四国歩き遍路の旅 31日目

6月23日。
祖母が出てくる悲しい夢を見ていて、起きると涙が零れていた。

痛み止めの効果が切れていて、寝起きからもう歯が痛い。そして雨だ。雨が降っている。

iPhoneについてはしばらく書いていなかったけど、この朝は液晶画面に(今までの曇りとは違う)水滴のようなものが広がっていて、何日も前からあった右側の黒い部分も範囲が大きくなっていることに気付いた。

テントのファスナーを開くと、すぐそばに置いてあったサンダルはびしょ濡れになっていた。そのサンダルを履いて建物の方まで移動すると、軒下にあった靴は更に濡れていた。他の物もまったく乾いてない。夜露負け。ここで物を乾かすというのが無謀、夢物語だった。

朝食。
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昼間は夜に比べるとマシだと思うが、念のため朝食後にイブを飲んだ。

赤い橋。
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その先の紫陽花。
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寝ている間に耳栓が行方不明になっている。片方は後で出てきたが、寝袋の中にも入り込んだだろうか。
膨らませても空気が抜けてしまう首枕をこれからどうしようか。もう破れてしまっているが、新しく買うのもなんだか気が乗らない。

木の下でなければあまり雨粒に当たらない。つまり、今はほとんど降っていないのか。

納経時間の張り紙。
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滝の反対側、奥の院参道側にはトイレがあって、そこの洗面台に水が入ったペットボトルと歯ブラシセットを持っていって歯磨きをしていたら、6時前に傘を差した散歩の中年夫婦が来た。でも挨拶しても反応は薄かった。妻はキツいトーンだったし、夫に至っては無視だった。早朝散歩をする人は皆挨拶をしっかりする人たちばかりなのに珍しい。

イノシシや猿が夜中に出てこなくてよかった。
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とりあえず歯が痛い。歯医者に行きたい、全力で。
そして今朝はなんだかモチベーションが上がらない。歯が痛いのといろいろと濡れまくっているせいだ。状態が満身創痍だというのもある。
タイツが濡れていて履くのが嫌だったが、不快な状態になれるには不快な状態で一定時間いるしかないと履いた。

6時半前、直前まで気付かずに、あ、おはようございます。と挨拶をすることになったおじさんはお線香をあげて、箱を持って滝の方へ向かっていった。
長いこと帰ってこないからなにしてるんだろうと橋の上から見てみると、おじさんは滝に近づいていたので、お寺の人で、滝行をしているのか…?と気になり、もっと近くで見たくなった。
ただ見に行くのもあれだから、ペットボトルを持って水を汲みに行くていで近づくと、おじさんもペッドボトルに水を入れていたというオチだった。2リットルのペットボトルを何本も、箱ごとに何度か分けて。
話を聞いてみると、この水を当てると悪いところが良くなるらしく、どこかに持っていくと言っていた。そして、やはりここは滝行が(毎月決められた日に?)行われていて、広島から漁師が来たりすることもあると教えてくれた。
水を汲む作業が終わり、ペットボトルが入った段ボール箱を運び終えると、説法みたいな話もしてくれた。
無ということ、南無大師遍照金剛の中にも無が入る。無とは何か考えながら歩きなさい。そして先祖さんのことをお祈りしながら歩きなさい。必ず助けてくれるからと。

祖母を想うということ。最も身近な家族の死を想うということ。繋がれてきた命、昔戸籍を調べたように先祖について考えるということ。
家族を想うこと。先祖を想うこと。自分自身を想うこと。

助言のような言葉をくれる人は素直にありがたい。それが合っていようと間違っていようと、そのことについて考えるきっかけをくれるから。自分なりの答えへ近づくことも出来る。

履く前から靴下も靴も濡れていた。
お姿等もっと早く保護しておけばよかった(その方法を思いつけばよかった)と悔いを感じる。でもすべては旅の思い出。ここにある何もかもを失っても、僕のこの旅は永遠になくならない。
7時半でもまだ準備中だった。だが焦ることはない。着実に結願へと近づいているわけだから。
水は川から1リットルほどペットボトル(500ml×2)へと補充した。

小雨が降っているので、ザックカバーをつけた。この圏外の間にこれからの天気が良い感じになってくれてたらいいけど、まあ、うん。
小学生のように各部位10秒ずつの準備体操を行ってから、お世話になりました。行って参ります。とお礼のお参りをして、7時50分前に出発。

今日の僕には今日の道。歩いてゆきます。歩いてゆきます。
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すぐ先に東屋があった。テントを張れるスペースもある。東屋はここのことだったか。こちらならば滝の音は遥かに小さいし、ゴツゴツした石の上で眠らなくてもよかっただろう。もう問題はないけど。
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あと一週間。誰と、どんな人と出会うだろう。深く仲良くなるような人はいるだろうか。
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ガイドマップで分岐路の上は高速道路というのはわかっていた。そしてわりとすぐにその高速が見えた。
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右を選択。
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坂道を上がると、
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高速道路と並走するような道に。
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いや、またかよ…。まあ、どっちでもいいんだろうけど…。右に行った。
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今度は左へ。
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遠くに見える街と雲と山。
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蛇の抜け殻があった。近くにいるかと思うと恐ろしい。
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お寺はそう遠くないということで結構適当に進んできた。多分変則ルート。
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こんなとこも通っちゃったりして。
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お寺には近づいてるはずだけど、現在地はわからないから、スマホで確認した。
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別に大きくそれていたわけでもないので無事到着。
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8時半前。
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第61番札所栴檀山香園寺。
いや…なんだこのお寺は…デカすぎる…と唖然とした。この建物は大聖堂と言って、本堂も大師堂も兼ねている。
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一階からも参拝は出来るが、二階が入り口らしいので二階に行くことに(まずは一階に行ってみたんだけど、お大師様はご本尊様とともに二階にお祀りしていますと書かれていたので)。

二階に上がる前に女性に歩いてるんですか?と話しかけられた。その女性は帽子を取ると、帽子を取る前より若く見えた。
少し話をして、最後には労いの言葉をくれた。 もう少しですねという言葉が出たのは初めてだ。そう、まだ香川を残してこそいるが、愛媛の札所もこのお寺を含めてあと5カ寺。

スリッパを履いて中へ入ると、広い講堂のようになっていて、椅子が大量に(620席も)用意されていた。子安大師のお寺としても有名らしいけど、それでもその多さには驚いた。
開基は聖徳太子という驚愕の歴史の古さ。用明天皇の病気平癒を祈願するために建立したらしい。
でも僕が昨晩泊まった白滝で滝行する人たちの納経所だった大日堂が現在地へ移ったという説もある。その説が事実なのかはわからないけど香園寺の本尊は大日如来。
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納経を済ませたら、その場で飲めるサイズのデカビタを自販機で買って飲んだ。
境内にはお参りしないで掛け軸に納経を貰う歩きっぽい服装の中年夫婦がいた。お参りをしてないとこを見ると、もしかしたら車で来てるのかもしれないなと感じた。

次へ。

駐車場にいた車中泊っぽい夫婦は身なりを整えていて、旦那さんの方は手鏡を見ながら髭を剃っていた。
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この辺りの中学生は挨拶ゼロ。

ロキソニンの常飲は避けたいのだがどうしようか。

三嶋神社の大きな鳥居。
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64番まではこの道を軸としていいようだ。ちなみに先程のお寺から次のお寺までは1.3km。
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近い。

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第62番札所天養山宝寿寺。9時5分。
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本堂。本尊は十一面観世音菩薩。
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大師堂。
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実はこのお寺は良くない噂というか、いろんな人から警告をされていた。萩森さんと九頭竜さんからは納経時間が他のお寺より2時間も短い(午前8時から午後4時まで)から気をつけろと言われていて、仙遊寺のおじさんからは、開創1200年記念の御姿?が無くなってもこのお寺だけは補充をしなかったというような話を聞いていた。
そういった話を聞いていたので、対応もかなり悪いのかなと予想していたけど、別に納経の対応は普通だった。おばさんがしてくれたけど。

天気予報を確認してみると、まさか!と驚いた。今日は曇りのち晴れになっている。

次の63番へは1.4km。再出発。

自然のロキソニン(足の疲れや爪の痛み)が効いてきた。夜に歯が痛くなるのはやはり歩かないことで足があまり痛まないからだ。
しかし、iPhoneの液晶画面の黒い部分がまた増殖してしまった。もう壊れる気しかしない。

ローソンで昼食用にパンケーキを買った。満足バーも買って、牛乳と速攻元気ゼリーはその場で飲んだ。

こがねをもって こがねへいこう こがねむし。こがね…。
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もうすぐ。
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ちょっとしたデジャヴ。
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はい、第63番札所密教山吉祥寺。9時52分。
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本堂。本尊は毘沙門天(お寺の表記は毘沙聞天)。毘沙門天が本尊なのは88箇所ではこのお寺だけ。
本尊については旅の間はそこまで気にしていなかったけど、さすがに毘沙門天が来ると、ほほう…?毘沙門天か…とはなった。
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大師堂。
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境内にいたおじさんと話をした。北海道から来た人で、今日はここら辺(西条)と今治辺りの札所を歩いて回って、明日はライオンズクラブの大会で福岡入りするらしい。また会うかもしれないねと言われた後で、一緒に行きましょうかと誘われた。
とりあえず納経が残っていたので納経所に向かった。納経をしてくれたのはおじいちゃん。納経帳をぱらぱらとめくって、60いった(到達した)んだねと言われた。どの道を?白滝の方から?道はどうでしたか?といった質問をされて、最後の質問にはとても泥濘んでました…と答えた。頑張ったねと何度も褒めてくれた。
正直愛媛はお接待少ないかなーなんて思っていたけど(雨続きで人と接する機会が少ないんだから当然だし、そういった考えが頭に浮かぶということ自体が卑しい)、こんな風にお寺の人に褒めてもらえると本当に嬉しかった。

そしておじさんと一緒に歩いて次のお寺へ。
歩いていると緊急地震速報が町内放送で流れて焦ったけど、大したことはなかったと思う。揺れも感じなかったし。
福岡でのライオンズクラブの大会は世界大会らしい。いったい何をするんだろう。
おじさんは城が好きとのことで、今回の福岡滞在は(福岡市内の宿は取れず北九州に泊まるらしいけど)唐津城に行く予定と話していた。
お遍路についてはやっぱり歩きが良いよねと言っていた。

すれ違う車の中にいた小さい女の子と会釈をし合った。可愛い。
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晴れたのは良いが暑い。日焼け止めも塗ってない。

3.2kmという決して長くはない距離だったけど、おじさんがお疲れで心配になった。こんな風に若者を一緒に歩こうと誘う人って、よっぽど自信がある人のイメージがあったがそうではないようだ。でもなぜ誘ったのかはわかる。きっと誰かと話したかったんだろう。それはわかる。

手前(隣)には石鎚神社があった。
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第64番札所石鈇山前神寺。10時50分。
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暑すぎたので、お参りの前に自販機で飲み物を買って、ちょっと休憩を取った。
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休憩の間、他の参拝者からいろいろと声を掛けてもらった。歩きで回られてるんですか?からはだいたい同じ会話になるんだけど。

本堂。本尊は阿弥陀如来。御真言が書かれたものが目の前にあって唱えやすかった。
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本堂の作りとお寺の名前でなんとなくわかるが、たまにある神社感の強いお寺だった。
開基は役小角で、石鎚山の麓にある修験道色も強いお寺でもある。毎年7月1日はこのお寺集合で山伏たちが石鎚山へと向かうらしい。
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何も書き込んではいないが、本堂と大師堂以外も納め札を納めるスタイルに変更した。追加で(確か100枚セットがなくて200枚)購入してるからこのままだと余るし。
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大師堂。
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これもたまにあるパターンだが、寺務所がとてもオフィス感があった。納経をしてくれたちょっとイカツイ感じのおじさんは目の上を大怪我していた。

一緒に歩いてきたおじさんは駅に行くわで去っていった。前回車で行ったところを歩いてると言っていたかな。歩道とかないとこは危ないから妻を置いて一人で回っているらしい。
そういえばおじさんは久留米からの女性1人と出会ったと言っていた。その女性の話は前にも聞いたことがある気がする。女性遍路なんてほとんど見かけないけどどこかにはいるのだろう。

ベンチに座っていると日差しが半端じゃなくて、汗が出てきて不快だった。日焼け止めを塗った。

朝見た気がする歩きスタイルの夫婦が来た。あれ、格好通り歩いているのかと少し驚いた。ここまでの時間からすると歩いているのだろう。

その後、大きなバッグを持った若い男性が来て、おっ…?と期待して見ていたが、バスツアーから真っ先に掛け軸に納経を貰いに来た人だった。バッグの大きさからして、彼は転売ヤーな気がした。お参りは一切せずに、その後はガラケーで電話していただけで、格好もチノパンとスニーカーだったし。
宇和島バスの団体名には日帰り遍路と書かれていた。ある意味彼は職業遍路、もしくは副業遍路かもしれない。

これからの計画を練った。次のお寺までは距離があるので、駅に行って電車に乗って、その先の コインランドリーに行こうかと。
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靴内の湿度どうにかしたいなーと思いながらどうすることも出来ないのでお寺を去った。さよなら前神寺。
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この天気ならヒッチハイクできるなあとも思った。でも汗をかいてるし、それ以上に靴が汚すぎる。

駅へ近づいていると電車が出た。自分がさっき調べた時間にはまだ早いから逆向きの電車だろうか。
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うーん、どうしようと迷っていたが決めた。いや、やろうと。綺麗に出来るところをすべて可能な限り綺麗に整えた。

新居浜と行き先を書いて、11時46分にスタート。道路では初のヒッチハイクだ。
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そしてまさかの開始数分、通り過ぎたのは10台ちょっとくらいで、おばちゃん(若いおばあちゃん?)に新居浜まで乗せてもらえることになった。
出身は三島で、今は土居に住んでいるという完全に地元のおばちゃん。山に登る人らしく、この前は九重山に登って、2年前は阿蘇山にも登ったと。屋久島の話でとても盛り上がった。去年は孫と富士山に行ったら八合目で孫が高山病になってリタイアしたらしい。
(先程地震ありました?と聞いてみたが、気付かなかったと言っていた。何の問題もなかったようだ)
いいとこでしょ愛媛はと聞かれた、いいとこですと返した。荷物の都合で変な体勢で座っていたけど、ありがたかった。12時15分前にめちゃくちゃ次が探しやすい場所で下ろしてくれた。
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次は三島と書いて挑戦することにしたが、スタートしてからわりとすぐにおじさんが寄ってきて、これバス待ちと。もうすぐ来る感じですか?と聞くと、18分に来るとのことだったので、その後ですることに。そのおじさんは無愛想というか半ギレな感じだったけど、落ち込むこともなく、逆ギレすることもなく、即座に、それなりに爽やかに謝れたのでよかった。

先程と比べると少し時間は掛かったが、再開してからもわりとすぐに見つかった。しかも今度はなんと大型トレーラーに乗せてもらえること。最初乗りなと車内から手で合図されたときに信じられず、僕ですか…?と自分を指差して確認した。乗り込んでからは人生初のトレーラー乗車だったので、ふぅー!!!目線がたけぇー!!!とテンションが上がった。まさかこんな大型車に乗せてもらえるなんて。
運転手は大王製紙まで木屑を運んでいる松山在住のおっちゃん。10年前ぐらいに遍路を乗せたことはあったけど、その人は入れ墨を入れていたり、お金をくれと言ってきたりしたので、それ以来乗せていなかったらしい。
本当に優しい喋り方をするおっちゃんで、僕にもご利益ありますかね?と聞かれたので、最後まで持って行きますよ!と宣言した。
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おっちゃんは今50歳で、24からトレーラーを運転しているらしい。重さは22か23トンはあるとのこと。
自分の年齢、23歳ぐらいの頃はバブルだったので、数千円で飲み食い放題のディスコに行って、数打ちゃ当たるで女の子とも結構遊んでいたと。
松山には住んでいるけど、何気に道後温泉本館は行ったことがないと言っていた。風俗街は行きました?と聞かれた。去年酔った勢いで初めて行って、この年にして、こんなとこがあったなら若いときから行っとけばよかった!と思ったらしい。
荷物を積む宇和町(43番付近)はまだ見るけど、この辺りは遍路をあまり見ないと言っていた。ヒッチハイクする遍路は更に見ないですよね!と僕が言うと、猿岩石が流行らした頃はヒッチハイク自体はかなり多かったと教えてもらった。この辺りはお祭りが盛んだとか、愛媛出身の有名人(友近や眞鍋かをり、Superflyなど)についても教わった。
トラック等は企業の規定なんかがあってヒッチハイクは乗せてくれないと、以前何かで読んだことがあったので、怒られなきゃいいけど…と心配になりながらも、コンビニとか寄りたかったら言ってくださいねとか、ガラケーの充電器を貸してくれようとしたり、いろいろと気を遣ってくれる本当に優しいおっちゃんで、会話もとても楽しかった。

左奥に見えているのが大王製紙の工場。ここで13時10分頃に下ろしてもらった。遍路旅の中で、遍路に疎いというか、遍路自体には関わりの少ない人とも接することができてよかった。
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暑い暑い。雨でも晴れでもこの時期は酷だ。
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セブンイレブンに寄って、とりあえず体を冷やしたくてアイスやそうめんを買った。アイスコーラは気になりつつもなんか大変そうで買わなかった。
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イートインの隣の席には高齢の(ちょっとボケ入ってる感じの)おばあちゃんがいて、英語教材を小さな音で垂れ流している息子(おっちゃん)がついていた。おっちゃんが、お遍路さんの邪魔にならんようにな、これ飲んどき。みたいな感じでおばあちゃんに言っていたのを思い出す。おっちゃんからは、失礼ですけど今から三角寺に登られるんですか?と聞かれた。2人が去る際にはそれではお元気でと言われた。おばあちゃんからも達者でねえという言葉をもらった。

この場所で感じていたのは、眠気と歯の痛さ。痛いのにうとうとするというわけのわからない状態。
暑すぎるし、次もそんなに離れていないから焦ることはないだろうと、しばらくゆっくりしていた。

通り過ぎた新居浜には、実はもう7,8年前から兄貴のように慕っているというか、仲良くしている人がいる。(萩森さんより前にひろめ市場を勧めてくれたのが彼)
彼が神戸に住んでる頃に知り合ったんだけど、数年前にこっちに引っ越してきていて、先日その彼が死んでもおかしくない交通事故に遭って、住友別子病院に入院しているとは聞いていた。
だからお守りでも買っていこうかと考えていたんだけど、ちょうどこの頃退院して、んで奥さん身重の新婚でもあるから、ただでさえ歩けなくて大変そうだし、まあ今回じゃなくてもいいかと寄らなかった。

次の65番三角寺で愛媛県は打ち終わる。(でもその次の66番の雲辺寺は香川ではなく徳島だという罠)
14時半出発。コインランドリーはもうドンマイだ。
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日差しを避けるために山の木の下に行きたい。

爪は痛むが、歯に比べればマシだ。歯の痛さほど感じる痛みはそうそうない。

煙突は大王製紙のものだろうか。おっちゃんさっきはありがとう。
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雲辺寺を下りるまでの分として、物資はかなり多めに持っているから、なかなかの重量だった。でもこれから待っているのは登山だし、しばらくお店もなさそうだから仕方がない。

緑のラインを沿うように歩いてきたが突然途切れてしまった。よくわからないので山の方へととりあえず進む。
ガイドマップに頼ろうとしても現在地がわからないと難しい。しかし市役所があってだいたい把握は出来た。登り口までまだまだだ。
もうあれこれと悩みながら進むのが嫌だったので適当に進むことにした。方向的には左斜め前だろうと。
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三角寺行きよん?と地元のおじいちゃんに話しかけられた。方角はやはり合っていた。3人ぐらいおじいちゃんがいたんだけど、そこから上がったらいいかな~と少しあやふやな感じで教えてくれた。
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緑の山々は美しい。登ってからも景色は良さそうだ。
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空海が愛媛で悟りを開いていたら山海になっていたかもと思ったり思わなかったり。
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汗だくになりながら進み続けて、やっと遍路マークが現れた。あと2kmほどか。
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棚田が多い地域。
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自販機とこだわりの品が売っているながの農園?(記憶が曖昧)で一旦荷物を下ろした。背中は汗でびしょびしょ。
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現在が15時半、今から1時間くらいで着くのだろうか。(納経と寝床的な意味で)ちょっとヤバいな…コンビニでゆっくりしすぎたぞ…と焦りと悔いが生まれた。先を急がないと。
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空の上には雲、田んぼの水面にも雲。
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山にあるわけだから見えてもいいのに、お寺はまったく見えなかった。
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グッとくる道だが楽しんでいる余裕はない。
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結構急な登り開始。
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眺めは良いし、水もあるし、素晴らしい休憩所。でもゆっくりしてる暇はない。
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ひたすら登る。
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三角寺まであと一息らしい。良かった。
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だが16時にこの竹のベンチ。依然お寺の気配はまったく無し。さっきのあと一息ですは大嘘だ。あと三十二息ですぐらいにしてほしかった。曖昧な日本語恐ろしや。
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にしても山苦手なのに余裕を持ち過ぎていた、馬鹿だ。と嘆いた。足の裏が燃えていそうだし、肩はもう折れそうだし。

山の中には本気でどこへ進めばいいかわからない場所が連続してあった。前神寺まで一緒に歩いたおじさんが、このお遍路で四国にだいぶお金落ちてるんだからもっとわかりやすく遍路マークつけてくれよと言いたくなるね。と言っていたのを思い出した。
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でも悩みながらも、ひたすら歩いていたら、着いた。周りに建物はいくつかあるが、山の上の方にあるお寺だ。期待が持てる。
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16時15分過ぎ。第65番札所由霊山三角寺。   
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本堂。本尊は十一面観世音菩薩。
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大師堂。
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広くはないが、静かで落ち着くお寺だった。
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直前までノートパソコンを使っていたお兄さんが納経をしてくれた。今日はどこまで行かれます?と聞かれたから、半田の休憩所ってどのくらいかかります?と聞き返すと、1時間半ほどで着くと教えてくれた。お寺を出てからは右に行って椿堂を目指して進めばいい、看板も出てるかもと。
半田の休憩所の先に善根宿があるらしいからそれについて聞いてみたら、ああ、あるらしいですねと返ってきた。
一応携帯の電話番号がリストには載っているので、納経所から出ると電話をかけてみたがずっと呼び出し中で繋がらなかった。今は忙しいのだろうか。

荷物を置いていたのはこの綺麗な東屋。ここでも寝れるなーと思っていたが、萩森リストにも載っていた。
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とりあえず行くか。1時間半なら暗くなる前に着くはず。
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雲辺寺のロープウェイ…。
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お寺を出ると、目の前には山へと続くカーブが見える。登りが少なかったらいいなーと思いながら歩き出した。

三角寺周辺には集落があって、その集落の中の共同新聞受けみたいなところには朝日新聞の新聞受けが並んでいた。

それでも紫陽花は綺麗。
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お姉さんが運転していて、後部座席にはおばあさんが乗っていたデイサービスの車に追い越された。思いっきり山の上の道だが、車の通りはあるようだ。おばあさんを下ろした後わりとすぐに折り返してきた。つまりはそう離れていない場所にも集落があるということか。
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そして善根宿があるということは多分そこにも集落があるということだろう。

道は涼しくて歩きやすかった。山、木陰、水、偉大なり。
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地味に登っているが、しかし私は三国覇者だと気合を入れた。しかし部分的に歩いてないし、まだ札所を打っただけだから愛媛は続くという現実に気付いた。

三角寺の対岸に家があった。でも集落という感じではない。
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まあ焦らずいこう。もうここまで来たら特に誰も会わないと思うけど、ここまで歩いてきた自分がいれば充分だ。自然はあるし、行く先々には町があって、その町に住む人々がいるし、道は続いているんだから。

溜息が出るような景色に出会うと、おお…というような感嘆の声が漏れることがある。ここでも海に浮かぶ島が見えたときは、そんな風にして目を奪われ、声が漏れた。
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別格の仙龍寺は虫除大師らしい。ありがたいんだろうけど、虫というのが入るとなんとも言えない。
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雲辺寺がある山はどれだろうと見渡してみたが、手前に他の山があって見えないか、見えていたとしてもどれかはよくわからない。
でもその雲辺寺に明日登ってやるんだ。下りるのは多分ロープウェイだけど。
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山の中の畑で1人作業している人がいた。廃屋はあるけども…と思っているとその先に民家があった。たまーに家があるようだ。車があればなんとかなるのだろう。
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後で調べてわかったが、ずっと見えていた島は香川県観音寺市の伊吹島という島らしい。いりこと猫で有名だそうな。島で猫が増えるのはありがちだけども。
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17時でアプリでは22km。疲労を感じている。
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何にも縛られていない。すべては僕の望むままに、自由に、ただ自由に。

僕がしたかったのは遍路旅。歩き遍路へのこだわりはそこまでなく、きっと楽しめる日数が一番多い歩きを選んだだけだ。
すべて歩いたとか、すべて野宿をした人、すべての遍路を探しても、ここまで化膿させて腫れ上がった足で、ここまで歩いた人なんてほとんどいないだろう。しかもこんな梅雨に、ここまで過酷な遍路旅をやってる人間もほとんどいないだろう。現代では0に近いはずだ。そのことに気付いた。
ここまで通しにこだわるのは、リタイアしたくないのは、祖母のための旅と、心に決めて始めた旅だから。
きっと喜んでくれていると思うけど、本当にそうだったらいいな。だなんて考えていたら、また泣いてしまった。寂しいし、会いたい。話がしたい。
でも、ちゃんとこの旅でお別れしないといけないと、誰もいない山の中の道を泣きながら歩いた。

道はカーブの繰り返しだったが、いつの間にか下り始めていた。
ずっと左側を見て歩いた。傾いた陽に輝かされる海が綺麗だったから。
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ガンガンに音を鳴らすイケイケギャルの車が来たので、急いで涙を拭った。

5時半頃に、下を見下ろすと民家の屋根らしきものが見えた。ん、車も通っているなと思っていたら集落だった。ここが半田ならいいんだけど、でも期待は薄い。
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土佐街道。
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ちょうどこの辺りは愛媛でありながら、香川も徳島も高知もすぐ近くにあるような場所。四国中央市という市名には何の文句もつけられない。(イメージキャラクターのしこちゅ~は逮捕)
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先へ。早く寝床に着きたい。
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いや、東屋を発見した。ここなのか。
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東屋は、向かいにある脇建設さんが作ってくれたゆらぎ休憩所らしい。ありがとう。
地図を確認するとここがその半田の休憩所みたいだ。ということは善根宿はこの辺りにあるのだろう。
しかし電話に出ない。長いことかけていたが諦めて、行くか… 鍵が掛かってるタイプじゃなければいいんだ…と歩きを再開した。
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振り返れば住宅はあるけど、ここら辺からなくなる感じだ。大丈夫かな。
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なんていうか、お手洗いに行きたかった。さすがに善根宿にはないだろうから、どうしたものかと。足摺にあった善根宿のようならいいんだけど。

一軒建物があったけどこれは違うよな…(違った)。
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とりあえず歩こう。

右側の道には家は普通にあるんだけど、こちら側の道はお墓ばかり。お墓ロードってな道だった。
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バス宿…。
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ジヤンプ…?
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ぐるりと回って(戻って)、結局は下(右)の道へ行くようになっていた。さっきのお姉ちゃんはここから来たのかと考えるとなんだかウケるな。
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いや、善根宿どこやろマジで…と焦りは生まれている。もうすぐ18時になる。

いや、あった…?
カーブを曲がって一番最初にある建物が西川さんだ(萩森リストには善根宿西川と書かれてある)。夜の宿貸しますともあるから、ここで合っているはず。
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この善根宿の前でまた電話をかけていたら、青いジープのおばちゃんが通ったので会釈をした。すると一度通り過ぎてからまた戻ってきた。
何か僕に言ってたんだけど、聞き取れず、聞き返すと電話をかけてごらんと言われていたのがわかった。そのとき聞き取るために呼び出していた電話を切ったんだけど、ちょうど西川さんが電話に出たみたいでタイミング的に一瞬で切ってしまう形になった。その後おばちゃんが西川さんに電話をかけると、今話し中みたいと言われ、そしたら自分にかかってきた。
今日泊まらせてほしいのですが…と話すといいですよと。結構若そうな声だった。今どこにいます?と聞かれたので、宿の前にいますと答えると、ではちょっと待っててくださいと。
待っていたらまたおばちゃんが来て、渡しといてって言われたから〜とスペアリブを貰った。とりあえずお礼を言ったが、西川さんからだろうか。でも冷凍しているのをどうすればいいんだ…。
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ツバメの巣。とりあえず今日の寝床は確保できたようでよかった。
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どこにいたのかはわからないけど西川さんはなかなか来なかった。でもしばらく待っていると、ゆき工房の車が通り過ぎた。通り過ぎたので今の人じゃなかったのかなーと目で追っていたら、上のカーブのところでUターンして戻って来た。電話での声は若かったが、実際はおっちゃんだった。

とりあえず中に入れてもらった。完全に工房だ。
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西川さんが工房のあれこれを少し弄っていたので流れがわからなかったが、その後簡単に説明してくれた。
寝るのは階段を上ったロフトというか屋根裏で、上がってみるとすごい熱気だった。窓を開けて、置かれていた扇風機も後で回すと快適になった。
そしてこの工房にはトイレもキッチンもあった。工房なのに面白い。電子レンジとかも一通り揃ってるし、ビールサーバーまであった。家というよりは秘密基地感があって良い感じだ。
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スペアリブは僕のではなく西川さんへということで、受け渡しの役目だったのに、さっきのおばさんには必死でお礼言っちゃってたりしていたことを思い出して、勘違いしていたということがかなり恥ずかしかった。

でも西川さんは善根宿をやっているだけはあってとても親切な人で、ビール飲みます?と聞かれて、あんまり飲まないですねと返すと、まったく?とまた聞かれて、いや、少しなら…と答えると、じゃあ飲みなさいという流れになって笑った。そしてタン塩レモンも一緒に冷蔵庫から出してくれた。
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じゃあ僕は帰るんでと西川さんは帰っていった。

とりあえずまた屋根裏に上って、しわっしわの足を確認してみると、膿のとこからは血が出ていた。ついに出血しだしたと思った。膿では飽き足らず、次は血を流すとは。
おまけに逆側の足の指もいつ血が出てもおかしくないくらいボロボロになっている。
もう1日に何キロ歩こうがこんな風になってしまうのかもしれない。雨がほとんど降らなかった今日ですらこうなのだから。

ここ複数人で泊まったらすごい楽しいだろうなーというワクワク感があった。布団もちゃんとあるし、シーツか毛布を渡してくれたし。
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食事を済ませ、歯磨きをして、磨き終わって口をゆすぐために手の中に水を溜めていたら、水の色がなんだか茶色くて、あ、これダメなやつだと気付いた。
普通にこの水使っていたけど、そうだよね、浄水設備とかつけるとお金掛かるもんね。仕方がないよね。
ここで水を汲ませてもらおうと考えていたがその計画は頓挫。でもありがたい。こうして泊まれるんだから。100%感謝しかない。

充電も出来るし、枕は空気が抜けないし、布団はふかふかしているし、本当にありがたかった。
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歯の痛みはもうイブじゃ効かないみたいだけど、早く寝よう。明日は4時起きだ。
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