5月6日。
6時に一瞬で起きれたはいいけど、夜通し灯っていた自分のプラグの青いライトが本当に申し訳なくて、死んで詫びたいくらいの気持ちだった。ちゃんと眠れていてほしい。
どこかの部屋からはあの韓国人おっさんの咳が聞こえた。同室の人は地獄だな。カッコウの音も聞こえていたが不快感は雲泥の差だ。
暗い部屋の中で準備を進めていたら、ぼちぼちみんな起き始めて、男4人でグッドモーニング。
40分に入り口付近の明るい場所に移動した。誰かのカミーノマーク入りキャリーワゴンが置かれている。
センサー式の照明だったので、時折消えては手を動かしながら朝食を食べた。でもドーナツが美味しくなくて、菓子パン系も当たり外れが激しいなと。
室内で朝まで干していた洗濯物の中から、トレッキングソックスをバックパックにぶら下げて歩くことにした。
55分頃にカナダ人男性が出た。ブエンカミーノ!自分は準備体操をして、7時に出発した。
気温は当然寒いし、左足の付け根が痛い。今日も30kmコースだ。体よ、頑張ってくれ。
素晴らしい滞在だった。モデルプランはあくまでモデルの行程に過ぎない。隠れた良き町は存在する。(ここはそんなに隠れてないけど)
しばらく会えなくなるえりこさんに会ってちょっと話しておきたい気持ちはあったけど、外からは誰も見えなかった。アルベルゲの雰囲気的に朝食もみんなで食べそうだし、今日の彼女の進む距離はそれほど長くないからまだ出発はしてなさそうだが、まあ、こんなときもある。
事故でも起きたのか不自然な位置に停車していた自家用車とパトカーが見えた。
そして今日も果てしない道が続く。
瞑想で思い出したが、自分が遍路の帰りに教えてもらった瞑想合宿に行かなかったのは複数理由はあるけれど、最たるものはきっと、瞑想で得られるであろうものが、多分遍路中に得られたものに近いと思ったからだ。
肉眼では人の姿が見えなかった。方角的にアストルガに向かってはいるが、この車道は歩きの道ではないかもしれないと不安になった。事故に気を取られて見落としたのだろうかと。だが歩き続けていたらカミーノの看板を見つけた。
歩きのマークも発見。大丈夫そうだ。
今朝、暗い中で準備を進めすぎたせいで荷造りに不安要素はある。足が痛くなるのが怖いが、左肩は既に痛い。
朝からずっとアスファルトは負担も大きいのでこういった道は助かる。でも肩がかなり痛い。最高な一日の次の日として、なかなかしんどい日になりそうだ。
月はかなり欠けてきたけれど、今朝の朝焼けはまた特別美しい。
澄んだ水が流れる川に薄っすらとかかる朝靄。きっと、こういう光景を目にしたときのために、幻想的という言葉があるんだ。
痛みというトラブルはあるが、昨日とは違い、8時半になるまでに5kmは稼げるだろうからその点はマシ。
そしてやっと巡礼者の姿が見えた。でも今朝はそんなに早く歩いてないにしても、カナダ人男性が全然見えてこないのは意外だ。どこかで朝食を取っていて知らぬ間に追い越した可能性はあるが。
あまり効果は望めないがこのベンチで荷物の配置を変えた。日焼け止めは塗っていないが、サングラスは掛けた。
5分休憩の間ここに座っていると、右の町へと進む車のドライバーが手を挙げてくれた。8時5分再スタート。
車道の速度制限は100kmだったので、車も飛ばしていたし、おまけに体のすぐ横を通るから怖かった。(写真は合流前)
あの穴は何だろう…?と思っていたら数匹のうさぎがいた。野うさぎの巣穴だったのか。可愛い。
似たような場所が他にも複数あり、完全に野うさぎの生息地だった。昨日の犬タイムの続きのようでまた癒やされた。
道路を横断して反対側へ。
肩はマシになったような気もするし、変わっていないような気もする。
おじいちゃんを追い抜いた。多分どこまでかを聞いてきていたので、エルガンソと答えたら、Oh…El Ganso…ってな反応だった。それからアルベルゲがなんとか言っていたけど完全にスペイン語だから理解はできなかった。きっと昨日のカナダ人男性と同じく、アルベルゲが一つだから気をつけろといった助言だと思う。
でもそのエルガンソという町を昨晩グーグルマップで調べていたら、アパートメント表示の建物にもアルベルゲと名前に入っていたから、それが正しいなら二軒あるはずだ。最初に貰ったアルベルゲリストでは一軒なので、行ってみないとわからないが。
この辺りには小さなベンチが定期的に置かれていた。おもてなしかな。
時刻はいつの間にか8時半。距離は5kmになっているが、いつものように実はもっと歩いている状態だったり、もしくは次の目的地までそんなに距離はないという計測ミスだったら嬉しいな。どっちにしろまだ20km以上は歩かないといけないけど。
やっぱり肩が痛い。でもこれは巡礼の日々が再開したという証拠。楽がしたくて歩いてるわけではないし、素晴らしい景色や体験を、より素晴らしいと感じるために必要な痛みだ。明日の山登り+距離稼ぎは不安を覚えるけども。
今日は精神力の日だ。あまり上がらないスピードでひたすら前へ、遠くへと、歩いて行くしかない。
木に隠れたベンチに座っていた夫婦2人と挨拶をした。その前後に食べた日本から持ってきていたラムネやなぜか一切れ残っていたチョコが美味しかった。電子銃みたいな鳴き声の鳥がまた近くにいる。
9時、なんだか疲労を感じる。でもこんな早くから休憩していてもキリがない。朝食が足りなかったかな。
現在の距離は9km。良しとしたいところだが、途中のチェックポイント的な街であるアストルガは出発のオルビゴから16kmはある。
また横断。
十字架が見えてきた。この付近をジョギングする人の姿もあった。
大きな街だ。あれがアストルガか。大聖堂もあるチョコレートの街として素敵な場所みたいなので、本当は泊まりたいんだけど日程の都合上泊まれない。
どうやら手前の町がSan Justo de la Vegaで、奥がアストルガのようだ。
坂を下りる。自転車を押して上ってきている男性は楽器を持っているので、多分休憩をする巡礼者向けに演奏をして小銭を稼ぐのだろう。
自転車カミーノから追い越されるタイミングでブエンカミーノと言われた。同部屋だった男性ではなかった。地元の人たちからもブエンカミーノと声を掛けてもらった。みんなありがとう!
あの小さなおばあちゃんだ。夫婦で歩いているのかと思っていたが、一人で頑張ってるんだな。おまけに歩くのも結構早いんだよなこのおばあちゃん。
調子はどう?と聞かれた。お互いに良い感じ。Buen Camino!と言うとBuen Camino you too! We’re going well!と返ってきた。元気が良いって素晴らしいことだ。
曲がれという矢印の直後に直進を指示されたり、水場から立て続けに水が出なくても問題ない。
あのトランポリンを撮影していたおばちゃんがカフェテリアで煙草を吸っていた。そう、えりこさんが怪我を悪化させた原因のあのトランポリンです。(元々痛みがあったのを更に悪化させて腫れてしまったみたい)
面識のある人たち(の中でゆっくりめor少し休憩を取っていた人たち)が徐々に現れ始めた。つい先程までのアストルガにはもっと知り合いがいただろう。
この黒い橋はかなり揺れるので怖かった。
チョコの街でチョコを食べないというのは仙台で牛タンを食べないようなものだ。でも靴を脱げるショコラテリアはないだろうな。適当なところがないかな。
疲れた。ダレカタスケテーってな具合。そんな状態のときに、TOKYO ISOなんたらと書かれたTシャツを着たメタボの地元おっちゃんとすれ違った。
10時の鐘の音が聞こえますようにと願っていたが、遠かったので微かに聞こえただけだった。
帽子を取ると髪の毛がピンとはねていることに気付いた。恥ずかしいからやめて。影で気付いてから、スマホの内カメで確かめると、影の通りに間抜けなことになっていた。
多分このまま街への登りが始まるだろうと予想していたが、道は左折して、なんであんな高い場所を人が歩いてるんだ?と注意深く見てみたら歩道橋だった。
って巡礼者も渡るんかい。
自転車も来た。こんなくねくねした場所を結構な速度で走りながら。
アストルガだ。
iPhoneの画面のヒビが影響して、変換する前に改行を押されてしまう。買い換えたいな。でも修理だって難しいだろうな。写真アプリのエラーも多くなってきて地味にストレス。
ぐるりと回るよう矢印は描かれていたが、地元のおっちゃんの真似をして廃線の線路を横切った。
隠れ矢印も発見。
右に見えている大聖堂からは離されるし、体も特にどこかが痛いわけではないが、尋常じゃない疲労感だ。そしてその状態で急な坂を登らされる。
サン・フランシスコ教会。
横には遺跡のような空間。
最初の店ってどうなんだろう、吟味すべきだよなと思ったけど、もう疲れ切っていたからそのまま店内に入ることにした。
朝食セットがいつものカフェラテではなくチョコラテだ。さすがチョコレートの街。
時刻は10時半だったが、まだ朝食タイムで助かった。優勝でしょこの組み合わせ。そして甘すぎないホットチョコにクロワッサンを浸して食べるこれまた優勝スタイル。
小さな姉妹が歌って踊る姿が可愛かった。他の店では固形のチョコを買いたいな。あとスポーツドリンクも。
あの撮影おばちゃんが通ってから、小さいおばあちゃんも来た。知り合い続きで面白い。次にえりこさんが来たらもっと面白いけど、こんなに早く着いてもアルベルゲが逆に困るから来ないだろう。
急に鐘がひっきりなしに鳴り出して、大勢の人も集まって来た。なんだなんだ。ツアーか何かか?
アストルガの鐘 pic.twitter.com/XQBuDWeiaA
— 末宗凌 (@SuemuneRyo) 2018年12月8日
今日もまだまだ先は長い。疲労度から考えればもっと休憩していたいところだけど進まなくちゃ。
食器を返しに行こうとしたら入り口を杖で通せんぼして店内を掃除していた。日焼け止めを塗って再スタート。
先程集まっていた団体。
演奏隊のような人たちの姿もある。何か催し物でもあるのかな。
広場を囲むようにチョコレートのお店が立ち並び、どの店のショーウィンドウにもチョコレートが飾られていた。
このアストルガという街の名前はローマ皇帝アウグストゥスに由来があり、すべての道がローマに通じていたように、古くから主要都市として栄えており、当時の遺跡が現在も発掘されているらしい。(さっきの遺跡はテルマエかも)
チョコレート博物館まで建てられるくらいこの街がチョコの街として有名になった理由は、アンダルシア地方のセビージャからスペインを北へと横断する銀の道(巡礼ルートの一つ)がこの街に通っていて、カカオが持ち込まれていたから。
食べられるチョコを調達したい。でもいろいろ店がありすぎて、どこがいいのか、どこまであるのか、わからなくて迷った。しかしこの店に入った。
あ、アイス系食べたいな…と頼んでみたが、なぜか今はダメとのこと。まあいいや。店選びを失敗してチョコ要素が薄い商品が置かれていたが、どうせ自分用だしと小さめの板チョコとスポーツドリンクを買った。あとは大聖堂の写真を撮るだけ。
ベンチに腰掛けてパーカーを脱いだり、今買った物をバックパックに入れていると、ボーイズの1人が今まで見たことのない大人と一緒にいるのを見つけた。多分こちらが本当の家族なのだろう。彼は妹と追いかけっこをしていた。きっと彼の冒険はここで終わりだ。お疲れ様。
広場には昨日のイヌベルゲでゴジラ…と呟いていたお兄さんもいた。
先程の正しい答えはマーチングだった。常時やっているわけではないだろうし、ラッキーだな。
チョコレートの町のマーチングバンド pic.twitter.com/8GaXj7FaVM
— 末宗凌 (@SuemuneRyo) 2018年12月8日
チョコレート店以外にもお菓子屋さんも充実していて、建物はそうでもないが、どこか甘くメルヘン的で可愛らしい街だと感じた。普通のカフェでもチョコ系のメニューの看板や貼り紙が目に入った。素敵やん? 長いことマーチングの音色も聞こえていたし。
そして大聖堂。入れるかなー。時間帯的にどうかな。
よっしゃ、入れる…!しかも無料で…!
予想していたより狭い内部を一通り見て回った。
祭壇近くで写真を撮っていると、警備員に声を掛けられて、撮影禁止で注意されたのかなと思ったら、座ってとのことだった。
お祈りしながら泣いている年配の女性の姿が印象的だった。どんな理由で泣いていたのだろう。
正直な感想を述べると、中から見るより外から見るのに適した大聖堂かな。うん、本当に外観は壮大だし、今まで見た中で一番かもしれない。
外には1.5Lくらいのペットボトルにスモデナランハを入れて、バックパックのサイドポケットに詰めていた男性がいたけど、真似しよかな。
大聖堂に立ち寄っている巡礼者は多かった。でもこの時間帯にこの街にいる巡礼者は今日はどこ開始で、どこまで目指すんだろう。自分と同じ人はそう多くないだろうし。
また小さなおばあちゃんが前を歩いている。
腕なんかも皺だらけなのにここまで歩けているなんて感服でしかない。心から尊敬する。構想30年でカミーノを歩いているゆみこさんもお見事だけど、女性だって何歳でも輝けるんだ。
ちょっと話そうと思っていたけどイヤホンをつけていたからHiだけになった。でもこれが今生の別れだったとしても、僕は彼女のことを忘れない。
リストの一番最後(上)だが、エルガンソという町の名前の表示があった。頑張ろう。ちなみに今自分の頭の中で流れている曲はCum On Feel The Noize。
そろそろ明日登る山が見えているかもしれないな。いや、既に見えているだろうか。
若い女性巡礼者とすれ違った。昨日えりこさんとも話したけれど、すれ違う巡礼者には二種類いて、片方は忘れ物に気付いて前の町まで沈んだ顔で戻る人。さっきの彼女の表情を見れば忘れ物ではないことは一目瞭然だった。彼女が歩いているのは帰りの道だ。
左!真っ直ぐ!右!三方向も示さないで!
時刻は12時。20km手前辺りだろうか。あと残すは10kmだ。
ムリアス・デ・レチバルド。
3人でコーナーキックのようなシチュエーションでサッカーをしていた少年たち。
245km。つまり、500km。
休憩は今必要ないので迷ったけど、おしっこしたい…と飲み物でも頼むことにしてバルに入った。しかし店員がいなくて、トイレから出ても無人状態だったからそのまま去った。なんかごめん。
果てしない道。でもアルベルゲに寝られるベッドがあるのなら何の問題はない。でも何時に着くだろうな。午後1時台に着きたいところだが。
後ろの2人のペースが速くて気になっていたので、写真を撮っている間に抜かせた。
鈴虫のような鳴き声が聞こえたあとに、エルガンソまで5kmの看板。
あれ、昨日のカナダ人男性かな?とそれらしき後ろ姿を見つけ、アストルガには泊まらないの?と聞こうとしたら人違いだった。頭髪の薄さまで確認したのに。
建物が見えてきた。でもまだ5kmには早い。
やはりエルガンソではなく、サンタ・カタリナ・デ・ソモサという町だった。ってか右側の森の中には何が棲息しているんだろうな。
山が近づいて来たことを実感する。シン情報では雪が積もっていて、岩もゴロゴロとしていて登りづらいとのことだった。その明日の登りのためにもう一つ町を進んでおかないとな。
写真を撮ってくれないか?と若い男性に頼まれた。インスタにでもアップするのかこちらを振り向かない後ろ姿のポーズで。君のも撮ろうか?いや、いいっす!
もう今日は歩き終わってくつろいでいる巡礼者たちの姿がちらほら。
さよならこの町で暮らす猫さん。
はいはい出ました果てしなウェイ。しかし景色は素晴らしい。そして、よく歩いてるわ自分。さっきの町でお昼休憩を取っても構わなかったんだけど、アルベルゲの心配がね。どうせ余りまくってるオチなんだろうけど。
どの山を登るのかはわからない。
なぜかマイルストーンの上に置かれていたパウロ・コエーリョの「星の巡礼」
出発前に読んだは読んだけど、個人的にはちとオカルト臭が強すぎて好みではなかった。
杖を販売するおじさんがいた。これから山登りだぞ!と売っているのかな。
今日はずっと日差しが強くてたまにふらふらするような感覚に襲われるが、一応日差し対策も水分補給もしているから倒れはしない。
そして13時20分にやってきました。噂のさすがに疲れてきたなタイム。残り数kmってことだ。
きっとこの道の向こうに町があるんだろう。それがエルガンソだ。
それぞれの町・集落がどれくらい前にできたのか等、町の興りについて知りたくなることはある。
人より休んだかと思えば、人より歩いたり、気の迷いだな。誰かの影響を受けたり、自分で決めたりするのもそう。それを自分らしさと呼んでもいいし、呼ばなくてもいい。どちらでもいい。
まだかな、もうそろそろかな、と期待し続けるもなかなか着きやしない13時40分。こんなにも僕は求めているのに…!
足に痛みはないが、尋常ではないくらい蒸れているのがわかる。ふやけていそうだ。
何か見えてないか。あれは町じゃないか…?
やっと着いた。あとはアルベルゲよ頼む…!ベッドよ残っていてくれ…!
やっぱりアルベルゲが二軒ある。この最初の方ではなく、グーグルマップでチェックしていた方へ行くことにした。
自販機に寄りたかったけど 、もう一つの方にもあればいいなと思っていたら、近所にスーパーマーケットがあると知った。冷えているかはわからないけど。
13時59分に到着。ぎりっぎりで1時台。
しかしCD音源のバイオリンは流れているのに人がいない。巡礼者の姿は奥の建物にはあるが、木製のドアチャイムを鳴らしても宿の人が誰も来ない。
どうすればいいんだ…?と困っていたが、インターホンを見つけて、それを押すと眼鏡をかけた男性オスピタレロが出てきて受付をした。こちらのキッチンにあるお茶等はフリーとのことだった。
ベッドルームに行くと夫婦がいた。奥さんとは先程挨拶だけしていたが、寝転がっている旦那さんからボンジュールと新たに挨拶が来た。ボンジュール!
空きベッドの数もまだ余裕があるという予想通りのオチだったが、そのオチを待ち望んでいたのである。
シャワーは最初、また試練の時か…とテンションが下がったけど、待っていたらお湯が出てきた。出しっ放しだと非常に熱くなって調整が必要だったが、まあ良し。
上の写真の場所では眩しすぎたし、スマホが爆発しそうなくらい熱せられるので、階段下にある枕2つとハートクッションが置かれているベッドに移った。
洗濯をしないといけないのに疲れて動く気にならず、明日への不安が募る。大丈夫かこれ…?人よりキツイプランだぞ…?と。
だが洗濯をしなければ自らの首を絞めるも同然なので済ませた。シャツの胸ポケットに紙ナプキンを入れていて駄目にしてしまったけど、洗濯機ほど悲惨ではないし、大した問題じゃない。
後から来る人たちも皆、受付(を始める方法)に困っていた。洗濯のときに少し話した(夫婦ではない)フランス人の男性はスーパーマーケットの方に行くといいとアドバイスしていた。どちらにしろわかにくい状況は変わりないが。
宿のキッチンには電子レンジ等あったが、ケトルがなくて紅茶を作るのも一苦労なので、フリーの牛乳をそのまま飲んでクッキーも頂いた。ダンクしたかどうかは恥ずかしくて言えない。
そしてスーパーマーケットに向かった。やっぱりこういう参考通りじゃない、あまり人のいない田舎町は良いな!なんて思いながら。
小さいが素敵な雰囲気のお店で、奥は雑貨屋のようになっており、洋服等も売っていた。
手書き計算ってのがまた趣があったし、狭い売場面積でありながら、電子レンジで調理できる商品を含めて品揃え豊富で助かった。パエリアはまだ食べ飽きていないから今日の夕飯にしよう。
スーパーの横のカフェテリアにはさっきのフランス人夫婦がいて、顔を合わせるとheheheheとお互いに笑った。洗濯物を渡している人もいたので、こっちもアルベルゲなのかな?と確認してみると、ここが事前に調べていたAlbergue & Apartamentosで、この町にはアルベルゲが3つあるとわかった。そう心配する必要はなかったんだ。
自分のアルベルゲに戻ると、冷蔵庫にいくつか物を入れたが、紙パックのオレンジジュースだけではフリー素材に思われそうだから、上にライオンという名前のスナックバーを置いた。
おやつとしてアストルガで買ったチョコを食べたりとくつろいでたら、しばらくするとオスピタレロのお兄ちゃんがやって来て、自分がいるベッドを見るとmmmという表情になった。No…?と聞くと、Now It’s OK!とのことだったのでGracias!とお礼を言った。使っちゃいけないベッドだったか。紛らわしいけども、自分に非がある。申し訳ない。
知り合いが数多くいる、元々自分もいた波に追いつくべきか迷う。なぜなら、こういう狭間のような町を狙ってのんびりと旅をするのも悪くないから。
それと、追いついて顔馴染みが増えれば楽しさはもちろん増すけれど、実際にめちゃくちゃ仲が良い相手がいるわけではないという事実もある。
シンはもっと前に進むだろうし、えりこさんは後ろ。レカは宿が同じであれば近くで過ごすことは多いけど、常に一緒というわけではない。
30分昼寝をした。起きるといろんな言語による会話が聞こえてきて、相変わらずカオスで愉快だった。
この悩ましさのおかげで滞在する町があり、多くの人が選ぶモデルプランの旅とは違うものになる。
ぎりぎりで波に追いつかないような計画を改めて立てた。波に迫るのは本当に最後の方だが、そうすれば顔馴染みと顔を合わせながらも、あまり人が多くない町に泊まれるはずだ。上手くいくことを願う。
でもあれだな。自ら置いてけぼりになって、離れてしまってから、駆け足で追いかけて、再会するなんて感動マッチポンプ野郎だ。
夕食前に中庭から教会の写真を撮っていたら、おじいちゃんに話しかけられた。多分コウノトリの巣についてだろう。言葉はわからなくても伝わることはある。サムズアップなどジェスチャーを使えば意思疎通だってできる。
しかし電子レンジ内パエリア爆発事件発生。急いで濡れティッシュを荷物まで取りに戻って拭いた。巨人自転車男女集団がいたから、いやあああ見ないでええええとベルセルクのNTRシーンキャスカ並の恥ずかしさ。
その後、オスピタレロのお兄ちゃんが肩をポンッと触って、調子どう?と聞いていた。良い感じだよ、ありがとう!と返したけど、さっきのあれ見られてなかったかな…と内心ヒヤヒヤだった。
災難は続くもので、カップラーメン用にIHでお湯を作ったのだが、設定がよくわからずぬるいお湯だった。確かめずに何も不安視することなく注いで、あれ…麺がほぐれない…という段階になって事態に気付いた。それこそ電子レンジで水を温めればよかったのに、もう注いでしまったからどうしようもない。
コウノトリのおじいちゃんがボナペティと言ってくれたのでメルシー!と返した。最初に会った夫婦とは、あ!ゴミ箱開けたままにしといて!メルシ~!みたいな奥さんとのやり取りがあって面白かった。フランス人と相性が良いのです僕は。
時間が経つと麺がほぐれてきたので、とりあえず味の素に感謝した。カップラーメンの味も美味しかったし、さすがだ。特にスープが格別だった。
トラブルはあったが、巡礼者メニューではありえない組み合わせでマンネリしていた味覚的には大満足だった。でも明日の朝食用に買っている(同じシリーズの)アヒージョが怖くなった。
自分がその場から去るとき、夫婦にサリュ~ボナペティ〜と言ったら、メルシ〜とまた笑顔で返ってきた。そりゃ和んじゃいますよ。
19時までに食事も歯磨きも済ませた。洗濯物はトレッキングソックスだけ少しまだ濡れているけど、他の物は乾いていた。
振り返ってみると今日は悪くない日だったな。出だしは順調とは言えず、むしろ悪いくらいで、通しでも常にバテバテな状態だったけれど、着いたのは14時だし、3番目だったのでベッドに困ることもなかった。アルベルゲ自体も悪くないところだ。アストルガでチョコレートを買えたのも充実と言えるだろう。
ただ疲れが明日にどう影響するかだ。標高を見る限り、結構本格的な山越えになりそうだし、それを含めて総距離が32kmってのはしんどいどころでは済まないかもしれない。
いや、考えたら明日は普通の日じゃないぞ。今日より距離も長くて、何より登山がある。ナメてるな。(モデルプランの24の途中から25の終わりまで進む予定)
上は明日の区間で、下はその次の区間。
鉛筆をナイフで削って、その鉛筆で日記を書く人がいて素敵だなと見惚れた。
自分は山登りに備え、久しぶりにストックを出した。いつぶりだろうか。明日は活躍してくれることを願う。
足がとても痛そうなおじさんがいて、目を合わせてニコっと笑ったけど、クリームをつけて痛みを堪えながらマッサージをしている姿を見るのが辛かった。これから大丈夫かな。どうかみんながサンティアゴへ無事着けますように。
ペットボトルに水を注ぎにキッチンへ行ったら、スペイン人のおっちゃんがこれから食器を洗うところだったのに、ほら、入れな!と譲ってくれた。待て!まだお湯だ!…よし、いいぞ!という流れも含めて心が温かくなった。
なんとなくスクリーンショットを撮った写真撮影地点の地図。ここまで進んで来たんだなと感じられた現代的な時間。
予想はしていたけど自分のベッドは階段下なので、人が通ると音は気になった。でも耳栓は持っているし、背の高い電気スタンドもある。多分朝は一番作業がしやすいはずだ。その電気スタンドを暗い中でつけてどうなるかはわからないけど。
左の脛の下に少し痛みがある。寝る前に痛いのは珍しいが、なんともないことを願うしかない。
明日は早く起きようかなとアラームは5時に設定した。6時には出発したい。しっかりと眠れますように。
今日の歩み
Hospital de Órbigo – El Ganso / 30.2km