サンティアゴ巡礼 -フランス人の道- Day 27

5月8日。
12時と1時に目が覚めたが、部屋が暑くて、とても乾燥していた。こういった状況が頻繁に起きてしまう。
太ももと腕の色が日焼けで全然違っていたベッド下のドイツガールがなかなかの音量でいびきをかいていた。男のいびきはうるさいな…と単に迷惑を感じるだけだけど、女の子のいびきはなんか可哀想だなと同情してしまう。自分ではどうすることもできない現象なわけだし。
1人トイレに行ったと思っていたがその人は1時間近く戻ってこなかった。そして時刻は2時半になった。
残り約1週間をどう歩こう。ひたすら歩くだけか。

それからまた寝て、5時に起きて、ちょっと寒くなってきたな…と思っていたらまた寝ていて、6時のアラームで起きた。
トイレには行列ができていた。2階は1つだけだが下の階の3つも埋まっていた。使っていないので要らなかったがトイレットペーパーが切れていた。
6時10分にはもう出発しようかという人たちがいた。早いな。

フロント付近もカフェテリアっぽい場所も人が多いので、下の洗濯物ゾーン近くのソファで食べた。日の出前の空には半月が浮かんでいて、どこかからニワトリの鳴き声が聞こえていた。

上の写真の右、軒下にあるキッチンではアフロ男性とおばちゃん2人が調理中だった。ここに冷蔵庫があるとは知らなかったな。いろいろ冷やせたのなら生フルーツを買うくらいすればよかった。まあいいけど。

今日25km先のPierosという町に泊まるならベジタリアンフードのアルベルゲに泊まるしかない。リストを見る限り、町にはその一軒だけのようなので悩ましい。

のんびり準備をして7時過ぎに出発した。どちらにしろモデルプランからの脱却の日だ。

ストックを握る手が冷たいのに、どうせすぐ暑くなって汗をかくんだろうなと想像するとうんざりしてしまう。でもこの旅の残りも少なくなってきたのだから楽しもう。きっとこれが最初で最後のカミーノだろう。荷物も悲しくなるほど重いけれど、こんなことで悲しくなれる日だって限られている。

前を歩いていた韓国人夫婦が自分が来るまで立ち止まっていて、旦那さんが「イエロー!ナッシング!」とサインがないじゃないか、この道は正しい道なのか?と尋ねてきた。あなたたちが歩いていたから僕もそのまま歩いていたのですが…まあ…でもポンフェラーダ方面ではあるから大丈夫だと思うと伝えた。

少し歩けばもう2人が前に見えてきて、カミーノマークや黄色い矢印も発見した。
自分も少し不安で考えていたのだが、この手の歩き旅の矢印は基本的に道を間違えやすい箇所に置かれていることが多い。だから迷っていないときはまっすぐ進めばいい。でもこのときのように、いつも沢山見かける目印が少なくなったり、見えなくなってしまうと誰だって不安にはなる。

ジョギングをする男性がブエンカミーノと言ってくれた。グラシアス!

シン情報で、てっきり登るものと勘違いしていたが、雪山は見えているだけだったな、

どちらもハーフパンツの巡礼者夫婦と朝の挨拶を交わした。旦那さんからは湿布の匂いがした。


街が見える。

あれ、まだポンフェラーダじゃないんだ。

しかし民家以外は特に何もない町だったのでそのまま素通り。

とにかくライオンが多いなという印象だった。レオンの方が響きはライオン寄りなのに。

トラクターmeets軽トラみたいな乗り物とすれ違って、運転していたおっちゃんと手で挨拶したのだが、車の荷台に引っ掛けていた軍手のような作業用手袋が片方落ちた。気付いたときにはもう車は後ろへと進んでいたのでとっさに投げ入れるというのも間に合わなかったし、おっちゃんを呼ぼうとしても走行音で声が掻き消されただろうから、どうあがいても無理だった。ちゃんと荷台の中に置けばいいのに…。予備があることを願うしかない。


ポンフェラーダの街中へは進まず、ぐるーっと回るような道だった。でもマイルストーンは見失ってはない。

モトクロスの練習場のような場所。

小型の飛行場のような敷地の横も通過した。

廃墟で美しく鳴く黒い小鳥がいて、その先には、何度巡礼者たちにブエンカミーノと声を掛け、見送り続けただろうというようなおじいさんがいた。


そしてここからがポンフェラーダ。馴染みの案内板も目にするのはあと一週間か。

スモデナランハなんかを飲んでゆっくりしたいけど、まだ1時間しか歩いていない。メモに顔文字も出てくるし、前を歩いたり走ったりしている性別のわからない地元の年配者のように、優雅さはどこにもない。

ちなみにポンフェラーダという地名は木の橋を鉄の橋(Pons Ferrata)へと補強したことに由来するらしい。しかし木でも鉄でもないこの石橋を渡って川を越えた。

わかりにくいけど登り坂です。

テンプラリオス城の前にあるカフェで休憩を取ることにした。(城はインディ・ジョーンズの映画にも登場したらしい)

ジェラートが売りっぽい店だったので頼むことにした。暑かったし二択はビッグサイズで。

なぜかナランハ祭り。バニラでもよかった気がしたけど、ナランハアイスも美味しかったのでオッケーです。サッパリもしたかったしね。

店内には大勢の巡礼者がいたし、やって来た。もうベッド下だったドイツガールや靴下マンなどは顔馴染みだ。間抜け顔の韓国おっちゃんもそう。特に会話をしていなくても馴染みはできていく。
どこまで行くかは25km歩いてみて、そのときの時間と体力で考えるとしよう。でもPierosの先にあるビジャフランカ・デル・ビエルソまでの5kmの道はアップダウンがあるようだ。
パーカーは脱いだ。日焼け止めはもう塗っている。さあ、どうなるかな。

城壁前を少し進んだ場所で靴紐を結び直した。

かっけー街が多いなあと純粋に思う。

違う道を行っていた人もいるけど、あの時計塔の門をくぐるよねそりゃ。

挨拶完全無視の白人男性がいたが、彼は耳が聞こえていないのだと考えれば、あまり気にせずに切り替えられる。

フランス人年配者3人グループは広場でこれからの道を迷っていた。自分はとりあえず進んでみる派なのでついてこられるのは困る。ついてきてたけど。

後でAmancio Pradaで検索するとポンフェラーダ出身のシンガーソングライターのおっちゃんが出てきた。

エレベーターの辺りで迷っていたら松葉杖のおじいちゃんが向こうだと教えてくれた。

利用するのは申し訳ない気がしたので階段で降りた。

そこから先がわからなかったので、老夫婦に挨拶をして、ブエンカミーノと言ってくれた旦那さんに聞くと教えてくれた。かなりの寄り道だったのかもしれない。


この方向に下りてくるとやっと巡礼者や矢印に再会。

インパクトのあるイラストが描かれた場所の右を通って公園に入った。

1234ガール以上に感じの悪い韓国女子のいる2人組がいた。でもこの公園以降は矢印やマークが定期的に設置されていたから迷わなかった。

ひたすら歩いた。この自転車が苦しむ坂も登った。

建物の下を抜ける珍しい道。


サッカー場撮りがち。



ペースが上がらず前の4人をなかなか抜けなかった。でも自転車にも地元の人にもちゃんと挨拶するのは自分だけという自負。

後ろの2人に続いて前の2人もちょうど抜くかなというところで4人は教会へ寄っていた。

10時にカフェのテント席を通り過ぎる際に覗いてみたら、マリオおっちゃんことハネスがいた。窓(透明シート)二つともで手を振って先へ。
また会うかもしれないし、会えないかもしれない。その狭間で旅を続けている。今日はお昼とかでまだ普通に会うだろうけど。

ブエンカミーノには大きなはっきりとした声でお礼を言う。

昨日と同様に首が焼けるような日射が気になったし、距離はまだ11kmなのに苦しかった。でも歩くしかない。この調子だと達成感は充分そうだなと都合のいいことを考えたりしながら。

この辺りは家のように田畑を囲って、その敷地の角に小さな家(小屋)を建てているケースが多かった。

いやー、しんどい。歩きを再開したらどうせ疲労を感じるだろうから休憩を取るタイミングも難しい。でもこの次の町で休憩にしよう。

この町のどこかで今、草を焼いているのがわかった。

おばちゃん2人が教会前でスタンバっていたけど、スタンプ(?)は貰わずに通り過ぎた。

そしてこのアルベルゲのカフェに寄ることにした。

外壁に貼られていたメニュー表にはハンバーガーやパスタなどの写真が載っていたから良い感じ!と思って店内に入ったのに、結局いつものバーと変わりなく、無難に置かれているトルティージャが固いパンに乗った小さめの物を一個と、コカコーラを頼むといういつものあれ。そういったメニューも頼んでみれば作ってくれるのかもしれないが、店内にはメニュー表がなかったから頼めづらかったし、どうなのかわからない。
左側の勝手に付いてきたタパスがまあ美味しくなくて、梅干しとか好きな人はイケるのかもしれないけど、残念ながら一つも食べ切れずに残した。(でもWi-Fiのパスワードを貼り出しているのは最高だったよ…。手持ちのワッフル食べてごめんね…よく笑う店員のおばちゃんも素敵だったよ…)

どこよりも肩に疲労を感じる。こんなに重いのはめったにない。
ベジタリアンメニューってか、野菜は好き好んでは食べないし、その翌日が体力的に不安になりそうだ。距離は今15km。あと半分と考えるとまだまだ遠い。でも30kmの町まで行けばアルベルゲはわりと豊富にあるし、モデルプランの宿泊町ではないので、その点の心配はあまりない。

隣の席にいた地元の女性が去るときに手を振ってくれた。もっと休憩していたいけど、他の巡礼者もいなくなると、そろそろ行かなきゃ…ってな気分になる。
25と30のどちらを選択するか。でも今の疲労とこれからの気温を考慮するとキツそうで、自信はない。
レッドブル等のエナジードリンクが飲みたい。でも効果が切れたら余計に疲れそうだし、頭も痛くなりそうだ。
ハネスがカフェの前を通った。ぎりぎり自分に気付いた。他にもいろんな人が通った。うん、30km行くしかない。頑張ろう。

再スタートするとマレーシア夫婦とも再会した。もっと知り合いに会いたいな。

自分が寄った店より良さ気なカフェテリアには、知り合いになりつつあるスキンヘッド男性とハネスがいて、Hi!と手を挙げたらどちらからも反応があった。サングラスを掛けていたから目線が無い分マシだったがなんとも罪深い。
奥にいたハネスに、マイジャポンフレンド!と言われたので、マイスロベニアンフレンド!と返した。
知り合いとのやり取りはほんの一瞬だけでも楽しい。これは30kmデイズ4日目行くしかないでしょ。

200km!次見るときは230kmかな!

身長2m超え男が気付くと背後にいて、たまにいる挨拶返さないマンだったから、抜かれないようにスピードを上げた。

悪くないペースで進めた。この休憩スペースでは顔馴染みになりつつある人たちと挨拶を交わした。

もう正午になっちゃったけど、だからこそ、ガンガン行こう。

コンクリートやアスファルトに比べたら土の道は最高だ。

あまりスタンプにはこだわらず歩いてきたので、今更増やしたいとは思わないけど、スムージーは魅力的だ。でも今のペースを維持したいので寄らない。
とても素敵な店だったとは思う。森のような場所で木々に囲まれて、木漏れ日が差し込む隠れ家のような雰囲気だった。黒板のメニューもオシャレだったし。

トカゲを最近よく見かける。捕まえてはいない。

調子良く歩けている間にどれだけ距離を稼げるか。日差しも強くて大変だけど、もう残り10kmは切っているはず。


ビエルソまで8kmか。

そこまで減ってはいなかった水を少しだけ飲んで、少しだけ補給した。

そのすぐ先に男女がいて、ブエノスディアスという挨拶から、男性が英語は話せる?と聞いてきた。それから聖書系のパンフレットを受け渡された。こういうのは遍路のときもあったな。でも仏教系ではなくあちらもエホバみたいなキリスト教系だった。

その先では女性巡礼者がマメ治療をしていたので、大丈夫?と聞いた。ブエンカミーノ!


このカカベロスという町はモデルプランの宿泊町になっているだけはあって、お洒落な建物がいくつもあった。

ドイツガールズと靴下男ともう1人男性が一緒にいた。ずっとモデルプラン通りに進んでいて仲が良いんだろうな。例の子(ベッド下)だけやたらと手を振ってくれたけど、常に誰かといるから話しかけることはない。こういった感じで複数の人より一人の方が友達は作りやすい。

もう荷物を下ろして完全にくつろいでる巡礼者も少なくなかった。でもまだ先へと進む人たちの姿もある。ここは綺麗な町だけど滞在できる町は限られているので僕も先へと進む。

かっこいい…。教会に併設されたアルベルゲだ。

歩行器で歩くおばあちゃん。なんだか切ないような、愛おしいような光景。

220km。ウケる。

あくびや電話をしながら運転するドライバーを今日は何度も見かけることがそれは笑えない。恐ろしい。

ピエロス!あと5kmだ。今日どの町でスタートかは知らないが、まだ先を目指す人もわりといる。一人じゃない。

ベジタリアンのアルベルゲはここかな。でもここ以外も複数あるような気もした。

多分、これを読んでくれている人から、1万km以上遠く離れた地での物語。

後ろを振り返った光景。町や巡礼者の姿が見えている。


帽子以外黒尽くめガールは顔を隠しまくっていたので韓国人だろう。日本人がオスプレイのバックパックを持っていることはほとんどないし。
追い抜く際に挨拶をしたが、必死に歩いていて、久しぶりの発声に詰まったようなオラ…!だった。

13時半過ぎに集落が見えてきた。
ん?ここ?バルって書いてある。まだ数kmはあると思っていたが着いたのかな。余裕やん!アハハ!と喜んでいたら、数km手前のアルベルゲのない町だった。ですよね…!

お疲れではあるが、休憩もせずにただ突き進む。
それにしても程良い位置にあってアルベルゲがないのも珍しいな。民宿っぽい宿はあるみたいだけど。


顔は見てないが、男女がハンモックに揺られていた。

誰かが先に登っている姿が見えた坂道。3時までには着きたいな。

登りきったがまだ何も見えない。時刻は13時50分。このもう一つの丘の先だろうか。


残り3.3km。

今の自分には険しい坂だった。しかし再び登りきってもまだ町は見えなかった。登りきった先で男女2人が木陰で座って話をしていた。話に夢中で反応はなかった。

自転車も頑張っている。

ネズミのような小動物を見つけた後に、町が見えてきたがまだ遠い。目的の町かもわからない。

ジェニファーがいた。頑張ってるな。彼女はかなり敬虔なカトリック教徒のような気がする。深い目的で歩いてそうだ。
珍しく男性が近くにいたが、その男性の方が歩く速度が早くてたまに後ろの彼女を待ちながら歩いていた。
彼女は顔や体などではなく雰囲気に色気がある。肌の色が黒い人でそんな風に感じたのは初めてだった。

丘の上に吹く強い風としばらく雨が降っていなさそうな地面のおかげで砂埃がたまに上がっていた。やめて。

ジェニファーの先にいた(バックパックに名前と電話番号をプリントしていた)おっちゃんを抜くときにちょうど砂埃が立って笑った。スペイン語かポルトガル語で調子はいいかい?みたいに尋ねられて、彼の手にはサムズアップが作られていたので、そのままグーサインを返した。

花びらに限らず、何かもが風で飛んでいるのを見かける日だ。そしてこの道は向かい風で、車の往来が意外と多かった。さあ、アルベルゲルーレットが迫っている。

ムニシパルへは行かず、

工事現場の横を通って、


このアルベルゲに行くことにした。14時35分。

日本語の看板だ。アベフェニックスは宿の名前。

受付では誰がアルベルゲのスタッフなのかわからなかったが、最初に目に入った2人がそうだった。
男性が荷物を下ろすのを手伝ってくれたけど、おおお…(重たい…)みたいな反応。自分がノースパニッシュなので彼がリトルイングリッシュで対応してくれた。
どこからスタートか聞かれて、最初サンティアゴと間違えて答えてしまい、首ぶるぶるぶる。サンジャン!と訂正したら、この重さで!?とてもヘビーだよこれは…とまた引かれた。人に荷物を持たせることがないからあれだけど、ヘビーなようです。
ディナーは20時からということだったので、7時からの朝食だけ付けた。

物静かで優しそうな女性の方がシーツを持ってベッドルームへと案内してくれた。そして下段&端っこのベッドが空いていた。優勝でしょう。
屋根裏の荷物スペースのような場所に寝ている男性もいたが違和感を覚えた。体調を崩しているのかもしれない。

とりあえず何より先に飲み物を、と庭に置かれていた自販機に硬貨を入れて、アクエリアスを押したらペプシが出てきた。問題はないけど…うん…。

お湯が出ないシャワーだと予想していたが、熱いお湯は出ることは出た。ただ、自動ですぐ止まるのを何度もボタンも押して維持するタイプのものだった。常に調整も必要だったので、どのくらい間隔を空ければ水に戻るのか、熱湯になってしまうのか等、浴び終える前にはもう完全にマスターしていた。

塗るバンテリンを肩を中心に塗った。今までしっかりと振っていなかったからか、かなりスースーするような感覚だった。今までのは何だったのか…。でもまあ、塗り続け過ぎても効能が薄くなったりとデメリットはあるから、ちょうどよかったということにしておこう。

歩き終わったあとの洗濯はいつも億劫だがやるしかない。
外にある洗濯コーナー(ガーデンシンク)には自分が一番に来て、ゴム製のバケツを見つけていたんだけど、これは手洗いで使う物ではなく、洗濯機と乾燥機へ運ぶ際に衣類を入れる物だろうとそのバケツは利用しなかった。その代わりにシンクの栓を見つけたので、シンクで直接洗おうとしていたら、女子2人が来た。
最初に来た子が自分が使わなかったバケツを普通に使い始めて、やっぱり自分も…と他にないか探しに行って見つけたのは乾いた土が付いたバケツで、これは菜園用かな…?と思っていたのを、2人目が使うっていうね。
しかも栓のサイズが合わず、シンクでの直接手洗いは不可能だと気付いた。どちらか終わった方のを使うかとゆっくり洗ったりして待っていたんだけど、女子の洗濯がまあ長かった。んでもう諦めて、なんちゃって手洗いとなんちゃって手絞りになった。結局1人目が使い終わってもカゴは使わなかった。もう絞りの段階だったし。
今日は風が強いので、この洗濯コーナーに来たとき、背後の大きなベニヤ板がシンクへと倒れていたんだけど、また倒れてきそうだな…と背後に警戒していたら案の定倒れてきて、足を後ろに伸ばしてそれを止めたら、女子2人からやるやんけ…みたいな表情で見られて、2人目の子に「今のが初めて!?」と聞かれた。かっこいい。男前。かっこいい。
そのハンサムすぎる足伸ばしに惚れたのか、1人目の子が洗濯物を干すために集めて、余った分の洗濯バサミを使う?と渡してくれた。優しい。

シュウェップスを押して、ファンタオレンジを狙ったが、KASが出てきてもう笑うしかなかった。面白すぎでしょ。さっきファンタオレンジを飲んでいる人を見たけどランダムなんだな。

ハーフナー・マイクをロシア人にしました的な、お昼にも会った2m超え巨人男がいた。オラは一応返ってきた。
他の人と話しているのを聞いてわかったが彼はダニエルという名前みたいだ。明日はハードデイだと言っていた。彼がパンツ一枚になって部屋を歩いていたときに、足の太さが目に入ったのだが、もう骨格レベルで体の作りが違って、同じ人間か…?と目を疑った。

今日は計画より長く歩いたからまたプランを考えないといけない。でも、難しい。
サンティアゴまでまた考えたとしても、今日のようにズレることがあるだろうから、もうその日次第、その時次第で臨機応変にやっていくのがいいだろう。予約も必要ないわけだし、自由に。
明日は登りで30kmになりそうだ。後に引けない進み方をしている。その手前にも町はあるが多分目指すだろう。

眠気に耐えながら過ごしていたが、ここ男性部屋にはめちゃくちゃおならをする人がいた。
30分の仮眠のあとに庭(+コンセント)の方へ行くと、ギターを弾いている髭の男性が庭にいた。即興で落ち着いた曲を演奏していた。

iPhoneを少し充電してから町へ下りようかと考えていたのに、自分の電源ケーブルを誰かに使われていた。その相手はロシア語を話す女性だとすぐにわかったのは、自分の目の前で充電しながらスマホを触っていたから。コンセントはまだ空きがあるのに、やりおるわ。

プラグのもう片方のUSBポートで充電していたモバイルバッテリーを外して町へと向かった。電源ケーブルはそれだけを取り外した。Lightningのケーブルは誰か使いたいなら使うといい。

宿の前で巨人ダニエルとすれ違ったが、やはり最高に無愛想だった。身長にすべてのパラメータを振っている。

ビジャフランカ・デル・ビエルソは11世紀にやって来たフランス人たちが開拓した町。
昔は怪我や病気などで巡礼が困難になった人に対して、サンティアゴまで歩いたのと同じ巡礼証明書がこの町のサンティアゴ教会で与えられていたらしい。今でも診断書があれば赦しの門をくぐれるようだが、それは八十八箇所のお砂踏みに通じるものを感じる。

自分のアルベルゲは町の手前の丘の上のような場所にあったので、ひたすら下りていくことで町の中心部へと近付く。

ある階段に子供も大人も集まって、風船を割ったりしながら大いに盛り上がっていた。

広場があった。レストランのメニューだけ確認してまずスーパーへ。


小さなオレンジジュースと小さなパンのようなものを2つ買った。ナランハジュースはすぐ近くのベンチで一気に飲み干した。

パラソルの下にいた見覚えのあるおっちゃんがHiと手を挙げてくれた。ドイツの下ネタおっちゃんだった。

おっちゃんが食事をしていた店は変わったメニューがあるようなので自分もそこを選んだ。なかなか店員が気付いてくれなかったけど。

午後7時なのに明るくて、温かくて、外で夕食を食べられる。風も気持ちよくて良い気分だった。こういった時間も残り僅かなのはなんだか切ないな。残り日数が少なくなればもっと名残惜しくなるだろう。

進むペースがみんなとかなり違うので何度も会ったりはしないけど、この旅の間に知り合った人たちを復習するかのように、少しずつ再会していくこの感じが面白い。
だがこれを続けるためにはみんなより沢山歩かないといけない。2日分、50km先にいる相手に追いつくというのは並大抵のことではない。相手は止まっているわけではなく、もちろん毎日歩き続けるのだから、同じ25kmを歩いた上で、そこから更に距離を伸ばして、近付いていかないといけない。
当然疲労度も違ってくる。でもこれは自分がしたくてしていることだ。ネガティブな言葉が出てきても、100%本気でそう思っているわけじゃない。疲弊してキツいときだって、心のどこかではまだイケるさと常に思っている。

いや、でも風ちょっと強すぎるな。それと明日早く出るために、7時からの朝食じゃなくて、自分で買って済ませればよかった。まあ、しっかり食べられるなら構わないけど。

Scrambled eggs with León Black Pudding and Golden Apple。
イメージしていたスクランブルエッグとは大層違うものがテーブルに置かれた。もっと可愛いものが来ると思っていた。でも味は悪くなかった。パンとの相性も良かった。

明日は疲れるだろうけど、最後(山の上)までたどり着ければきっと素敵な滞在になる。そんな予感がする。

下ネタおっちゃんの席からレシートが飛んできて拾ったが、それは向かいに座っていた人のものだった。彼の、俺は知らないよみたいな表情が面白かった。あ、でもレシートなんか要らないか。自分が捨てていないだけだ。

2ndのポークが来たときに、もう満腹に近いことに気付いた。でもこの店の料理は結構美味しい。ポテトもちゃんと揚げたてなのが好印象。こんなに大きくて量があると飽きるのには変わりないけど。

下ネタおっちゃんは一緒に食事をしていた男性が席を立ってからも、煙草を吸いながらビールを何杯もおかわりしていて、一人で優雅に過ごしていた。
いくらドイツ人がビールを大量に飲むとはいえ、こんな過ごし方は普段はできないだろうし、カミーノは楽しいだろうな。
まあ、アルコール苦手な日本人もわりと楽しんでるけどね。素敵な景色と楽しい出会いがあれば楽しいんですよ。
おっちゃんが去るときに、グーテナハト(おやすみ)と言った。きっとさようなら。

一人の人も多いが、出会った同国の人と絡んでいる人が多い印象だ。また、年配者に比べると、若者の方が異国の友達を作ることに積極的なことが多い。
自分も同国の人とそんな風に食事をしたことがあるし、異国の人でも、一人でテーブルに座っていたら「そこに座ってもいい?」と聞いてくれて、一緒に食事をする相手がこの旅でできたことが嬉しい。
まあ、そういった友人たちは今ここにいないから、今そうすることはできないんだけど。

ホームメイドヨーグルトも美味だった。

もう8時か。待っている時間が長かったもんな。でもそれを感じさせないくらい優雅な時間を過ごせた。

帰りにスーパーマーケットのDiaに寄ったが、目当ての500mlのペットボトルはあまり販売していなかった。でも何も買わずに退店しづらいというか、唯一の入り口が逆走禁止だったので、結局無料でも手に入る水を購入した。まあ、夜に飲んで、減ったところにアミノ酸ドリンクの粉を入れて、水で混ぜれば完璧でしょ。

帰り道で、スキンヘッドの旦那がいる夫婦、そしてドイツガールズも見つけた。みんないるし笑うわ。例の子はやはり手をめっちゃ振ってくれるけど、せっかく顔馴染みにはなっても別に他の2人とはそんなに目も合わないし、彼女の名前と出身を聞くタイミングすらないという不思議な関係。
多分胸ピク靴下マンも一緒だった。彼はともかく、ガールズはもう最後まで一緒なんだろうな。1人で来たのか一緒に来たのかも知らないけど。
今日のモデルコース自体距離は短いから+7kmは歩ける人にとっては無問題だったか。明日はどこまで行くんだろう。結構進みそうだな。

先程地元の人が多く集まっていた階段にまだいた男の子がオラ!と自分から挨拶をしてくれた。

洗濯物の乾き具合はいつも通り。

インスタを見るとえりこさんは、誰かとずっと一緒で気を遣っていて疲れていたけど、一人になったことでのびのびと過ごせて、今を楽しめているような印象を受けた。それと写真を見て思ったのだが、同じ場所でも時間帯などによって景色が違うから面白い。
一方リーはDMでI miss youと送ってくる。そう言ってくれる人がいるのは嬉しいが、どうしようもないこともある。この離れた距離は、物理的に会えないし。

精神的な面での旅の過ごし方について考えてみた。ゲストハウス等で新たな出会いを築くのも嫌いではないけど、基本静かに一人で旅するのが好きなわけで、お酒の場とかも得意じゃないし、自分なりのスタイルでこのカミーノも楽しめればいいなと思った。もう完全に後半だけども。
旅をしている人の中には、孤高な雰囲気でかっこいい人など、多種多様な人がいるわけで、もともと巡礼の旅ってそんな人がやるイメージだし。うん。
過去の旅が好印象だったのは人との絡みが多すぎなかったからだろうか。でもとりあえず、今回の自分は、こうあるべきというような固定概念でやはり無駄に疲れていたような気がする。楽しみ方を知っているはずなのに、それを忘れていたような。

建物は違うのにディナーの団欒の声がベッドルームまで届いていて騒がしいくらいだった。だけどアルベルゲ内の食事会場だとみんなで交流しながら会話するもんな。それに今は午後9時前だ。彼らが食べ始めてから1時間も経過してない。
だから窓は閉めた。すると特別スペースにいるアフロ眼鏡の男性と目が合ってニコッ。今は部屋には自分と彼の2人だけ。すぐにみんな戻ってくるだろうけど。

騒がしいけど寝なくちゃいけない。アラームは6時に設定した。明日もきちんと進めますように。


今日の歩み
Molinaseca – Villafranca del Bierzo / 30.7km


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