Lost Songs Tour 2022 Final / The End of Yesterday

ELLEGARDENの16年ぶりのニューアルバム「The End of Yesterday」発売日である12月21日に、Zepp Fukuokaで行われたLost Songs Tour 2022 のファイナル公演を観てきた。


エルレガーデンを知らない人に少し説明をしておくと、音楽的には初期はオルタナ色もありつつ、2nd以降はノリの良いポップパンクで、アルバムを重ねる度に(よりヘビィに、スピーディーに)ロック色を強めていった感じ。
ネイティブと遜色ない英語曲をメインに、メディア露出ほとんど無しでインディーズからオリコン1位を取るようなバンドで、自分が中学2年生だった2006年頃を全盛期とするなら、当時中高生だった(現在30代前半くらいの)ロック好きのキッズにはそりゃもう憧れの存在で、(テレビに出てくるアイドルくらいしか聞きませーん!って人たちの認知度は知らないけど)とにかく絶大な人気を誇り、自分も当然のように大好きだった。筆箱にはエルレとバンプのステッカーを貼ってたし。

そんなバンドが長らく活動休止していたのは、ボーカルの細美さんがストイックでハードな楽曲制作を行い、よりフロアを爆発させられるようなロックを追求し続けた結果、他のメンバーがその過酷さに耐えられなくなった「モチベーションの違い」が理由というのは、先日Amazon Prime Videoで配信開始になった長編ドキュメンタリー映画「Lost & Found」で知ることになった。

2018年に10年ぶりに活動再開をしてZOZOマリンスタジアムを余裕で満員で埋め、その後もたまにフェスに出演したりはしていたんだけど、今年ようやく16年ぶりのアルバム制作が行われて、2曲のシングル先行配信を経て、昨日アルバムが発売され、その久しぶりすぎるニューアルバムを聴きながらライブへ行った。
ただでさえ当選倍率が凄まじいのに、久しぶりのワンマン全国ツアーのファイナルということに加え、新譜の発売日も重なるという条件のもと、とんでもない幸運の持ち主たちが集った会場になったわけで、今でも自分にチケットが当たったことが信じられない。
今回のツアーのコンセプトがThe End of Yesterdayという新しいアルバムのツアーをやる前に、あまり演奏されることがなくなっていたLost Songsをやる(けどいつもの人気曲ももちろんやるよ)ってなツアーで、とりあえずセットリストがこちら。

 

 

1.My Favorite Song
2. Supernova
3. 風の日
4. Fire Cracker
5. Space Sonic
6. No.13
7. サンタクロース
8. 指輪
9. 右手
10. Mountain Top
11. Salamander
12. モンスター
13. Lonesome
14. Sliding Door
15. Strawberry Margarita
16. スターフィッシュ
17. The Autumn Song
18. ジターバグ
19. 虹
20. Make A Wish

EN:
21. 高架線
22. Cakes And Ale And Everlasting Laugh


新旧織り交ぜたコンセプト通りではあるんだけど、各公演で1曲しか演奏しない枠には「右手」が入った。活動休止前のセットリストでも見ることがなかったから、多分20年ぶりくらいなんじゃないかな。絶対カバーで矢野顕子さんの方がやってるもん()
他にもレア曲がいくつかあり、活動再開直後やフェスとは違う、ガチなファンであればあるほど楽しめるセットリストだったと思う。

自分も参加してきたしその度に喜びを感じてはいても、正直、たまにフェスに出演するくらいで、シングルも配信の2曲だけだと、まだどこかに特別企画みたいな印象を受けてたんだけど、ああ…エルレの新しいアルバムだ…という幸福感と期待感に包まれながらライブハウスへ向かい、
そもそもELLEGARDEN自体がツアーをやるためにアルバムを作るようなバンドだし、メンバーがどう感じていたかはもちろんわからないけど、久しぶりの全国ツアーを完走した日だからこそ味わえる空気感が絶対にあって、完全な現役バンドに戻ったELLEGARDENをこの目で観れて、この耳で聴けて、本当に嬉しかった。
この日を待ち望んでいた他のファンも似たような感想だと思う。まだコロナ禍で声出しも大きな動きも制限はあったけど、会場の熱量・観客のボルテージはコロナ前と何も変わらなかったから。近くにいた男性なんてテンション上がりすぎて一瞬シャドーボクシング始めて怖かったし。
 


アルバムの方は、幻となった6枚目を作り直したわけではなく、the HIATUSやMONOEYESでソングライティングを続けてきた細美武士が、それぞれ別の活動を行ってきたエルレのメンバーと、家族のような仲間たちと、また集って制作したというようなアルバム。その長い長い16年間という時間を表す内容だと感じた。
多くのファンがイメージするであろういわゆるエルレらしさは、Space SonicやSalamanderのような曲なんだろうけど、そういった曲は一通り聴いただけでは見つからない。
活動休止前の若い頃のように、いろんなものを犠牲にして、周囲も巻き込むからこそ生まれる破壊力のようなものもほとんど感じない。
その代わりに優しさを感じた。スピードのある曲も尖ってはいなくてどこか優しい。だからこそ、またアルバムを発売することができたんだと思う。

自分はハイエイタスもモノアイズも聴いてきてライブも参加してきたけど(というか細美武士を追いかけ続けることはやめなかった)、上記のエルレらしさを求めていたファンを満足させるアルバムではないかもしれない。正直アルバムジャケットと今回のツアーグッズはちょっとダサい。
具体的に言えば、5thと比べると重みが減った。歌詞も以前のように心境的に追い込まれていたり、爆発寸前の怒りのようなものは見当たらず、エルレとしてまた活動できる喜びが滲み出ている気がする。
でも、別に劣化をしたわけではなく、違うベクトルのかっこよさがある(曲調もそうだけど、真夏のロスで録った乾いた音もマッチしてたり)。というか、初期のエルレが好きな人や、これが2ndとして出ていたら、すんなり受け入れる人は多いんじゃないかな。
細美さんの作る歌としてはそりゃ16年前のエルレより、2年前のモノアイズの方が曲調が近くなるのは当然なんだけど。

まあ、何より願い続けたELLEGARDENのニューアルバムであるということが重要で、「The End of Yesterday」は現役のバンドに戻るためにエルレが16年ぶりに、2022年という”今”に制作したアルバム。それはファン以上にバンドにとって大きな意味を持つだろうし、
ステージに立つ4人は、たとえおっさんになっていても、めちゃくちゃかっこいいままだったから、このバンドが大好きだという気持ちもまったく変わらなかった。むしろ更に増したかもしれない。

ちょうど20歳年上でもうすぐ齢50を迎える細美さんが作ったアルバムを「大人っぽくなった」とか「落ち着いた」と表現するのはおかしいけど、どうせ今回のアルバムも気が狂うほど聴くことになるんだろう。
今後も、発表される楽曲がどんなものであるにしろ、バンドが太陽に向かって上昇を続けて空中分解する飛行機のようにはもうならないだろうし、この先もずっとELLEGARDENのかっけー新曲を聴き続けたい。
来年は全国をもっと細かく、路地裏にあるような狭い会場も回るとのことだったから、昔のように、そうやってコンスタントに活動してくれたらとてもとても嬉しい。チケットを当てるのはまた至難の業だろうけど、それだけ待っているファンの数も多いということ。

いや、嬉しいね。これだけ待ち続けていた大好きな人達が、自分にとって青春そのものようなバンドが、また動き出して。並んでいるエルレのCDに久しぶりに新譜を追加できた。
行き当たりばったりで予定が狂うみたいなエルレらしさは何も変わってなさそうだし、
細美さんがMCで言っていたように、今までの自分達さよならというわけではなく、全部続いている。
ティダ・ラ・バダ! We get it get it go!(ティダがTodaでバダがvidaならToda la vida=スペイン語で生涯。一生俺たちでやってこうぜ、的な)


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