5月14日。
5時前に誰かがトイレに行く音で目が覚めたが、朝食の7時までは時間があるので毛布にくるまってうとうとしながら過ごしていた。
隣のおっちゃんが静かに眠ってくれて助かった。キャパシティはあるアルベルゲだが、この日の宿泊客はせいぜい10人程度だったし、その他の人たちも騒がしくなく快適な夜だった。
足首辺りに間違いなく疲労が溜まっているのを感じるし、髪の毛を切りたい。
6時になったら準備を始めよう。いや、早いか。でも誰かのアラームが鳴り出しそうだ。
降水確率をチェックしてみた。あいこさんがサンティアゴに着く日は晴れがいいと言っていたけど大丈夫そうだな。
リーがまたインスタを更新していて、#800kmのタグを付けていることに、いや、バス使ったやんwwwwwとツッコみたくなった。
予想通り6時に誰かのアラームが鳴ったものの、10分を過ぎても誰も動く気配がないので、準備を始めた。
日本に帰っても、寒い朝に毛布にくるまる幸福は感じられないだろう。暑くなっていそうだから。
ちょうど1週間後の月曜日はもうマドリードに移動なんだな。バルセロナからシンガポールまでの便までもあと3週間。いや、よく考えれば明日サンティアゴに着くというのも変な感じだ。どんな気分なんだろう。
予約しているフィステーラのアルベルゲにはもう空ベッドがないみたいだし、もし3人で行く場合は別々になるのかな。それは寂しい。
多分朝食の準備をする人が来て、出入り口付近の電灯がつけられたので、一気に作業しやすくなった。
ドイツのおっちゃんも起きて、グッモーニン&グーテンモルゲン。今は何時かね?と聞かれて、6時半と教えた。彼もスペインのチョコを買っているのが見えた。お腹空いたな。
日本から持ってきたアミノ酸ドリンクの粉末や非常食系は軒並み底を突いた。丸まったティッシュがポケットの中に入っていて、それを洗濯していたようだが、ポケット内で事故は収拾していたので悲劇は起こらなかった。
フロント付近にある自販機にキットカットを買いに行ったら、朝食のおばちゃんと昨日高床式倉庫で一緒だった彼がいた。
彼から今日サンティアゴまで?と聞かれて、今日は歓喜の丘まで、(サンティアゴは)明日の朝だよと答えてから、あなたは?と聞き返した。
その彼は今日サンティアゴまでということだった。39kmと長い日だけど、今日誕生日の母がサンティアゴで待ってくれているから目指すと。素敵だ。昨日は僕の母親の誕生日だったよと自分は言った。母親を大切に想う気持ちに国境はないらしい。
彼ももちろん昨日会ったことは覚えていて、僕らは昨日会ったよねというようなことも言ってきた。
程なくすると彼が出発しそうな様子だったので、もう出るの?と聞いた。彼の名前はヴィクトル。ロシア出身だけど今はドイツに住んでるとのことで、ナイスだねと言うと、君はナイスウォークだよと返ってきた。彼は7時にポンチョ着て出発した。ブエンカミーノ!
朝食のおばちゃんは陽気な地元のスペイン人で、鼻歌を歌ったり、テレビを見ながらOle!とリズムにノッたりしていた。
彼女が舌を軽く打ってこちらに合図してきたので、なんだろう…?と思ったら、写真右上の甘い揚げ物(料理名がわからない…)をキッチンペーパーに包んでプレゼントしてくれた。朝食を取らない人と思われた可能性もあるけど、とても美味しかった。
正式な朝食ができあがるとまたそれが再登場することになるわけだけど、その時点では自分以外の客はまだ来ていなかったので、いっぱい食べなさい!とトーストも余分にサービスしてくれた。
スペイン語で話すからなんとなくしか伝わらなかったけど、ムイビエン!と言いながらサムズアップしたら気持ちは伝わったようだ。美味しかったよ。
テレビで集団の喧嘩(もしくは暴動)のニュースが流れると、おばちゃんは、サンティアゴ等はビエン!だけど、テレビに映っている地域はBoo!ってな感じでサムズダウンしていたので笑った。ガラが悪くて疎まれている地域ってあるよね。
自分が朝食を終える頃に女子たち、遅れてドイツ人おっちゃんが朝食のテーブルに着いていた。
朝食のお礼として、グラシアスとおばちゃんに伝えると、投げキッスがむちゅちゅちゅと飛んできた。
外は雨も降ってるっぽいし、寒そうだな…でもそろそろ行かなきゃと荷物をまとめていたら、ブラジルのおばちゃんが自分の背中をトントンと叩いてからチョコをくれた。驚いてそのままスペイン語でグラシアスと言っちゃったけど(彼女に言うべきはポルトガル語のオブリガード)、彼女はスペイン語も理解している人だから大丈夫かな。とても嬉しかった。
出発前、朝食のおばちゃんはポンチョを着るのも手伝ってくれた。きっとみんなに優しい人なんだろうな。愛のこもりまくった送り出し方をしてくれた。ドイツのおっちゃんにも手を振って、ブエンカミーノ!
なんだか感動して、本気で涙が溢れそうになるくらい胸・心が温かくなった。
誰かから貰った親切は、今度は僕が誰かに。2人のためにベッドを確保しよう。7時45分と想定より遅れてしまったけど、一日は長い。
38.439かな?
これに似た光景は後の観光でも見ることになる。
シンジュっぽい後ろ姿が見えるけど、右は誰だ?と思いつつ近付いた。そしてシンジュがチラッと振り返って、二度見するようにすぐにもう一度振り返って、リョー!!と声を上げた。
隣は知らない白人のおっちゃんだった。アニョハセヨ&彼にはグッドモーニング。今日はサンティアゴまで?と聞かれて、いや、歓喜の丘までだよと教えて、先を行った。彼氏たちは後から来るのかな。喧嘩した説もなくはないだろうけど。
登り坂を登っていても、後ろから来てるであろう2人(えりシン)のことばかりが気になった。大丈夫かな。
ボンがカフェにいた。こっち来て一緒に食べよう!と手招きされたけど、今止まれないのごめん!
トンネルでおっちゃんが歌っていたけど響いてはいなかった。
あれ、シン…?前にいたwwwウケるwwwww
動画を撮影しながら(上手く撮れてなかったけど)、あたかも他人風にオラ~ブエンカミーノ~と言いながら横に並んだら、どちらからも大爆笑が起きた。「Why are you here!?」「き、休憩必要ないからさ…!」「朝食?」「そう!」
Erikoは5分前に出たらしい。ってことは彼女も先にいるってことだ。ベッド取っとくよ、5つくらい!と言って先に進んだ。シンはアトデネと。
その先にいた韓国人夫妻に、今日サンティアゴ?と聞いたら違うと。え、あなたは行くの!?いや、行かないよ!(笑)
韓国系カナダ人姉弟グループのすぐ前にはゲリンダがいた。調子どう?どこまで?みたいな最高にありきたりな話をした。彼女とはそれなりに会ったけど大して仲良くはならなかったな。
カーネルサンダース等の姿もあった。レカもそうだけど、このアマンダ(とよく一緒にいる人)たちのグループに混ざったんだな。ゲリンダも朝が早いから、この朝早く出る人たちと一緒に歩いているということだろう。
えりこさんがなかなか見えなくて、やりおるで…と思ったが、自分は悪くないペースで歩けているからそのうち見えるさと歩き続けた。
大雨にならないことに賭けてポンチョを脱いだ。そして彼女を発見した。いた…!振り向くなー!と願いながら近付いた。
彼女はイヤホンをしていたので、真顔でじーっと顔を見つめながら横に並んだら、また大爆笑が起きた。えーー!!どこー!!??いつーー!?!?という反応だった。
しばらく歩きながら話した。最近悪い癖でカフェによくいるから禁煙は終わったし、テラス席にいるとシンが通ったりすると言っていた。昨日超臭くなかった?みたいな話もした。
午後4時頃着くと思うとのことだった。自分は2時頃に着くかもと返して、確保してきますと別れた。「アトデネ」とシンの真似が聞こえたので「ジェンジェンワカンナイ」とこれまたシンの真似で返して、笑われながら前へ進んだ。
石の苔に刻まれた十字架がある場所辺りでポンチョを再び着た。
名前や日付が白い文字で書かれた大量のビール瓶が並んでいた。
この青いゴミ箱は複数あって、Imagineの歌詞が続いて書かれていた。無宗教的な曲だけどセーフなのか…?とは思った。
9時半にまだ10kmに届いてなくてショックだったし、ちょっと疲れてきた。でも頑張んないと今日は。確保したからゆっくり来てと早く送りたい。
スウェーデン夫婦と久しぶりに会って、後ろの奥さんからまず挨拶したが、さすがに微笑んでくれた。それから前の旦那さんと話した。今日サンティアゴに行く人は少ないようだ。
写真もいつもより(気持ち)控えめで、ひたすら歩いた。半分の17kmになったら休憩を取ろう。
ブラジルのおばちゃんから貰ったチョコを食べた。苦手なバナナフレーバーだけど今はありがたく頂いた。
旅も終わりに近付いている。心残りは敬虔なキリスト教徒に出会えなかったこと。信仰について深く語り合う機会はなかった。
果てしなさそうな道!まだあったか。
鎮守の杜感。
後ろに距離がずっと離れない白人男性がいた。自分は写真を撮るので、停止する時間こそあるが強敵だ。でも抜かれない。カミーノは修行だから(ってことになりました)。
今日は1人にも抜かれていない。休憩すれば抜き返されるだろうけど、時には誰かのために本気で頑張るのもいいだろう。
カフェ地帯で寄ろうか迷ったが、まだ半分でもないしそのまま進んだ。
分かれ道で悩ましかった場所付近にあったお墓のような何か。この日は焦って歩いていたし、雨でもあったので、ブレて使えない写真が多いのは悔やまれる。
いや、もうアルスーアから17kmやん。
カミーノ初では?ってくらい大きな東屋。後ろが来てなければ少し腰掛けて水でも飲んでいただろう。
あー、抜かれた!と思ったら、後ろの人が入れ替わっていて更に若い男性だった。どっかのカフェにいたのか、そのまま後ろから来たのか。
歩き団体もいて、最後だけ歩きます!みたいのはやめてよねと思ったし、折りたたみ傘を差して歩いている人は初日を彷彿とさせた。
この村でカフェを探したが、開いていなさそうな店一軒と、レストランしかなかったので寄れなかった。なんて村だ。こっちはおしっこしたくて力が出ないのに。
レストランの先には、巡礼者も泊まれるキャンピングエリアがあった。ちらっと調べたらシャワーやトイレも綺麗で、10€と書いてあったし、ここに泊まるという選択も貴重な体験ができるきっかけになるかもしれない。
また新しい人に抜かれた。しかも小走りしてるし、おかしい。だから花の写真を撮った(なぜ)。
町は道路を真っ直ぐ行った先にあるのだが、矢印は右を指しているという場所で、前を歩いていた男性と目を合わせて、悩むねってな表情。
彼は逆に歩いてきた巡礼者に聞いていたが、でも自分は町の方に行くことにした。振り返ったら後ろから右右って合図してくれていたけど、ごめん、町に行くから!
アルベルゲも沢山あるし、こっちからも進めると思うんだけどな。
このカフェに寄ることにしたが、テラス席にいた地元のお兄ちゃん風巡礼者が、煙草持ってない?と聞いてきた。最初はドラッグを求めているのかと警戒した。
初めに自分を抜いた男性も休憩していて、ポンチョは外の椅子に置いていたから同じようにして近くに置いた。汚れた靴で入店するのは心苦しかった。
ノリでハンバーガーも頼んじゃったし、ここできちんと休憩しよう。店内はスペイン語の曲が流れていて、リッキー・マーティンのLivin’ la Vida Locaも聞こえた。
もう住所的にはサンティアゴなのか?と紙ナプキンを見て思う。
町の方に来る巡礼者は結構多かったのでその点は安心だったが、店を出るときには濡れていた状態から冷えてしまっていたので気持ち悪かった。
正しい道かどうかはわからないけど、方角さえ間違えてなきゃ大丈夫だろう。ホタテ貝のマンホールも続いているし。
(多分サモスで一緒だった)おっちゃん集団がイェーイ!ってなハイテンションで道路の反対側から横断歩道を渡ってきて、彼らが地元の人に道を教えてもらっていたので、自分も一緒に行ったけど、たどり着いたのは正しい道ではなく、彼らの宿泊するアルベルゲだったというタイムロス。いや、アルベルゲかい!まだ進むねんこっちは!と去った。
うーん、正しい道に上手く合流してくれたらいいけど、なぜか反対側から巡礼者が歩いてきてすれ違った。
向こうの道を歩いてきたが、町の奥に出たので今日泊まるアルベルゲへと引き返してきた。ってことならオッケーなのだが。
わからん。でもとりあえず進む。
お、それっぽい歩道。ってか17kmって、もうすぐやん本当。
ポンチョを着たのに雨が止んだ。自転車カミーノは普通に通る。まあ問題ないさ。
もう一個奥(右)の道なのかもしれないが、そちらに移動して外れだったら厄介だ。人の姿も確認できないし。
遠くに見えるあれはマイルストーンかな…と目を凝らしても、遠すぎてわからなかったし、地元民もいないから聞くこともできなかった。
左側の景色。もちろん人は見えない。
カミーノマークはあった。しかし落書きが1つもないのでまだ不安。
お、歩きのマークだ。
巡礼者が集まるカフェもあった。大丈夫だったようだ。
これで安心。あと約10km飛ばせるかな。
祠みたいな何か。
登りだから飛ばせないし、蚊が大量にいるのやめて。
古いタイプのマイルストーンをちらほら見かけるようになった。いつから今の物に変わったのかはわからない。
雨は強くなったり、弱まったり、たまに止んだり、また降ったり。
サンティアゴ空港の横を通過。
もうすぐ午後1時半で6kmは残っている。2時半も厳しそうだ。
LOVEじゃない登り坂。
マイルストーンの距離表示がなくなったから残りの距離も計算できない。
買いたくなる気持ちはわかる。でも素通り。
自転車が叫びながら下り坂を下りていき、楽そうでええなあと感じた。でも自分は歩く。そして見える景色は一緒でも、一緒じゃないと思う。
結局抜かれた2人は追い抜き返した。金メダルや。
さあ、歓喜の丘とはどんなものか。めっちゃ登るんだったっけ?とスマホ内の写真を確認したが、多分急激な登り坂ではなさそう。
学校には子供の迎えに来ていて、車内待機している親の車が並んでいた。
Lavacollaという町の名前がわかった。表を見れば正確な残り距離がわかるが取り出すのが煩わしい。
教会近くでスペイン人のおっちゃんと一緒になって、ボタンを押すと一瞬だけ出てくる水道で、交代で協力しながら飲んだ。
もう少しだなと彼は多分言っていた。今日中にサンティアゴに行くのだろう。ハポン?と聞かれたが、最初から聞かれるのは珍しくて嬉しかった。伝わる何かがあったのかな。小さな橋の上で、前を歩いている2人の写真も撮ってあげていた優しいおっちゃんだった。
いや、めちゃくちゃ登ってるし。でも、そりゃ登るよな。丘だもん。時刻は2時になった。
自転車だってキツいさ。ここまでよく頑張ったねと伝えたい。
どこだ歓喜の丘は。きっとまだまだなんだろな。マップはあえて見ない。
とりあえず2時を過ぎたけど、歩いてる人の数的にベッドが埋まっているのはありえない。向かっているのは超大型アルベルゲだし。
アクエリアスを一気飲みしたかったのに、ボタンの反応が悪いし、お釣りが何枚か勢い良く飛び出してきたから、一枚下に落ちて取り出せなくなるという悲劇。
でもゴクゴクと飲めて爽快だったし、ついでにレインカバーと横にぶら下げていたポンチョをしまった。あとは宿を目指すだけ。
バス待ちをする地元の人たち。
子供のお迎えだったのかもしれない。引くほど速度を出していたから車内は確認できなかった。
14時24分。この美しい道を独り占めできて、悪くない気分だった。
数分後にカッコウが鳴き出した。毎日のように聞いてたのに久しぶりな気がした。
犬を写真に撮ろうとしても吠えそうなので取りづらくなってしまった。吠えられるとビックリしてしまうから好きじゃない。
そしてサンティアゴまで7km。ここまで歩いている人の中にはもう、そのままサンティアゴへ行く人もいるかもしれない。自分は違うが、最後の7kmで気持ちは高まっていることだろう。
マップを見た。もう少しだ。
自転車おっちゃんがVamos!(頑張ろう!)と声を掛けてくれた。それから町も見えてきた。カテドラルはまだ。
家の前に立っていたおっちゃんに、いったいどれだけの巡礼者を見てきたのだろうと勝手に想いを馳せた。
なんか下ってるけど、あのモニュメントか?
あれ、左じゃなくて右に進むのか。
すれ違ったのは、アルベルゲからレストランに来た勢かな。
アルベルゲの看板があった。よし、着いたな。
と思っていたら、まさかの1234ガールと遭遇。ここに泊まるの?と聞いたらサンティアゴへ行くとのことだった。単独でゴールをする韓国人もいるってわけだ。
モニュメントは気になるが、先にアルベルゲへ向かう。
普通に街が見えている。ただの街じゃない。サンティアゴが見えているんだ。
ようやくアルベルゲに到着。時刻は午後3時になってしまった。
受付にはおっちゃんとおばちゃんが1人ずついて、おばちゃんの方はサラダパスタ的なものを食べていてSorryと謝られたけど大丈夫です。美味しいですか!?って聞くくらいには余裕あったから。
でも同部屋で3つのベッドを頼んだのに、いざ部屋に行ってみてもベッドに3つ空きがなくて、あれれ…と困惑して、またおばちゃんに確認しに行った。
まあ、同部屋の韓国男子たちが、彼らが使わないベッドの上にも荷物を放置しまくっていたというオチだった。最後までやってくれるなあ韓国は。アジア人が迷惑掛けてごめんねおばちゃん。
その韓国ボーイズのポンチョ。お揃いて。
現在の位置情報を貰ったのでえりこ&シンを迎えに行くことにした。パンプローナの悲劇よ再び。
小さな教会の横にあったキオスクで、優しそうなおばあちゃんが溢れそうなくらい注いでくれたカフェコンレチェを飲んでホット一息。
それから、先程は素通りだったモニュメントの方へ。写真は順不同だが、撮っているのはすべて歓喜の丘での写真。
歓喜の丘というのはモンテ・ド・ゴソの和訳。長い旅路を歩いてきた巡礼者たちが、サンティアゴ市街を見下ろせる丘の上から大聖堂を発見して、歓喜の声を上げたというのが名前の由来。
木々が邪魔しているのか、このモニュメント(ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世訪問記念)の位置から大聖堂は見えなかったけど(丘の端の方に行けば見えた)、残り約5kmでゴールの街が見える喜びは現在の巡礼者も変わらないと思う。
毛並みが妙にリアル…。
鉄の十字架ほどではないが、こうしたメッセージが書いた石や写真がモニュメントの周りにはあった。
当然この場所で写真撮影をする人たちも多いわけです。
しばらくしてえりこさんが来て、遅れてシンも到着してからは3人で写真を撮ったりして過ごした。
教会前でスタンプ押せるよーと教えた。右奥に座っている男性はアグア(水)を足にかけてくれないかと頼んできたのだが、自分はペットボトルを持っていなかったのでえりこさんが代わりにかけてあげた。
連日長距離を歩いているわけだから当たり前だが、2人ともかなりお疲れな様子だった。えりこさんは腰が痛くて、シンはスネが痛いと。
えりこさんから貰った写真。
2人の受付についていった。最大800人収容のアルベルゲだし、この日は巡礼者もそう多くはなかったので、ほとんどの棟は開放していない状態だった。
つまりベッドも大量に余っていたということになるが、目的地で自分たちのベッドが確保されているということが、2人にとって心理的にプラスに働く何かがあったならそれで良い。同部屋になれたことは自分も嬉しいし。
フィステーラの写真。
同じアルベルゲには韓国のシガレットガールが、女子たちとではなく、ある男性と一緒にいた。抜け駆けでカップルになっていたらウケるな。
塩キャンを2人にあげた。えりこさんが飴好きでさ~と喜んでくれたけど「でもこれ明日の方が必要じゃない?いや、明日いないか」って。あれ?
ボルシア・ドルトムントのジャケットをベッドにぶら下げている人もいた韓国ボーイズは、もうゴール手前だというのに、お揃いのポンチョだというのに、全然会話をしていなかった。寝ていた人が起きてからも誰も口を開かず、ある種の異様な空気感が漂っていた。
でもこの部屋だけなぜか窓を開けていなくて、汗臭かったし、暑かったので、窓際にいた1人に窓開けていい?と聞いたら、オッケーと返ってきた。喋れるんかい。
バスルームにはシンと1人おっちゃんがいた。自分たちがフィステーラまで歩くとそのおっちゃんに告げると「俺は歩けない。家にいるアングリーウーマンがハリーアップと言ってるからな。アングリーウーマンがハリーアップって言っているんだ。どういうことかわかるだろ?」と遠回しに奥さんの愚痴を言っていたので笑った。
シンに貰ったというペンでえりこさんは貝がらにペインティングをしていた。りょう君のもしてあげようか?ってな流れにはなったけど、自分のは十字架のマークが入っているタイプだから、そのままの方がいいと思うとのことで、白に赤十字のまま。
なぜか拘束される天ぷらリオ。んでめっちゃムチムチしてるように見えるこれ。
えりこさんがシャワーに行くとシンと2人で話した。熊野のお守りの八咫烏がBeautifulだと言ってくれたから、ありがとうと言ったら、いや、彼に話しかけてるんだと八咫烏を指して言った。「いや彼じゃない、女の子だよ。17歳の」って訂正すると、三本脚は雄だけだと言い張るシン。お返しに自分のネックレスを指して、これは20€で買っただとか、自分で作っただとか、適当なことばっかり喋っていた。
その後シンがベッドの上で腰を振っていて笑ったら、「なんで笑ってるのかわからない。これはストレッチなのに」と。完全にくだならいボーイズトークですね。
えりこさんが戻ってくる頃はベッドの数とそれでいくら稼げるかという話をしていた。建物を買ってアルベルゲを経営しようという提案もあった。アルベルゲの名前は何?ナンダヨ?と自分が言うとシンは爆笑していた。
韓国女性がキッチンでチキンを料理している現場をシンが見かけたらしく、この近くのスーパーは月曜日は閉まっているみたいなのに、どこで手に入れたのかな?と。そりゃOn the roadよ。牛、羊、馬、何でも手に入るからね。ってことで、よし牛を食べようと牛狩りに出掛けました(レストランに行きました)。
拾った木の棒を杖にして歩くえりこさん。
フィステーラやムシアまでのプランの話は以前していたけど、えりこさんは自分がサンティアゴの先は歩かないと思っていたみたい(サンティアゴの宿をキャンセルしたのは伝えてなかった)。だから改めて完璧なプランを披露した。彼らはこの先はノープランだったから。
この歓喜の丘に滞在する(したかった)のは、元は翌朝新鮮な気持ちでサンティアゴに到着したいという理由だったが、途中からは明日以降の都合を考慮しての狙いの上だ。まだすべてのゴールではないわけだから。
レストランでは他の客が頼んでいたメニューが気になって、あれなに?と聞いて、同じメニューにしたけど、えりこさんがラム肉が駄目ってことでこれはシェアできなかった。ごめん。
でもどのメニューも美味しかった。エビ(シンはハハと呼んでいた)が特に。えりこさんもスペインに来てからナンバーワンと評していた。
テラス席でガンズのSweet Child O’ Mineを流しながら、シンたちがずっと会っていたという男性が、今日会ったと思われる女性とずっとキスしまくっていた。カミーノは愛の巡礼なのである。聖ヤコブが泣いていたって参加者は気にしない。
店内ではYou’re Beautifulが流れていて、帰り道に替え歌でYou’re Santiago~とかYou’re Pamplona~とふざけまくった。シンがアルベルゲの近くでも歌っていたら、建物の中にいる誰かも真似して歌っていた。
部屋に戻ってキシリトールガムを2人にあげたら喜んでくれたが、相変わらず韓国人同士の会話はなし。
みんな無愛想というか、コミニュケーションは絶対取らないと決めてるのかってくらいに無言で、ただ各々スマホをいじっているだけ。でも夕食は一緒に食べに行っていたから不思議だ。
ここまで同部屋の人たちと何の絡みもなかったのは初めてだ。もうすぐサンティアゴだというのに感動をシェアできなかったのも残念。
えりこさんはなんか強制的に歩かされたみたいと彼らの様子を表現していたけど、自分は韓国の若者は恋人を作りまくっているのに、ゴールまで5kmになっても彼女を手に入れられなかったからだよと言った。彼らは敗北者たちで、だからあんなに暗いんだという予想。知らないけど。
どうやらえりこさんはムシアへは行かないらしい。自分のプランを参考にしつつ、フィステーラは同じアルベルゲを予約したけど、どうなるだろう…。
と思っていたら、シンがムシアも美しいところだよと言ったので、リオのプラン通りに歩こうという流れになった。でもまだ悩ましいのはムシアの宿問題。自分が予約しているアルベルゲは既に埋まっている。プラン通り行くとしても別々になるかな。
(このときムシアを先にすればよかったと後悔した。フィステーラの方が人気だし、クライマックスにふさわしいのはそちらなのかもしれない)
えりこさんの財布が壊れたとのことで、最初シンがガムの空袋みたいな物をあげていたから、自分が緊急用に持っていた小さな財布を彼女にあげて、シンのその空袋を変わりに受け取って、それに元々入っていた日本円を入れた。
その移し替えているときに一万円札を見たシンから「イマンエン!!!」と興奮気味な反応があった。なぜ一万円札を知っているんだ。
他の日本人の話をしていたときに、なっちゃん(無愛想モンベルガール)は歩いていないと思うと話すと、のりゆみから聞いたという話をえりこさんが教えてくれた。
彼女は液晶画面が蜘蛛の巣になっていたスマホを買い替えたが、LINE設定が上手くいかなかったと説明していたらしい。
彼女がある朝突然消えてから、ゆみこさんは(一人のなっちゃんが事件にでも巻き込まれたのではないかと)心配して、情報等を送り続けていたが、まったく既読にならなくて余計不安を募らせていたとのことだったが、そのなっちゃんは携帯を変えてからも、彼氏と長電話をしたりはしていたとのこと。
アカウント引き継ぎや新規作成の成否はわからないが、要はまあ、間違いなく、ゆみこさんのLINEをブロックか未読無視をしているのだろう。若者だと勘付きやすいことではあるが、年配者のゆみこさんはブロックされていることに気付いていなくて、今もずっと気懸かりなようだ。
なんていうか、日本人はみんな良い人ばかりだったのに、1人だけとんでもないのが紛れ込んでいたな。どういう性格をしていたら、異国の地で年配者が自分のことを心配してくれているのに、お礼の一言も言わず立ち去れるんだろうか。(ゆみこさんはスポーツタイツのことを筋肉スーツと呼ぶような可愛いおばちゃんなのに!)
ワーホリだとか海外の経験は豊富な人らしいが、今までのそういった経験が彼女にどう役立っているのかが知りたい。度胸があるがゆえに裏目に出たのだろうか。携帯も壊れてうんざりして、もう全部どうでもよくなったみたいな。
ってか彼女は帰国したら、人にカミーノのことをなんて話すのだろう。超つまんなかったわ!みたいな感じなのかな。
自分たちと接触したときは、心に余裕がなくて無愛想な対応になったのかもしれないと思っていたけど、まあ、いろいろと可哀想な子だ。子といっても30代(30歳)らしいけど…。
今朝、えりこさんは白い服の人が後ろの方にいて、りょう君かなーとは思っていたとのこと。熱心なファンではなさそうだったが、エルレのことは知っていてジターバグを少し口ずさんでいた。いや、20代でエルレを知らない人の方が珍しいか。
特徴は彼女にも伝えていたが、スロベニアのマリオおっちゃんに、マリオみたいな人がいるって聞いてたよと、本人に言ったらしい。それで嫌な想いはしてなきゃいいなと自分が思ったが、まあ優しそうな紳士だったし大丈夫か。
えりこさんが外でおしっこを2日前にしたと告白したので、自分は2回したよと告げて、シンに聞いてみたらEverydayと返ってきた。それを聞いた2人で笑うしかなかった。
今までの写真を振り返ったりしながら、3人でいろんな話をした。何度もふざけあったり、本当に楽しかった。
既にサンティアゴにいるリーが会いたがってくれているのは嬉しい。でも明日のサンティアゴ滞在は多分1時間くらいになると思う。ソノコが言うにはリーは5日はサンティアゴに滞在するとかなんとかだったが、バスを使わず普通に歩いていれば道中の再会もあっただろうに。
22時半には2人とも寝ていたが珍しく、シンがいびきをかいていて、えりこさんも少し寝息が荒かった。どちらもかなり疲れているんだろうな。
23時までにメモをまとめ終わってよかった。今日は急いで歩いていたから量がそこまで多くはなかった。
明日はサンティアゴに着く。まだその先へ4日間歩くけど、大聖堂前ではどんな気分になるかな。明日も一応ゴールだから、気持ちは作り直すよと2人には言ったけど。
今日の歩み
Arzua – Monte do Gozo / 33.3km