5月16日。
5時半起床。部屋全体の写真を撮り忘れていたけど多分撮れないまま去る。寝ている人がいて部屋はまだ暗いから。
えりこさんは準備が早いから先に起きようとシンと話していたけど、結局そのちょっと早めに起きていたシンはまた寝たので6時になった。
みんなが起きると朝食タイム。シンが昨晩作った手作りハンバーガーを食べた。自分はチョコパンとオレンジジュースをシェア。バナナとオレンジの果実を貰った。
でもオレンジジュースを飲み干すために頑張りすぎて気持ち悪くなってしまった。バックパックのサイドポケットは片方空いているのにミスったな。リンゴも食べたし、過去一で気持ち悪い。
室内なのにニワトリの鳴き声が聞こえる気がした。幻聴まで聞こえてきた。
だが一日は始まった。7時10分前出発。いつの間にかカミーノ・デ・サンティアゴからカミーノ・デ・フィステーラ表記になっている。
やはり歩いてサンティアゴへ戻る人がいるようだ。昨晩この町に滞在していたのだろうが、朝からすれ違った。
ちなみに今日は文より写真多め。
今日も3人で歩いています。
昨晩会ったヨシュアと再会したが、予想通り違う宿(ムニシパル)に行っていた。でもその宿はベッドがフルでキッチンで寝たらしい。すべてに適当な人かと思っていたけど、今日の距離だとかは把握していた。
B&Bの審査に通ったというメールがえりこさんに届いていた。ヨシュアも誘おうかな、でもあの人来るとパーティーになっちゃう…と言ったのは、宿泊の条件の一つにパーティーをしないという項目があったから。
シンはヨシュアと話していたのでまたえりこさんと2人で歩いた(登った)。彼女もカミーノ後にトレド(スペインの京都と呼ばれる町)に行くらしい。スペイン人に教えてもらった秘境も気になっているとのこと。地名ははっきり覚えてないらしいが。
昨日自分はうなされていたらしい。何か嫌な夢でも見てたのかな。夢自体は普段からよく見るけど、カミーノ中は覚えていないことがほとんど。えりこさんは数日前に超巨大津波から銀色のマンボーを助ける夢を見たらしい。シュール。
めちゃくちゃ規則正しいリズムでコツコツと音を鳴らしながら歩いていた人。自分たちはたまに話しながら、それ以外は黙々と歩いて行った。
ローソンのでいいから塩おにぎりが食べたい気分…と呟いたら、言わないでえええええと返ってきた。マドリードになら日本食のレストランがありそうと自分が言うと、日本人が経営してるとこで食べたい、食べようよと。
京都での大学生活についても話してくれた。茨城人ばかりのカフェでバイトしてたとか、美味しい焼きそば屋さんがあるとか、合コンしまくったけど堂々巡りになって、趣向を変えて東寺のお坊さんと合コンしたら、あいつら普通に肉食べる…と気付いたとか。
その話を聞いて、また(何度目かってくらい繰り返すが)自分の聖なるカミーノについて考えた。
自分はサンティアゴという聖地を目指すカミーノに、異国の聖なる何かを求めて旅を始めた。でも巡礼感のある日々を過ごせた時期も少しはあるが、実際はお酒を飲むパーティーや街コンなどの恋愛イベントのようだった。えりこさんにも言ったように、信仰よりセックスの方が近くにある旅だったのだ。
かつては自分の求めていたものに近い巡礼だったのかもしれない。だが、こんな風にした特定の誰かがいるわけでもないし、責任があるわけでもない。キリスト教だって悪くない。
圧倒されるような何かを見つけたかったが、結局自分も、聖なる道の上にある神聖な何かを探すのは諦めて、楽しさを求めることに方向転換をして、それに落ち着いた。でも自分自身が悪いとも思わない。
マイルストーン計算でまだ7kmしか進んでいなくて、先ながっ!という言葉がどちらからともなくこぼれた。でも780kmよりは短いと自分が言うと、「そだねー」が聞こえた。
台風が過ぎ去った跡のように荒れた山林。
新たな集落の奥には風車が見える。
まさし&アマンダが一緒に来たわけではなく、カミーノカップルだということにえりこさんも驚いていた。知り合って2,3週間の空気ではなかったと。
のりさんは日焼けをしたりして見た目が若返っているらしい。ゆみこさんという奥さんのような存在もいて楽しいんだろうな。実際の奥さんは早くに亡くされたらしいから。
サンティアゴ以降初の自転車。
お腹空いたとのことだったのでチョコをあげた(形は壊れてたけど…)。でも、あと数kmで次の村だ。先程の村は飛ばしたから次で休憩にしよう。
バスタブもバスタオルもあるのでフィステーラよりムシアの方が楽しみと言っているのを聞くと、どうしても気懸かりだったことだし、本当に気が楽になるので助かる。
10時前にカフェを発見。
Wi-Fiはないがケーキは美味しいカフェだった。どうでもいい情報ではあるが、スモデナランハは何より先に飲んだ方がいいということを先日学んだから全部美味しくイケた()
でもえりこさんは足が痛そうで、隣のニコニコのおっちゃんも心配そうに見ていた。遅れて来たシンは逆に今日は痛みがないらしいけど。
12kmは歩いているだろうから、残り20kmほどかな。
サンティアゴまでに比べると確実に巡礼者の数は減っているが、カフェがあるとやっぱりみんなが集まって面白いなと感じた。出発も不思議と近くなる気がするし。
一人だけサンティアゴ行きで逆方向に進む人がいた。シャンシャンじゃなくて、シンは自分たちより先に再出発。
MONGOL 800の小さな恋のうたをえりこさんが口ずさんでいたら、またホースパワーが発動した。もはや笑うしかないような最高クラスの臭さで、民家の庭にいた犬に君も辛かろう…と思わず声を掛けた。
ん…マシになったかな…と思ったら、また臭い!!!となった10時半。せっかくケーキ食べたのに…。
風は右から左へと吹いているけど、どこに匂いの発生源があるんだ。嘘でしょ…と何回言ったか覚えられないくらいの悪臭だった。
でもえりこさんは靴紐を緩めたら、大分楽になったらしい。それは良いことだ。
匂いの質が変わったと思ったら牛のいる畜産工場があって、その先でシンシンに追いついた。
このときはパンダネタについて話していた。シン曰く、えりこさんがココで、自分はリオリオらしい。
ぱぅわの話 pic.twitter.com/vc6W67PKay
— 末宗凌 (@SuemuneRyo) 2018年12月11日
右の靴紐が緩いので締め直していたら、ストックを片方シンに持っていかれた。それから走って追いつくと、えりこさんが泉の精のようにWhich one?と尋ねてきた。「あなたが落としたのはこの木の杖ですか、それともそのストックですか」「金のストックです」
泉の精から飴を貰った。金のストックはくれなかったけど。
今どこ?とシンに聞いたら、モレイロ(?)まで数kmと。「モレイロってどんな町?チャイニーズスーパーマーケットはあるの?」「ない」「Why? tell me why!」からのバックストリートボーイズのI Want It That wayを日本人2人で歌うという流れ。えりこさんはストリーミングを使って曲も流していた。
シンになぜ歩く?と聞かれて、Skywalkerだからと適当なことを答えたら、Moonwalker?と聞き返されて、ムーンウォーク風に歩いたり、Fly Me To The Moonを歌う人がいるからコンサート風にストックを振ったり。
それにしてもえりこさんがめちゃくちゃ早い。タフだなと感心した。痛みもあるだろうに、ウォーカーズハイだとしても素晴らしいペースだ。
他の巡礼者も追い越すことは滅多にない。今日は特にそうだ。まあ、サンティアゴ以降だから体力的に自信がって、意欲がある人ばかりだから当然っちゃ当然かな。もう無理…ってな人は来ないわけで。
12時になった。
田畑が臭い気がするのは、動物の糞を集めて肥料にしてるのだろうか。白フードさんに追いついてからも悪臭がまた襲ってきた。
「どっかで休憩しようね」「そだねー」「そだねー(笑)」「ニオイはいいよー」「ヨクネエヨ」という会話で笑いが起きてたけど、その楽しさが伝わるのかはわからない。前方で話しているスペイン人のおっちゃんたちを使ってアフレコをしたりもした。
20kmは超えた。
ここでは味噌のような匂いがしていたのに、すれ違う巡礼者は余裕の表情だった。
あれを登るのか…?
いや、登らないらしい。昔の巡礼者も避けたんだな。「ちょっと距離長くなるけど回っていこうか?」「Si! Si!」的な感じで。
「思い通りにならない日は~明日頑張ろう~」とAKBの365日の紙飛行機という歌を口ずさむのが聞こえてきた。どうやらゆみこさんに教えてもらったらしい。カミーノにぴったりの曲だと。
エグいくらい登ってます。
いや、結局あの丘の上まで登るんかい…!
2人とも上着を脱いでから、呼吸を整えるから話しかけないでね、笑わすのもなしだからね、と言われて、ひたすら黙々と登った。笑わせたいのを抑えて。
展望デッキ的休憩スペース。
登った後には素晴らしい景色が待っていた。湖も、オルベイロアも見えている。風は強いが、とても気持ちよかった。
オルベイロア手前の丘 pic.twitter.com/xYXU65Zo1w
— 末宗凌 (@SuemuneRyo) 2018年12月11日
今日のアルベルゲに芝生があったらいいなーと言うので、犬いるといいなーと返してからの犬トークをしていたら、後ろから来た男性とも少し会話することになった。「調子はどう?」「良い感じ、あなたは?」「疲れたよ」そりゃ疲れたでしょうね…!と笑った。なかなかの登りだったわけだから。
ここからは緩やかな下り。
カフェがあったので「どうする?」と聞かれたが、「いや、目指す」とそのまま進んだ。
でもわりとすぐにリリースタイムを取って、今度はえりこさんがチョコをくれた。
遅れてシンとヨシュアも来たが、ヨシュアは男の本能を包み隠さないワイルドマンで「さっき自転車に乗ってた女の子見た?可愛かったし、体も最高だったから、すごく会いたい…」と。彼が会えますようにという願いを込めて、貰ったやつだけどバナナをあげた。
ムニシパル行く?とも聞かれたが自分たちは行かない。「じゃあ真夜中に町の中央で集まろう。みんなが寝静まった頃にさ!」 年齢は20代後半だったかな。髭を生やした坊主フリーダムマンは先に進んだ。程なくしてシンも。
近くでふにゃってた犬。
思いの外2人とも疲れていて、再出発後はわりとだらだらなペースで歩くことになった。距離はまだ6kmはありそう。
シン捕捉。
またサンキューだ。
モチベーションも減っているから最も長い33kmだったかもしれない。
お墓撮りまくっちゃってごめんなさい。でも美しく感じるの…。
また悪臭が襲ってきた。今日で嗅ぎ納めであってほしい。本当に今日は臭さを我慢する時間が多かった。うわ…くっさ…と何度口にしたことか。
のりさんたちがサンティアゴに到着したらしいが、証明書を貰うのに1時間45分も並んだようだ。恐ろしい。
インフォメーションセンターではあるが開いていないという建物を旅の間何度も目にしてきたが、繁忙期は開いていたりするのだろうか。
そしてオルベイロア突入。
なぜかバク宙していた猫。もちろん初めて見た光景。ってか猫ってバク宙できるのか。
「見つけたこのアルベルゲだ〜」と一緒に歩いていた女性が呟いたので、BUMPのKみたいと言うと、ライブに何回か行ったことがあると教えてくれた。りょう君、藤君に似てるって言われるでしょ、とも言われた。
アルベルゲではなく、バル(レストラン)の方で受付だった。その受付へと向かう最中に、シンがえりこさんの緩めている靴紐をわざと踏むのを見ていたおじいちゃんが笑っていた。そして、君たちはどこから来たのか教えてくれないか?と。彼はイングランド人のおじいちゃんだった。
時刻は午後3時。自分とのじゃんけん対決に勝って下のベッドをゲットして喜ぶシンと、全然開かない窓を開けようとするえりこさん。
いつも回収が早くて焦るけど、一緒に行動している間はお金を出し合ってコインランドリーを使い続けた。便利でしかない助け合い。
そして今日もホットシャワーに恵まれた。よろしい。よろしい。
えりこさんがシャワーを浴びている間にシンとバルの方に行った。痛みはないが疲れたとのこと。同じだ。
韓国男性が部屋に来たときには受付はレストランでだよと教えた。アジア人の97%くらいが韓国人だったけど、今では日本人の比率と変わらないという奇跡。
若者が少なくなったからか、微笑ましいといった感じで、周りの巡礼者(年配者ばかり)がニコニコと自分たちを見てくれている気がした。それゆえ、シンがゲップをしまくることと2人がFワードを使うのは気になったけど。
暑いくらいに日が照っていて、他の巡礼者もアイスを食べていたから自分も買ってきた。
えりこさんが見せてくれた写真や情報から、サンティアゴやフィステーラで証明書を貰える施設の場所や、B&Bの部屋の鍵を受け取るバーをチェックした。ムシアのアルベルゲはこのときキャンセルした。
もう3人の空気感はとっくにできあがっていて、バカみたいな会話をしたり、ふざけ合ったりして過ごした。えりこさんはパンプローナで流れていたというキューバの曲を途中流していた。
苦手と伝えていたことを忘れていたえりこさんから、バナナ持たせててまじごめんと謝られた。シンは覚えていて、わざとやってるのかと思ったよと笑っていたけど。
韓国女性がタクシーでこのアルベルゲに到着した。荷物サービスを使っている人は今日もいるけど、タクシーで移動してくるとは…。さっきの男性とペアだったりするのかな。
犬を見ていたら、その犬に対して「こっちまで来なさい」と女性店員が言って、自分のところに連れて来てくれた。
抱っこされるのは苦手な子だったけど、しばらく触れ合った。シャンプー最後にしたのいつ?ってぐらい臭かったから、後で石鹸で手を洗う必要があったけど。
カミーノの午後を象徴するような一枚だと思う。みんな歩き終えて、青空の下で、ビールを飲みながらくつろいでいる姿。
家族と電話をしたり、昼寝をしたり、本を読んだりする人もいた。
歩く距離も残すところ約60kmになった。だがやはり2人の足は痛そうだ。大丈夫だろうか。
女性店員の黄色いTシャツに「FISTERRA GAME OVER」と書かれていて、それがイケてるデザインだったから、すれ違うときにナイスなTシャツだねと言ったら、そうでしょ?フィステーラでゲームオーバーよ!と明るく返してくれた。そのやり取りに周りの人たちも笑っていた。
先に部屋に戻っていたえりこさんは寝ていて、シンとふざけあっていたらベッドの上下を交換することになった(というか譲ってくれた)。そして酔っ払いの2人とも寝てしまった。
今は観光のことを考えると面倒に感じる。30km歩くよりダルいなと思うのは、歩き旅では泊まる町を決めていれば、あとはそこまで歩くだけでいいから。
自分も眠たかったけど、自分まで寝たらグダグダになりそうだったので、7時半に2人を起こしてディナーへ行こうとしたが、なかなか起きてはくれなかった。
レストランの壁にあった地図。下には標高も載っている便利なものだった。
でもフィステーラからムシアまでの間に山があることを発見してしまった。ってか明日35kmもあるのか…?ああ、岬にある灯台までの距離も含まれてるのか。
グーグルマップで明日予約しているアルベルゲまでを検索したらこの距離。
レストランはメニューも少ないが、そこから選ぶしかなかった。寝ぼけたままのえりこさんは何もいらないとのことで、本当にいらないなら起こさなくてよかったかと思った。店員にもそっちの女性は何もいらないの?と聞かれたし、結局一人で戻ってまた寝ていたし。
ってことでシンと2人でディナーになったが、パスタサラダは作り置きして冷蔵庫でずっと待機してましたってな具合に冷え切っていた。
ポークチョップ自体はそんなに不味くはなかったが、どうしても安っぽく感じたし、コップからは犬の匂いがした。絶対触った手で扱ったろ。
残念なレストランに思わずシンもこの表情。(確か別の理由で撮った写真だけど)
後ろのテレビではELが始まった。
食事をしていると、8時40分に到着していた巡礼者がいて、やっぱりこの時間まで歩く人もいるんだよな…と改めて驚いた。
シンは俺にはできないと言っていたけど、自分もできない。早く宿に着いて、シャワーを浴びて、くつろいでいたい。
プリンはまあ…。
レストランの奥にあったミニスーパーでミニ買い物をした。レストランのクオリティに比例するようにリンゴは危険な色をしていた。
お互いに10€紙幣を持っていなかったという流れから、ぼーっとしていたシンの分も自分が支払う形になったが、今までにいろいろ払ってくれたり、何かをプレゼントしてくれたりしていたので、ちょうどよかったかな。相手はそれに気付いてないみたいだけど。
9時半に部屋に戻ったが、えりこさんはまだ寝ていた。シンとディナーの際に、変な時間に起きてお腹空いたって絶対言うよねと話していたが、このまま起きずに朝になった方がいいだろう。
と自分も寝ていたら、23時前に彼女に起こされた。携帯がない…と。
間違えて(もしくは寝ぼけていた彼女が忘れて)シンが持っているのはレストランで知っていたけど、多分そのまま持ってるはずと、シンのベッド付近を中心にしばらく探したが見つからなかった。渦中の彼はいびきをかいて寝ている。
携帯の明かりで探していたけど、寝ていると思っていた他の人もライトをつけて、探し物はあったかい?といった感じで気遣ってくれたから逆に困ってしまった。申し訳ない。
シンが持ってなかったらどうしよう…と不安そうに言っていたので、必ずシンが持ってると伝えたら、わかったありがとうと。でも不安だろうな、多分眠れないだろうし。
おまけに自分まで不安になってきたし、片方の耳栓がないことに気付いた。明日シンと一緒に早めに起きたなら、彼女の携帯を充電しといてあげよう。
今日の歩み
Negreira – Olveiroa / 33km