サンティアゴ巡礼 -フランス人の道- Day 28

5月9日。
22時前にギター男が今度は歌付きで弾き語りを始めて、この時間はやめて…と苦しむし、ある夫婦が消えていた部屋の電気を突然つけるし、そういえば30分夕寝していたし、犬が興奮を抑えられない!って感じでたまに吠えるし、すべて理解できる原因の元で眠れなかった。すぐに寝られていびきをかき始められる人が羨ましい。
寝袋よりブランケットの方がずっと好き。でも今日のブランケットはガサガサしていて微妙だ。
まあ、いろいろと焦ることはない。最後の方で波には追いつくし、それまでは一人の時間を楽しもう。

アラームは鳴らさずに起きたが、久しぶりに、眠い…と感じる朝だった。部屋の温度も寒い。だが朝食の7時までは時間があるからのんびりと準備を進めた。
30代以下(若者)は挨拶の反応や雰囲気が両極端な気がする。 めっちゃ感じ良いか、めっちゃ感じ悪いか。いや、上の世代もそうか。
皆と朝の挨拶を交わした。Good morningを他の言語で返して来た人にはその言語でも改めて返す。ヨーロッパの人たち(特に年配者)は英語嫌いで、自国の言葉にこだわりを持っているのはこの旅で強く感じてきたことだ。
部屋を出ようとしたら犬がいた。昨晩の鳴き声はやっぱり部屋内から聞こえていたんだ。ギターを弾いていた男性の犬だ。彼がトイレに行くと入り口前でご主人様を待っていて可愛いかった。

どうやら受付で利用した建物が朝食会場のようだがまだ鍵が開いてない。外は寒いが開けられるのを待つしかない。どこかの部屋からはピピピピとアラームが鳴り続けている。

しかし7時になっても鍵は開かなかった。もう1つの扉には木製のかんぬき+警報システムがついてるし、どうすりゃいいんだ。もしや誰も開けに来ないのか…?
しまったな…と思った。担当の人が寝坊でもして起きてこなければ数時間後も来ないパターンだ。他にも待っている人たちはいるのに。

仕方ないから中庭の写真でも撮ろう。

キッチンらしきカタカナ。

気温はかなり寒いのに、下着一枚のような格好でトイレに行く白人男性を見ていると、体感温度も全然違うんだろうなと当然思う。同じ人間でも様々だ。

なぜか自分のバックパック付近で寝そべる犬。ちなみに飼い主の男性はバルセロナの人らしい。

うーん、来ない…。適当過ぎないかほんと…。これも7時と言っておいて8時とかだったりしないよな…?と不安になっていたら、15分後に昨日は一度も見なかったおじいさんがやって来た。
しかし、寒いので早く室内に入ろうとしたら「ノーエントリー!!」とまだ入るなと怒鳴られた。遅れてきといて何その態度…と犬の飼い主と顔を合わせてやれやれ…。ひどいなあ。

待っていたのは男性ばかりだったが、ロシア人っぽい昨日の洗濯二番目の女性や、背の高い女性も入り口前へと来た。後者の女性はあまり若くなくて40代くらいかなーなんて思っていたら、その背が高い女性の連れの女性が普通に中に入っていて、いや…入るんかい…みたいにまた飼い主男性と苦笑いを浮かべ合った7時20分。
キッチンを見てみるとおじいさんが1人でスローモーションのようにゆっくりと準備していた。いや、大失敗だな。

テーブルの上の状態は部屋に入る前とほとんど変わっていない。

ようやく朝食のメニューがテーブルの上に置かれたが、トーストだけっていう。10人近くの人がずっと待っていたのに。


トーストに目玉焼きを乗せたものも後で運ばれてきたが、この写真を撮っていたら目の前に座っていた男性が笑って、その流れで話しかけられた。じいさん料理してるけどやたらと遅いよな…と。
彼はデンマークからで、スタートはサンジャンと一緒だが、2年前から区切って歩いているらしい。今回ようやくサンティアゴまでたどり着けるんだとか。

結局メニューはトーストと、目玉焼きonトーストの2種類だけだった。あとは元々置かれていた小さなりんごを食べたくらい。

2番目の女性と犬可愛いねー癒やされるねーと2人でもふもふして、8時スタート。



惑わすような矢印が複数あって振り回されつつも、地元民と挨拶しながら進んだ。

また一つ美しい町に別れを告げる。

出たな、過少申告界のスーパースターめ。

言わんこっちゃない。

見るからにキツそうだ…と身構えてしまったが、別に登りではなくて、ぐるっと回る道だった。

あ、帽子忘れた!と焦ったが、バックパックのサイドポケットに突っ込んでいたことを思い出した。そういえばそうだった。

8時半、今朝の景色はなんだか既視感があるなと感じながら歩いていたら、全然隠れてないただの茂みで白人女性がに用を足していた。緊急事態だったのだろうが、こちらも困る。
その先ではフランス語を話すおばちゃん2人がその女性を待っていた。しかし挨拶をしたが意図的に無視されたようだった。なんかごめん。でも見たくて見たわけじゃないのに。

右肩が痛い。荷物の配置を少し変えてみたからだろうか。いや、こんな旅をしているんだ。どこかしら痛いわそりゃ。

単独の巡礼者を追い抜く際に話しかけてもいいけど、もう出会いに関してはお腹いっぱいな感じもあるし、ひたすら黙々と歩くことを選んだ。
写真を取り逃がしたって、その撮りたかった景色は必ずこの目で見ているから気にしない。前へ前へ。

休みが休みになっていないのは自分らしい。休養のためではなく、ウサギとカメの時間潰しに近いものを感じる。当初は本当に休んでその後も無理をしない予定だったけれど、影響され、迷い、寂しくなって、追いかける現在。
だが50km以上離れた相手に追いつこうとするのは本当にマゾだ。本気の無理はしてないが、疲れるは疲れる。

滞在していた町には大勢の巡礼者がいたのに、今のところほとんど姿を見かけない。この時間でここにいないということはどこにいるんだろう…と考えていたら、前に現れた2人。

田舎の町外れの墓地等を見ていると、人間や人間が生み出す文化は、使用言語や外見、宗教などは違っても、そう変わりはないのかもなと改めて思ったり。

カフェには多少巡礼者の姿があった。スマホをイジっていたのでこちらには気付かなかったが、あのドイツガールズと胸ピクマンの4人もいた。

田舎はやはり廃屋が多い。この辺りを歩いている間に、地元のおじいちゃん4人に立て続けに挨拶した。 

既に距離が6.2kmになっているが、今日はポケットの中でスマホがこつこつと当たっているから誤カウントが多い気がする。

Animoとはスペイン語の励ましの言葉。つまり、エリカ頑張れ。

9時半を過ぎて暑くなってきた。奥に写っているのは草を処理する作業員たち。

物凄く疲れているというわけではないけど、調子が良いわけでもない。

手前の看板から町までが遠かったトラバデロ。

カフェを素通りして少し進むと、無愛想、もしくは余裕がないイタリア夫妻に久しぶりに会った。だが表情は穏やかだった。奥さんが印象的だったから何人かはっきりと覚えていたし、ボンジョルノ!と声を掛けると二人とももっと表情が明るくなった。

一旦座りたいけどテラス席以外の公共(?)のベンチの数が少なく、ここも太っちょ髭の男性が座っていた。

だがその先に空いているベンチを見つけたので座った。長袖Tシャツ一枚になって、サングラスを掛けた。この辺りから徐々に登りがキツくなってくるだろうから靴紐も強く結び直した。その間イタリア夫妻と太っちょ男性が自分を抜いて行った。みんな爽やかな表情をしていた。

昨日ジェニファーの前にいた名前付きバックパックの男性だ。スペイン語発音だとフアンかな。

Red Hot Chili Peppersの曲をかけながら、なぜか今ベンチで寝転がってくつろぐ男性。

巨人ダニエルは足にクリームを塗っていて、どうせ無愛想だろうと思いつつ声を掛けると、遅いよ!と突っ込まれたので笑った。君も朝食を取っていたらこうなってたさ…。

イタリア夫妻はよく見れば荷物が軽い。奥さんは手ぶらでストックだけ持っていた。チャオ!

同化していて見づらいけど、写真中央に牛がいる。


パンケーキを出すアルベルゲもあるんだな。

緩やかに標高は上がっているのだろうが、はっきりとした登りの道はまだ始まらない。だが今日登る『オ・セブレイロ峠』は最後の難関というくらいだし、わかりやすい登りは必ず見えてくると思う。
登山等登りの経験が自分よりある人間はもちろんいるだろうが、自分が難所に対してどんと構えられているというか、あまり恐れを抱いていないのは過去の巡礼の経験からだろう。難易度も違うわけだから。

突然現れた狼のような犬。

以前購入していたライオンのスナックバーを食べた。粘り気のあるブラックサンダーといった感じで美味しかった。

この町の名前はラ・ポルテラ・デ・バルカルセ。
サンティアゴまでの距離は見て見ぬふりをするが、スペイン最初の町ロンセスバージェスから559kmというのは参考にしよう。つまり、サンジャンから580kmは歩いてきたということだ。

ダックスランド。

こういう場所にあるアルベルゲはいつも素敵だなと思う。

プールというよりは釣り堀に見える。普通に池なんだろうけど。

少し歩くとAmbasmestasという町の中心部に入った。パスタを出してくれる店があるなら寄ってもいいけどサンドイッチが限界だろうな。

どこにも寄らないつもりだったが、町の最後の店に寄った。

ここで本格的なお昼休憩にすることにした。英語メニューもある親切なバル&ミニスーパー。頼んだのはスモデナランハとサンドイッチという代わり映えしないメニューだったが、ここにきてようやく(きちんとした)ホットサンドに出会えた。

店内にいたスペイン人おばちゃんカミーノは、スモデナランハと自分が注文すると、おお…それ現地語やんけ…スペイン語やんけ…みたいな反応だった。  
ホットサンドが運ばれてきたとき、めっちゃ美味しそう!と喜んだが、味は普通だった。でも問題はない。ナランハは美味しかったし、店員の女性も感じが良かったから。

店に寄る人も、通り過ぎる人も笑顔が溢れていた。こんなに自分のカミーノって爽やかだったっけ?と一瞬考えたが、その爽やかさ、心地良さを作ってくれているのは笑顔で挨拶してくれる他の人たちだ。自分も笑顔は心掛けているけど、本当にありがたい。

さて、行こうか。今は11時40分。14時にはどこにいるだろうか。
標高を見る限り、Las Herreríasという町から急な登りが始まるようだが、どれだけのものかは実際に行かないとわからない。

隣町が近すぎて笑ってしまった。前の町から500mも離れていなかった気がする。ベガ・デ・バルカルセというモデルプランとガイドブックの双方に載っていた峠前の拠点の町だ。

ブラジル人が経営するアルベルゲ。いびきをかく人専用の部屋があるらしい。でも隔離は良いアイデアだけど、自覚のない人間が混ざっていたら何の意味も持たないという現実。

あれか…?あれを登るのか?山の上へと続く道が見えている。

不安要素があった靴紐を正午前に強く結び直した。回数制限があるわけでもないし、気になれば何度だってやり直せる。

左の小山の上に城跡が見えた。この旅での影響で城跡・古城フェチになりそうだ。

現在進行形で伸びる飛行機雲。

町から見えていた道を登るわけではなかったので、まだ焦らされている。他にもそれらしき山の道は複数見えているが、どの山・どの道を登るにしろ、それぞれの山に近付けば、そびえ立つ自然の威厳さを感じられる。の、の、登るの、た、た、楽しそー!!!

アルプス感。

他の牛のお尻を舐めている牛を撮ろうとしたら、

てめぇ何見てんだこの野郎と睨まれた。舐められていた方の眼光も鋭かったので、そういうプレイ中だったのだろう。そっち系は興味ないのに盗撮しちゃってごめん…。

この店にはパスタがあった。アイスの看板はどの店も同じものばかり。

ラス・エレリアスだ。いよいよか。でもアスファルトの道を登るのは楽しくないからやめて。

まずは下るっていうね。

自販機ないよな、あるわけがないよなとレストランのテラス席を覗いたら、韓国人の間抜け顔の旦那がいる夫婦を見つけたが、こちらには気付かなかった。

願い事を書いて、木に結びつけるっておみくじみたいだな。実際にインスパイアされているのかも。

お店はあったので飲み物を購入することはできたけど、コーラを一気飲みしたい気持ちを抑えて、そのまま進んだ。

One Day Bike…。

Horses…。馬…?

眼鏡を掛けたアジア系の女の子を追い抜いた。写真を沢山撮ることとか、オラの発音だとか日本人っぽい要素を感じた(バックパックは見たことないメーカーだったが)。また会ったら話してみよう。


花びらが舞い散る光景が美しいな…と悪くない気分に浸っていたら、とんでもなく巨大なうん●こが道端に落ちていた。何の動物だ。

結局アスファルト登りかよ…!車はあっという間に登っていくし、陽炎が出るような暑さなので、たまに吹く風だけが救いだ。

牛だらけだなこの辺りは。

アップダウンを繰り返したが、川の音はまだ聞こえ続けている。


休憩小屋に水場でもあるのかと予想したが、誰かのシャツが置かれているだけだった。

そしてここから本格的な登りが始まった。

自分は初日がないし、山道らしい山道はカミーノ初だな。とりあえず荷物が重たくて本当によかった。

馬に乗って巡礼をしている人がいて、その馬の糞が放置されているのだろうか。臭いと糞に群がる蝿が不快だ。

目つきの悪い韓国女子2人にアニョハセヨと挨拶したら返ってきて驚いた。その先にはジェニファーがいた。

そのまま登り続けていると家や集落が見えてきた。ここはまだ序の口といったとこだろうが、今の標高は何メートルだろう。

人を乗せていない馬たちとすれ違った。そういうことか。人力車のように登りの道で人を運ぶんだ。

La Fabaという町だった。標高は約900m。前の町からは300mほど登ってきたということになる。

休憩なしでももう少し進めたけど、今日は焦らず行こうとお店で飲み物も買った。優雅にね。

午後1時半、この水場が見える場所で休憩を取った。しばらくしてあのアジア系の女の子が登ってきたが、どうやら日本人ではなさそうだった。

登りはまだ存分に残っているから3時までに到着するのはキツそうだ。距離的にはあと5kmもないはずだが、400m登らないといけないから。

上の白い犬と違って、こちらの子にやたらと吠えられながら再出発。

種類自体はそう多くはないのだが、花が綺麗なのは良いことだ。

でもまた糞が落ちていた。最悪。


糞が見えなくても本当に臭くて、呼吸器にこびりつくようなその悪臭に、最悪じゃねーかカミーノ…と思っていたら、素晴らしい景色が突然目の前に広がった。
前に見えている紫は何だろう。ラベンダーか?

いや、ありえないでしょ…と息を呑むような感動があった。

 
 
 
 
 
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と思ったらまた糞が落ちていて、ここまで臭い山道は初めてだぞ…と高揚とドン引きのシーソーゲーム。

随分上がってきたな。


標高も当然上がったし、急な登り坂が終わって緩やかな道になったということもあって、さすがにシャツ一枚じゃ寒くなってきた。そして今見えてきたのは村かな。

今日のアルベルゲはさすがにベッドが空いていてほしい。空いていたとしても山の上だからWi-Fiやシャワーは多分満足はできないだろうけど。

半袖ばっかりっていうね。体感が違うから参考にしていいのかもわからない。

無加工だと紫色が強調されないというか、美しさが伝わらないけど、でも本当に綺麗な景色だった。山の上というのも含めて、爽やかで、より一層胸を打つ場所だった。


バルも寄らず、自販機もスルーして、前へ進んだ。良い匂いはしない村だし(それでも洗濯物が干されているわけだが)、水はあるし、ゆっくりでも進んだ方がマシだという判断。

集落を抜ける間ずっと牛の鳴き声が聞こえていた。

おじいちゃん巡礼者がスペイン語で勢い良く話しかけてきたがカミーノしか聞き取れなかった。でも上を指差したら納得していた。質問なんて限られているはず。

ここでパノラマ写真を撮っていたらカップルの男性の方が写真撮ろうか?と聞いてくれた。結構、でもありがとう。

早く目的の村が見えてほしい。これを越えた先にあればいいな。まあ、まだもう少し先だと思うけど。


自分が歩いてきた道を振り返るというのも時には良いものだ。きっと人生においても。

この特別そうなモニュメントが置かれているということは山頂かな。

人がいて正面からは撮れなかった。

その近くに設置されていたマイルストーンには160.948kmというサンティアゴまでの残りの距離が表記されていた。これは町の適当看板と違って信じるに値する公式っぽい。

いや、全然山頂じゃないわ。でも今になってスピードが上がってきた。時刻は2時50分。3時半までには着きたい。
残りの距離は知らないけど、山だから気をつけよう。ベッドを確保できないとシャレにならない。

またあった。ってか距離が細かい。前の場所から585mしか移動してないって中途半端すぎないか…?1kmだとか500mだとかでキリのいい位置で設置すればいいのに。(この先もマイルストーンによるカウントダウンが続きます) 

左の山の方までずっと道が続いていたらどうしよう…とこの光景を見て思い、地図が怖くて開けなかった。



ん!!!建物!? と期待を高めながら近付いていったが、目の前で見ると古い建物で、アルベルゲなどでもなかった。でもこの先に教会らしきものが見える。

おお、どうやら登りきったようだ。集落に到着した。

像は怖いけれど、峠の上から見下ろすというのは爽快感がある。疲労もあるが、そこまで難しくない難所で助かった。

おもしれーこの村!と建物を見ての感想。この独特の形状はケルト文化の名残りのようだ。

ここオ・セブレイロは住民30人ほどの集落らしいが、巡礼関連のお店が賑わっているので、寂れや過疎はまったく感じない。

石造りの建物の上に茅葺き屋根の帽子を被せたよう。

グーグルマップでチェックしてあったアルベルゲへ向かった。雨が降りそうだから急ごう。

明日の道は分岐になっているようだ。きちんと見ていないので理解しないまま通り過ぎた。

こちらから見ると建物自体に面白さは感じないが、峠の上の村に到着したというなんとも言えない高揚感があるので問題ない。

ここだ。外にいるのは受付の順番待ちか…?(違いました)

受付を終えてベッドルームに入ると、めちゃくちゃ多いな…んで誰も知らねえ…と少し滅入っていたが、シン!!!!と見慣れた人物の姿を見つけて驚いた。ここにいるとは微塵も予想しておらず、ぴょんぴょん跳ねるくらい嬉しかった。ソノコではなく、台湾のボボという子と今は一緒らしい。でも、飛ばすと言っていたシンがなぜここにいるんだろう。もっと前にいるかと思っていた。もしかすると、のりゆみ達より後ろにいるんじゃないか…?

どのベッドにも荷物が置かれているし、ベッドの空きが一つもなくないか…?と不安になったのだが、なぜか手前のベッドの下段が空いていた。上はブラジル国旗で主張していて騒がしそうだが今は姿はない。マレーシア夫婦の旦那さんの姿はあった。

美味しくないチョコボールを食べていたら今度は島村さんを見つけた。2,3日前にのりゆみと会ったが2人を夫婦と思っていたらしい。あの愛想の悪いなっちゃんも一緒にいたようだが、翌朝早くに彼女は出たので2人とは離れたと。
島村さんはまだフランス人夫婦たちと歩いているというか、もう完全にチームになっているみたいだ。オーストラリア人の男性は18日に息子がバルセロナ在住の女性と結婚するから家族もスペインに来ていて、それまでに間に合わせたいと。フランス人夫婦はなんとナント(フランス西部)から歩き始めており、スタート日は3月15日ということだった。
モデルプランより長く歩いてきた自分に、今日は大変だったでしょう山登りと~と優しい労いの言葉を掛けてくれた。
夜ご飯のお誘いもしてくれたが、シンがいるので、友達がいるんで…と断った。申し訳ない。

初めて見るアジア系の女性が白人男性に『わたしの年齢当ててみてクイズ』を要求している会話が聞こえた。アジア人女性この質問好きすぎぃー!別に自分は構わないけど、多分一部の白人女性は苛立ってると思う。

シャワーは6つブースがあったが、全裸でちと移動しなければいけないタイプだった。途中からヌルいお湯しか出なくなったので間一髪だったのかもしれない。洗面台の水は芯まで冷えるような水温で出てくるのは山なので予想内。
部屋に戻ると序盤で一緒にスーパーに行った韓国人夫婦の旦那さんが手を振ってくれて、奥さんが戻ってきたら彼がいるよと教えていたので、アニョハセヨー!!と手を振った。
なんだか知り合いが増えてきたな。知らない人も多いんだけど。

洗濯については心底迷ったがしなかった。今日は絶対に乾きそうにない。でも予備も無くなっている。明日洗濯機を使おうか、いや、きちんと干せれば使わなくてもいい。でも状況次第では、最悪死ぬ思いで同じ物を着るしかないだろう。
それとはまた別の問題にはなるが、5本指ソックスは3セットあったのに減っている気がする。

そしてハプニングというか、自分はこの宿でミスを犯していたことが発覚した。
というのも、ベッドを間違えていたのだ。番号があると思っていなくて、んで手前が残り一つだと勘違いしていたが、部屋の中央にある上のベッドにもう一つだけ空きがあった。職員とイタリア人の男性巡礼者が来たときは、恥ずかしいというか、罪悪感というか、なんとも言えない気持ちになった。
最初そのイタリア人男性はそのままでいいよと言っているのかと思ったが違った。心から謝罪をした。でもナイスガイなおっちゃんで嫌な顔は一切見せず、グラッチェ!と言われてハグをした。シーツを敷く前でよかった。

移動した先のベッドの隣(密着している)のわりと若めの坊主男性は寝ていたのだが、かなりいびきをかいていた。こういう大型はもう完全に運だな。

それにしてもシンはどこに行ったんだろう。中華圏で仲良くやってる感じなのかな。なんて考えていたら戻ってきて、夕食を一緒に食べようという流れになった。今は何をしてるの?と聞いたらレストランに行ったのに財布を忘れたとのことで、I’m bakayaroと言っていた。
アリアリファミリーもいた。みんなニコニコ笑顔で迎えてくれる。スペイン兄貴もいた。意外と知り合い多いじゃないか。 

シンが戻ってきて、スタンプを貰いに行こうと提案されたので教会に向かった。この村に来たときに既に目にしていたサンタ・マリア教会は、9世紀に建てられた巡礼路で最も古い教会。

やっぱり気心の知れた相手との会話は楽しい。でもシンは飛ばすどころか、今日は13kmしか歩いてないらしい。
ソノコとは一緒に行動していたわけではなく、たまたまアルベルゲが一緒になったというだけだった。朝の早い彼女が珍しくシンが出るときにも寝ていて、それっきりと。

教会のあとはスーパーに行った。クロワッサンやクッキーなどを買った。

なぜか瓶に入ったピーチジュースで乾杯をした。シンは明日自分の後ろをついてくるということだが、でも目的地はきっと20kmと30kmといった感じで全然違う。
せっかく仲間に再会できたからやっぱり変更しようかな…どうしようかな…と迷ってしまう。完全に30km歩くつもりだったから。

猫専用階段。

アルベルゲに戻って、フロント付近のコンセントで充電しようとしたら、先着のアフロ男性が一つ横にズラしてくれた。彼はスマホを充電しながら日記を書いていた。
Wi-Fiの設定がめんどくさいというか、自分はどう足掻いてもSMSを受け取れないからシンが助けてくれた。でも盗撮もされて、こっち向いてと言われて間抜けな顔を撮られてしまった。

ここに着いたときにも入口付近にいたガールズグループがこのとき受付していたのだが、扉を全然閉めないから冷気が入ってきてめちゃくちゃ寒かったので、閉めに行くとシンにお礼を言われた。
このタイミングだったかは忘れたが、小さなチワワが外で待っていて、本気で震えている姿は可愛かったけど、可哀想でもあった。

イタリアのおっちゃんが出かけるときに握手をして、チャオ!という流れもあった。優しい人だ。なんだか前も見たことあるような気がしてきた。

えりこさんとメッセージのやり取りをした。ゆみのりはAmbasmestasに今日は滞在するらしい。気付かない間に抜いていたんだ。そしてえりこさんはその町の5km手前にいると。
おならをしながら、フィステーラはバスで行くかもと言っているシンの様子を伝えると、「もうちょっと諦めてるんじゃない?笑」と返ってきたが、文字だけでも、残念に思っているのが伝わってきた。
でも彼女はフィステーラまで歩くことを諦めてないので、これからペースを上げるために禁煙もしているらしい。自分を追い越す勢いでこれから歩くとのことだった。

なんだかまた迷いが浮かんできた。厳しいと考えていたフィステーラも歩けるかもしれない。後ろにいる女性が行くと言っているわけだし、その女性が「りお君歩けるんじゃない?」とも言ってるし。
でも、まだわからないなら、決め兼ねているのなら、とりあえず1日1日限界近くまで進むしかない。でも行くとなるとまた計画を変更しなければいけないし、予約のキャンセル代も掛かってしまう。

みんなと笑顔を交換するのはやはり気持ちが良い。
しかし自分以外もSMSを受け取れない人たちが困りまくっている。なんでこんな面倒なシステムを導入したんだろう。簡単には使わせないためだろうか。
香港人はいないが、台湾人が2人いるとシンが教えてくれた。ボボとさっき白人男性と話していた子かな。そのボボ(20代のぽっちゃりした女性)とはちょっとだけ話した。ニイハオで挨拶したら中国語できるの!?というような流れになって、謝謝や数字だけだよとちと披露すると 「スゴイデスネ」と日本語で褒められて、別れるときは「ジャアネ」だった。

そして19時頃、シンと一緒にディナーへ行った。レストランはお土産屋の奥。

残念ながらお名前プレートに日本人名はなかったです。LISAだとかMARIEみたいな洋風な名前はそのままイケるけど。

やっぱりいつものを注文しちゃうよね。普段はない品目もあることはあったのに。

頼んだわけではないが、シンが片方のコップが古いのでこっちを使いなと替えてくれた。香港はいつもこういう古いコップだから大丈夫と。

「エビデイポテイトでハッピー」「ハッピー過ぎる」というやり取りがあった。
でも自分もシンと同じようにパスタだけにすればよかった。空腹を我慢できずに先程パンなどを食べていたから苦しくなった。巡礼者メニューを当然のように頼んでしまった。

ここのパンが冷たくて硬かったのは残念だったが、会話は本当に楽しかった。さっきのチワワの真似もしたし。
でも明日30km歩くと思うとシンに伝えると寂しがっていた。別れるのは自分も寂しい。だが進むペースが違うと難しい。

サンティアゴケーキは完全に忘れられていて、それをウェイトレスに指摘して、わかってるよみたいな合図が返ってきても、また忘れていた。
結局来たは来たが、待っていた時間のわりには微妙だった。水を頼んだときに彼女また忘れるよというネタは笑えたけど。

カミーノは楽しい?と聞いたら、楽しいと返ってきた。香港では出会えない人たちに出会えているからと。

カミーノと日本の巡礼路の違いを以前教えてと言われていたんだけど、タイミングを逃したまま忘れていたので、このとき改めて教えた。
沢山の人に出会うのは楽しいけど、ときに出会い過ぎて疲れることがあると言った。オラブエンカミーノオラブエンカミーノオラブエンカミーノオラブエンカミーノ。
それと毎朝起きてテントから出るときのbrand new dayが始まる爽やかさと比べると、カミーノの他人のいびきや物を落とす音でやれやれと起きるのはあれかな、静かなのが好きだからと言った。
別にネガティブなことばかり述べたわけではないが、いろいろと、充分に、理解してくれた。

ソーラー充電の機能が付いたG-SHOCKのリミテッドエディションを着けているシンはただ歩きたくてカミーノに来たらしい。

食べ終えるとショップの方で韓国人の自転車巡礼者にシンが話しかけられて、香港と答えていた。君も香港か?いいえ、違います。名前?リオです。と一連の質問に答えると、ベストネームだと言われた。カムサハムニダ!

文字通りの意味で死にそうなほど寒かったので、2人叫びながら走って帰った。シンはお得意のよろしくない言葉を吐きながら。

雲の色が赤っぽくて不思議だった。時間的に夕焼けには早いし、光を受けてというよりは砂嵐のように見えたから。

歯磨きが終わる頃にバスルームにシンが来て、外の景色を撮りたいなーとも思っていたから外側に回ってシンを盗撮した。

お返しと言わんばかりにシンも自分の写真を撮るから、ふざけてポーズを取ったりした。まずはセブレイロの舞

隠しきれないボヘミアン・ラプソディ感。もうちょい体反らしてれば完璧。

まあ、そんな予感はしていたけど、扉が外からは開けられないシステムで、結局正面玄関までぐるっと回った。戻ってくるとシンから10枚撮ったよと言われた。

外に回るときに握手をしていたチーム島村のフランス人旦那は、若い頃インドで修行をしてましたって感じの髭を蓄えている。部屋に戻ると彼がベッド近くにいたのでボンニュイと言ったのだが、ベッドの場所自体自分の奥(目の前)で面白かった。
彼らも歓喜の丘の前で泊まるらしい。自分もそうだと伝えた。

Wi-Fiは部屋では通じずにレセプション付近のみという通信環境あるある。そしてベッド近くのコンセントが占領されているので夜の充電もできない。
足を触っていたら小指裏から水が溢れてきた。久しぶりに水が溜まっていたということだ。

隣は坊主のイケメンと思っていたが、よく見るとなんだかひょうきんな丸っこい男性だった。寝袋寝顔(限定)イケメンだ。
でもハローと挨拶してきた感じは悪くなかったというか、憎めないバカっぽさを感じた。

今更距離を抑えたところであまり変わらない気がする。早く到着した場合はどうしよう。あれだったら波を追い越してもいい。歓喜の丘で泊まれるよう調整すればいいか。サンティアゴに着いて知り合いたちと過ごすのもいい。
というのは堂々巡りで散らかったままの悩みの数々。でも、えりこさんが元気になって、しかもやる気だから迷う。進むべきか、進まないべきか。どのくらいのペースで進めばいいか。

他にもそうしている人がいたから枕の位置を逆側に変えた。隣だけでなく、斜めもうるさいっぽいし。

隣の彼に出身を聞かれた。彼はブルガリアということで、ナイスだねと言うと、ジャパンの方が良いよ!だとか、今日は疲れた~だとか、おやすみと言ったらまだ寝ないよ!だとか。
もう寝ている人もいるのに動画を音を出して再生できるのはすごいな…といろんな意味で思った。ロザンカもあんなだったし、これがブルガリア人の国民性なのだろうか。
その後、電話をし始めたのには更に驚いた。先程よりもっと寝ている人は増えているのに。そもそも10cm,20cmの距離に寝ている人の顔があるのによく電話ができるな…。

正直自分がどうしたいのかがわからない。高野山への町石道のように、歩けばよかったという後悔に近い感情をあとになって抱きそうな気もする。
プラン作りがとても難しい。宿泊できる町と町が開いている区間もあるし、前にいる人のことも後ろにいる人のことも気になるから。

9時半になった。寝ようかな。寝ようとするとこのブルガリア人が障害になるけど。


今日の歩み
Villafranca del Bierzo – O Cebreiro / 30.5km


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