先日のデュオリサイタルに続きお誘いをいただいたので、
第10回という節目を迎える球磨川音楽祭に行ってきました。
会場になってる人吉市周辺もついでに観光しちゃおう的な2泊3日なノリで。ノリで。
まだ4日分残ってる18切符を使って26日金曜日に人吉へ。福岡から行くと熊本、八代で乗り換え。
八代からの肥薩線の車窓は日本三大車窓と言われるだけはあってとても美しかった。人吉から先の矢岳越えは更に絶景らしいけど、人吉まででも充分に素晴らしい景観。
車窓から見えるのは主に渓谷で、ラフティングや川下りが人気な理由も頷ける球磨川の有り様。
これだけ良い景色なら歩いたりしてもかなり楽しそうだなと感じた。三脚を持ったおっちゃんが乗ってきたり、隣にいた男性も窓の外にコンデジ構えていたりと、写真好きにとってもきっと同じ。
ちなみに肥薩線は世界遺産登録を目指しているらしく、駅舎やホーム等綺麗に整備されていてそれもまた良かった。
最も印象的だったのは20年以上前に休校になっている海路小学校辺り。車窓から見えたものを事細かく説明してもいいだけど、あえて書くのは止めておこう。素晴らしい光景だった。
古い集落や、そこに住んでいる人々が大切に守り続けているであろう小さな神社を見ていると、様々な物語が想像できて、正直堪らなかった。もちろん良い意味で。
電車は人吉まで行けたけど、球泉洞駅で途中下車。球泉洞というのは坑道を通じて洞内を観光できるようになっている九州最大の鍾乳洞。
駅から球泉洞へは徒歩15分らしく、吊り橋やリフトや渡しの船もあるってのを事前に読んでたから、最初は歩いていくつもりだったんだけど、特に道案内とかないし、そもそもつり橋通行禁止の張り紙あるし、これは歩きべきじゃないかもと判断し、少し歩いていたけど駅へと戻ることにした。
駅へ戻ると一緒に電車から降りた女性2人組の1人が球泉洞へ無料送迎バスを電話でお願いしてて、その女性は人数を聞かれた際に「球泉洞行かれますよね?」と自分に確認してくれる親切な人だった。
ミンミンゼミの音を聞きながらバスを待つ間、少しだけ話をした。北海道からと熊本からの2人だった。熊本の友達のとこに北海道から遊びに来たのでここへ観光に来たといった感じ。
写真は撮ってないけどマイクロバスが絶対に何もすれ違えないような細長い吊り橋を渡ったのは自然と心が躍った。
球泉洞に着くと電車に合わせて帰りのバスの時間も運転手のおっちゃんがそのまま決めてくれた。
通常コースと、ヘルメットと長靴を履いていく探検コースがあるんだけど、電車の本数が少ないということと、汚れたらパンツの替えがないということで通常コースに。
入り口の手前からもう笑うくらい涼しくて、真夏にはもってこいな納涼スポットへ突入。
なんていうか、もう成人してるけど、正直、無駄にワクワクした。
こういうアドベンチャー感のある場所ってなかなか行くことないし、子供心を思い出すようで楽しかった。
水が滴り落ちている箇所があった。3億年経った今も侵食を続ける様子は自然の神秘を感じずにはいられない。
この写真をシェアったら、ゴールデンアイの秘密基地やん。と言われたけど、うん、わからなくはない。
途中、駅からの2人とすれ違った。2人は探検コースらしく黄色いヘルメットを被っていた。見るからに楽しそうだった。
出口付近になると涼しさに慣れていることに気付いた。
人体もまたこの世界の神秘であり、人と自然が織り成すこの地球の…、なんでもないです。黙ります。
探検コースじゃなくても充分楽しめた。幸いにも人が少なかったという理由もある。
出てきてからはお昼を食べにレストランへ向かった。最初は鹿カツが入ったもみじ丼を食べようと思っていたけど、丼って気分じゃないし、今までの歩き旅で遭遇した可愛い鹿たちを思い出しちゃったし、もし口に合わなかったらご飯物は色々大変そうだということで、イノシシうどんにした。
多少獣感はあったけど、でも結構美味しかった。
道の駅のような場所だったのでソフトクリームがあったり、お土産等も売っていた。コテージやバンガローの宿泊施設もあるなかなかオススメの場所。
時間に余裕あったら絶対この歩道橋渡ったと思う…(照)
帰りのバスはおばあちゃんやお兄ちゃん(20代の叔父)が住んでる熊本にお母さんと子供2人で帰省してきました風なグループと一緒だった。夏休みっていいものですほんと。
さよなら球泉洞。
暑い中電車を待って、人吉行きのワンマン電車に乗り込んだ。
車窓からはラフティングをする人達が見えた。絶対楽しい。
人吉駅に到着したのは14時11分。到着間際に気が狂ったじいさんが車内に痰を吐きまくっていたので適切にドン引きして、清掃のおっちゃんに伝えてから降りた。本当にご苦労様ですわ…。
恵奈ちゃんと恵奈ちゃんのお母さんがタクシーで駅まで迎えに来てくれていて、今日自分が泊まるゲストハウスはチェックインが16時からしか出来ないから、一旦クーラーが効いた涼しいホテルの部屋で過ごすことに。
その間、恵奈ちゃんと同じく木野さんに師事している植高勇介君という自分より4つ上のヴァイオリニストを紹介してもらって、ごちそうになったアイスを食べながら話に花を咲かせたのです。です。
それから幽霊寺として有名な永国寺に行くことに。
正直観光回るのにレンタサイクル、もしくは歩くしかないかなと考えていたからもうタクシーを出してもらえて本当ありがたかった。ウンザリするほど汗をかくことは決定事項な月と天気と気温だったし。
本堂?が工事中で入り口や順路等イマイチよくわからなかったけど、ご自由に見てくださいといった感じで、お金を取っている場所ではないから仕方ないかな。クレームはつけられない。
これが幽霊寺といわれる所以の幽霊の掛け軸。
わかりやすく言えば、妾が身を投げて幽霊になって本妻を苦しめていたのを、お寺の和尚さんが、お前めっちゃキモいからな…?見てみろよこれ!とその幽霊の絵を描いてそのまま幽霊に見せたら、もぅマヂ無理…成仏しよ…となって、めでたしな展開で終わりましたというあれ。あれ。
ちなみに夏にはゆうれい祭りも開催されているとのこと。子供ギャン泣きする系のお祭りらしい。
この池の亀が集まっている石の上に幽霊が出ていたらしい。夜中に掛け軸の幽霊がここに立ってたら正直震える自信ある。
ゲストハウス前まで送ってもらった。でもちょっとだけ16時には時間があったので辺りを散歩した。
飲み屋が多かった。熊本や鹿児島の人が九州男児の酒豪イメージを形成しているのは間違いない。
そして、人吉ゲストハウス堺へ。はんこ屋さんが家族経営している宿なのだと思う。インターホンを押すと男の子がお出迎えしてくれた。
部屋は全部屋個室で、普通に綺麗。最安のビジネスホテルは週末で空きがなかったからここにしたけど、問題はまったくない。
タクシーの運転手にゲストハウス堺と言っても通じないのは注意だけど、まあこんな真夏とかじゃなければ普通に駅から歩ける距離。
元はドミトリーで2000円で泊まれたらしいけど、今の個室3500円というスタイルに変更したらしい。
ちなみに、ゲストハウスとはいっても宿泊者同士が交流するような場所はない。
ほぼ同じ値段でビジホのシングル部屋もあるから値段優先でもファーストチョイスじゃないかもしれないけど、でも本当悪い宿でないのは確か。
前日に午前2時ぐらいに起きてしまって、行きの電車は読書したり、車窓眺めたりで忙しかったから、クーラーをつけて少し仮眠を取った。
恵奈ちゃんと植高君はリハーサルで先に行ってたので、恵奈ちゃんのお母さんがタクシーで迎えに来てくれて今日の会場である人吉市カルチャーパレスへと向かった。
着いてからは秒速で木野さんの息子さんであるはると君に発見されて鬼絡み開始。
今回の音楽祭の正式名は「第10回 球磨川音楽祭 with 木野雅之 平和への祈り~世界から熊本へ!」
開場前にはロビーにてウェルカムコンサートが行われた。
木野さんの門下生だけでなく、弦楽アンサンブル楓という地元(人吉・球磨地域)のアマチュアアンサンブルの方々約15人も参加しての合奏。
このアンサンブルにはそれなりに年を重ねている方もいたんだけど、目の前から音が届くという迫力もあって、とてもかっこよかった。演奏曲はOver The Rainbow等。
メインのコンサートは大ホールでの「ヴァイオリン・クラリネット・ピアノの調べ」という三重奏。
ヴァイオリンは言わずもがな木野雅之さんで、クラリネットはその木野さんの娘さんで世界でも活躍する橋本杏奈さん、ピアノは杏奈さんのパートナーでもある高木美来さん。
3人の実力者が3つの楽器で奏でる音はそれはもう文句なし。安定感がありながらも、各々目立つべきところはしっかりと目立っていたというか、きちんと調和が取れているという印象を受けた。
曲によっては3人での演奏ではなく、2人での演奏もあったんだけど、どの曲も実力に伴った重厚さを感じさせながら、だけど決して空間を全て埋め尽くすわけでなく、適切な「空白」が入れられているなと感じた。
作曲者・編曲者が意図する何かを演奏者である3人はそれを楽譜から正確に読み取って表現していたのではないかと思う。
3人の演奏以外にも特筆しておきたいことは、やはり地元の方々との共演。
先程ウェルカムコンサートにも参加していた弦楽アンサンブル楓と門下生たちの20人と、球磨川音楽祭合唱団という50人の公募の合唱団が、1部の最後で登場して、合唱曲「球磨川」や熊本地震の震災地応援CMにも使われた「ふるさと」を披露したんだけど、それがもう圧巻という出来だった。
改めて音楽って良いなあと思わされたと同時に、ステージに立つ彼らが僕の目にはとても輝いて見えた。
もちろん中年やそこまで達していない若者もステージにはいたけど、還暦越えてる方(おじいちゃんおばあちゃんとも言われる年齢に達している人達)が特に印象深かった。
ポール・マッカートニーのライブを観たときも、なんてかっけーじいさんなんだ…と脱帽モノだったけど、アマチュアである彼らもそんなスーパースターに負けないくらいかっこよかった。
言い方はあれだけど、人生の後半部分であろう現在も、きっと彼らは音楽を愛していて、その愛する音楽を心から楽しんでいるだろうし、そういう生き方って素敵だなと思った。
たとえ何万、何十万というファンがいないとしても、歌えなくなったり、演奏できなくなる最後まで彼らは活躍するのだろうと確信した。
でもそういうもの(年を取っても輝ける何か)って誰にでもあるものではない。努力の対価と書くとなんだか重苦しくなるけど、でもそういったスキルを持っている人達は素直に尊敬する。
後になって後悔しない為にも若いころから積み重ねていくべきなんだろうな。といっても、いつから始めても遅くはないんだろうけど。
パンフレットに記載されている本編のプログラムを書いておく。
*1部
ミヨー : ヴァイオリン、クラリネットとピアノのための組曲 作品157b
ドビュッシー : クラリネットとピアノのための第1狂詩曲
パガニーニ : カンタービレ
メンデルスゾーン(アクロン編曲) : 歌の翼に
ブッシュ : ヴァイオリンとクラリネットのための組曲 第2番 作品26b
作詞 小山薫堂/作曲 youth case (Pisacco,岩井宏司編曲) : 「ふるさと」
作詞 福本福治/作曲 さとう宗幸 : 合唱曲「球磨川」
*2部
バッシ : ヴェルディの「リゴレット」による華麗なる幻想曲
サン=サーンス (ビゼー編曲) : 序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28
バルトーク : コントラスツ Sz.111 (BB 116)
アンコールでは「旅愁」という曲があり、その曲の歌詞はパンフレットの裏に書かれてあったので観客も参加して、会場全体で合唱という形だった。
確か約350人が観客が集まったと聞いた。その中の1人として、感動の夜を過ごした。
1階席しか開放されていなかったけど、2階席も満員になっても何の違和感もないくらい素晴らしいコンサートだった。
コンサートを終え、サイン会中の3人。
海香楼という台湾料理店で行われた打ち上げに参加させてもらった。
ちょうどこの日は植高君の28歳の誕生日で木野さんにネクタイをプレゼントしてもらっていた。
彼は見た目はとても賢そうなのに(ってか実際に頭も良いんだけど)、おちゃらけたりもできる愛されキャラ。
実行委員会の方等も含めて、どうしても年配の方が多くなるような場の数少ない好青年として、皆に可愛がられているなと感じた。
爽やかで接しやすい彼を僕もまた好きにならずにはいられなかった。アッー!ではないけど。
ゲストハウスに戻ったときには12時過ぎていたので、静かにシャワーを浴びてから眠りについた。
しかし1時過ぎから寝て、2時間程しか眠れなくて、参ったなあと思いながらも、別に歩き旅とかではないから良いかと起きていたけど、7時頃に眠くなるという予想通りながら結構酷い展開。
8時半に宿を出た。さよなら堺さん。
絶対汗かくだろうと思っていたのに、8時半過ぎの道はまだ夜の涼しさを残していて快適だった。
歩いて向かった先は青井阿蘇神社。明治政府が神仏分離政策を行う200年も前に唯一神道へと改替した熊本県初の国宝。
たまにある正面の楼門から入り損ねるというミスをしたけど、素敵な雰囲気の神社だった。こんな神社が九州にもまだあったのかと。
こちらから入れば良かったんだけどね、歩いて来た方面からはね、よくわからなかったの。
神社の隣にある温泉物産館に行ってみた。
そしてデコポンジュースを飲んだ。美味しゅうございました。
9時半前に恵奈ちゃんファミリーが滞在するホテルで待ち合わせしていたんだけど、まだ時間はあったから人吉駅の方もほんの少し散策した。
そしてホテルから今日の会場がある多良木町へ恵奈ちゃんのお父さんが運転する車で移動。車内では人吉周辺の名所等、色々と教えてもらって本当に面白かった。
ここ多良木町のいくつかの山を越えた先にある悠久石という豪雨の土砂から出てきた丸い巨石の話は特に惹かれた。道中の雰囲気とかもすごく良い…!と話されていて、僕もそういうとこ好きです…!笑 って。万人受けするとは限らないお父さんの好きな場所と自分の好きな場所はきっと共通しているんだと思う。
そして今日の会場である交流館「石倉」に到着。移動式の音楽祭、素敵でしょう?
この建物は線路のすぐ近くにあって、かつて穀物等の常温倉庫として使われていたらしい。現在は改築を行い、コンサートや講演会に利用されている。ちなみに国登録有形文化財でもある。
ステンドグラスと悠久石。
右が上述の場所に飾られている石の写真で、左が一緒に出てきた相棒の石。
11時からは恵奈ちゃんが受ける公開レッスンを見た。
この音楽祭では門下生(聴講生)が木野さんから受けるレッスンが、25日は犬童球渓(旅愁の作詞を手掛けた人)生家、26日はPRIMAVERA、27日と28日はここ交流館石倉にて公開されていて、そして最終日の28日は門下生たちによるコンサートが開かれることになっていた。
初めてヴァイオリンのレッスンを見学するという貴重な体験になった。曲中の細かい指導とは別に木野さんは、小柄な体でどうやってしっかり音を出していくかを考えてみるのも大事というようなことを話していたのを覚えている。
確かに恵奈ちゃんは華奢だし、手も小さいから、どうしても男性や体格の良い女性と比べるとハンデはあるだろう。
それでもステージに立てばその体格のハンデを感じさせない魅力的な演奏をするんだから大したもんだと思う(何様)
レッスンとはいっても最初は止めずに演奏していたから、昨日飛んでいたBravoooooo!という声をこのレッスン中にも言いたかったくらいに、僕は彼女を応援しています。ええ、応援しています。頑張ってほしいです。
それからお昼を食べた。この時苦手な食べ物とかある?みたいな会話の流れで特にないと答えたけど、瓜系の存在を忘れてた。キュウリとか絶望的に駄目だわ…(震)メロンは好きだけど…(喜)
その後は、民宿白水の奥さんにぶどうの販売所に連れて行って貰った。
お土産で買うと帰るの明日の夜だし、ってか荷物の中で潰しそうだしで、僕はただ試食をしまくった(照)
特にシャインというマスカットが美味しくて食べまくったのは内緒です。
昨日植高君の誕生日で出すはずだったロールケーキを取りに寄ったお菓子屋さんでお土産を買った。
おっぱいマシュマロが有名だよと教えてもらったので、んじゃそれにするかと探してみたんだけど、おっぱいマシュマロは売り切れていて、おっぱいまんじゅうを買った。マシュマロの方がおっぱいっぽいから少し残念だけど、おっぱいはおっぱいに求めればいいのであって、おっぱいまんじゅうは別に悪くないし、おっぱいマシュマロが仮にものすごくおっぱいに似ているとしても、別に本物のおっぱいじゃないし、本物のおっぱいっていうのはおっry (自主規制)
石倉に戻ってきてからは一旦宿にチェックインをすることにした。
今日の宿はブルートレインたらぎ。石倉のすぐ近くにあって木野さんたちも以前泊まったことがあるらしい。
名前の通りなんだけど、ブルートレインに泊まれるというそっち系の人には堪らない宿泊施設。
僕がどっち系かは知らないけどとりあえず乗り物は好きだし、ワクワクはしますよ、ええ、もちろん。寝台列車には2回しか乗ったことないし。そのうち1回はなんか運悪く楽しめなかったし。
本当はゲストハウスに連泊するつもりで予約もしてたんだけど、このブルートレインの存在を知ってからは2日目をキャンセルした。ここは泊まるしかないやろ!!と。
フロントとフリースペースは2号車にあって、3号車が個室で、1号車が4ベッドもしくは2ベッドの開放型の部屋になっている。
出来る限り寝台列車「はやぶさ」として使用されていた時の状態を残しながら、必要な箇所だけ改築されていた。
たとえば本来のトイレだった空間は倉庫にされていて、トイレ自体は増築のような形で新しく作られていて綺麗だった。
お風呂やシャワーはないから近くにあるえびすの湯という温泉の入浴券付き。うん、ありですよここ。
夜は打ち上げで遅くなるだろうから、先に温泉へ行くことにした。ちょうど雨が強くなっていて出ようとしていたらブルートレインのスタッフのおじさんが傘をどうぞと渡してくれた。折りたたみ傘は持っていたけどありがたく使わせてもらって大雨の中移動した。
ほんの短い距離なのに雨が激しすぎてパンツとリュックサックは濡れてしまった。濡れた時間は短いから大した被害ではなかったけど。
温泉は気持ちよかった。何が一番気持ちよかったかというと、どしゃ降りの雨の中で入る露天風呂が最高だった。
温泉から上がると、矢後さんと兵働君と兵働君のお母さんと一緒に、恵奈ちゃんのお父さんに車で救出してもらった。
車から降りる際に財布を水溜りの中に落としてしまったんだけど、そこまで浸水してなくてよかった。お札を乾かせばなんとかなる程度で。
楽器とあそぼうコーナーの準備がされていた。こういう体験型も楽しいと思う。
今日のウェルカムコンサートまではまだ時間があったので、一度ブルートレインに戻った。
通路側の窓からちょうど電車が通るのが見えた。このブルートレインも走り出さないかなと思ったり。
チェックインの時より人が増えていた。夏休みの土曜日というのもあるけど、結構泊まっている人がいる様子。
ご存知の通り寝不足だったので仮眠を取った。コンサートの時に眠くなっても困るし。
仮眠を終えると石倉へと戻った。
麦わら帽子の少年が興味津々で弓を調整する様子を覗いていた。
この右の男性は秋田からの職人さんで、連夜コンサート中に木野さんから紹介されていた。
そしてウェルカムコンサート。昨日と曲構成は似ていたけど、後半は合唱団も参加して合唱曲を披露していた。
会場全体に響き渡るような音と声が琴線に触れて、正直泣きそうになった。
開演前に席が臨時で追加されるぐらい満員の中で行われたメインのコンサートは「木野雅之ヴァイオリン・リサイタル」
ピアノは右の女性、木野さんと同じく第1回からこの球磨川音楽祭に関わり続けている藤本史子さん。ちなみに藤本さんは熊本出身。木野さんもルーツは熊本。
この2人は4月16日に益城町文化会館でコンサートを行う予定だった。書かなくたってわかると思うけど、その日は熊本地震で最大震度が記録された日。
もちろんコンサートは中止となり、今回のコンサートはリベンジだと藤本さんが言っていたように、そんなドラマ性のある夜。
本編のプログラムは以下。
*1部
ヴィターリ : シャコンヌ
グリーグ : ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調 作品45
*2部
ブラームス : スケルツォ
ショーソン : 詩曲 作品25
サラサーテ : 序奏とタランテラ 作品43
ヴュータン : 夢 作品22-3
サラサーテ : チゴイネルワイゼン
ステージ上での木野さんは、それはもう演奏技術は申し分ないんだけど、でも普段気さくに話し掛けてくれる感じとあまり変わらないというか、おおらかな雰囲気で演奏しているなと感じた。スキルに裏付けされた余裕があるからこんなにどっしりと構えられて迫力も出せるのかなと。
そう感じていたのに、曲が変わると、突如情熱的に演奏し始めた。見せ場てんこ盛りといった技巧を止めどなく披露する曲があったり、昨晩以上にBravoooooooo!!という声が飛んでいた。選曲も巧みだったのだと思う。そんな風にリサイタルが進んでやっと動と静を使い分けているんだなと気付いた。
一方ピアノの藤本さんは終始情熱的だと感じた。それは彼女が静を表現できないわけではなくて、今回のコンサートに対する想いをピアノの演奏に全身全霊で込めていたからだと思う。気合というかその情熱がひしひしと伝わってくるようだった。
ちなみにこの日は隣の席がはると君だった。おとなしく聴いているときもあったけど、後半は特にちょっかいを出されてなかなか大変だった。まさに素晴らしい演奏と素晴らしい暴力()
でも子供は仕方ないのかなと思う。前に座っていた親子は母親の左に座っていた男の子は休憩のときに退場してから戻ってこなかったし、女の子は途中ウトウト寝ていたし。
この日の打ち上げは近くの公民館で行われた。公民館で食事とか本当何年ぶりってくらい久しぶり。
乾杯前に何人かが挨拶をしたんだけど藤本さんは話し出すと突然泣き始めた。この日にどれだけの想いで臨んでいたかを彼女が吐露するとその場にいた人達も貰い泣きしそうになっていた。ステージでは泣かないと決めていたらしいけど、合唱の時はもう泣きそうだったと。
彼女は益城のリベンジを果たすことができたんじゃないかと僕は思う。きっと彼女の想いは被災者も多くいたであろう観客に届いていた。
様々なオードブルを食べて、食後には改めて植高君の誕生日を祝って、ありえないくらい長いからバズーカのように彼が構えたロールケーキを食べたりした。
ちなみに、向かいに座っていた白髭のおっちゃんはブルートレインに泊まっていた。
打ち上げ終了後、皆と別れてから木野さんの叔父さん(木野養蜂場のボス)に捕まった。そしてほぼ強制的にスナックへ拉致された。
でも馴染みの同い年のママさんがいないのと、店内に空席がないということで、こちらから出たのか追い出されたのかよくわからない形で退店。僕はフィリピンかどっかから来てそうな女性に腕を掴まれてWowってなってました。
これ以上飲まされたら確実に死ぬ…って感じだったけど、ママさんと知り合った神戸でのエピソードとか面白かったから良しとしよう。
ボスがタクシーで帰ったあとにブルートレインへ向かった。
ブルートレインに着いて扉を開けようとしたけど開かずに焦った。その場にいた人が開けてくれたけど、どうやらロックされていた(つっかえ棒的な木の何かを置いていた?)っぽい。インターホンはないけどフロントは24時間対応らしいから電話すれば開けてくれたんだろうけど。
寝ようとしていたら隣から電話での話し声が聞こえた。列車として運用されている際は走行音で気にならないのかもしれないけど、消灯時間越えてから電話するならフリースペースの2号車に行くべきですわ。まあ酔っ払ってたんだろうけど。その男性は関西弁で、勝てない勝負はするなといった類の説教をしていた。
朝になると部活動やってます的な運動部の団体を見かけた。昨日見かけた2人の女子高生はマネージャーで女子と先生だけ個室で寝ていたのだと思う。
ちなみにその部活動生以外も宿泊客は知らない人同士でも挨拶をしていて、民宿やゲストハウスみたいで悪くないなと思った。
朝食予約してたような気がするけど、支払いはしてなかったっけどうだろうと考えながらとりあえず飲み物を買いにコンビニへ向かった。そして戻ってきてからスタッフに確認したらもう支払いは済ませていて、朝食のパンは6時には来ていたらしい。言えば出してくれたっぽい。200円で安いなと思って予約の際に追加していたけど、近くにコンビニあるし、ジャムとかもない小さいパン4つだから、どうしようか迷っている人にはオススメはしないかな。
起きてきた際には24時間テレビが放送されていたんだけど、戻ってきたら日曜日の朝だったので戦隊モノに変わっていた。ちびっ子たちはもうテレビに釘付け。騒がれるより効果的なんだろう。
チェックインの際にベッドは下になっていますけど上が希望とかありますか?と聞かれて、二段ベッドなら下の方が楽そうだから、そのままで良いですと答えたけど、そういう意味の質問ではなかった。
もうチェックアウトした人の部屋の扉が開いていたから見たけど、そういうことか…と納得した。これなら上に泊まりたかった。
このブルートレインたらぎはもう少し色々とわかりやすく工夫をすれば更に利用客は増えると思う。Wi-Fiのパスワードをフリースペースの壁に貼ったり、外国客も増やしたいなら英語の注意書きも作ったり。
使い捨てスリッパとか販売してるのはナイス(正直50円だから買えば良かった)。耳栓があるかどうかは確認してないけど、需要はあると思う。
とりあえずこの日の自分にとってはチェックアウトが12時までOKというのがありがたかった。ゆっくり過ごせたし。
目の前には公園も温泉も物産館も、少し歩けばコンビニもあるというのは、周辺環境◎でしょう。
会場に着くと木野さんから、ブルートレインどうだった?良かった?それは良かった、うん!と話し掛けられた。木野さんすごい人なのに本当フレンドリー。
最終日は11時からの門下生達によるコンサート。
なんていうか、本当恵奈ちゃん上手だと思った。本人と友達だからだとか、御両親に良くしてもらったからみたいな贔屓目(耳)で言うんじゃなくて、本当に上手。
まず演奏に安定感があるから観客は落ち着いて聴いていられる。そして音が散らばらずにきちんと立っているから、メロディーが鮮明に聴こえて、聴いてる側に真っ直ぐに曲が届いてくる。
それらは演奏者には結構重要なことだと思うんだけど、どのくらいの割合の人が身に付けているのだろう。
彼女がヴァイオリニストとしての評価をこれから上げていくことが純粋に楽しみだと改めて思った。木野さんもかなり期待を寄せているんじゃないかな。
球磨川音楽祭が無事に終わったのを見届けた後、皆で昼食を取った。その後会場では木野さんと藤本さんの演奏の収録・撮影が行われていた。多分施錠されていたからその様子は見ていないんだけど、円盤化されたら欲しい。
多良木駅から人吉温泉駅までは(人吉駅のSLに連絡している便)くま川鉄道で移動。常々お世話になった恵奈ちゃんファミリーとはると君に見送ってもらった。
ちなみに今日飛行機で帰るという兵働君と兵働君の母親、矢後さん達と一緒に乗り込んだ。矢後さんからこっちの方が景色良いらしいですよと教えてもらって、進行方向右側の席に座った。
田園シンフォニーという観光列車の車両に乗っていたんだけど、観光列車として使われている際はベートーヴェンの田園を流したりするらしい。でも曲がなくたって車窓の田園風景がもうシンフォニー奏でてるやん!と納得のネーミングのような気がする。
そしてくま川鉄道からJRへと移動。SL人吉へ乗るために。
矢後さん達も見に来るのかと思っていたら、来たのは兵働君だけだった。彼は鉄道が好きらしく中1のときに乗って以来4年ぶりと言っていたかな。
彼にまたどこかで会ったらよろしくねと別れを告げて乗り込んだ。
人吉といえばSLでしょということで、滞在の予定に合わせて行きか帰りのどちらかに乗ろうと、実は何より先にこのSLの切符を用意した。
ネット予約だと乗車券も一緒に買うことになるから、みどりの窓口まで行って買った。普段乗る機会がないというか、そもそもSL走ってるとこ自体少ないわけだし。
内部はこんな感じ。色々と素敵すぎ。
3号車の自分の席の真後ろは展望ラウンジになっていた。1号車にも同じように展望ラウンジがある。
2号車にはビュッフェもある。
ストリートビューもあるから一応貼っておこう。
お見送り。さよなら人吉。
汽笛を鳴らし、煙を吐いて、ガタンゴトンと走り出したSL。
自分の席は3人の親子と一緒だったんだけど、自分の席は通路側だったので、ラウンジにいた方が景色が良いから終始ラウンジにいた。
駅からはミニSLが並走していたのが可愛かった。外からは多くの人が手を振っていた。駅にいる人達だけでなく、普通に散歩をしているような人達も振ってくれていて、もう素敵としか言いようが無かった。それ以外の言葉が見つからない。
写真を撮っている人も多かった。やっぱりSLは趣があって良い。
一つだけ気にしたことを挙げるとすれば、車内販売でサイダーを売りに来たんだけど、乗り込む前に飲み物買っていたから買わなかったこと。あれは買って飲めばよかった。
出発してから程なくしてラウンジでは写真撮影が始まった。子供には男の子用と女の子用の制服があって、帽子は大人も被っても良いといった感じ。
写真撮影担当の女性乗務員は、ほんの短時間で子供の名前把握していてすごいなあと感心した。
乗っていたほとんどの子供が撮影していたと思う。大人だけでももちろんOKで、1人で撮影を頼む女性も何人かいた。中華系の3人が自分と同じくラウンジに長いこといたんだけど、彼らも大満足の様子だった。
とりあえずこの場所にいて感じたのは、子供かわええええええ、と。間違いなくそう感じるような時間だった。
ラフティングをしている人達も手を振っていた。SLに乗っている人達もまた外の人達へと手を振る。
雨の後に一瞬霧に包まれたような状況になって、霧とSLの煙で窓の外がもくもくと曇ったのは愉快だった。人吉は霧の町でもある。
子供向けのクイズ大会も行われた。ツッコミがやたらと速くて上手い少年がいて、お姉さん達を困らせていたのは笑った。
研修生に対して、研修中だ!とツッコむのはプレッシャーなのでやめましょう。でもこの研修中の子も緊張しながらもしっかりとこなしていた。
停車駅ではしばらく停まっているからこうして降りて撮影することも出来る。
モノクロにすれば擬似タイムスリップ。
各駅で停まるのは乗客へのサービスでありながら機関士の休憩時間でもある。ただでさえ暑い時期に、少し近付くだけでも熱いボイラーの前で作業するのはかなり大変だと思う。
この写真は乗務員の方が氷水を持って行った後の写真。
飴が無料で配られていたんだけど、中華系の3人の中の1人の女の子がその飴の袋ポイ捨てしてたから、まあお国柄か、いや日本人でも捨てる人間は捨てるか、と思いながら拾ってポケットに入れた。
両親と小さな子どもの親子3人組って微笑ましいなと思っていたら、父親と息子の2人だけも本当に楽しそうで、1人で乗っていた外国人の女の子ですらも、もうここにある何もかもが素敵に思えた。
時折、汽笛を鳴らしながら走る蒸気機関車から窓の外を見れば、地元の人達が手を振ってくれている。
車窓もまた素晴らしかった。遠くに見える一本木に思いを馳せたり、たわわに実った稲穂、名前も知らない川、なんてこともない町並み、震災が影響しているのか屋根にブルーシートが掛けられている家もあったけど、でも本当に、すべてが美しいと感じた。
ローズウッドに包まれた空間の高級そうな椅子に深く座って、外の景色を眺めていた。18切符は特急も使えるって恵奈ちゃんのお父さんに言ったけど一部の特急だけということを思い出して嘘教えちゃったわと後悔したりもしてたけど、熊本に近付くにつれ雨が強まっていき雨粒で濡れるガラスも、すべてが美しいと感じた。
約2時間半の贅沢なひとときを過ごし、熊本駅に着いた。
熊本駅に着くとまたまたレアな車両が停まっていた。A列車で行こうという熊本駅と三角駅を繋ぐ観光特急列車。
木野さんのリサイタルにいた麦わら帽子を被った小さな男の子が楽器ケース(子供用ヴァイオリン?)を持って歩いていることに気付いた。綺麗なお母さんと一緒に新幹線乗り場へと移動していた。A列車で行こうを撮った写真に彼が写り込んでいる写真もあったんだけど、思いきり鼻の中に指突っ込んでたから未来のヴァイオリニストの名誉のために貼らないでおこう()
待合室にリュックからモバイルバッテリーを取り出していたら、あの写真撮影担当の女の子乗務員と目が合って窓越しにお互いにどもっと。どこかで会ったことありそうな顔だったからいっとき覚えていそう。
熊本駅から銀水行きの電車をホームで待っていたけど、自分は4両編成の場所に立っていた。なんかこっち側並んでる人少ないな…と思ったら、電光掲示板で確認してみたらやって来る電車はまさかの2両編成。こっち側に並んでいたのは普段この電車を使わない地元以外の人達だけ。わりと早くから並んでたからトラップや…と思ったよね。うん。熊本駅発で福岡方面行きでも2両とかあるのかと。座れたから別に良かったんだけども。
台風の影響かは知らないけど、怪しい色の雲が垂れ下がっていた。
最寄り駅に着いてからは夜の帰り道で、SL乗り込む前に矢後さん達にきちんと挨拶出来なかった罪滅ぼしを少しだけ行った。
この前見た女子高生の真似というか、絶対その先で渡れるのにきちんと信号が変わるのを待って横断歩道を渡るという良い子っぷりの後に、捨てられてある紙パックのコーヒーを一度通り過ぎた後に、んんんんんん拾ううううううう!!!!()と。
夜道を歩いていると風が涼しくて、夏の終わりと秋の到来を感じた。
球磨川音楽祭はきっと来年も素敵だろうから、今回も全国から人が集まったらしいけど、更に観客が増えると嬉しい。
人吉という町がいかに魅力的な町かを知った。鍾乳洞での探検、ラフティング、SLなんて子供も大人も絶対楽しめる。
個人的にいくつかチェックしていたものを逃したけど、でもまた来る機会はあると思う。川下りとかもやってみたい。
恵奈ちゃんファミリーには今回も本当にもう申し訳ないくらいお世話になった。チケット代や食事代もごちそうになったり、感謝してもしきれない。
他の方もみんな親切にしてくれて嬉しかった。みんな良い人たちばかり。
なんだか充実の3日間だったからやたらと長くなってしまったし、思った以上に書くのに時間が掛かってしまった。
でも時間を掛けて3日間を振り返り気付いたのは、熊本に触れたかったんだろうなということ。震災が起こってから何もできていなかったし、いや別に今回も特に何かができたわけではないけど。九州で生まれ育った人間として、死者こそ出てないけど自分の出身地である大分も被災地の一つだし、何か少しでも寄り添いたいなという気持ちがずっとあって、それを叶えられて良かったと思う。うん、良かった。
これで8月も終わり。今年の夏はおとなしく過ごすだろうと思っていたけど、思いがけず良い夏になった。
おしまい。