5月11日。
迷っていたが隣の部屋の誰かがトイレに行く音が聞こえたので4時40分に起きることにした。寝足りないとは感じるが、他の3人のおかげで、この旅で最も静かな夜を更新した。
深夜1時や2時でも修道院の鐘が鳴っていたことには驚いたが、この快適な夜の間にモバイルバッテリーもフル充電できた。優勝だ。
5時半前、こちらの部屋はまだ皆寝ているのに、隣の部屋からは話し声が聞こえていた。
30分になって1階へ下りると、多分隣部屋からのおっちゃんが2人いた。
パッケージは子供用お菓子そのものだが、ちょうどいいサイズの菓子パンだった。ヨーグルトはめちゃくちゃ美味しかったし、クッキーも口の中へと放り込んだ。すぐには休憩できないかもしれないし、したくないかもしれないから。
小学生の算数の問題かのように、おっちゃんが1人下りてきて、1人上がったあとに、もう1人上がった。その残っていた1人から麦わら帽子をバックパックの後ろに結んでくれポルファボールと頼まれた。
なんだか難しかったけど途中で落ちないことだけを願う。落ちてるの見たくないよ…。靴か足を指差してI have problemという文言だけ英語で言っていた。そして彼だけ一人先に出発した。
それからグループが全員(5,6人くらいだったかな)下りてきて、1人がスペイン語は話せるかい?と話しかけてきた。「ノー」「コリア?」「ハポン」「オー、ハポン!ペリグー」
6時10分頃にみんな宿を発った。
残ったオレンジジュースは捨てずにペッドボトルに入れた。自分の巡礼中あるあるだが、ポケットからスマホを取り出しまくるので指のさかむけがどうしても酷くなってしまう。顔をしかめるくらいには傷みが増していたので絆創膏を巻いた。今日は寒くて曇りっぽいので日焼け止めは塗っていない。
1人のおっちゃんが忘れ物で戻ってきた。ポルトマリンまでは自分と一緒だが、彼らは多分その先まで進むっぽい。だから早く出るんだろうな。全員荷物サービスを使ってはいるけど。
6時17分に出発した。当然白い息が出る。6時には出られなかったけど問題ないでしょ。
バス…。嫌な予感がする…。(まだ暗いので残念な写真が続きます)
ほとんど矢印は確認できていないけど、それっぽい道を進んでいく。
徐々に白む空。
そんなに吠えないで…というくらい職務を全うする番犬がTeiguinという集落にいた。放し飼いされている犬より、鎖で繋がれている犬の方が明らかに吠えるのは心の余裕だろうか。人間にも当てはまりそう。
矢印なんて…いらないんや…。でも暗くて見落としてたらどうしよう…と少し不安になっていたが、マイルストーンを発見。
それにしても全然追いつかない。速いおっちゃんたちなんだな。
7時前から登りは疲れちゃいますよ。
しかしちょうど7時に登り終えると、茜色の空が広がっていた。善通寺の夕焼けを彷彿とさせるのは誰のおかげか。
田舎の村の教会の敷地内には必ずといっていいほど墓地が存在する。カッコウは今日も元気に鳴いている。
今日100kmを切ったとしても、それはサンティアゴまでの距離だから、ムシアまで歩くならまだ200km以上残っているということになる。複雑だな。
歩き旅が終わったらどっと疲れる可能性は大いにあるが、でも30km歩くよりは観光の方が疲れないだろう。どんな日々が待っているのやら。
美しい景色はいつまでも続かないからこそ美しい。その一瞬の儚さに人は心を揺さぶられる。
登りの先には基本下りの道あり。でもまさか今朝こんなに上り下りするとはな。そしてサリアまでは12km以上あるんだよな。大変な朝だ。
7時半で約6km。まあ、予想通りの5kmではあった。
犬が吠え続ける声がやまびこのように響いていたが、距離が近付くと自分も吠えられた。
小さな屋根付きの何かが見えて、日本だったら地蔵がいたりするよなと思っていたら、この小さな石像も合掌していて、こんな場所で見るなんて!と驚いた。(よく見ると地蔵っぽくはなかったが)
ってか考えてみたら日本は全国各地、いろんな道端にお地蔵さんがいるんだよな。道祖神的な役割も担っているとは思うが、それってなんだか面白いなと思った。
自分が通過してから5分後くらいに、さっきの犬の鳴き声が聞こえてきた。誰かが通っているんだろうな。
なぜか固まったままのトカゲ。
何かの生き物の糞が落ちているのも見慣れてしまった。エビデイウンチ。嗅ぎ慣れてはいない。
急に自転車女性が後ろから来てびっくりしたのは8時前。
写真は本物かと見間違うほどリアルに描かれた牛の板が前方に付いていた耕運機のような何か、を置いていたからくりハウス。
今日は植物が気になって何枚も写真を撮っている。いつも撮っているけども。
牛って物凄く見つめてくる。そしてこの牧場は囲いすら無い。そりゃ糞も落ちてるわ。
からのサプライズ。ちょうど動画を撮影していたのだが、えっ…?と予想外の展開に動揺した。そのまま追いかけられ続けていたら走って逃げたかもしれない。
久しぶりに車の音が聞こえてきたら、その先に集落があった。ガリシア地方に入ってからというもの、ガイドブックには名前が載っていない小さな村が続く。
写真の犬ではなく、噛み付かれる…!!と感じるくらい至近距離まで突進してきた黒い犬が怖かった。同じ家の飼い犬。
矢印通りに左へ曲がる。
角がある牛は珍しいような。
右が特に怖かった。
あれ、ここが正しい道なのか自信がなくなってきたぞ。
いや、巡礼路にしては草が生い茂りすぎている。
うーん…強引に進んでみたがやっぱり違う。引き返そう。でもどこで間違えたんだ。
どうやら牛の方に来たのが間違いだったようだ。奥に道を見つけて、その道を誰かが歩いているのが見えた。足元を濡らしてしまって恥ずかしいな。時間と体力もロスしたし。
うん、矢印あったよね…?と自分が見ていた黄色い矢印と、その方向が差していた先程の道を再確認した。絶対に間違う人がいるはずだけど、それでもショックだ。これまで順調に進んできただけに尚更。
これが奥にあった正しい道。
サリアに早く着きたい。そしてなぜかとんこつラーメンが食べたい。
チロルチョコも食べたい。
馬小屋のあるアルベルゲ。
ハンモックもあった。
ちょっぴり落ち込んでいたのでひたすら歩き続けていたら、9時前に街が見えてきた。でもサリアに着いてもそこからまだ残り20kmあるって恐ろしい。
久しぶりに朝食セットもいいかもな。まだ街に着いてないけど。
3人グループと朝の挨拶。トレッキングパンツがまだ若干濡れているのは、茂みで立ちションしたんだろうなと八割以上の人から思われそう。
この3人ともサモスから来ているなら結構早いよな。でも多分サモスからではないと思う。分岐の短い方のコースも既に合流しているはずだから。
9時9分に今日最初の地元民と遭遇。ブエノスディアス!
また別の3人グループが手前のカフェで食事を取っていて、ブエンカミーノと言われたから手を振りながら同じ言葉を送った。今日は何度でも会いそうだけど。
自分も早めに店に入っていいなと探したが、もう営業していない店と、今オープンしているのかわかりづらい店の連続だったという悲劇。そのまま進んだ。
サリア突入。
9時20分。この街のアルベルゲに宿泊していた人たちももう出発していることだろう。
横断歩道の向こう側にいた自転車カミーノのアジア系女性が近付いてきて、Are you Japanese?と話しかけられ、英語できる?と聞かれた。
どうやらクレデンシャルにスタンプが押したいので、インフォメーションセンターがもう開いているか知りたいとのことだったが、わかんないごめん。彼女は台湾の人だった。東アジアの人だと一目で日本人だと判別できる模様。
アルベルゲ兼カフェテリア。1人の巡礼者と入れ違うように入店したが、その男性はそのときが出発だったのかもしれない。
イッちゃいますよ朝食セット。
割れるんじゃないの…?ってくらい激しくお皿を扱っていた長身の店員さん。
左奥はサッカーの試合の賭けができる機械。だから18禁になっている。
パンプローナやログローニョなど通過してきた街は、もう知っている街。
スモデナランハはそんなに美味しくなかった。機械が粗いのかな?いや、オレンジの質か。
トーストだけ時間が掛かったが、やっぱり温かい料理は美味しい。サクサクを超えてバリボリな部分もあったけど。
これが3分の1休憩。店内はマイケル・ジャクソンのBillie Jeanがサンプリングされた曲などが流れていた。
先程濡れた際に種が付着していて不快だった。彼らの生きる術なんだろうけど。
再スタートは10時前。ガラスから差し込む光が普通に暑かったから日焼け止めとサングラスと帽子をセットして。
さあ、追いかけるかアヒルを。いや、モデルプラン組を。
登ってます。
この街から旅を始める人も多いのでアウトドア系の店も豊富だったし、クレデンシャルを発行してもらえる場所やバスターミナル等の施設も充実しているとのこと。
前はブルガリアカップルじゃないか…?という予想は当たっていた。彼らが階段を登り終えたら振り向いて自分を見つけ、ヘーイ!とブルガナちゃん。
昨日ロザンカに電話したらしい。彼女はもうブルガリアにいて、Ryoによろしくと言っていたみたい。このカップルとも沢山会ったな。
アルベルゲの数がめちゃくちゃ多かった。えりこさんは今日はサリアを目指して、多分のりゆみ夫婦も同じ。その日本人カミーノファミリーはどこに泊まるのかな。
地元の人にブエンカミーノを言ってもらえると本当に幸せな気持ちになる。ありがとう。
不在。
右は学校。
その先にあった教会に見惚れていたら、危うく矢印を見落として、曲がり損ねるところだった。危ない。
急坂を下ってきました。ここまで傾斜があると自転車も楽しさより恐怖が勝つだろう。
知り合いに会いたいな。同じ巡礼者でもオラを交わすだけの人より、おおお!久しぶり!!と盛り上がれる相手の方がそりゃ楽しいし、最高だから。多分10km先くらいにいるはずだ。
線路だ!良いな。電車通らないかな。
いかにも普段着っぽいパーカーやコートを着ている人の姿があった。この写真に写っている4人グループは散歩だと思うけど、軽装で歩いている人が確実に増えている。ポルトマリンを含め、これからの宿のベッドの空き具合については考えたくないな。
大音量でスピーカーから音楽を流している人が最後尾にいたグループ。こういう人たちがゴールまでわんさか出現するとなるとどっちらけだぞ。
でも景色は悪くない。10時41分。
ミニバスまで停まっていて、まるで蟻のサンティアゴ詣やんと思った。三割は増えているだろうか。後ろにいる日本人たちに宿は気をつけてねと送っておこう。
知り合いと距離が近付いても、カフェなどで食事をしていたら、気付かぬ間に抜いていたというようなこともありえる。
またもやチロルチョコ食べたいゾーン。
マットを持ってる人も随分増えた。でも要らないことに気付いても最後まで持っちゃう距離だな。
手ぶらの女性2人おばちゃんにオラと挨拶したら、英語で話しかけられたので、今日スタート?と聞いたら、その人たちは9日か10日目ということだった。それは失礼。レオンからだろうか。
初日組は大きめな荷物の人たちだな。まだオラやブエンカミーノに慣れていなくて、おお…来た…!これが噂の…!みたいな反応から驚きが伝わってくる。
ゲートを閉められたのかと思ったが、道は右だった。
いやいやいやいや、本当に多いぞこれ。3割ではなく4割かもしれない。こんなに大勢の人が歩く姿を見るのはバスツアー(ライトカミーノ)に巻き込まれて以来だ。
これがファイナルライトカミーノの皆さんか。となると、静かな巡礼はもう終わりだろうか。ここを歩くってことはもう証明書を貰うってことだろうし。
自転車慣れしていないのも見ていてわかった。歩行者でも、後ろから抜く人がいることを知らないのでなかなか譲らない(気付かない)という。
知り合いがほとんどいない…でもあれだよな、700km近くきちんと歩ける人がお昼前にこんなとこにいないわな。
いくら抜いても人が途切れない。もうこれ五割増しだろ。150%ですよ。
あ、いや、バスがあった。
そして結構な数の人が乗り込んでいた。しかしバスへと戻ってきたある白人のおばちゃんは第一声がHoly S**t!で、全部歩いてきたなら、終盤ではなかなか出ないような言葉だなと思った。
それはともかく、バスを使いつつスタンプを集めたらどうなるんだろうという疑問が浮かんだ。極端に間隔が空いていたりと不自然じゃなければ問題ないのかな。
ぬか漬けのような匂いがしてきた11時40分。なぜこう毎日酷い臭さに襲われなければならないんだ。
うん、歩き始めの人ってよく写真を撮るよね。全部歩いている人の中にも最初は沢山撮っていた人はいるだろうな。でもだんだんと疲れて控えめになってきて、ディナーの集合写真だとかよっぽどのことがない限り撮らなくなるみたいな。
もう20km以上歩いたがまだ波に追いつかない。再会はアルベルゲでかな。
寒くなってきたのでシャツのボタンを閉めてから、カフェの入り口まで来たが、パンケーキの人気店のように混んでいたし、そのまま去った。客をちらっと確認したかっただけなのかもしれない。
疲れてはいるけど歩き続けられないほどじゃないから、それより今は前を追いたい。
車で移動しながら、写真だけ撮りに下りてくる人がいて、その人と目が合ったので笑ったら「コリアン?」と話しかけられた。彼はカナダの男性で、君はwhole wayを歩いてるのかい?と質問された。「あなたは今日スタート?」「違う方法でね」
それから、さあ行ってくれ!君の姿も撮るから!と小さな川に架かった小さな橋を渡る際に言われた。
また糞が落ちていた。エブデイウンチ。エビデイコリアン。
遠くに風力発電の風車が、前に人が、久しぶりに見えた。一応顔見知りではあったが、あまり話したことはなかった。前会ったのはいつだったかな。
そう珍しくはない、今自分がどこにいるのか知りたいような知りたくないような現象発生。
さっきのカナダ人男性がまたいた。ハロージャパン!と言ってきたので、ハイカナダ!と返した。
歩きながらカフェの客席の方を見ていたら、一人の男性が駆け寄って来た。めちゃくちゃ嬉しかったのは、それが誰よりも再会したかったベネズエラのヘススだったから。ヘスス!!!!と叫ぶくらいに。
ガリシアは素晴らしいよなと言うので、(匂いはあれだけど景色はまあ…)最高だと思うと返した。いつサンティアゴに到着するのか聞いたら、わからないけど14か15ということだった。
「今日はどこまでだ?ポルトマリンか?」「そう!」「俺たちも目指してみるよ」と言っていた。ヘスス1人なら余裕だろうけど奥さん次第だよな。
少し話をして、上向きの握手でガッツリと手を組んで、また会おう!!と別れた。心からまた会いたいと思う。そして奥さんに彼は最高だと伝えたい。
会った回数が彼より多い人は沢山いるけど、彼とは繋がりは特別だった。でも、ほんの一瞬を逃せば通り過ぎていたのに面白いな。これも縁だよな。
雨がぽつぽつと降ってきた。
先程のヘススとの会話で、フィステーラに行くかどうか迷っていると話したのだが、サンティアゴまでの旅なのにその先の話題を出すのはちょっと気が引けるというか、高まっているゴールへの感動に水を差すようで悩ましい。同じようにフィステーラやムシアまで行く人がいれば問題ないのだが。
でもとりあえず、確実に追いついてきてるぞこれは。更に再会が待っていることだろう。
12時41分。GALICIAと書かれた何かの写真を撮っていたら、再び現れたカナダマンがあっちだよと道を指差して教えてくれてた。わかってるけどありがとう!
充電が41%。休憩を取っていないから減る一方だ。そしてポルトマリンはどこなんだろうとグーグルマップを開いてみたが、まだまだだった。
知り合いのいるカフェとかで休憩を取れたら最高なんだけどな。考えてみればさっきのヘススがいるカフェで休憩を取ればよかったんだけど、進めるときに止まりたくないってのもあるし難しい。
100kmと746m。もう少しで2桁だ。そういえばスマホの状態が直ってよかったな。一時期は途中で壊れやしないかと不安だったのに。
このカフェは多分知り合いは誰もいなかった。カナダ人がなぜか変顔をしていたけど気にせず先へ進む。
100…?
慰霊碑的なモニュメントを見るおじさんたち。
そして100kmちょうどのマイルストーンを発見。落書きでびっしりと埋まっているが、それを含めて特別でメモリアルだ。
またカナダがいて、どのくらい写真撮った?と聞いたら毎日100枚は撮っているとのことだった。もしかして彼も最初は歩いていたけど、怪我でもして車に切り替えたのか。
さあ、100を切った。興奮はないけど、元気です。
社会の教科書で日本人にもお馴染みの高床式倉庫。ガリシアにはこうしたケルト文化の名残りが散見される。
今はそんなに人が増えたとは感じない。あの集団はバスによる限定的なものか。
いったいどこから現れたんだというくらい知らない顔ばかり。どこから現れたんだ?
このとき前を歩いていたのは娘が写真を撮りまくっていた4人家族。多分今日がスタート。
嗚呼、ガリシア地方よ。
間違っているとかじゃなくて、わざと車道を進む人かな?と思いながら見ていたら、程なくして間違いに気付いてOh!と大きな声をあげていた。迷っていたけど声を掛ければよかったな。かなりわかりやすい矢印が地面に描かれていたから、まさか見落としているとは思ってなかった。
それにしてもマイルストーンへの落書きが増えたなと見ていたら「ジーザスはサリアからスタートしていない」と皮肉の落書きメッセージがあった。自分が一ヶ月掛けて長い距離を歩いてきたのに、ゴール目前で現れて、同じじゃないのに同じ旅を完結させようとしている人たちにイラッとして書いたんだろうな。
でもまあ、そもそもジーザスはこの道を歩いてすらいないと思う。
あと4kmってとこだろうか。休憩をすべきか迷う。充電は32%だし、おしっこがしたい。でも体力的にはまだ進めるし、立ちションは突然自転車が来るから恐ろしい。
はい、野外。写真の手前の人が来ない茂みで無敵になってしまった。充電を置いておけば。ってか全然追いつかないな。みんな早いわ。
そして13時27分、さすがに疲れてきたなタイムが始まった。トースト以降ノンストップだもんな、そりゃ疲れる。でもまだ行ける。充電もぎりぎり持つだろう。最悪モバイルバッテリーで充電しながら使えばいい。
また横を通り過ぎる際にカフェを覗いたら、韓国人女子のポップが、初めて見るドイツの肌が黒めの男性と出てきた。そんなに絡んだわけではないのに、リオという名前を覚えていて少し驚いた。
毎日30km歩いていると話すと14日に着くの?と聞いてきた。いや、多分15日に着いて〜とフィステーラのことも話したら、あなたは行くべきだわと言っていた。
ムニシパルに行く?とも聞かれた。ノーアイデア。めっちゃ安いとかなんとか。終わったらポルトガルに行く?と次々に質問が飛んできた。いや、スペインだけ。
See you thereと彼女たちは前に行ったけど、余裕で追い抜ける速度だったので、なんか気まずいな…どうしよう…と感じていたが、下の写真の店のアクセサリーか何かを見ていたので良い感じに抜けた。
あ、ポップにドイツ人おじいちゃんのこと話せばよかった。
町と牛が見えてきて、牛の集団移動とすれ違うことになったが、道幅は広いので立ち止まる必要はなかった。
最後尾は牧畜犬。お利口さんだ。
ここまで来ても、一度も見たことのなかった人が多い。スタートも違えばペースも違うから、当然っちゃ当然だけど。
またもやカフェを素通りした先に、韓国人の若者たちっぽい後ろ姿を見つけた。
その予想通りシンジュたちだった。彼女が一番最初に気付いて、リョー!と手を振ってくれて、追いつくと、カミーノのイヤリングとネックレスを買ってつけてみたの!可愛いでしょ?と見せてくれた。
クーは肩にGoProっぽい物を付けていて、ボンからは「なんで誰かと一緒じゃないの?」と質問された。韓国人この質問好きすぎぃー!!まあ、ビルド&スプレッドさ…と答えた。フンはリーたちと完全に一緒なのかな。
アルベルゲは予約してるの?と聞いたらしてないとのことだった。ってかボンはこのカップルとまだ一緒にいたんだな。新宿(シンジュ&クー)は付き合ってるんだねとこっそり話すと、でも秘密だよと言われた。だ、誰に対してだ…?
下り坂になって男子2人が走り始めたから、シンジュに彼らはなんで走ってるの?と聞いたら、下り坂は走った方がいいからと返ってきた。リョーも走ろ!と誘われてちょっと走ったけど途中で止めた。
彼らが走っていく(巡礼者の中ではかなり浮いた)姿を斜め前で見ていた男性と目を合わせて笑った。コリアンはなぜ走るのかわからないんだと言うと、君は?と聞かれた。どうも、ジャパニーズです。髭を生やして、恰幅がまあまあ良い、優しそうな感じの20代後半か30代の男性だった。
彼とかなり長いこと会話をしながら楽しく歩いた。彼はスペイン人で、名前はヘスス。(君はカミーノでジーザスを見つけたねと言うから、I’m lucky!って言っといた)
レオンからスタートしたけど、でも休みがもうないから、バスでサンティアゴまで行くとのことだった。
日本に行きたいと彼は言っていた。以前テレビで猿が温泉に浸かっているのを見たみたい(多分地獄谷野猿公苑のこと)。
彼はスペインの南の方に住んでいて、グラナダとかそこら辺ということだったので、サンティアゴの後に行くよと教えるととても嬉しそうだった。
フィステーラに行くとも話したら、ボイルしたタコがおすすめだと教えてくれた。「ワインもおすすめなんだけど、好きかい?」「まあまあ好きかな…(あっ)」
彼は親切にポルトマリンについてもいろいろと教えてくれた。かつて旧市街があったけどその場所に人口の湖が作られて、上の方に新しい町が作られたんだとか、そのときに教会は移築されただとか。
本当に良い人だったんだけど、なんかこのままだと一緒にワインを飲まないといけない流れだ…と怖くなって(口は災いの元ですすみません)、友達を探さないといけないからまたね、会えてよかったよ!と別れた。今日2回目のヘススとの握手です。
湖の上に町へと架かる橋があったのだが、歩道が狭くてみんな一列で歩いていたのでスムーズに進めないという焦らしプレイ。
だが視覚的な点で言えば、この湖と橋のある光景はカミーノ中トップクラスに印象的だったので今もしっかりと覚えている。とても綺麗な町。
正確には人工的なダムらしいので、かつての家屋などが沈んでいるのだろう。
宿泊する町に到着したということは、そう、アルベルゲくじのお時間です。
はい、このアルベルゲを引きました。
おばちゃんオスピタレロが案内してくれたが、スタンプを押す際に、昨日の修道院のスタンプを指して、グランデ!と言っていた。確かにグランデだから笑うしかない。
部屋に入ると隣のベッドで1人のおっちゃんが寝ていた。自分のベッドは下らしいが、その上はもう荷物があるから若者かな。おっちゃんは半分寝たままオラと挨拶してくれた。でも寝続けているから静かに到着後の作業を進めた。
シャワーの水温は問題なかったけど、シャワーヘッドがフックに掛け辛くて無駄に困った。部屋のコンセントも一箇所だけっぽい。
上のベッドはやっぱり若者だった。足が自分と同じくらい細い白人の20代男性。最初イケメンだなと思っていたけど、後でよく見たらそうでもなかった。でも彼の笑顔はとても爽やかだった。
久しぶりに立ちくらみがした。休憩も取らず、特に何も食べず、歩き続けてたもんな。ここのカフェにピザがあるみたいだから食べたいけど、今食べてしまったら夕食で死ぬから我慢。
えりこさんからシン+のりゆみに再会する瞬間の動画、サリアで4人で食事を取っている写真が送られてきた。
この先の計画上(宿がある町と町の距離事情で)、自分は明日モデルプランより進まない予定だったので、完全に明日追い越されるものと勘違いしていて、繰り広げていた会話のスクショがこれ。
どっちもふざけた会話で、明日すれ違うぜ、首洗って待ってろとも言われたけど、明日は追いつかれませんわ。首は洗わないでおこう。
レカとか他の知り合いも多分この町にいるんだろうけど、ただでさえアルベルゲの数が多いし、泊まっているアルベルゲが違えば同じタイミングで町の同じ場所にいない限り出会いようがない。また残念ながら自分が泊まっているこの宿にも知り合いはいない。
お腹が鳴るし… 眠たい…。ってことで我慢できずカロリーメイトを食べた。しっかり栄養補給しとかないとね!という理由をつけて。
サンティアゴの先は未だに迷っている。その先が高野山だと考えるとどうだろう。うん、わからない。
明日は24kmとそんなに焦る必要はないし、朝食はここのカフェでいいかなと思ったりもしたが、スーパーマーケットへの買い物とレストラン探しをするために出歩くことにした。
隣のベッドで寝ていたおっちゃんが起きたので、しっかりと顔を見てみるとどこかで会っているような気がした。
今は色が濁っているが、夏になると気持ちよさそうなプール。
左のスーパーに入ったが、特に目ぼしい物はなかった。まず宿にキッチン設備はないわけだから夕食も作りようがないよな…と探したが、そもそも朝食用だけでも微妙な品揃えだった。
スーパーから出ると、巡礼者にセニョールと話しかけられて、あるアルベルゲの場所を聞かれたが、自分が知っているわけもなく答えられなかった。ごめん、地元の方に聞いてくれ…。
写真は撮り忘れたが、別のスーパーは品揃えが良くて助かった。でもこの出歩きの時間で知り合いには誰にも会えなかった。あのコンセントアフロ男性は遠くにいたかもしれないが。
子供かな!?パンっぽい簡単に食べられるの2つと、ビタミンジュースと、チョコと、ゲロ甘チョコドリンク。チョコドリンクだけ後悔した。
カミーノの皆が楽しそうだというのもあるけど、いろんな人と出会ったばっかりに、本来孤独でいいはずの巡礼で寂しさを感じてしまう。積極的に話しかけて、また新たに繋がりを作ればいいだけなんだけど、なんだかそれも気が進まない。
こんな風に仲が良い人に会えないのならば、あえてモデルプラン通りに行動する意味はない。とはいってもサンティアゴに着いてカテドラル付近にいれば絶対に再会はあるだろう。
だがレオンで楽しかったのは誰かと話しながら待ったからだろうか。一人で待つのはきっと寂しい。誰かしら話す人はいるとは思うけど。
サンティアゴのアルベルゲのキャンセル料も今なら安い。
歩こう。地の果てに行くには波を置き去りにしないといけない。でも、一人だとしても歩き続けようと、キャンセルをした。
明日・明後日の目的地の宿事情。
確実に雨が降りそうな空模様だったので洗濯物を取り込んだ。残りは室内で。
時刻は18時50分。小雨が降り始めた。レストランをちらっと確認しに行ったが、ご近所なので一回戻ることにした。
一人でいる人も多い。何も恐れる必要はない。後悔しない方はどっちかで選んだらこちらだろう。一生に一回の旅なら尚更だ。
ナポレオンルートはやめておきなさいと止められた。でもこちらは誰もそうは言わない。迷っていることを話せばみんなが、自分は行くべきと言う。リーはバスで一緒に行こうと誘ってくるけど。
そしてレストランに向かった。店前でメニューの看板を見ていたら、スキンヘッド+タトゥーのウェイターが近寄ってきた。Menú del día? Si!
珍しく、Vino(ワイン) or Agua(水)ではなく、1 bebida(飲み物)になっていたのでコカコーラにしてもらった。瓶を持ってくる際に、氷いる?と聞かれて、いや、いらない!と返すと、冷えてるから大丈夫だぜ!ってな感じのジェスチャーだった。
ガリシア風スープ。味は風邪のときに飲んだらいいかも的な、うん。
最近どこに行ってもテニスが放送されている。(ちょうどマドリードオープンに重なっていたから)
おばちゃんカミーノの2人が来て、それ何?美味しい?と聞いてきた。タトゥーマンが近くにいるから、美味しいよ…!と答えるしかないという究極の状況。(実際まあまあだったけどね)
地元の美女二人組も笑っていて、お皿を下げるときもタトゥーマンに美味しかったかい?と聞かれた。Yes, gracias!と返すと満面の笑みだった。美味しかったさ。
こちらはビーフシチュー。おー!豪華!とぱっと見で感じたが、汁物のシチューではないんだな。
柔らかい部分は結構美味しかったけど、硬い部分は少し苦行だった。もっと煮込めば最高な出来になるはず。
でも美味しいレストランだったと思う。味付けが良いし、他の客の反応も見てもそう思った。
食後はブラックティーを貰いました。デザートはチーズケーキやチョコケーキ、フラン等があったみたいだけど、まあね、さっきチョコ買ったしね。
おばちゃん2人はメニューにはないアイスを貰っていた。どこの国もおばちゃんは強いんだ。
雨が降っていたので走って宿へ戻った。どうやら明日の降水確率も高い。それを考えると距離がそう長くないのは良いことだ。といっても20km以上はあるんだけど。
ベッド横に置いてある椅子兼机の上に、翌朝使う物を用意していたらワセリンを落としてしまい、小さくはない音が鳴ってしまった。部屋には隣のおっちゃん1人だけ。ごめんなさい…と謝ると、とても優しい笑顔でいいんだよという風に微笑んでくれて助かった。
でも来たときと同じように、彼は本当に静かに眠るから、こちらの作業も静かに進めるしかない。まあ、他の人は後で絶対戻ってくるし、自分より大きな音を普通に出すのだが。
さて、明日は何時に起きよう。6時かな。その前に起きそうだけど。
ふと、下界、帰国後の日常について考えると、もっと歩いていたいなと思った。巡礼の終盤になると生まれがちなこの感情。
そうだ、この気持ちなんだ。少しでも長く、聖なる道にいたい。実情がどうであろうと、自分が抱えているのがどんな想いであろうと、僕は今、巡礼の道を歩いている。
現実に戻れば不安や嫌なことだらけだ。でも今は違う。非日常と書くと情緒がないので、魔法の中としよう。ここからまだ出たくないんだ。
21時前ぎりぎりに目を閉じた。間違いなく終盤だが、まだゴールに辿り着いたわけじゃない。旅はもう少し続く。
今日の歩み
Samos – Portomarin / 33.8km