Merry Christmas Ukraine

昨晩はウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団(National Philharmonic Society Of Ukraine Kyiv)のコンサートを観に福岡シンフォニーホールへ。


曲目はドヴォルザークの「新世界より」とベートーヴェンの「第九」で、どちらも交響曲第9番の超有名曲。
でも正直、今までまったく聴いたことのなかった楽団で、サブスクにも音源がないので、演奏技術的にはどうなんだろうかという不安がまったくないわけではなかったんだけど、杞憂だった。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、楽団自体も戦渦に巻き込まれる中、国民に希望を与え続けている今の彼らだからこそ届けられるものがあると思うし、それを受け取ったような気がする。
「戦争はすべてを破壊する。しかし希望を失わせることはできない」という指揮者ミコラ・ジャジューラの言葉でも伝わってくるように、彼らは音楽で戦い続けている。

ウクライナのソリスト4人に加えて、第九の合唱は地元九響合唱団が主体となったアクロス福岡特別合唱団が務めていたんだけど、彼らもまたかっこよくてその迫力に鳥肌が立った。クラシックは震わせてくれるよ。うん。

しかしね、ちとトラブルがありまして、隣のおばさんが布マスクをしていて苦しいのはわかるんだけど、まあ鼻息がうるさくて…静かな場面だけでなくわりと激しめに演奏されている時でさえ真横だからずっと聞こえていて、右耳はドヴォルザーク、左耳はおばさんの鼻息状態になってしまって、
これがチケット代500円ならもう諦めて我慢するんだけど、1万何千円か出して後半もまた鼻息ばかり聞いてました、では絶対に後悔が残るなと思ったから、勇気を出して、休憩から戻ってきたおばさんに細心の注意を払ってやんわり伝えてみた。
「あの…そのマスク…お苦しいとは思うんですけど…ちょっと鼻息が気になっちゃって…よかったらこれ使ってください…」「僕もそういうマスク持ってるんですけど苦しいですよね…」と。

注意をすることでその後呼吸を意識してしまうであろう申し訳なさや、その場で初めて会う人なわけだからどんな性格かなんてわからないし、逆ギレされる恐れもあったから怖かったんだけど、いわゆる普通の不織布マスクを渡したら、謝りつつ付けてくれたし、後半のベートーヴェンは驚くくらい静かになって、音楽に集中することができた。
鼻詰まりもあったようで心苦しくなったけど、なんて伝えるのがベストなのかとドヴォルザークを犠牲にして考えまくったかいがあった。
終演後は「いろいろとありがとうございました」と逆にお礼まで言われるし、「良かったですね!」とか「良いお年を!」とまで言ってくれたし、いや、めっちゃ良い人だったわ。
「厚かましいことをお願いしてすみませんでした…」と改めて謝ることもできたし、そのおばさんが荷物を少し忘れていたのに気付けて渡せたのはなんだか嬉しかった。

コンサートの終わり、カーテンコールでテノールとバスの男性2人がウクライナ国旗を掲げたんだけど、その際に拍手がより一層大きくなったのは会場の観客がウクライナに、ウクライナ国民の心に寄り添っているという証拠だと思う。
おそらく福岡に避難しているウクライナ人も何人か招待されていたようだけど、その人たちにとっても良い時間になったんじゃないかな。
日本人にできることは限られていて、世界の注目がパレスチナ・ガザに移り、ジリ貧の疲弊がまだ続きそうだけど、一日でも早くウクライナに平穏が戻ることを願っている。


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