというか、可愛ええ…と感じるだろうなと思った)

霜は降りていたし、霧もかかっていた。なんだか映画みたいな朝やん?
雨も雪も降ってこそいないが、カミーノ最低気温は間違いないだろう。白い息は無限に出せるし、スマホを持つ手も寒くて命がけの撮影である。

荷物のバランスが久しぶりに悪い気がするのは、寝袋とライトダウンの間にサンダルを挟むという黄金の方程式を見つけたのに、今日はライトダウンを着ているからだ。パーカー、ライトダウン、ネルシャツ、長袖Tシャツといった組み合わせ。

快適ではないが暑いときに感じるような不快さはない。それは、この寒さのおかげで幻想的な光景が広がっていたからだろう。


少し進むと集落があった。ケイ君が泊まるはずだったアルベルゲはこの辺りにあるのだろう。

寒すぎて鼻水垂れ流し状態だったので紙ナプキンを鼻に突っ込もうとしていたら、さっき言葉を交わしたおばちゃんが後ろから来た。霧の中で誰か来るとは予想していなかったし、どうあがいても恥ずかしい状態だったので焦った。
後ろから来ているであろう男性2人を含めた、確か3人パーティー。荷物サービスを使っているというのもあるが、彼女はいつもとてつもなく元気で、この朝の歩きも軽快だった。


ゴミ箱に例のブツを捨てていたときに抜かれたけど、先の分かれ道で迷っていたので、こっちだよと教えることになった。
ミスティカミーノですねと言うと「そうね、じゃあ、ウォームアップよ!!」と大声で宣言して、朝から全快で前方の霧の中へと消えていった。元気すぎいいいいーー!!!僕はあまり焦らず行きたいと思います…。寒いし…。



こんな霧だし、車でも来たら危ないよなここと思っていたら一台通った。しかも、それなりの速度で飛ばしていたっていう。

おばちゃんはこの場所で後ろの男性陣を待っていて、その間ぐるぐると回り続けていた。「What’s this?」 「Labyrinth!」 笑うわ。楽しそうな年配者は本当に輝いている。老いないよそりゃ。


8時5分。雲越しに太陽がくっきりと見えた。でもまだ僕は霧の中。


右側の煙突のようなものがある場所はなんだろうと気になっていたら、道もそちらに伸びていたので近づくことになった。


なるほど、食料の保管やワインを造る場所だったらしい。ホビットは住んでないよ!と書かれてあるのがお茶目。


靴紐を結び直すために教会前のベンチに少し腰掛けた。すると水道を見つけたので手を洗おうと近づくと、ある民家から黒い犬(もちろんリードなし)が出てきて怒涛の勢いで吠えられながら近寄られて正直怖かった。飼い主が声で制止してはいたが噛まれなくてよかった。
このプチ休憩の間に後ろの3人パーティーに抜かれるかと思ったが、手前のバルにでも入ったのか姿は見えないままだった。




8時半過ぎ、久しぶりに前方に人の姿が見えた。空も晴れてきた。でも右足首が痛い気がする。気がする。


一応昨晩の転送は成功していたみたいだが、ケイ君が話していたトラブルについて改めて思い出していた。iPhoneとMacを繋いだら、音楽だけでなく、アプリで作った写真のスライドショーのような動画も消えてしまったと言っていた。多分それは自動同期の設定がミスってるはずと昨晩教えたものの、災難続きでてんやわんやになっているかもしれない。機械系のトラブルは本当にストレスを感じるのはみんな共通だろう。
だから、今晩宿が一緒なら、画像取り込みぐらいならすぐにできるだろうし、手伝ってあげようと決めた。向こうからは頼みづらいだろうし、率先してやろう。といっても宿が一緒にならなければ意味はないが。

昨晩見た夢についても思い出した。多分未来の嫁的存在の女性が出てくる夢だった。
彼女が階段から転落して救急車を呼んで、最後は手術台近くで見守るという悲しいオチだったが、その悲劇が起こる前は、長い道を歩いている途中に、泥沼に嵌ってしまった自分に道の上から声を掛けてくれていた。物語自体はメタファー的ではあるが、ただの夢。

リフトのような電柱や雲越しの太陽光の影響で、ちょっとだけスキー場っぽく見える。

先程の洞穴と同じものだ。この辺りの地域で広まっていた伝統的な貯蔵庫なのだろう。

あれ、雨?と思ったら、風に揺られて木の葉から落ちてきた雨粒だった。

少年たちおはよう。


遠回りで歩かされそう…と、教会がある方には行かずそのまま町を突っ切った。でも後ろから少年2人を先頭に彼らのグループが来ていたので、正規ルートじゃなかったらごめんね…と申し訳なくなった。完全に間違った道ではないはずと思いながらも。

合流できたし、問題ないでしょう。

これから暖かくなっていくような時期でなければ、お店でネックウォーマーを見つけたら買いたい気分だ。マフラーでもいいかななんて思っていたら、あ、マフラータオル持ってたわと気付いた。ほとんど使ってない。でも今出すのダルいな…。明らかに汗をだらだらとかくことを想定した実質夏用だし、使い物になるかはわからない。

大きさだけでなく、年季の入ったその見た目からも威厳を感じるモニュメント。

町ではなく街が見えてきた。あれはサアグンだろう。しかし9時15分で8kmと想定より全然進んでいないので、ベルシアノスまでもまだ距離がある。

昨日降ったひょうが溜まっていたが、魚卵みたいで少し気持ち悪かった。視界の先の街で、温かい飲み物でも飲んで休憩したい。カフェコンレチェは飽きてきたからホットチョコでも飲みたいんだけど、確実にないだろうな。

自分がずっと着ていることを忘れていたのか、パーカーのフードを被ると耳が出ないし、少し暖かく感じるということに気付いた。街中だと人目が気になるだろうし、後ろから来る自転車に気付きづらいので危険ではあるが。(実際にこのとき自転車が来て危なかった。今日はまだ今通った2台だけだが、ブエンカミーノと言う声は片方は若い女性の声だった)

いつもの左小指裏が少し痛くなってきた。靴紐で良い感じになったと思っていたのに、まあ、そうだよね。足も疲労を感じている。街のバルに着いて10kmといったところか。

あれ、曲がるということは、街には行かないのか?

いや、先でまた街方向へと曲がってるわ。

後ろから誰かが近付いてきていることはわかっていたが、この場所で自分を追い越したのはえりこさんだった。結構歩くの早いんだな。その追い越された自分はというと、寒さでテンションだだ下がりでございます…。だらだらと歩いております…。

黄色いレインカバーがえりこさん。しばらく彼女が前を歩いていた。

レオンまで65km。


サアグン駅の横を通過。

矢印が左右にあると一瞬戸惑ってしまう。この分かれ道では左が正しい道。

曲がった先でのりさんがちょうど休憩していて、えりこさんとの3人で合流する形になった。あったかいコーヒー飲みたい!と言った後に、あ、今日日曜日かと呟くえりこさん。(月曜日でした)
でもここからはわかりやすい矢印もなかったし、お目当てのカフェもなかなか見つからなかった。

ということで、えりこさんが地元の男性グループに「カフェはどこですか?」と尋ねた。唯一覚えてきたスペイン語らしい。安くて、巡礼者向けのテラス席があるとこを教えてもらった。

教えてもらった通りに店を発見。


メニューは自分の前に注文したえりこさんとほぼ同じだけど、温かい飲み物はブラックティーにした。チュロスはカミーノ踏破してからマドリードで食べようと決めていたので迷ったけど、チョコに浸すタイプじゃないからセーフという激甘判定。サアグン判定。

50€紙幣はごめんなさい…と詫びながら出したら、お兄さん店員は嫌な顔はしなかった。
2人は外で食べていたけど、自分は寒すぎてうんざりしていたので店内で食べた。
同じく店内にいたおじいちゃんと何度か目が合ってお互いにニコニコ。日本で同じことをしたらギョッとされるし、頭がおかしい人だと思われるのだろうが、ここでは別だ。去るときもバイバイと合図してくれた。格好は歩きのそれっぽいが、荷物が小さくて巡礼者なのかはわからなかった。グラッチェと言っていた気はするけど。

えりこさんが店内まで雨降ってきたと教えに来てくれた。マジ…?ですか…?と年上でありながら巡礼者仲間になった相手への言葉遣いが変な感じに。そろそろ歩き始めますとのことだったので、また!と別れた。
それからも自分はしばらく休憩していた。優雅にね、あくまで優雅にね。天気の悪い日は早く着いて洗濯のメリットも少ないし、距離的にもあと10kmちょいだし。

退店して外の様子を確認してみたが、小雨には満たない、傘も必要なさそうな降り方だった。
靴紐を結んでいたら前を通った女の子は泣いていた。怒られている感じではなかったが、なぜ泣いていたのだろう。

カフェに来るまでに道を少し逸れているだろうし、カミーノ道がどこにあるかはわからないがまあ行こう。方角さえ気をつけていれば大丈夫なはずだ。

良さげな雰囲気の教会に近づいた。

建物の逆側に来ると貝がらマークがついた案内看板もあったし、巡礼者の姿も見つけた。

そこまで逸れていたわけではなかったのだろう。すぐに矢印も発見。さよならこの街。

カフェから出る際にポンチョを着たのだが、防寒も兼ねられて着心地は悪くなかった。でもポケットに手を突っ込みづらいので手は冷たい。

また信号のある石橋を渡った。


靴紐を意識するようになってちょいストレスを感じる。ベンチは反対側の歩道にしかなかったのでバックパックを背負ったまましゃがんで結び直した。でもなんかまだ納得いかない。
うーん、気楽に行こうもっと。できる限り多くのことをもっとシンプルに考えて、あれこれと悩み過ぎないで。どうせ痛くなるだろうし。
暑い日にやられたのか、溶けてきているリップクリームを唇に塗った。これでいい。こんな感じでいい。

自分の足は筋肉もないし、正直貧弱だろう。でも頑張って歩いている。いやまあ、そんなに深刻に追い込まれているわけじゃないけど。
誰かと競っているわけでもないし、時間の余裕はありすぎるくらいなので、ハッピーボーイは旅を楽しむ。髭は剃りたいけどまあレオンでもいいっちゃいい。

先日のミーティングで歌った中にもUltreiaという歌があった。その歌はカミーノ巡礼者の中では聖歌のような存在であり、ウルトレーヤという言葉自体はラテン語起源の応援の言葉。頑張れ!と訳してもいいし、進め!でもいい。
そして写真に写っているのは、昨日宿も一緒だった夫婦。元気に笑顔でオラ!と言えば、どちらも笑顔で返してくれる人たち。

11時半過ぎに雨が降ってきた。でもまだ小雨レベルだから大丈夫。大丈夫じゃないのはめちゃくちゃ巨大な毛虫を踏みかけたこと。危ない。新緑の色をしていた。

後ろの夫婦が悪くないペースだったので自然と自分のペースも上がった。抜かれたくないとかってあるじゃないですかほら。

白人のくたびれた金髪の北欧系のおっちゃんとすれ違った。しかしオラと挨拶しても無反応だった。振り返れば彼のバックパックにはホタテ貝が付いていた。うーん…?

正午前にバス停の中で何人かが休んでいて、その中にイケメンがいた。やあと合図をすると、うんうんと頷いていた。

矢印がどうなっているのかわからない…消されているのか何なのか…。

はい、道を間違えました。矢印も道も2つあって、右側というか奥の道を選んたのだが、途中で、いや…正しいのは手前の道っぽいな…と不安になり、そこへ戻れそうな道を選んだら高速道路?に入ってしまった。

ガードレールを越えて戻ろうとするも、ジャンプではどうにもならない幅の水路があり、結局引き返した。土で滑ったりもしたし、こういうのは地味にダメージを食らう。

正しい道に戻ると、さっきの夫婦が前を歩いていた。恥ずかし。

今日は歩くのが物凄く遅く感じる。左膝も違和感があるし、疲れてるんだろうな。でも肩はめちゃくちゃ痛んでいるかといえばそうではない。わがままボディだ。

うーん、ヘルスケアを確認すると18.6kmだった。20いってなかったのか、微妙だな。

強くなってきた雨の中、レインカバーが上までしっかりと上がりきっていないことにふと気付いた。浸水してなければいいけど。
iPhoneは防滴になったはいいが、やはり入力しようとしたら雨粒に勝手に押されることはある。



左は鉄道が、右には高速道路が伸びていた。そしてやたらと長く感じる道だった。 ひたすら歩き続けながら、みんなすごいわ、この道を歩いてるんだもんと他人事のように称えた。

フードを被るようになってから鼻をかむ頻度は減った。器官レベルで体が喜んでいる。

まだ線路があった。こちらは新幹線的な存在だろうか。

建物が見えてきた。あれでいいよ、あの町でいいよと思っていたら、その目的の町だった。まだ集落は遠いが。

12時50分前に雨がかなり強くなってきた。もうちょっとなのにー!

アリサー!

この坂を上りきればきっと町だ。

坂を上り終えると建物が見えた。これはアルベルゲなのか?と思ったが看板も出ていないし倉庫のようだった。(でも今Google Mapを見たらアルベルゲと書かれている)

こっちの町は家々が集まって作られていて面白い。日本ではもっと点々と民家が建っているが、こちらは町から離れた家なんてほとんど存在しない。また町名にカミーノと入っているのもユニークだ。(カミーノが入った町名自体はたまにあるけど)

バルっぽいが、アルベルゲと書いてあったし入ってみた13時。

とてもバー感は強かったが、ランドリールームが見えたので宿なのだろう。しかし受付がとても忙しそうだった。
その眼鏡を掛けた店員のお姉さんに、カウンター越しにアルベルゲは泊まれる?と聞いてみたら、悪いけど5分待ってくれる?何か飲む?と聞かれた。初めての対応パターンだ。泊まっている人はどれくらいいるんだろう。

待っている間、可愛い雰囲気の韓国女子やシンの姿を見つけた。これなら安心だ。でも韓国女子はよく見たらあんまり可愛くなかったし、煙草を吸う姿はかなりおばさんくさかった。声や喋り方は可愛いんだけど。 
 
お姉ちゃん店員にもう大丈夫よと呼ばれて、支払いを済ませて、中庭的なテラス席を抜けて、別館のアルベルゲの方に移動して、そこの玄関で受付をした。もしかしてスタンプ押してもらえない…?と不安になっていたので安堵した。
バーにいるときは愛想悪いのかなと思ったがこのときは感じが良かった。先程は忙しくて余裕がなかったのだろう。

えりこさんとのりさんもいた。バーからすぐ戻れた?とのりさん。えりこさん曰く、一回元の場所に戻ってからまた道を探したらしい。自分は教会を目指しながら歩いたが何のロスもなかったな。
ベッド番号の指定はなかったが、もう下は空いてなかった。選んだとこはえりこさんとのりさんの隣で、下はあの背の低い女子だった。韓国女子ズの1人は、アレマンヤに瓜二つのおばちゃんが下を使うとのことで、下から上に移っていた。

枕元にはコンセントもライトもあったし、紙のシーツも貰ったし、ベッドにはカーテンも付いていた。Wi-Fiもきちんと繋がる。神かな? 女子バスルームにはドライヤーもあるっぽくて、えりこさんとも話した。神かな?と。
毎日こんなとこなら快適なのになと思った。先に感想を言っておくけど、多分全アルベルゲの中で最も快適だった。教会併設だとスピリチュアルな体験ができたりするが、使い心地という評価ポイントでここを超えるアルベルゲはなかった。宿の名前はBercianos 1900。

のりさんとシンのあとにシャワーを浴びた。のりさんは朝忙しいから今ヒゲを剃っておこうと。
でもバスルームの照明の自動消灯が(5秒とかで)早くて、シャワーを浴びていてもすぐに消えるから、手じゃなかなか反応しないし、ずっと頭を振っていた。ダンサーインザダーク、シャワーインザダーク。ビョークもあんぐりやで…と彼女の曲を口ずさんだ。

のりさんにWi-Fiのパスワードを教えた。雨に打たれてから自分のiPhoneは調子が悪い。どうしよう…と悩んだが、再起動したら幾分マシになった。

このソファがある場所でえりこさんが煙草を吸っていた。見た目的に喫煙者とはまったく思っていなかったから意外だった。カミーノは喫煙者が多いな。シンも吸うし。

洗濯をしていたらえりこさんが、あれだったら乾燥使います?と声を掛けてくれた。
この巨大な乾燥機を3人の分と一緒に使わせてもらえることになった。でも機械がきちんと作動せず、コイン返却を押しても硬貨が戻らず中で詰まっていた。
これだからスペインは!とえりこさんがお姉ちゃん店員を呼んできた。でもお姉ちゃんにとっても初めてのことらしい。マスターキーで鍵を開けてからカチャカチャやっていたけど、それでも上手くいかず、うーん…。
長くて細いものを探しているとのことだったから、ベッドルームに急いで折りたたみナイフを取りに戻ったけど、戻った頃には直って正常に作動していた。

そのあと、シンに何か食べないの?と聞かれた。はい、迷っています。彼はパスタを食べたらしい。
どうしようかなとバーの方で悩んでいたら、のり&えりこがビールを飲んでいて、のりさんはサンドイッチも食べていた。そして、それがデカいからと分けてもらえることに。えりこさんにあげようとした分もお腹が空いてないからと自分に回ってきた。ありがとうございます。

店内BGMはBloc Party, The Stone Roses, The Vaccinesなど自分のど好みの曲が流れていた。全部iPhoneに入っているけど。

シンも来て、彼もビールを注文した。自分もなんか頼んだ方がいいよなと思いつつ、さっきコーラを飲んだし、このみんながビールを飲む状況でスモデナランハは頼みづらいな…と辛い状況。
そこから4人でお喋りしていた。今日は日本人2人とも、いつもとは違い休憩一回で宿まで来れたらしい。いつもは1時間近く休憩して足を乾かしたりすると。
さっき店内にいたハンガリーの子はここに泊まれず、次の町まで行く流れになっていたみたい。昨日はある親子が泊まれず(次に行くより戻った方が宿が近いから)前の町まで戻ったと。早めに着くことは重要だ。そういうのも含めて考えた方がいいですねと言った。今までは大丈夫だったけどわたしたちもいつかはあるかもとえりこさん。
(この宿にはまだ空いている部屋もあるみたいだったが、多分メイキングをしていなかったか、もしくは巡礼者が基本的に泊まるドミトリー的な部屋ではなかったのだろう)

シンからどういうスペルだと聞かれて彼のスマホにアルファベットで名前を打ち込んだ。そこには他の人の名前もいろいろと入っていた。予想通り、スエムネ?珍しい!と隣に座っていたえりこさんの反応があった。えりこさんもなかなか珍しい苗字だったけど。
そのえりこさんが、シン!と自分の方を見ながら呼びかけてI’mシンと言うと、シンはNow I’mリオ。インスタ持ってる?と聞かれて交換する流れになった。鍵垢のシンからもフォローされた。えりこさんはどこかで1日ずれたみたいだけど、毎日カミーノの写真を簡単な文を添えて投稿しているらしい。純粋に凄いなと思った。自分は投稿したい気持ちはあっても、どうしても面倒に感じるし。

のりさんから、カミーノ前に寄ったというルルド(フランスの南西部の町)の写真や映像を見せてもらった。一番綺麗なのは引いて撮ったポストカードだったけど、その息を呑むような絶景のろうそく行列に彼も参加したらしい。
ろうそくに火を灯してルルド大聖堂を一周したり、アヴェ・マリアの大合唱があるみたいだが、事前に知っていたら自分もそのピレネー山脈の麓の町に寄ったかもしれない。
その町への信仰は聖母マリアが起こした奇跡に由来するらしく、車椅子や担架に乗った人が大勢集まるのもそういった奇跡が信じられているのだろう。日本でも、触った場所が治ると言われている仏像などがあるように。

乾燥が終わったら、まずレディーのえりこさんが取って、後からメンズが取るという流れ。乾きは完全じゃなかったので(それでもありがたいことに変わりはない)、晴れ間が覗いていたし、のりさんもこれから晴れて暖かくなるでしょと言うのでスタンドに干した。

部屋に戻ると、緊急用のお米をえりこさんが見せてくれた。「美味しいんですか?」「わかんない!(笑)」 それからお手紙書いてきまーすとどこかへ行った。みんないろいろしてるな。
下の女子も何か書いていたので、日記書いてるの?と聞いたら、その通りだった。彼女はマイ枕カバーを使っていた。賢い。
めちゃくちゃ良い香りを漂わせてシャワーから戻ってきたら、タオルをここ(自分のベッドガード)にかけていい?と聞いてきた。いいよー、ってかどこから?と会話巧者。イタリアだったのでボンジョルノ!と言うと笑っていた。でもドイツかと思ってたのに全然違って笑う。あんま喋ってるとこ見たことなかったから…うん…。その後ボディクリームを塗ったりもしていて、なんか女子のまま歩き続けている子はすげーな、尊敬するや…と脱帽。

Wi-Fiがちと遅くなってきた。人が増えたからかな。韓国の煙草女子はメンソレータムの匂いが強くて周辺がその匂いで満たされていた。これはグッとこない。
誰かが音楽を流していた。下の子がイヤホンをしないのは知っているが誰だろう。シェイバーの音が一瞬バスルームから聞こえた。毎日共同生活のような状態なので、様々な生活音が強制的に聞こえてくる。

少し寝て、起きると、えりこさんとシンがスーパーから帰ってきていた。のりさんの分も買っていて、朝食分なのか自炊をするのかとかよくわからないけど、この辺の距離感は難しいよな。インスタは膝を痛めているおばちゃん含めてカミーノファミリーって書いてるくらいだし。
そういえば、韓国人女子は何人もいるけど、ケイ君はいないから例のトラブルを手助けしてあげることもできない。(平野さんもいないので彼女に託しているのかな)

ここで宿に着いてからのメモまとめが追いついた。18時過ぎ。ディナーの時間は何時なんだろうか。19時かな。メニューが書かれた黒板には書いていなかったからわからない。
えりこさんも行くらしいし昨日から考えているけど、サンティアゴの約100km先にあるフィステーラやムシアという町に行くとしたらどうなるだろう。
今までの計画だと100km先へ歩くには日数が足りない。ちょっとずつ一日の長さを伸ばしていくしかないだろうか。でもサンティアゴという大都市ではちと観光もするだろうし悩ましい。その町へ行かなかれば後悔するか?わからない。レオンで決めよう。

シンも剃っていたから自分もヒゲを剃った。野郎どもばかりなら、まあいいかとなるかもしれないが(遍路のときも剃ってはいたが)、この旅は女の子がいるしね。ここ数日はえりこさんもね。逆に女性側もそういう面は少なからずあるんじゃないかな。特に若ければ若いほど。なんていうか逆女子校理論。
消える電気と戦いながら剃った。すぐお湯が出てくるのはグッジョブとしかいいようがない。そのときバスルームにいたおっちゃんと電気ネタで笑った。もう一人いたトイレ後に手を洗わない方のおっちゃんは駄目。そういうのノーサンキュー。

うわ、雨降ってるしと気付いた。のりさん予報は外れだ。でも洗濯物は誰かが避難してくれていたありがとう。と思ったらシンだったのでハグしといた。

天気予報を見たら、いや、明日も寒いやん…。今日までじゃない…。マイナスとかなってるやん…。とまあひどいものを見てしまった。
ってか明日から5月か。4月が終わるんだな。

6時50分頃に1階に降りて、またソファで煙草を吸っているえりこさんから、何か食べますか?と聞かれたので、7時になったらディナーっぽいの食べようかなあと。どうされます?と聞き返す形になった。どうやらここで食べるらしい。
じゃあおじさんたち(シンは若いけど)呼んできますと部屋がある2階へ上がったので、先に店の方に行って席を確保しておこうと思ったが空いてなかった。わりとすぐに出入り口手前の席が空いたが。

カウンターのチェアが自転車風になっていて小洒落ている。

ディナーのメニュー。

カルボナーラ。

頼もうとしていたヒレ肉はなかったので、豚の頬になった。ほっぺたて。

3人は先程スーパーで買ってきた手持ちのワインを飲んでいた。飲まない自分に対してシンは、日本でも飲まないの?アレルギー?と質問してきた。まあ、アレルギーみたいなもんだけど。
シンは一人っ子でお酒を飲んでいるところを母親に見つかると怒られるらしい。だから家では毎日は飲まないのでオンリーカミーノと。でも結構みんなの分のワインを奢ったりするらしい。香港では80€するようなものが安く買えるらしいから、問題ないよ!と笑っていたけど。
えりこさん曰く、ワインの蛇口のところは搾りたて感はあったけど、味は美味しくなかったらしい。それを聞いていたのりさんは、あんなとこで美味しいの出さないよと。

この時間でもまたいろんな話をした。香港の料理はどこも同じ味だった。山椒かな?何だろう…と言うえりこさんに、シンが違うよ!同じじゃないよ!と否定していた。
のりさんは去年ピースボートの船で世界一周をしたらしい。ポスターは貼らずに。ほうほうほう。
えりこさんの耳栓がガチのやつという話も聞いた。ブログで耳栓はケチるなと読んだらしく、でも完全に音をシャットダウンするから、今朝シンに体を揺すってもらわなかったら今ここにいないですよと。
シンは序盤から一緒に過ごすことが多いので日本語がだんだん上達してきたらしい。でも考えてみたら日本人の中に香港人が普通にいる状況なんか面白い。

えりこさんだけが頼んだスープがかなり美味しいということで、ちょっとこれ飲んでみてと勧められて飲んだら、めっちゃ美味しい…と呟くことになった。でしょ!!今までのとは全然違うと。
のりさんからりょうはスペインの料理は満足してる?と聞かれた。まあ…想像してたよりは下だった…。みんなは満足してないらしい。うん、そうだよね…。
のりさんはサラダをくれた。野菜をもっと取りなさいと。優しいおじさんや。
いつもやってるんだろうけど、これ食べてみてとかこれあげるみたいなやり取りがあって、楽しかったし、こういうのもいいなと心から思った。

えりこさんはこのディナーが始まる前に、席は暖かい方(入り口寄りではなく暖炉近く)に座ってとか、他の人が開けっ放しで寒かったのでドアを閉めに行こうとしたら、わたしが行くとか、どんだけ淑女なんだ…と感動した。知識も豊富だし、こんな日本人女性との出会いがあるとはまったく想像していなかった。
彼女は以前ベジタリアンを目指したことがあったけど、環境の整っていない日本では無理だから、出されたものを残さず食べるという目標に変えたらしい。
食後にシンとシェアしてアイスを食べるとカウンターに買いに行ったえりこさんの後ろに並んでいたら、自分の持っていた分のアイスも支払ってくれた。お、お姉様…!!

しかしデザートはあったというオチ。えりこさんは店員になんで言ってくれなかったのー!と言っていて可愛かった。(今までの流れからデザートはあるはずと思っていたけど、隣の席の人たちはデザートなしで席を立って部屋に戻っていたので、あれ…ないのかな…と何も聞いていなかった)
ライスプディングとコーヒーの何かとアイスクリームがあって、もうアイスあるしな…、でもコーヒーは苦手だし、ライスプディングはそんな美味しくないし…でもライスプディングを頼んだが、ライスプディングを知っているのは自分とえりこさんだけで、のりさんがどれどれと興味を持っていたので交換することになった。

えりこさんはコーヒーのを頼んだけど、選択肢を与えた店側が、やっぱりコーヒーのはないと言ってくる適当さ。結局自分と同じチョコのアイスにしていた。でもこのアイスがいったい何年冷凍庫に入れてたんだってくらい硬くて、食べられるようになるまで時間が必要だった。
シンにソーメニーアイスクリームと言われたので、アイスクリームフェスティバルと返した。アイスは好きだけど正直完食するのは大変だった。えりこさんは諦めて残してたし。

ここは朝食8時からとのことで遅い。シンはスーパーまた行くらしいよとえりこさんが教えてくれたので、彼を追いかけた。

羊移動してる!とさっきえりこさんが言っていたけど、その様子を近くで見ることになった。しかし震えるほど寒かった。


スーパー(といっても本当に小さな町の商店って感じの店)で明日の朝食用のちょっとした買い物を済ませて、シンと会話しながら帰った。
「宗教は何?」と聞かれて「多分、神道と仏教」と答えたが、神道も神社も通じなかった。今までも神道を説明する場面はあったが、難しいのでもう西洋人にはJapanese original religionと言うことにしている。
ちなみに、シンは?と聞くと「仏教徒。でも、ここにいる」とキリスト教の旅をしていることをネタにしていたので笑った。「大丈夫、自分だって同じようなもんだし。僕らはreligious bitchさ」とフォローしたのだが、このReligious Bitchという言葉が浮かんできたことに関しては、我ながら言語センスにあっぱれだった。

アルベルゲに戻って、歯磨きをしていたらなぜか男子用のバスルームにイタリア女子が入ってきて、シンは慌てて退出した。
イタリア女子と並んで歯磨きをすることになったけど、彼女の髪の毛に歯磨き粉がついていることに気付き、それを指摘するとOh…という反応だった。洗面台の上に新しい紙が置いていたからそれで拭き取ってあげた。はい、イケメン。髪に触れることになったし、こういうとこから恋は始まるわけですね。
まあ、一つしかないトイレには浅黒い肌のオーストラリア人がいて、なんか臭かったけど。

明日は距離が長いから、3人は早く出発するらしい。自分はどうしようかな。余裕を持って優雅に歩くという目標と、一緒にいたら楽しいだろうなという心情を天秤にかけなければいけない。

日本語が少しできる韓国女性の服が見つからないというトラブルがあった。フックに吊るしていたのを知らないかと何人かと話していた。しばらくして彼女にジャケットは見つかった?と聞いてみたら、なくなったのはポンチョということだった。でも残念ながらまだ見つかってないと。可哀想に…。
自分も同じように近くで吊るしていたので、確かに何かがかかっていたのは見た。でも誰が盗むんだろう。この部屋は巡礼者しか入ってこないし、巡礼者が盗めば明日使えばバレてしまう。どういうことだ。食事中に地元の人でも入ってきて盗むということがあるだろうか。

のりさんから、世界一周のビデオ見る?と聞かれた。別に見なくてもよかったが、いや、結構ですとは言えないので見ることになった。もう寝始めた人もいる部屋じゃあれだからと階段の踊り場のような場所で。
12,3分あると説明されて始まった動画(ほとんど写真のスライドショー)は風景だけじゃなく、たまにのりさんの自撮りや、送られてきて保存したのであろう初孫の写真も混ざっていた。家族の話はのりさんから全然出ていなかったので、奥さんとかいるのかなと気にはなっていた。孫がいるということはとりあえず結婚はしたわけだ。
まあ、この動画がですね、パート1からパート4まであったんですよ…。ヨーロッパから始まって最後のハワイまで、本人による解説付きでね。相手が喋ってるのに無言も悪いし、相槌を定期的に打つ必要もあった。
正直、立った状態で見ていたこともあり、早く終わらないかな…とずっと思っていた。でも相手が楽しそうに見せてくれている物を途中で、もう結構ですとも言えない。お世話になってるし…と即席の使命を全うした。
動画が終わって、やっと寝れるー!と思って部屋に戻ったら、そういえば若者バージョンもあるから!とまた部屋の外に呼び戻された。
BGMの音量が大きいから絶対部屋の人に聞こえてるよ…しかももう9時になってる…と内心げんなりといった心理状態で見ていた。しかしその動画がまた長かった。しかも第2弾まで…。
その動画の制作者はのりさんが旅中に知り合った若い女の子なのだが、自分にとっては究極に関係ない赤の他人。(しかもピースボートに乗る同世代とかぶっちゃけ…その…ry)大学生みたいなノリで、若者同士とても楽しそうにしている動画だったが、当然彼女が誰なのか全然わからないままだった。誰なんだ君は。
多分LINEのタイムラインにアップしている動画で、第3弾もあったみたいだけど、Wi-Fiのダウンロードが追いつかず第2弾の途中で鑑賞会が終わって助かった。
見せてもらったのはフィヨルドやグリーンフラッシュなど綺麗な写真が多かったし、誰かに楽しかった旅の思い出を話したい気持ちというのもわかる。でも正直、遍路の初日の夜がフラッシュバックしてきた。無下にできない相手からの時間という意味ではまったく同じだろう。なんていうか、まあ、疲れた。

予想外の時間を過ごしていたので、慌てて残りのメモをまとめていたら10時を過ぎた。早起きしたいけど、それから30分経っても眠気はやってこない。ワインを飲むというのは安眠のためにもいいかもしれない。飲んだら死にそうになるのでその効果は得られないけど。
この3人ともレオンでお別れなんだろうな。また1人になるかと思うと寂しい。孤独な巡礼もありだけど、やっぱり楽しいのがいいな。カミーノだし。
眠たくないけど寝ないと。部屋は暖かいからライトダウンを脱いだ。多分寝袋からも出ることになるだろう。


今日の歩み
Terradillios de los Templarios – Bercianos del Real Camino / 23.5km


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