熊野古道 伊勢路の旅 七日目

11月12日。
いつも5時には起床していて、それから朝食までは音楽を聞いたり、地図を軽く見たりして時間を過ごしていた。
何時でもいいですよということだったので、朝食の時間は7時に頼んでいたから、その時間に朝食を食べた。
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食後にコーヒーと飴をおかみさんが持ってきてくれて、それから様々な話をした。
自分と同じく深夜に作業をすることが多いらしく、深夜の方が集中出来るよねと。NHKのラジオなんかお勧めだよと教えてくれた。確かに作業効率が良いのもアイデアが浮かんでくるのも大抵夜が更けた頃だ。
強く印象に残っているのは、一人旅をしている自分に対して、日常の生活の中で溜まっていくものを落としたり、リフレッシュするのはやはり一人で旅をするのが一番だと言ってくれたこと。若いのにそれに気付けるなんてすごいねと褒めてもくれた。
今までも何度もそんな風にして旅を繰り返して、気付かぬ間に旅をするのが好きになっていた。多分これからも続けるだろうと思う。現実逃避ではなく、旅をすることで得られるものも沢山あるし。
とても自分を理解してくれる人だと感じた。良い時間が過ごせたと思う。

洗濯物はほとんど取り込んでいたんだけど、ストーブの前でソックスを乾かしているのを見ると、洗濯聞けば良かったなあと言っていた。頼めば洗ってくれたっぽい。
以前紀勢荘でバイトしていた子がこの後伊勢で泊まるゲストハウスの仮オーナー?(詳しい肩書は忘れた)と結婚したみたいな話も聞いて、面白い繋がりだと思った。
伊勢神宮に関する本を見せてくれたり、色々とお世話になった。
出発間際の玄関先でご主人に会ったからレコードはご主人のですか?と聞いたら、あれは実はおかみさんが揃えたらしい。アバくらいしかわからんけどと笑って、聞いたら良かったなあ!って。
この飴どうだった?と聞かれたので、美味しかったですと伝えたら、ポケットに詰め込んどき!と大量にプレゼントしてくれてお見送りしてくれた。
本当に親切で、そして素敵な宿だった。
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カーブで姿が見えなくなる直前までずっと見送ってくれていた。最後は手を振ってくれたから一礼して先へと進んだ。
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遮断機が下りて電車が来るのを待っていたけどやたらと長かった。一台の電車も来ないまま数分は待っていたと思う。
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国道42号線を歩いた。でも山側の町道・農道が本来の道だと地図には書いていた。気にしない。
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この真ん中の止まれがある道を進んだ。
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懐かしの遊具。
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長い道の途中にある出会う町と別れる町。
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ん!
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悪くない広告だ。
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実は今まで万歩計アプリを利用していたんだけど、この日起動してないことにこの辺りで気付いた。もう面倒だからいいやと歩数や距離を測るのを止めた。
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今までで最も猫らしい鳴き声を聞かせてくれた猫だった。
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「ニャー」
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まだまだ歩かないといけないから、まだまだ歩いていく。
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たこやき店はまだ準備中で開店してなかった。こういうパターンが多い。
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コンビニでは干物が売っていた。
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阿曽観音堂とけやき。
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紅葉が水面にも映っている。この時期を選んでやっぱり正解だった。
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石灰華。またの名を蝦蟇石。
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廃墟。中はどうなっているんだろう。
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阿曽踏切。
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共産党は廃屋にもポスターを貼りまくるということをこの旅で知った。
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ずっと歩き続けているけど、見どころのある道ばかり。
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大きな岩が祀られていた。名も無き神。
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大宮小・中学校の先に大滝峡の遊歩道があって気になった。でも歩くなら通り道ではなく引き返す形になる。どうしようか迷ったけど結局行くことにして、逆向きに歩き出した。
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ハイキングとして歩くのもいいけど、サイクリングロードとしてこの場所を走るのはもっと楽しいはず。
対岸には青少年旅行村が夏季限定で営業しているみたい。
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春には約150本のソメイヨシノが咲くらしい。きっと綺麗。
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折り返した分疲れたけど、その疲労に見合うものはあったと思う。さよなら大滝峡。
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歩道橋を越える。
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趣きのあるカフェ。すぐ目の前に瀧原宮が迫っていたから歩きを優先したけど。
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杜が見えてきた。
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瀧原宮に到着。
花窟神社と同じく伊勢路で最も重要な神社で、神宮(内宮)の別宮。
天照大御神が伊勢に落ち着く前に祀られていたから元伊勢と呼ばれていたりもする。
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薄暗く神聖な雰囲気のある参道
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参道を少し右に行った場所に川の御手洗場。
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御祭神は天照大御神御魂。
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何分間にも亘り、ぶつぶつと何かの呪文のように願い事をしている人を見て、そういえば自分は願い事をしていないなと気付かされた。
昔は神社でお参りするときに願い事をしたこともあるけど、今回の旅では一切していない。無心というか、ただ畏敬の念だけを持ち、頭を下げ、手を合わせるだけ。
いくら個人の自由だとはいえ、私利私欲感が出てるというか、その手の願いを延々と繰り返すのはどうかなと正直疑問を抱いている。敬う心が足りていないのではと。
何か特別なことがあったり、生活が上手く過ごせていること等の感謝を神様へ伝えるというのは良いと思うけど。

神社にはパワースポット目当てとか、~にご利益があるだとか、そういう目的で来る人が多いだろうけど、特にご利益というものを求めて参るわけでもない。というかそういう系は殆ど気にしていない。
でもじゃあなぜ神社に行くのかと聞かれたらどう答えるかは難しい。行くべきだと思ったからとでも書いておくしかない。
伊勢路は歩いた分だけ幸があるという謳い文句だけど、それが本当なら自分はどれだけ幸福になっちゃうのって話だ。別に謳い文句に文句を言っているわけではないんだけど、別に幸を求めて歩いているわけでもないし。
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想像以上に滞在時間は短かった。でも濃い時間が過ごせたと思う。御朱印も貰えたし。

神社の外で4コマ漫画による瀧原宮の起源の紹介があった。とてもわかりやすい。
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すぐ近くにある道の駅「木つつ木館」で昼食を食べることに。
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道路の標識で松坂という文字を何度も見るけど(逆に伊勢と書かれてある標識はあまりない)、松坂に行くことがないのはわかっていて、でもなんか松坂といえば松坂牛、松坂牛食べたいなあと思っていたら、ここで松坂重を食べることが出来た。
シンプルに言えば、めちゃくちゃ美味しかった。
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食べ物系の幟が色々あったりして、どれも気になったけど、豆大福はパス、大内山牛乳のアイスもパス(ゆずは既に食べたけど)、いちごソフトもパス。結局歩きやすさを考慮するという理由で、手持ちアイスクレープになぜか決まった。そのとき一番食べたかったものなんだろうけど、防寒着を着つつアイスクレープってなかなか狂気の沙汰だ。
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瀧原宮の前を通る道を進んでいく。
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三瀬坂峠登り口。
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登り始めてすぐに気付いたけど、嵐の後の川のような荒れっぷり。道を埋め尽くす石、倒木したてのような木、完全に裏返されてる黒い土、散乱したヒノキの葉、もしかしたら最近の風雨による土砂崩れかもしれないけど、数日でこんな風になるとも思えない。
今までずっと整備されていた道を歩いていたから、こんな道も伊勢路にあるのかと理由を把握出来ずに動揺を抱えたまま歩いた。
今もはっきりとはわからないけど、多分ここ三瀬坂峠は世界遺産じゃないから長いこと整備されていないのだと思う。それが理由で間違いないような気がする。
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これだけ荒れた道ならそりゃ汗染みもアシタカの腕みたいになる。
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通れない…。
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あなたが捨てたゴミは誰かが拾わない限りずっとゴミとして存在し続けry (拾いました
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三瀬坂峠。ここで買っていたアイスクレープを食べた。荒れた道のおかげで少し汗をかいていたから狂気さは低減されたかもしれない。
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そして下り。下りも似たような道だった。
下り終える直前に木を伐採してる人を見た。世界遺産じゃないから普通に伐採もしているんだろう。
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三瀬坂峠おしまい。美しさはやはり他には劣る。
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すぐに多岐原神社への道を見つけた。この多岐原神社は瀧原宮にあった四コマ漫画で気になっていた。もしかしたらあれを見ていなかったらスルーして歩いていたかもしれない。
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御祭神は真奈胡神。天照大御神を祀る地を探し旅をしていた倭姫命が、宮川の急流を渡れず困っているとこを助けたことから、倭姫命により祀られたらしい。
一枚の写真に神社のほとんどが写っているという小さな神社ではあるけど、伊勢路の巡礼路だから多くの巡礼者がここへ参ったようだ。
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多岐原神社から落ち葉が敷き詰められた道を150mほど行くと「三瀬の渡し」跡がある。かつてはこの宮川を渡る水路も伊勢路の一部。
距離はそんなにないけど絶壁に近く、今は向こう岸に渡るには大きく迂回するしかない。
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風景と同化する猫を探せ。
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ぐるーっと回り道をするわけだから、ここから三瀬谷までの道は伊勢に背を向けて歩くことになる。
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足が笑うほど痛くてもずっと歩くしかない。だから歩き続けた。長い道だった。
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何を祝っているのかはわからないけど、おめでとう!おめでとう!
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疲労を主とした体感は結構進んだはずだと感じているのに、実際はあまり進んでいないという反比例。
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まだ道は続く。疲労は日に日に増しているんだと一歩進める度に思い知る。足だけじゃなく、バックパックの紐を支える肩も激しく痛む。
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宿まであともう少し。
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宿の目の前で買っちゃった。
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そして今日の宿「大黒屋」に到着。
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大黒屋は飲食店も経営してるんだけどちょうどこの日は定休日。
入口っぽいとこをノックしまくるけど誰も出てこなくてどうしたもんかと困った。でも暖簾がかかっている引き戸をなんとなく引いてみたら開いていたというオチ。開くのとほぼ同時に中にいたおかみさんの「開いてますよ」という声がしたけど、結構遅い。
素泊まり代の4300円を先払いすると、部屋はここではなく、ちょっと離れた別館にあるとのことで移動。
業務的というか淡々と説明だけされて、おかみさんを見たのはそれっきりだった。スタイリッシュ対応でも別に問題はないんだけど、連日民宿の手厚いおもてなしを受けていたからそのギャップに少し違和感があった。
宿自体はシンプルな作りだったけど、洗濯機や電子レンジも普通に置いてあったのは評価は高い。冷蔵庫はだいたいどこにでもあるけど、洗濯機無料で使えて、洗剤も置いてあるってのは太っ腹だ。ハンガーも沢山あったし。
なかなか温水出てこなかったくせにやたらと水圧のあるシャワーを浴びて、洗濯機を回してその洗濯物をハンガーに吊るしてから近くのスーパーへ食事を買いに出発。
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別館の外観。
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歩いてマックスバリューに向かったけど、もう疲労が溜まり過ぎていて、外履き用サンダルを履いた足は老人のようなスピードでしか進めなかった。

道の駅にあった綺麗なモニュメント。これを夜に見れて良かった。
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翌日の朝食と昼食の分も買ったけど、でもまた調子に乗り過ぎて色々と買い過ぎた。
お箸やスプーン等商品によっていろいろ入れてくれるのがスーパー店員の常だと思ってたけど、レジのDragon Ashにいそうなおにいちゃんはわりと不親切ピーポーだったから少しあれっと思った。お箸は用意出来たけど、プリンはお箸で食べることになったし(号泣)
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何か歩いているときに桜もちと桃の缶詰が食べたくなっていて、桃の缶詰はちと厳しいからここで桜もちを食べた。美味しい。美味しい。
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この日はちょうどサッカー日本代表の試合がやってたから部屋にあった小さなテレビで観戦したけど、まあ試合内容より酷過ぎるユニフォームが気になった。
元トリニータの選手が4人も出ていたのは胸が熱くなった。当然同時に複雑な気持ちにもなるんだけど。

疲れは正直尋常じゃないくらい溜まっている。疲れが抜け切れないまま歩き続けていつの間にか笑えないような状態まで来たらしい。
でも明日もまだ道はある。進まないといけない。歩くしかない。


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