宇佐新道 筑紫の路 第九段「100億ドルの昼景」

12月4日。
起床の4時半までに10回は寝て起きてを繰り返しても、まだ空も真っ暗で凍えるように寒いのに着替えている自分に「何を考えてるんだ?」とちょっと正気を疑いながらも、もしかしてスペ体質なのでは?と思うくらい右膝に加えて前回の左足付け根も仲間入りしたような不安を感じながらも、やっぱり出発するといつかの旅立ちを思い出させてくれるような気分になれて、泥沼の中の溺死体のような人間の泥まみれみたいな一日でも、今日は特別な日だと錯覚させてくれるのはありがたい。何に感謝すればいいのかはいつもわからないけど。

始発では日の出を迎えられなくなったのでギリギリを調整した鹿児島本線に乗り込んだ。車内で聴いていたのはシガー・ロスの胎児アルバム。いつまでもこの錯覚が続いてくれたらいいのにな。センチメンタルな爺さんも逆にエモいかもしれない。まあ、今日もなんとかなるだろう。

朝6時50分のJR黒崎駅。

バス乗り場は(おそらく)八幡高校の生徒で溢れていた。

53番に乗って前回の終了地点の小嶺車庫へ。

さあ、始めよう特別な一日を。7時半前。白い息を吐きながら。

すぐに「カイロ持っててもよかったな…」と思ったけどね。4度だし。これより低い気温を歩くことはないだろう。多分。

コンビニで買ってもいいけど気温が上がるのを待つとしよう。日中は10度程上昇するらしいから。

国道211号線は想像以上に坂道が長く、前回手前で止めておいてよかったなと。

今日登る山々が待っている。紅葉はまだ残っているだろうか。

早く小倉を越えて、長崎街道から中津街道へと移りたい。今日は無理だけど。

上津役小学校の横を通る。どうか成人式で暴れない大人に育ってほしい。無理だけど。

高速道路の高架下を抜けると、

一気に山麓の田舎の風景へ。唯一挨拶してくれた相手はトイプードルとお散歩中だった厚底スニーカー女子。

狛犬のように、シーサーのように、雄河童と雌河童を飾る家があってもいい。

登山口がある鷹見神社へ到着。車はすべて登山客のものだろうか?


美しい紅。多少は残ってくれていそうだ。

コーヒーののぼり旗があり、地図ではこの先に「カフェブルマン」を確認できたけれど、口コミも0で、まだ営業しているのかはわからない。

名前も境内の雰囲気もなんだかかっこいい神社だった。これから登る権現山に役小角が熊野三神を祀ったのが由緒らしい。つまり役小角ではない可能性もあるということだ()

地元のおじさんと挨拶をしてから本殿の左側にある登山口へ。

鷹見神社奥宮参拝コースでまずは権現山山頂、皿倉平へ。

いきなり危ない。

が続くわけではなく、綺麗に整備された登山道だった。

しかしね、軽く絶望するくらいには登りの体力がなさすぎて序盤は特にキツかった。スクワットだとか登山に関係するトレーニングを一切してないというか、膝の痛みを考慮してまだ避け続けてるからね。でもここまで体力が落ちているとは予想してなかったので驚いたし、今まで培ってきたものがすべて失われているような気もした。いや、もどかしい。

三宮趾、四宮趾と続いていくのか。

まあでも、無理せず登っていけばいいさ。平坦な道は楽しいしね。

行者の森登拝道突入。

綺麗な森だ。ゴミも一つも落ちていない。

唐突なミッキーマウス。

体温が上がってきたのでアウターレイヤーを脱いで登山中。

行者霊水・割子川源流が気になりつつも素通り。

十一宮趾。十で山頂というわけではないらしい。

皿倉平へはまだ行かず、

権現山頂(鷹見神社上宮)へ。

こちらの道はちと歩きづらいけど荒れているわけではない。有志の方々ありがとう。

十二宮は趾ではなく、上宮なのか。何かが封印されてあるような祠だ。

少し登り慣れてきた感覚に。継続的にトレーニングすればどんな場所も楽になっていくのにな。したい気持ちは山々なのにね。山だけに。

実はよく見たら怖いモグラの穴。

ここが奥宮か。想像より遥かにこじんまりとしてらっしゃる()

でも権現山頂に到着したということ。標高617m。時刻はちょうど9時半。かつては鷹見山と呼ばれていたらしい。

無線局は味気無いが山頂にも紅葉が残っていて嬉しい。

油断していると冷えてしまうが美しい眺望。人が少ないのも良い。会ったのは4人。

続いて皿倉山へと縦走。

目印でも置けばいいのに…と思うくらいにはわかりにくい分かれ道。だが今日はYAMAPのオフラインマップが活躍してくれている。今まではGPSロガーとしてしか使用していなかったけれど、登山客の多い山は注意情報投稿も豊富だ。少し再開ボタンを忘れていたけど。

突然の神社。

帆柱権現山神社だった。鷹見神社はこの権現山神社に山の名前を奪われてしまったような形か。

北九州市立帆柱キャンプ場は営業している気配がなかったので後で調べてみると、2年前の大雨の影響で休場しているとのことだった。せっかくのキャンプブームだったのに。

お、皿倉平到着か。確かに平。

アーチェリーは未経験。まだ経験していないことが山程ある。山だけn

皿倉山は北九州にある夜景で有名な山なので夜間犯罪多発も納得。ヤンキーたちいっぱい来そうだもん。

全行程は歩けないけど九州自然歩道を少しでも歩ける喜び。あと全然関係ないけど舐めプで留めてなかった普段タウンユースしてるバックパックの前方ベルトを留めたら結構楽に()


クマよりは助かりそうだけどイノシシも充分怖い。出没するならリスとかにしてほしい。

新日本三大夜景の皿倉山の八合目。残る2つは札幌市と長崎市だそうな。

無料休憩所兼ビジターセンターはまだ開いておらず。

ぼうけんの森というアスレチック広場を抜けて、

山頂を目指す。皿倉山山頂へのアクセスはケーブルカー&スロープカーもあるので登山客以外の人もどっと増えた。というかこの辺りはもう観光地として整えられすぎていて登山感は薄い。

山頂付近はKBCやFBSなど地元放送局の無線基地でもある。

南側、筑豊方面を眺めると山の稜線がこれでもかというほど重なっていた。

先程登った権現山も見える。皿倉山と同じ帆柱連山の一座。

NHKももちろんあります。なかやまきんに君と市橋アナの放送事故は福岡市の方。

そして10時15分山頂到着。思わずすげえ…と独り言をこぼしそうになった。文字通りの一望だ。


標高は622mとそう高くないのに、何も遮るものがないので視野角200度のパノラマが広がる。素晴らしい。

 
 
 
 
 
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官営八幡製鐵所から始まった北九州工業地帯があるからね。そりゃ夜景は強い。仕方ないけど今思いっきり昼なのが惜しいな。

アクセスが容易なので自販機の価格も平地と変わらず。

夜景とカップルの相性は抜群ですからね。恋人の聖地と謳っても許されます。ホテルがあってもよさそうなのにないのは国定公園の一部だったりするからだろうか。いや、土地が足らないのか。

隣に昆虫碑があるのはちょっと嫌がらせ感ある。それに対抗するゆかりとたけしの平成24年から消されていない落書きもまたシュールだ。もう10年以上前か。今の関係はどうなんだろう。

昔これで一回来たことはあるんだよね。ほとんど覚えてないし、その時も昼間だったけど。

ハートのふせんが用意されてたら一番乗りしてやったのに()毎年バレンタイン前後に出している掲示板かな。

パラグライダーの離陸場でもあるらしいがこの日は飛んでいなかった。

想定よりもかなり早く到着して、なおかつ展望レストランが11時営業開始なので30分近くはスロープカーの待合室のような場所で待つことになった。
お肉食べたいけど一人では恥ずかしいからカレーが無難かな…。

展望台二階に今年オープンしたばかりのレストラン「天宮-TEN・KYU-」
いや、絶景やん。普通に観光で来ても楽しめそう。

はい、いただいちゃいました。お肉の陶板焼き+Bセット(ライス&ドリンク)。

開店一番乗りだったし、後から来るお客さんには背中を向けた位置に座ったので、ちゃんと優勝できた。登山中に焼肉て。味も美味しかったし満足。

巨木の名前は皇后杉。実際に滞在していたことが今なお伝わってくるほどこの辺りは本当に神功皇后関連の場所が多い。
皿倉山の名前の由来も、皇后が下山する頃にはもう日が暮れていて「更に暮れたり」と言ったことから更暮山→更暗山→皿倉山と転じていったらしい。

さあ、下山を始めよう。11時45分。国見岩コースで。

この辺りで出会った挨拶を返さない無言のおじさん怖かったな。いきなり突き落とされたりしそうで。

はい、国見岩。神功皇后がこの岩場に立ち、国を見渡したという伝説から名付けられた岩。

山頂の展望台より気に入って数時間は居れるなと感じた。八幡大神の母である神功皇后縁の地にここでも来られてよかった。

現在はロッククライミングの練習場になっているらしいが見下ろすとなかなかに恐ろしかった。

岩舞台。

AKBの人気も落ちて、選抜総選挙という言葉も死語になりつつあるな。

落ち葉の下り道ほど怖いものはないし、実際に膝に負担がかかっているのもわかった。だがひたすら下っていくしか選択肢はない。

むき出しになった針金?に目立つ色のテープが巻かれている。思いやりだ。

当然タイミングは関係するだろうけど、ずっとゴミが落ちていないのはもはや感動だ。ただこちら側にはベンチがなく膝労りタイム()が取れない。

ほぼ山の中とは思えない立派な帆柱稲荷神社が現れた。

完全に一人でいるのに、カラスがアンテナから飛び立ってその音に死ぬほどびっくりしたけど。

トイレはあることはあるが…。

荒れ果ててはいないが一部の登山客と近所の人以外の往来はほとんどなさそうな寂れ具合ではあった。一つだけ残っていた絵馬の文字も読めず。

風が吹くたびにのぼり旗からギーギーと異音が聞こえ続けていたし、夜に来る勇気はないが、少しベンチに腰掛けることができたので感謝。

倒木に押し倒される形で鳥居も壊れてしまい撤去されたようだ。

下りはまだ続くがもう住宅街か。下山完了かな。

まったく吠えなかった世界的人気ワンさん。

左の建物はふもと食堂という飲食店で一応チェックしていたが営業していなかった。

皿倉山ケーブルカー山麓駅。

もうクリスマスシーズンだ。

建物の隣の駐車場だけでなく、大きめの立体駐車場まであるとは。夜や土日では先程味わった開放感は感じられなさそうだ。

さて、八幡駅を目指そう。もう少し進める余裕は感じるが、この先の歩く道を決めきれていないし、のんびりな一日もあっていいさ。

こう見上げると結構下ってきたなと感じるし、ケーブルカーの距離長いな。

坂の上の住宅地は見るからに大変そうで、男子高校生もおばさんもおじいさんも息を切らしながら上っていた。

響ホールというコンサートホール。鏡面という美となんかめっちゃイキった立ち姿になっている自分。

その先でようやく平坦な道に。ここまで来れば勝ち確だ。

おお、小倉城下になっている。

なんだか言い表し難い独特な雰囲気を持っていた八幡駅の駅前通り。

さよなら皿倉山。次は夜景を見たい。

空腹だったなら寄ったであろう八幡のチャンポン。でもさっき焼肉食べたんだ…。

ええ!!こんな色気のない駅ある!?リアリズムの極みというか、外観が立駐すぎる…。

ちょうど前の電車が出た直後で残念ながら待ち時間は30分以上に。待合室もなかったのでホームのベンチで待ち続けることに。

何がモチーフなのかはわからない。ビート板…?

駐車場側から線路を渡って何か機材を運んでいた駅職員たち。

ってことで9日目終了。12月になってしまい、寒さという不安要素はあったけれど、日中は気温が上がってくれる日だったので特に問題はなかった。
足はね、特別痛いわけではないんだけど、また痛めるかもしれないという恐怖がね。慎重になることは悪いことではないと思うんだけど、じゃんじゃん進めたい気持ちはあるのにやはりもどかしい。
左足付け根はほぼ間違いなく右膝を自然とかばいながら歩いていたことでの痛みなんだろうな。右膝も痛みは残り僅かではあっても、完治がこれだけ長引くとは予想していなかったし、ここまでの期間のことを考えて、もっと負荷をかけた方が逆によかったんじゃないか…?とか、いや一日中家にいるような日をもっと増やすべきだったんじゃないか…?とか考え出すともうきりがない。何が正解だったのか。
まあ、現状はちょっとずつ進めていくしかないかな。次はいつになるやら。このストレスからの解放もいつになるやら。

なんというか、怪我も悩みのタネだけど、相変わらずというか、記憶のノイズに毎日頭をぐちゃぐちゃにされつつも、平穏が訪れるのを待ち続けている。
金継ぎのようにいろんなことを上手に修復できて立ち直れたなら、無条件で笑える日も来そうだけどな。
いや、特に何も変わってないや。ずっと疲れてるし、ずっと小さな小さな希望が自分を励ましてくれている。たまに楽しいことを挟みつつ、寒い季節を乗り越えよう。


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