四国歩き遍路の旅 24日目

6月16日。
雨が降ってきた!という主婦らしき女性の慌てる声が7時台に外から聞こえていた。
ちゃんと起きたのは8時前で、共有スペースに下りたのは8時半。

窓を開けたら見える路地裏、誰かの日常。
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1階にはクリス君もなおさんもいた。クリス君はシャワー浴びるので、朝食はなおさんと食べた。パン2つとプリンを。
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手作りプリン、美味しかった。
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机にはティッシュの代わりにトイレットペーパーが置かれていた。

足の状態に変わりがないので、5日で治る気しないなーと話すと、じゃあもう5日(延泊)でとクリス君。最近ふじやは寂しいらしい。でも長期滞在も悪くないなと思えるほど居心地が良かった。ふじや自体の居心地というよりは、クリス君となおさんとの3人で過ごすことが多かったから、その2人の雰囲気、空気感かな。気を遣うことなく過ごせて、本当に快適だった。

屋上に洗濯物を見に行くと、しっかり乾いてくれていた。こんなに良い仕上がりになるとは想像していなかった。きっと良い風が吹いていたのだろう。匂いも良い。

掃除タイムが始まり、クリス君はスマホ経由でスピーカーからジャズを流していた。
邪魔になるので僕はテントの組み立ての練習を始めた。小雨が降っていたのでガレージを使わせてもらって。
想像とは違い、最初から結構イケた。数回やれば組み立て10分、収納は5、6分で終えられるようになった。もっと広い場所ならポールを大胆に伸ばせるだろうから、数をこなせば更に上手くなるだろう。これからの旅の不安要素が一つ消えた瞬間だった。
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今日は聞かれてないが、松山に来てから旅が終わってからの予定を聞かれるようになった。
やりたいことはあるが、これからどうなるかはわからない。この旅もどうなるか本当にわからない。その未来を実際に過ごしてみないことには。
そういったやりたいこと、やるべきことが、今は手をつけられないので悶々とする部分はある。
ここで過ごすのは暇で仕方がないという感じではないし、居心地は最高なんだけど、とりあえず早く旅を終わらせたいというのが今一番強く思うこと。

クリス君を掃除の後はベッドを作っていた。スタッフはこういうことも出来るんだなあと感心した。

お昼頃に一六タルトを食べて、アイスを食べて、部屋に戻ると部屋に一つ布団が用意されていた。個室生活は終わりらしい。どんな人が来るのだろう。
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全野宿で全部歩いている人は純粋に凄いなと思う。肉体的にも精神的にもただ感服するしかない。そんな人たちに比べれば自分は甘々。
でも、特に気にすることはないだろう。思い悩むようなことじゃない。

ちょっと昼寝をして、2時にあつしさんが来たので例の自転車ポリスメン事件について話した。自転車は以前長期滞在していた子に貰ったものだと教えてもらいスッキリした。
なおさんが少し話していたけど、前回も自転車を譲り受けて、それを使っていたら、なんとそれが盗難車だったというエピソードも教えてもらった。
ちなみに今日はお遍路の人が一人来るらしい。きっと同部屋の人だろう。

クリス君の年齢を聞いていなかったので話の流れで聞いてみると自分の一個下だった。上だとか下だとかの予想は全然していなかったけど、へえ~下なんだ!という驚きは少しあった。かっこいい感じの白人男性が少し髭を蓄えている姿。うん、まあ同世代。
3人でなんかやろうかとなったけど、なおさんの大富豪案はクリス君が却下して、お互いにサッカーをやっていたということで2人でちょっと遊ぶことになった。
サッカーボール買おうかなと言いつつ、別館からボロボロのボールを持ってきて、ちょっとだけリフティングで古今東西をやった。
爪が痛くなって止めたけど、これでもっと滞在が伸びるねと言うクリス君からは、本気でもっと滞在してほしいんだなというのが伝わってきた。

リビングでなおさんもお昼寝をしていた。
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3時半頃に傘を差してスーパーへ買い物に行った。風俗街が近いから派手な女性は全員その手の仕事をしているように見えてしまう。清楚ななおさんとは対極。

温泉はまた椿の湯に来た。まさかのタオル忘れが発覚したので、石鹸付きのタオルを60円で借りた。でも後悔はしていない。良い匂いの石鹸で体を洗えたし結果オーライ。
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温泉に入っていると、正岡子規の「十年の汗を道後の温泉尓洗へ」という句が刻まれている湯釜を見て、10年も入ってない人が来るんだって!汚いよね!的な感じで、田母神さんに少し似たおっちゃんが話しかけてきた。
彼は地元の人で、自分がお遍路で来てると言うと、色々と話に花が咲いた。四国関連のことだけでなく、都知事選の話なんかもした。菅直人はすぐそこで辞めたからぺしゃったとか、愛媛のお寺の場所や合併事情も教えてくれた。普段はスポーツジムに行ってそこのお風呂に入るからここにはあまり来ないらしいけど、縁はここにあった。
最後には気をつけてねと言ってくれておっちゃんは湯から上がった。

爪は言葉で表現するのも躊躇うような酷い状態で治っている感がない。昨日少しの回復を感じたのは完全に勘違いだった。リフティングが悪かったのか悪化している可能性もある。(ほんのちょっとしか蹴ってないからあんまり関係ないとは思うけど…)
札所間の距離が開いている区間は飛ばしていいような気がした。いろんな旅の形があるわけだから、別に負けじゃない。こだわるべきなのは四国巡礼を続けるということだけ。
バスで回っているお兄さんに歩きは凄いと言われ、変わらないですよという風に答えたように、形が変われば違う苦労があるのだから、別にそれでもいいと思った。

宿に戻ると玄関にいたのは見覚えのある眼鏡をかけた青年がいた。そう、まさかの中野君。もう笑うしかなかった。縁だなあと。
高知で一旦区切っているものと思っていたけど、なんだかんだでここまで進んできたらしい。どうやら今回はここで本当に止めるらしいけど、東洋大師で出会ってからここまで再会を繰り返し続けてきたことを振り返るともう笑うしかない。中野君ももちろん笑っていた。
中野君が温泉とご飯に行った後、なおさんが7月から新居に引っ越すから個室が空くという話を聞いた。クリス君からどうですかと誘われるまでがセットです。

夕食の酢鶏中華弁当。2人はいつも自炊をしていて偉い。面倒がる自分はいつもこういったものばかり。
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やはりアイスは優勝。でもお昼も食べてたな。プリンのお礼としてクリス君にも少し分けた。
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ふと窓の外を眺めると、路地裏には野良猫がいて、その馴染みっぷりに和んだ。嫌いではない。

中野君が帰ってきてからは、積もる話もあり、クリス君となおさんには申し訳ないくらい盛り上がった。2人もお遍路やお寺について聞いてきたりで会話は4人でしたけど。
彼は松山では泉ゲストハウス(オーナーがお遍路経験者で詳しいらしい)に泊まるつもりだったけど、その本来泊まろうとしていたゲストハウスはオーナーが(?)何日か空けるので臨時休業という理由で、ふじやにしたらしい。もちろんそちらに泊まっていれば会うことはなかったはず。
大岐の浜の奥さんに言われた”縁のある人とは3回会う”という言葉は本当だったようだ。3回どころじゃないけど。

中野君はある人に88番札所で泣けるお遍路にしなさいと言われたらしい。なんだか僕にもグッとくる言葉だ。
ヒッチハイクを交通手段の托鉢と考えればそれもまた修行だというような話もした。乗せてくれる車が全然見つからない可能性もある。なんてたって今年は逆打ちの年なんだから。明日はヒッチハイクに使うノートやマジックペンを買うことに決めた。
部屋に戻ってからも話は尽きなかった。お遍路のことだけではなく、これからについて、将来、現実、旅をするということ、自由ではいたいけど簡単には叶わない難しい問題だということ、等々。
12時前に眠りにつくまで、様々なことを語る夜だった。


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