四国歩き遍路の旅 17日目

6月9日。
テントから出ると予想通り待ち構えていたもふもふテロリスト3連投。憎たらしい顔してるわ。可愛いっちゃ可愛いけど。
IMG_0971 IMG_0972IMG_0973
意外と眠れたねというようなことを中野君が言ってくれたので気が楽になった。昨夜は本当に助けられた。中野君は襲撃者にテント越しに一度頭を踏まれたらしいけど。
奥さんと中野君は連絡先を交換していて、昨晩送っていたメールの返事が朝には返ってきていた。
なんと久礼の休憩所にはスプリングベッドがあったらしい。そ、そうなんだぁ…!へ、へぇ…! ま、まあこっちの方はもう峠越えてるしぃ!?と華麗に震えた。
笑えたのは旅ではハプニングも醍醐味だから。過ぎてしまえば笑い話になることばかり。

6時50分前、出発しようと思っていたら雨が強く降り出したのでレインウェアを着た。
足の裏は出発前から痛んでいた。通しの人は皆足ができていくという流れに逆らうこの我がパンク精神。

まじかよ、お前ついてくるのかよという衝撃。途中で引き返していったけど。さよなら。
IMG_0974
37番の岩本寺を目指す。残り距離は約16km。昨日一カ寺もお参りできていないように、高知はお寺感の距離が本当に長い。歩けば歩くほど修行の道場だということを実感する。
IMG_0975
完全に雨が止んでいるので、出発から20分程して道端に立ち止まり、レインウエアを脱いだ。あるある。
歩いているとマシだが、止まると左の足裏に激痛が走る。ずっと痛みはあって、ウォーカーズハイで最中は感じずに、意識が向いたときに痛みを感じるんだろう。

足の状態を踏まえて、靴を買い換えるしかないよなと考えていたけど(でもギャンブルだよなあ、解決しなかったら何の意味もないし…という悩みもあった)、いや…五本指をソックス買えばいいのか…?と閃いた。それを中に履いて二枚履きをすれば少しは改善するのではと。
結果はどうなるかわからないけど、なんだか希望が湧いてきた。

影野駅があったので、どんな感じか確認してみた。悪くなかった、ベンチもあるし。猫が来るか来ないかは知らない。
IMG_0979 IMG_0980 IMG_0981
駅構内にあった観光ポスターを見て、どうせ作るなら笠の向きを正しく被って撮ればいいのにというツッコミ。遍路について知らない人が、とりあえずいろいろと身に着けさせて撮りゃいいんだろ?的な魂胆で撮ったんだろうけど。
IMG_0982
工事現場の休憩所。中野君がトイレに行く間に中がどんな風か確認したけど、入り口前が泥なのは危険ということがわかった。
IMG_0983
歩いていればどういう用途で使われているかわからない建物や一風変わった家などを多々見かける。面白い。
IMG_0984
お店がないので当然まだ靴下は買えてないけど、もう今の手持ちで二枚履き試してみるかと、小さな公園を通り過ぎる際に、ちょっと待ってもらえます?と中野君に言って、その公園にあったベンチに座って、荷物の中で(基本どれも分厚い靴下だけど)とりあえず一番薄いものと一番厚いものを組み合わせて履いてみた。

昨晩は雨だったから水溜りが所々できていて、ある場所で車の水しぶきが飛んできて、見事にぶっかけられた。これもまた歩き遍路あるある。
避けて通ってくれるドライバーもいるけど、お構いなしで飛ばすドライバーもいる。今向かってくる車がどう進路を取るかはわからないので試される赤の他人への信頼力。裏切られたときにどれだけ冷静でいられるかという忍耐力。
でも、他の人はどうかはわからないけど、何度もあったそんな事態も別に怒りが湧くようなことはなかった。
最初の方は驚きはした。でも途中からはもう、ああ、また水しぶきか。というほぼノーリアクションか。気分が良いときは、ふぅーwww濡れたーwwwとなんか楽しくなって笑っていた。雨の日だともう体の前面が濡れることなんてまったく気にならないし。

昨日進み過ぎたせいか10キロ到達にエラく時間がかかってしまった。
そして爪横の腫れていた箇所がずっと痛い。しかもかなり痛かった。もっと酷くなっている気がした。

この先の事情を調べて、五本指ソックスが買えそうなスポーツショップを探したけど、次のお寺の近くにはなくて、お寺の最寄りの駅から、戦略的ワープをしてスポーツショップがある街へ飛ぼうかと計画を立ててみた。
その計画を立てたからか、以前はスリーエフだった(グーグルマップで知った)やたらと紺色のローソンで、ドーピング的なエナジードリンクを買って飲み、岩本寺への道を乗り切ることにした。エナジードリンクは効果が切れるとどっと疲れることがあるので今まで飲まずにいたけど、疲れと痛みがもう尋常じゃないので試してみた。
IMG_0986
このローソンと向かいに道の駅あぐり窪川がある場所から先の道は歩道が右側にあったり、左側にあったりして、そのたびに逆側へと移動しなければならなかった。
その自分の願望とは反対に振り回され、大変な想いをしなければならない道で、それはまるで人生のようで…と軽くボケながら僕が呟くと、お遍路は人生の縮図ですからと中野君が返してきた。
お遍路を人生に例えたそのやり取りで(大喜利?)僕は、始まりがあって終わりがある。出会いがあって別れがある。車から水しぶきをかけられたり、猫のような存在が寄ってきたり。といった類のことを発言した。
でもMVPは間違いなく中野君。彼がお金がかかるの次に言った、いつでもやめられる。というブラックジョークには爆笑した。

岩本寺へはもうすぐだったんだけど、どこかで曲がり損ねていたみたいで、道を尋ねたおばちゃんからは、遠回りしたね~と言われた。

でもなんとか第37番札所藤井山岩本寺に到着。時刻は10時30分前だった。
IMG_0990
本堂の本尊は不動明王、聖観世音菩薩、阿弥陀如来、薬師如来、地蔵菩薩の五仏。
本堂の外観は撮り忘れていたけど、内陣の格天井画なら撮った。全国から公募した画家や一般市民の575枚の絵が飾られている。花鳥風月が多い中、マリリン・モンローがあるのはやはりシュール。
IMG_0993 IMG_0995
ぎりぎり写っていないけど大師堂がこの写真の左側にある。右側に写っているのは円形のお堂で歓喜天を祀る聖天堂。img_0997
納経所にいたのは独特な雰囲気を漂わされている(言ってしまえば絡み辛そうな)おばあちゃんだったけど、濡れていてすみません…と納経帳を出すと、乾かす方法を教えてくれて、そのための紙も沢山くれた。そして納経帳を見ながら(濡れて滲んでしまったことも含めて)ぼくの宝物ねと言ってくれた。

納経所の近くのベンチで足の状態を見ていると、3人組の中のおばちゃんだったかな。歩き?頑張ってよお。感心するわあ。と声を掛けてもらった。ほんとに皆が応援してくれる。傾向的には労りの言葉を掛けてくれるのは、このときのようにだいたい3人組の中のおばちゃんおじちゃんが多いけど。

お寺を出て窪川駅前でお互いの無事を祈って中野君と別れた。
少し前から話していたヒッチハイクをするかもという計画についても別れ際に少し話したけど(全交通手段を使うのもありかもという話も)、決行するかどうするかはまだ決めていない。
だいたい半分近くまでここまで頑張ってきたのが、後半はあっという間に終わってしまうことになるから。でも、足が酷い状態というのは誰が見たってわかる。様々な考えが浮かぶからまだ決め兼ねていた。
とりあえず、事態の改善を目指してスポーツショップへ行くために、今は出来るだけ負担を掛けないように電車に乗る。

その脱法ワープを行おうとしている窪川駅は2つあって、最初JRの方に入ってしまったけど、正しいのはJRの横にあった土佐くろしお鉄道の窪川駅だった。
IMG_1002
窪川駅乗車、降車は具同駅。中村・宿毛線。
IMG_1003
電車の中には1人寝転がっている遍路のおっさんがいた。信じられないほどの大荷物だった。
IMG_1005 IMG_1006 IMG_1007
乗る前はほとんど罪悪感に近い気持ちを感じていたけど、出発をしてしまえば乗り物(車窓)は好きだし、旅の出発前に鉄道で回る遍路の番組を見ていたということもあり、悪くない気分だった。乗り込む前に買ったティーグルトは不味かったけど。
IMG_1008
やはり車窓を眺めるというのは楽しい。幸運にも綺麗な景色が続いていたし。
IMG_1010 IMG_1011 IMG_1012
しかし電車の中は冷房が効きすぎていて寒かった。昨日充分に眠れなかったので寝たかったけど寒過ぎた。
と言いつつ少しは眠った。うとうとと心地良い眠りの隙間から見る四国の風景は美しく、電車に揺られながら自分の体が簡単に運ばれていくのも、どこか現実離れしているようで変な浮遊感があった。(もちろん今までにない時間すぎて複雑ではあったけど)
途中にあった駅の名前「海の王迎」はワイルドすぎた。由来を調べたら流刑された後醍醐天皇の子を海から迎えたことで名付けられたらしい。

中村駅で一駅分の乗り換えを待つということ。
IMG_1015 IMG_1013
一両で走るローカル線。
IMG_1016
こちらの空調はちょうど良かった。乗車時間は僅かだったけど。
IMG_1017 IMG_1018
具同駅に到着。
IMG_1019 IMG_1020
乗り換えでの待ち時間も含めてだいたい1時間半ほどで着いた。距離でいうと昨日1日掛けて歩いたぐらいの距離を移動したことになる。
このときは特に考えはしなかったけど、その間に出会えた(すれ違えた)人たちはきっといて、経験できたこともきっとあって、そういった人たちや事柄とは人生の線を交わらせる機会を逃したということになる。それらのことについて想うとやはり寂しい。
でもこの行動を取ったからこそ見られた景色があった。そして本来の予定とは(たった1日や2日だとしても)少しのズレが生まれたからこそ、これから出会える人たち、経験することがこの先で待っていた。それらは僕がこの行動を取っていなかったら、出会えなかった人たち、経験できなかったこと。
出会えなかった、存在も知らない人たちに寂しさを感じて、出会えた、存在を知ることができた人たちに愛おしさを感じる。
この旅だけではなく、これからにも繋がっているであろうそういった選択の結果、感情はきっと素敵なものだと信じている。

電車から下りた時点で見えていたフジグラン四万十。
IMG_1022
目的のスポーツヒマラヤ。
IMG_1021
店内に入ってまずはトレッキングシューズを見てみた。品揃えがめちゃくちゃ悪いというわけではなかったけど、(自分が履けない)小さいサイズが多くて、自分の足は26.5とそう大きい方ではないのに、なんだか残念だった。そして在庫があるものもどれが良いかわからなかった。なぜかというと、どの靴を履いても今は足を地面につけるだけで痛かったから。こんなことになるとは想定外だった。
仕方がないので靴は諦めてソックスのコーナーに移動したけど、五本指ソックスも一種類しかなくて、それを購入するしかなかった。

お店を出たら強めの雨が降っていた。ついでなのでスーパーで買い物をすることに。
IMG_1023
健康的ではないというか、歩き旅に適しているとは思えないようなものもときには飲みたくなってしまうよね。うんうん。炭酸とか特にね。
IMG_1024
足はうんざりするほど痛いし、今降っている雨が通り雨だといいなと、ベンチに腰掛けてわりとのんびりしていたら、地元のおじいちゃんに話しかけられた。
今日は真念庵の先にある休憩所で寝ようかと思っていると話すと、真念庵についてはわからなかったみたいだけど、電車で少し遍路道からは離れた場所まで来ていたので、ここから四万十川への道を教えてくれた。なんでここにお遍路さんがいるんだろうと思った人も多分いると思う。
幸運にも午後3時過ぎに雨は止んだ。再出発。
IMG_1026
通り雨が過ぎ、晴れたのはいいけど暑かった。そして足摺分岐という交差点はなんか臭かった。

四万十川が見えた。でも正直、想像していたよりは川自体の迫力はないなと感じた。まあ、清流や沈下橋が売りだろうから問題はないはず。
IMG_1027 IMG_1028
多分支流だろうけど、右隣にも一級河川(中筋川?)が流れていた。
IMG_1029
IMG_1030
でもどうせなら四万十川を見ながら歩きたいと階段を上がった。
IMG_1031 IMG_1032
中村駅で下車すれば行けたんだけど、どうやらこの先には皮膚科も内科もない。皮膚関連のトラブルが多いのに、判断を誤っただろうか。
そして靴下を買ったはいいけど、靴は変わってないわけだから、これからも雨には苦しめられそうだ。中敷きも探したけどなかった。
どうなることか。予測がつかない。

遊覧船は楽しそう。観光で来ればもっとこの地を楽しめるだろうなと思いながら通り過ぎた。
IMG_1033
気付けば何枚も写真を撮っていた。本領発揮してくれたのか、第一印象からはすぐに印象が変わった。やはり知名度にふさわしい良い川だ。
IMG_1036
遍路マークがこの辺りには一つも見当たらなくて少し不安になったけど、道を間違えてはいなかった。
でもガイドマップで進み具合を確認してみて、山路橋付近だったか詳しくは忘れたけど、今日真念庵に行くのは厳しいと気付いた。
ふと、ひかるくんは前にいるのか後ろにいるのか気になった。後ろにいるのなら追いついてくれるだろう。
IMG_1039
おばあちゃんと挨拶をしたついでに、この先に小学校(八束小学校)があるか聞いてみた。すると、ありますよ、だいぶ向こうだけどね。と返ってきた。道は合っている。
すれ違いざまのほんの少しの何気ない会話だったのに、その会話が終わると、心が躍るように嬉しくなるのがわかった。やっぱり歩き旅は楽しい。ヒッチハイクは本当に歩けなくなってからでいいやと思った。

壊れかけのベンチで休憩を取っているときか、それから歩き始めて程無くして、袈裟を首にかけているのが見えるおっちゃんが白い軽自動車の中から、大丈夫?まだ足摺まで遠いよ?と声を掛けてくれた。今日の宿等心配してくれていたんだろう。大丈夫です。東屋に泊まろうかと思ってます。と言うと、頑張って!と応援してくれた。
IMG_1040 IMG_1041
ダルメシアンを連れて散歩している人とすれ違った後に、バックパックにぶら下げていた寝袋が落ちた。気付いて良かったと心から安堵した。寝袋がないと更に夜の睡眠事情がキツくなってしまうから。
拾い上げて、それまで付けていた方とは逆側に付けてみたら、今度は逆側が重たくなってしまった。バランスが難しい。
違和感があったので、片方に付けるのはやめて、二本の紐に通して後ろ側に、バックが寝袋をおんぶするような形に変えてみた。しかしこの付け方は雨の日はザックカバーがあるので不可能。
わかりやすく説明するといろいろと長くなってしまうから上記の適当な説明に留めておく。寝袋の付け方なんて然程重要ではないだろうから。端的に言えば、バックパックに入りきらない荷物をどうするか困っていたという話。

今日の歩行距離はまだ30キロに届いていなかったのに、溜まりすぎている疲労で足取りは重かった。
歩きながら頭にあったのは、今日泊まるところは良い東屋だったらいいなあという願い。
予定変更して狙いを定めていたのはガイドマップには載っていないけど、萩森さんに教えてもらったレストラン大文字の近くにあるであろう東屋。

しかし、歩けども歩けども、全然レストランが見当たらなかった。
IMG_1043
まだかまだかと歩き続け、ようやくうどん屋田子作の先に東屋を発見。時刻は午後5時過ぎ。
まさかのヘンロ小屋。ちゃんと清掃されている感じのトイレもあるし、自販機まであった。最高。
IMG_1044 IMG_1045
でもベンチが真っ直ぐではないので体を曲げないと寝れなさそう。眠ることを想定して作られてはいないので仕方がない。
IMG_1046
上を見上げると二次元キャラのシールが貼られてあった。
IMG_1048
足の状態を確認すると、爪横の膿の部分がかなり赤くなっていた。膿が付着している可能性もあるけど、付近の爪がボロボロと剥げているようにも見えた。やはり歩くと悪化するのだろうか。想像以上の悪化を目にして、時間が経てば自然に治るようなものではないのかもしれないと不安になり、中村駅で降りて皮膚科に行けば良かったと後悔した。
足の裏が破れていたのは塞がってきたけど、四六時中普通に痛みはあるわけだから喜べないし。

ヘンロ小屋は四万十川野鳥自然公園の駐車場の横にあって、公園を散策する元気は残っていなかったからどんな場所かは知らないままだったけど、ランニングしている女の子や散歩をするおっちゃんたちがいた。
IMG_1052
おにぎり一つでお腹いっぱいになってしまった。この場所に着いてから自販機でカルピスソーダを買って一気飲みしたからかな。もう一つ無理やり食べたけど、栄養バランスとしては結構ひどい夕食。でも食べやすさや捨てやすさを考えるとやはりおにぎりやパンに頼ってしまう。
IMG_1050
その日の歩きを終えた後はだいたい足の裏が痛くて、スリッパを履いた足でよたよたと歩きながら寝る準備をする。
この日もトイレの洗面台でタオルを濡らして体を拭いて、高齢者のように苦労しながら着替えて、歯磨きをして寝る準備を進め、マットの上の寝袋に入った。
そして、近くの小高い山の中にずっとチカチカと点滅している灯りがあって、それが何なのか気になりつつも眠りについた。

と、それがあたかも一日の終わりように見せかけて、20時30分過ぎに目が覚めた。
蚊と車が来るので深い眠りに入れない。少し離れた場所に道路があってそこを車が走行する音には耐えていたんだけど、駐車場の方にも車は結構入ってきて、エンジン音以上にヘッドライトが眩しくて眠れなかった。でも自販機もトイレもあるわけだからどうしようもない。自分にとって便利な要素も、場合によっては不便な要素になり兼ねないらしい。
完全に目を覚ましてしまった原因は、大声を出す軽トラのおっさんが来たから。2台の車が来て、一旦1台が離れてからまた戻ってきて、その戻ってきた際の車内には間違いなく健太が乗っていた。
というのも届いてくる大声から、そのおっさんがもう1台の車の中にいる健太に説教しているのがわかったから。どちらも車から降りることなく、確かエンジンもつけっぱなしだったので、本当に眠れなかった。
一通り怒鳴って説教した後に、お母さんを困らせたらだめだろ…?とちょっと優しげなトーンになり、最終的には健太ー!!!頑張れー!!!とエールを送られていた。
何かをやらかしたんだろうけど、一体何をやらかしたんだ健太は…。と気になった。にしてもおっさんは大声で話していたにもかかわらずほとんど何を喋っているか聞き取れなくて、特に方言がキツいわけではなかったのに、日本人でもこんなに聞き取れないのかと奇妙な気持ちにもなった。聞き取れたとしても、それはそれで眠れなかっただろうけど。
とまあ、いろんなヒューマンドラマがあります。ちょっとだけNHKのドキュメント72時間を見ているような気にもなった。

強引に眠ろうとしたけど、やはりずっと眠れなくて、あっという間に22時を過ぎていた。
眠れない間に考えていたのは、これからの旅のこと。
今悩んでいることはいずれ悩まなくなることで、体の問題であろうと、心の問題であろうと、どんなに痛む傷があったとしても、大したことじゃない。何もかも大したことじゃない。すべては諸行無常だ。
旅に出る前から、そういう考えが浮かぶことはあったけど、その考えがより強くなっている気がした。
でもまだまだ煩悩は変わらずにいつも自分とともに呼吸をしている。

だから迷っていた。これからの旅をどうしようかと。
歩き続けるのか、他の手段を用いるのか。自分は何のためにこの旅をしているのか、でも譲れないものはないか。
正直爪の横の膿垂れ流しゾーン(とでも呼べる怪我)ができて以来、辛さというものがもう尋常ではなく、歩き旅を続けるべき状態ではないのは理解している。
でもここまで頑張ってほとんどの道を歩いてきたわけだから、歩き続けるのも辛いけど、その歩きを途中で止めてしまうというのもまた辛い。
本当にどうしていいかわからなかった。これからの選択を天秤にかけても、揺れ続けるままでどちらかに決まることはない。
だが決めなければ時間はただ過ぎて、明日がやってくるから、ここにいれば明日も歩くしかない。線路はもうこちらには続いていないし、バスも正直ほとんどないようなものだし。
どうしていいかわからないときに、どうしていいかわかればいいのに。


Scroll to top