1月22日。
白いうさ耳パーカーの白人の女の子が前を横切ったと思ったら、そこは不思議の国、いや、広島駅。
3月末で廃線となる三江線のことは、前から気になってはいたんだけど、いよいよ後がないなということで来た。
でも事前の情報によると大雪の影響で一部は当分運転しないらしいし、動いている区間も時間によっては代行輸送。ついでに大寒波も来ているから、一部乗れないどころか、全部止まるのでは…?というような不安も抱えていた。
都合良く運転再開したりはしないだろうし、これからの雪の影響も含めて、どうなることやらと思いつつ、でももう行くっきゃない。
三江線の始点の三次駅までの1320円の切符を買って、まずは芸備線に乗るために改札を抜けてホームへ下りた。
ホームの地面には、この線を挟み2列にお並びくださいと書かれてあったので、右側のおばちゃんの後ろに並んでいたら、「こっち向きにこう並ぶのよ」とそのおばちゃんに一列で並ぶように(要は後ろに行けと)言われた。
1列に並んでるから列めっちゃ長くなってるのに…なにこの謎地元ルール…と疑問に思っていたら、ホームに下りてきたおっちゃんに「ここは芸備線ですか?」と質問された。そうですね。と答えると同時に、この人も三江線に乗りに来てるなとわかった。
あいにく芸備線のオレンジ(薄い朱色?)の車両の写真はブレてしまっているので貼れないけど、とりあえずボックス席に座って、まあそれが進行方向逆で、えらいハキハキ喋る20代の眼鏡女子とその母親が自分と向かい合わせで座った。
このボックス席は子どもしか乗れないだろってくらい狭くて、窓際にいた自分も眼鏡女子も窮屈そうに座っていたけど、2人は玖村という駅で下りたので、そこで座り直して、リラックスして車窓を眺められて良かった。
ずんずん、ずーむずーむ。(プロスピAで菊池Sを恵んでください)
三江線目的で乗ってるわけだけど、芸備線の車窓も美しいなと感じた。
建物の屋根や田畑など所々に雪は残っていた。標高が高い場所は更に残っていて、白木山駅ではこれが名前の由来だろうと信じてしまうような光景。
雪山と呼んでいいのかはわからないけど、山の木々は確かに頭の先に雪を被っていたし、山がマフラーでも巻いているみたいに、横長な雲が低く停滞していたのでとても幻想的な光景だった。
ふと電車の待ち合わせの為にいくつもの駅で停車していたり、そこでの停車時間が長いことに気付いた。
それと、ついつい写真を撮りたくなって車窓を楽しむ時間が減るってのは毎度のことだけど、今回も、ちゃんとこの目で見ておかないとなと自分自身を戒め。
登っている感じはしなかったけど、想像していたより奥地といった感じで、電車が進んでいけば雪の量も増えてきて、屋根にもしっかりと積もっているのを見ると、そりゃ倒木もあり得るよなと。
芸備線も初めての乗車だから、当然車窓も初めて見る光景。でも誰かにとっては見慣れた日常の風景。
日本のどこに行ってもそうだけど、思いがけない場所に神社や祠を見つけることがある。わりと大きめな神社を目にすると、きっと地元では大切にされているんだろうなと感慨深い。
そういう場所を見かけるたびに、もっといろんな町に行きたいと思う。でもそれにすべてを費やさない限りは、日本だけですら、回りきるのは困難だろうなとその都度思い知らされる。
下校する学生等で賑わっていたが、乗客は徐々に減っていった。
終点の三次駅まで乗っていたのは、自分がいた車両では自分含めて4人。広島駅で質問してきたおっちゃんはその中の1人。ちなみに電車は二両編成。
三次駅に着く前に三江線の乗り換えは3番乗り場というアナウンスはあったものの、予想通り三江線はこの駅からは動いていない様子。電光掲示板も消されている。
駅の前には代行のジャンボタクシー(マイクロバス?)が停車していた。
タクシーの近くにいた運転手さんに話しかけると、なんと、三江線は明日は動くと思うとのことで、まじかよ!とテンションが上がった。詳しくは駅員さんに聞いてくれとのことで駅舎にまた戻った。
ライブ会場に向かう交通機関のように、駅舎の中にはそれっぽい人が結構いることが一目でわかった。駅員さんに質問しようと前のオレンジのジャケットを来たおじさんに続いて待っていると、なんだか自分がしようとしている質問をしているような気がした。上手く聞き取ることはできなかったけど、そのおじさんが「せっかく来たけど乗れないよ~」と独り言を言いながらそこから離れたので、あれ…?と。
自分が用意していた質問は、明日も三次駅から石見川本駅までは運転見合わせか、石見川本からの始発は動いているか、代行タクシーはその始発に連絡するのか、といった類のもの。
ほとんどそのまま質問をした。まあ、タクシーの運転手が言っていたこととは違って、明日もここからは代行らしくて、なんだか上げて落とされる形に。
でもタクシーは向こうの始発と連絡するらしいから、それは良かった。途中からだけど、明日はきっと乗れるだろう。うん。
質問が終わって程なくするとタクシーは発車した。
自分は明日の始発に乗るものと決め込んでいてまったく考えていなかったけど、この時間で乗り換えようとしていた人も当然いるということに気付いた。広島駅でのおっちゃんもいなくなっていたし。
人が多いと困るから始発狙いで計画を立てていた。でもこの感じなら別に始発じゃなくても良かったなと思った。クライマックスの18切符期間はまだ始まってないし、運次第だろうけど、平日なら座れないってことはあまりなさそう。
17時頃の三次駅。
ここまではまあ想定内なので、当初の予定通り今日の宿に向かうことに。
三江線のイメージは田舎感があるけど、始点の駅ということもあり、三次駅周辺はわりと店等いろいろあった。(グーグルマップで見て知ってはいたけど)
ホテルまでは徒歩10分少々。
はい、三次ロイヤルホテル。
フロントには地元の子感溢れる女の子とおばちゃんの2人。公式サイトからの予約特典でミネラルウォーターかオロナミンCを選べたので後者を貰って部屋へ。
ホテルはなんと表現していいか悩むけど、利用客が減ってしまった地方のホテルがあの手この手で客を呼び込もうと頑張ってる感があった。いや、あの手この手というほどでもないな。でもとにかくなんかシュールで良かった()
この隠しきれない式場感。
ファーストキャビンに影響を受けてそうなプライベートキャビン(カプセルホテルフロア)を実は予約していたのです。
なんか狭くて楽しい。なんか楽しい。
夕食は来る途中で見かけたラーメン屋で食べることにした。尾道ラーメンじゃないから広島感はないけど、更に先にあった長浜ラーメンやコンビニよりはまあいいかなと。
車が途切れずなかなか道路を渡れなかったが、なんとかたどり着いた。
味玉の入ったラーメンを注文。若いバイトらしき店員がサンフレッチェの話をしていた。
石焼チャーハンと餃子のセットを頼みたかったけどビビって頼まなかった。でもラーメンを食べ終わったあとにまだ食べられるなということで餃子5個追加。美味しかった。
吐く息も真っ白な冬の寒い夜道を歩きながら、ふと空を見上げたら三日月が見えた。やっぱり地方を旅する方が好きだなと思った。
ホテルの目の前にあるローソンに寄ってから戻った。ローソンから撮った写真で距離がわかる。
出る前は気付かなかったけど、ミニ冷蔵庫が机の下にあって助かった。
面倒臭くならないうちに大浴場へ。少し前に入ったおっちゃんが1人いるだけ。
上がって脱衣場で着替えていると、バスタオルを下半身に巻いただけの若者が入ってきて、えwwwwと驚くしかなかった。
脱衣場に入る前に脱衣を済ませているというニュースタンダード() どの時点からその格好なんだ…。フロントや玄関もそれで横切ったのか…。
その若者の次に新たなおっちゃんが来て「中にシャンプーありますか?」と質問された流れから、変わったホテルですね…と少し会話を交わした。確かに変わっている。
お風呂上がりは、コンビニで買ったスイーツ(笑)と自販機で買ったジュースを持って、リラクゼーションルームへ。
フロアの前には漫画もある。わりと新しいものもあったが、基本的には一昔前のものが多め。
ドカベンを久しぶりに読もうかなと思ったのにプロ野球編の8巻からしかなかったから何も読まなかった。
元貴賓室のリラクゼーションルームはこんな感じ。シュール感どんどん積み重ねてくるスタイル。
暖房をつけようとしてもエアコンが反応しないっていう。
電子レンジで弁当を温めに来た人が1人と、扉だけ少し開けてチラ見した人が1人、そのおっちゃん2人以外は誰も来なかった。でも宿泊客はわりといるような気がした。
無料でコーヒーや紅茶も用意されていたので紅茶を飲んで、テレビを適当につけたままマッサージチェアでくつろいで、部屋に戻った。
歯磨きをして寝る準備をした。運行情報を調べてみるが、何も変わっていなさそう。
枕元というかベッド付近にはアラームはあるがコンセントはなかった。実質二段ベッドの上の部屋なので、下になっている部屋でも良かったかもしれない。その場合もコンセントは届かなさそうだけど。
飛んでるWi-Fiの安定度も正直微妙。でも別に不快じゃなかった。
洗面所はティッシュじゃなくてペーパータオルにした方が良いとか、もっとこうしたら顧客満足度上がりますよ的改善点はいろいろ見つけたけど、まあ別に不快じゃない、うん。
1月23日。
4時10分に起きた。相変わらず自分の目覚めは良くて(あるいは眠りが浅くて)、アラームは3回目のピッという音で止めた。
壁で遮られた完全個室というわけではないのに、他の客の音はほとんど聞こえず快適な夜だった。単にこのフロアに客が少なかったからという可能性もあるが、空調の音が聞こえていたくらいで基本静かだった。
鍵をボックスの中に返せばチェックアウトになるとは聞いていたけど、昨晩女の子と入れ替わってフロントに立っていたお兄さんが5時にはいた。
外は雨は降っているが傘を差すほどではないのでそのまま歩く。コンビニに車は停車していても、道路を行く車はほぼゼロ。
もちろん空の色は暗いが、まあ石見川本で電車に乗る頃には明るくなっているだろう。
途中雨脚は強くなり、雨粒が目に見えるくらいになったから少し歩きの速度を上げた。当然気温は寒いが、着込んでいるので問題はなかった。手は寒かったけど。
何人くらいタクシーに乗るだろうと考えながら到着。おはよう三次駅。
駅には電車の姿があるが、ジャンボタクシーはまだ来ていなかった。でも昨日のオレンジの独り言おっちゃんはいるし、折りたたみ傘をたたみながら何か呟いてた男性等、他にも男性が数人いる。
タクシーが程なくして来ると乗り込んだのは自分を含めて4人。オレンジのおっちゃんと、折りたたみ傘の男性と、東アジア系の外国人青年。
運転手曰く三江線は金曜日の26日くらいまでは今の状態らしい。そして運賃は向こうで払えばいいとのこと。
皆そのまま石見川本駅まで行って電車に乗り換えるもんだと思っていたけど、運転手に行き先を告げる際、石見川本と言っていたのは意外にも自分だけだった。日本人2人は宇都井駅で下りて帰りのバスに乗るとのこと。三江線を往復するつもりだったんだろうか。
必ずしも電車に乗ることが目的じゃないのかなと不思議に思っていたら、前に座っていた折りたたみ傘の男性から電車に乗るんですか?と聞かれた。三江線に乗るために来たと伝えると、僕もそうですと。話してみると感じの良さそうな人だった。その人は出発前に何か小さい物を落としたらしく探しに行ったけど、見つかったようで良かった。
出発すると前のその男性はポケモンGOをしていた。駅メモ目的で来る人もいそう。
出発前にオレンジのおっちゃんが車内を撮影したので、もっふもふのネックウォーマーやマスクをつけた状態で写った。
タクシーは各駅に寄っていくスタイル。でも荷物も皆持っているのでこれ以上乗客が増えたら大変なことになりそうだがどうなるか。
車同士が決してすれ違いないような細い道を登っていたりするのは、駅に寄るためにメインロードじゃない方を進むこともあるから。
外が暗いし、街灯もあまりないので、景色はあまり見えなかった。正直見たかったけど、これからの予定もあるから仕方ない。始発に間に合わなければ次の電車は運行休止してるし、その次はもう4時間後とかになってしまう。
でもたまには見えることもあって、こういった一つ一つの駅に誰かの想い出が詰まっているんだろうなとしみじみ。
しかし問題発生。前に座っていた男性が、あー気持ち悪い…と突然呟いた。それからあとどれくらい掛かりそうですかね?と自分に尋ねてきた。まだ半分も行ってないですね、酔ったんですか?と聞くと、完璧に乗り物酔いですと。なんだか後悔している様子で可哀想だった。ついてない日だ。
降りることも検討していたので、地図アプリで時間を潰せそうなとこも探すけど、何もない…。
とりあえず車での時間を予想して宇津井までは25分は掛かるみたいですと教えると、彼は次で降りますと運転手に伝えた。本当に辛そうだったし、きっと地獄のようだろうなと胸が痛んだ。
結局彼は式敷駅という駅で降りた。屋根があるだけの駅もある中、駅舎がある場所で良かった。タクシーを降りる際、お手数お掛けしましたと丁寧に言っていて、きっと誠実な方なんだろうなと思った。カイロとコンビニの袋を持っていたので渡そうと思っていたんだけど、一秒でも早く車内から出たい様子だったので、その背中に無言の頑張って…!を送るしかなかった。
外が少し明るくなって景色が見えるようになってきた。何度も橋を渡ったり、廃線寸前の雪が積もった無人駅はとても趣があった。
でも進み具合からして、始発には間違いなく間に合わない。駅員さんの言っていたこととも違うとは。
6時40分前に口羽駅に到着した。タクシーは5分遅れで進んでいる様子。そしてここで7時3分まで停まっているとのこと。電車もいつもここで(逆から来る電車を?)待つらしいが、まあ始発はもう100%無理だ。
タクシーから下りてホームで過ごすことにした。高架橋の下以外は一面雪が積もっていた。
更に空が明るくなった。全然電車には乗っていないし、タクシーと電車は連絡する気がないみたいだけど、でも美しい光景の中に立てて満足感はあった。
外国人男性もタイマーを使ったりといろいろな写真を撮っていた。さぞ良い写真が撮れただろう。彼の写真の中には何枚か自分の姿が写っているものもある気がする。恥ずかしいけどちょっと見てみたい。
またタクシーが動き出すと、ある場所で、次は宇津井ですかとその外国人男性が運転手に尋ねた。自分は最初から気付いていたけど、運転手とオレンジのおっちゃんは彼が外国人であるということに気付いてなくて、最低限の日本語は勉強してきたようだけど、その流れでどこから来たの?と質問されて困っていたので、少し助け舟を出した。
彼が香港から来たとわかると2人のおっちゃんは笑っていたけど、彼が馬鹿にされているように感じていたらどうしようと不安にはなった。決して侮辱するわけじゃなくて、わざわざ香港から来たんだと驚いて笑っていただけだから。
彼もまた三江線に乗りたくて来たらしい。自分よりも多分若い彼に、もっと話しかけてあげれば良かったなと悔いた。そして彼に限らず、誰にだってもう少し踏み込んで接するべきだと思った。人によってはお節介に感じても、助かる人もきっといる。なんだか遠慮しちゃうけど、特に困っていそうな人に対しては、もうしゃしゃるくらいいっても良い。
駅についての下調べはほとんどせずに来ていたから、宇都井駅に着いたときに、ああ、天空の駅のことか、だからここでみんな降りるのかと気付いた。
乗るためというよりこの駅の写真を撮りたいから来たというのは理解できる。
香港人の彼とオレンジのおっちゃんは降りたので、乗客は自分1人になった。
乗ろうとしていた電車の時刻は過ぎた。代行で進むとしよう。今日は石見銀山に行こうと決めていたけど、これからの電車やバスの時間も変わってくるので車内で計画を練り直し。もう言ってしまえば全部止まっているようなものなんだから仕方ない。
途中の駅でおばあちゃんが1人乗ってきた。昨日に引き続き病院に行くのに乗るらしい。運転手は地元のおっちゃんだったのでそのおばあちゃんとの地元関連の世間話は聞いていて面白かった。知らない土地に来て、吉迫のおばあちゃんから石田さんのご主人の話を聞くことはなかなかない。
昨日の夜の代行タクシーは運転手が道がわからず、乗客のスマホのマップでナビをしながら運転をしたらしい。タクシー会社にとっても駆り出されてて慣れていない業務なんだろう。
浜原駅には電車が停まっていた。ここでタクシーも乗り継ぎ。もはや三江線沿いを行くマイクロバスの旅だ。まあ見える景色が三江線とそこまで変わらないのはいいこと。電車から長く続く線路を見下ろすことはまずないけど。
次の運転手は白髪の物腰柔らかなおじいさん。さっきのおばあちゃんも乗り継いだのでこの運転手さんとの会話も聞いていた。
以前は11ヶ月も三江線が止まっていたこと、昔の水害のこと、運転手さんの昔住んでいた場所等様々な話題を。
8時半過ぎに石見川本駅に着いたが、乗ろうとしていたのは7時3分発だし、その次の8時23分発ももう遅い。その次は13時45分発なので、このまま代行タクシーに乗り続け終点の江津駅を目指すことにした。
先程のおばあちゃんはここで降りた。今日は確か歯医者に行くと話していた。
運転手は定期的に駅側と電話で連絡を取るんだけど、タクシーも遅れているから電車は良い時間で乗り継げないと思う、と駅員に伝えてくれと言われたと運転手さん。話し方がとても優しいし、別に問題ない。
途中2人の男子中高生が乗ってきた。運転手が気さくに話しかけてるのに、彼らはスマホをずっといじりながら小声で面倒臭そうに返事していたので、もうおっちゃんが可哀想で仕方なかった。
でも廃線になるというのは、生活で使っている人たちは間違いなく不便だろう。通勤、通学、遊び、どれも取っても。
タクシーは複数台で進んでいたので大丈夫だったが、徐々に乗客は増えていった。川戸駅で乗り込んで来た瞬間に、はよ行ってと独り言を呟いた感じ悪いおばあさんとJKが乗ってきて満車になった。
ふと夜の三江線(終電)に乗って広島方面に帰ろうかと考えた。景色はあまり見えないだろうが、今晩は(宿を予約しているわけではないから)ネカフェにでも泊まればいいし、広島駅に何時に到着してもいいのなら乗れるかもしれない。
でも石見銀山がある大田市方面への電車はどうだろうか。電車も10分ほど遅れているらしいが、江津駅からのアクアライナー(快速)どころか、その次の9時台のも怪しい。
千金駅へは山の中にでも行くのかというような道を進んだ。車内からホームが見えない場所はこうして運転手さんが直接人がいないか確認しに行くのでまあ大変。ご苦労様です。
最悪三江線に乗らずに広島に戻るというのも考えていたけど、こういう場所を電車が進んでいるんだと実感すると、やっぱり乗りたいなと思った。
はよ行っておばあさんがガラケーを開いた。待ち受け画面は孫らしき小さな子ども2人の写真だった。
江津駅一つ手前の江津本町駅。そういえばもう4時間ほどタクシーに揺られている。
江津駅に到着。1940円を用意していたのに一つ前の額を言われたけど、もちろんきちんと払いました。
着く直前に見た山陰本線の情報は平常運転だったのでどうなのかと思っていたが、単純にどちらも出発した後という結果だった。
次のアクアライナーに乗れば11時5分に大田市駅に着くようなのでそれに乗ることに。ベンチで待ちながら軽くパンやおにぎりを食べたり、自販機でミルクココアを買って飲んだ。
風は寒いけど早めにホームに出た。ホームに出た瞬間に電車が3分遅れているというアナウンスが流れた。なぜかLed Zeppelinの天国への階段が聴きたくなって聴いた。
こちらは何度か見たことのある景色。
日本海はやはり荒れている。でも瀬戸内海から反対側に来たということ。
大田市駅に着いてバス停の案内を見ていると、観光センターから中年の女性が出てきて、とても丁寧に、またかなり詳しく教えてくれた。事前にいろいろと調べてはいたけど、ここまで詳細に教えてくれるならふらっと来た観光客も助かるだろう。自分は世界遺産センターの所要時間などを聞いた。
向こうは山の中だから、こっちほど風は強くないと思うと言われた。オフシーズンですよねと言うと、でも寒い方が石見銀山らしくて良いと。本当は雪が積もってるとなお素敵らしいけど。
歩きで全部回ろうと考えていたが、彼女のアドバイスでレンタサイクルを借りることに決めた。本当はゆっくり歩きたいけどやむを得ない。
乗客1人のバスに乗って石見銀山エリアまで進んだ。まずは世界遺産センターから。
駐車場もかなり空きがあって、中にも客はほとんどおらず、職員の方が数が多かった。
こういった施設の説明文は一語一句見逃さず読むタイプなのに、時間はあまりないからと飛ばし飛ばしで進んだら、最終的には結構時間を余してしまった。展示物が想像より少なかったというのもあるけど、もっとのんびり見たら良かった。
なんちゃって坑道の先にスクリーンがある展示の場所では、職員の女性が1人話しかけてきて、その場所に隠れていたスタッフ手作りのコウモリを見せてくれた。
このセンターの人たちもまた優しくて、バスの時刻等親切に教えてくれた。今日は人が少ないということももちろんあるだろうけど、もしかするとこの石見銀山は今まで行った場所で最も丁寧に人々が対応してくれた場所かもしれない。
来たときからこのピラミッド的な何かが気になっていたので登ってみたが、特に何もなかった。社会科見学や修学旅行で来た学生がお弁当を食べたりするのかもしれない。(その用途でも狭すぎる気がするが)
そこから見た景色。センターの前に停まっているのはパン屋の車。職員が交代で買いに来ていた。
時間がまだ少しあるので遊歩道を歩くことにした。ほぼ登山だった。
この先にある展望台まで登ると時間が不安なので東屋があるこの場所まで。
冬らしい冷たい風が強く吹いているけど、悪くない。
大森までのバスを待つ。
トイレのくせにちょっとかっこいい。
バスは5分ほどで、昔からの町並みが残る大森というエリアに到着。
石見銀山にはA,B,Cと3つのゾーンがあって、Aが代官所ゾーン、Bが武家町家ゾーン、Cが銀山ゾーン。AとBは近くにあるんだけど、Cだけ2kmほど離れているので、Bの大森からCの龍源寺間歩へ移動する為にレンタサイクルを借りることにした。
まずCに行って、帰ってきてからBからAに行き、Aのバス停から大田市に戻ると良いと観光センターのおばちゃんもレンタサイクル屋のおっちゃんも言っていたので、そうすることにした。
レンタサイクル屋はバス停のすぐ近くにあった。手続きをする際にカタカナで名前を記入と書かれてあるのに漢字で書き始めてしまって、書き直そうとしたらそのままでいいよと言われた。以前バイトしていた外国人がカタカナしか読めず、その用紙を大量に刷っちゃったから仕方なく今も使い続けているらしい。
なかなか気さくなおっちゃんで、自分の漢字もなかなか読んでもらえないんだけどね~ってな流れで、読めたら100万円、読めなかったら1000万円ってクイズを出してくれて、「槿原」と紙に書いてくれた。まあ、いや読めねえ…とギブアップし、1000万円払わされました。うん、正解はむくげはらさんでした。調べてみたら全国で30人ってことだからかなりレア名字だ。
電動自転車と普通の自転車があって、電動の方が値段は少し高いんだけど、ずっと坂らしいから電動にした。手袋持ってる?と聞かれたけど持っていなくて、軍手を貸してくれた。以前は新品を売っていたらしいけど現在は品切れとのこと。電動の操作方法を明るく説明してもらって、銀山ゾーンへとスタート。
電動自転車は初めて乗った。乗った人はわかるだろうけどもう衝撃的で、ぐいーん!!!っていくからもう笑うしかなかった。ほんとなにあれ。ぐいーん!!!!ぐいーん!!!!って。
自転車で進みながらの景色も楽しかった。本来はすべて歩くつもりだったが、ずっと登り坂だったので電動自転車を借りて正解だったと思う。
小学校と保育園が並んで建っている。運動場なんかも含めてグッとくる光景。HPを見たら全校生徒は11人となっていた。
進んで行く。左側に遊歩道はあるが、自転車は通れない。
自転車置き場に到着。先客が2人いる模様。ここからは歩いて近づく。
坑道への入り口が至る所に見受けられる。
受付の建物が左に見えている。撮ったのは冬季停止中の自販機だけど。
石見銀山の遺跡の中で唯一常時公開されている坑道。間歩というのは坑道のこと。410円を払って中へ。
屈んで進まないといけないくらい天井は低かった。でもこういう場所はワクワク感しかない。
吹き抜けているのか耳がごーっとなるような風が吹いているかと思えば、突然静かになったりと不思議だった。
外では冷たい風が吹いていただけに、坑道の中は生暖かく感じた。温度計は5度くらいに見えるけど年間を通して15度前後らしい。
坑道の中にも坑道がいくつもあった。長く先へと進んでいる道もあれば、すぐに掘り止めたような道など様々。
当時日本は世界の3分の1の銀を産出していて、そのほとんどがここ石見銀山からだった。手掘りの跡を実際に目にするとその鉱夫たちの姿が浮かんでくるよう。
こちらは排水坑。この付近は水滴がぽたぽたと落ち続けていて、覗き込んでいた自分の頭にも落ちてきた。
出て来る水をどう処理するかは掘り進めること以上に大変な問題だったらしい。
先に来ていた2人の存在も感じないまま273mを歩いた。繁忙期では絶対にできない体験。
おしまい。
出口付近にも坑道。中と繋がっていたんだろうか。
出口の先にも建物があってここにもまたスタッフがいた。ピーク時は大変だろうけど、こういう仕事いいなーと思う。世界遺産に関わってもいるわけだし。
猿にご注意。
河童にもご注意。
自転車置き場へ戻る道にあった佐毘売山神社。
鉱山の守り神を祀っている。
修復工事中だったがお参りをした。
それから自転車で戻った。帰りは下り道なので電動は切って、一気に下って楽しかった。一匹の野良猫、だんご屋等が素敵だった。
自転車を返却してからはバスから見て気になっていた五百羅漢へ。受付の奥さんが出て来るまで少し時間が掛かったが、優しそうな人という印象を受けた。
道路を挟んで本堂の向かい側に五百羅漢があるお寺の名前は羅漢寺。真言宗高野山派のお寺で縁を感じる。
本堂の中にあった傘おみくじが気になったので引いてみた。結果は秘密。
お経がずっと流れていたけどそれはテープからの音声で、五百羅漢がある場所へ近づくとピタッと止まり、音声案内が流れ始めたのでセンサーでもあったのかな。
首なし地蔵の上に小銭が置かれていた。いくつか首なしがあったがそうなった理由はわからない。ただ壊れただけかもしれない。
ちょうどお昼時ということで、観光センターの女性にはそば、カレー、パン屋を紹介されていた。そば屋に行くことにした。
鴨そばを注文。美味しかったし、何より温まれて良かった。外は本当に寒かったから。
それでは町並みを歩くことに。ちょっとだけ遠回りしてしまったけど散策開始。
まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような風景。家には普通に暮らしている人がいるので、たまに水色の可愛い軽自動車が停まっていたりするのは面白かった。
家の前に花やこういった物を飾ってある家もあった。観光地のど真ん中で暮らすというのはただでさえ大変だろうに、こういう姿勢にはありがたさしかない。
ほとんど歩いている観光客もおらず、若い女の子2人組とカップルがいたくらい。でも良い感じのカフェなんかもあって素敵だった。
美味しいパン屋さんと教えられていたのはここだ。店へ入ると必要以上に買ってしまった。バッグの中にはパンが他にもあるのに。
味は正直自分の好みではなかったけど、ハード系のパンが好きな人は気にいると思う。見た目が可愛い商品もちらほらあった。
お菓子屋さんでお菓子も買った。町並み散策はおしまい。
パンを買ったのでどこかで食べられないかなーと探したが、休憩所は鍵がかかっていて閉まっていた。残念なオフシーズン。
自分が乗ろうとしていたバスより一本前のバスに、それなりに急げば乗れたっぽいけど、まあ行ってしまったので次を待つことに。約1時間空くのでまたお散歩。
大森代官所跡の資料館へ入ることにした。
ここの展示物は世界遺産センターとほぼ変わらなかった。でも知らないことを知ることもできたから良し。
話は逸れるけど、この石見銀山はWAONでの支払いが多くの場所でできるようで、少しハイテクさを感じた。持ってないから使ってはいないけど。
次は城上神社へ。シルバーラッシュで人が沢山集まったことでお寺や神社がいくつも作られたのは展示で知った。その中でも城上神社は今も地元の人々に敬われているとのことで気になっていた。
御祭神は大物主命。出雲が近いことも関係しているのだろうか。
もう少し時間があるので勝源寺にもお参りをした。お寺までの道に会社があって、その作業場には若者が何人もいたので純粋に気になった。どこに住んでいるんだろうだとか。
このお寺は奉行や代官の菩提寺で、お墓もあった。
一般人のお墓はこの地域では単独でポツンと存在するものが多いと感じていたけど、このお寺近くではさすがに集まっていた。
あまり人が来ている感じはしなかったから随分前の案内かもしれない。
バスを待つ間、バス停で少しパンを食べた。焼きたてはもっと美味しいんだろうなと思いながら。
サザエやん。
バス停の反対側にあった公園。寂びを感じる。
バスの中はまた1人だった。
石見銀山は良い観光地だと思う。出雲大社には行ってもなかなかこちら側までは来てくれないというのを何かで読んだことがあるけど、是非セットでこっちも来てあげて…!という気持ちになった。観光に従事する人はみんな親切だし、観光地としてもコンパクトで回りやすい。
バスが大田市駅に着くと、もう一度山陰本線に乗り江津駅へと向かった。
強風の影響で電車が53分遅れとかで不安だったけど、駅に着くとすぐに来たので良かった。次のに乗ることになっていたらと考えると更に不安になったけど、でもまあどちらにしても江津駅で待たないといけないことには変わりない。
もしかしたら16時台の三江線に乗れたのかもと考えた瞬間に、ああ16時台のは運休してるんだと思い出した。どちらにしろ19時台に乗るしかない運命だ。それを待っている間に空は暗くなるだろうけど、ここまで来たんだから乗るしかない。もはや執念。
江津駅に着いたが三江線の終電まで2時間待ち。駅の待合室も寒いので少し離れた場所にあるゆめタウンへ向かった。
特にお腹が減ってたわけではないけど、なんだかナンが食べたい気分だったのでインド料理屋の店の前で眺めていたら、インド人っぽいおっちゃん店員に上手く誘導された。
食べ放題を勧められていたがまあ絶対後悔するだろうから、チキンカレーとチーズナンを注文した。それでも苦しいくらい、5年はもう何も食べなくていいってくらいお腹が膨れた。
厨房では向こうの言葉で会話が交わされていて、音楽はインドのColdplayやTravisというような音楽が流れていた。海外の日本料理店で日本語ロックが流れていたら、現地の人は「へえ、日本人もこんなことしてるんだ」と思うのかななんて思ったり。
ついに、ついに、三江線だと思いながら駅へ戻った。2ヶ月後にはない電車に今から乗るんだと。
でも待合室で待っていると、いきなり日本海テレビが来て、到着する様子を撮らせてくださいとのことで、映りたくないなーと嫌な気分に。後ろにいた会社員風のおっちゃんたちも、電車が遅れてイライラしてるのに来るんじゃねーよと不満を吐いていた。(三江線を撮っていたから、遅れている出雲方面への電車は関係なかったんだけど)
そろそろ電車が来るから改札を抜けようとしたとこでハプニングというか、ドジをぶちかました。
券売機で三次駅までの1940円の値段を指定しても松江駅しか出てこなくて、でもまあ値段一緒なら大丈夫かと考えていたら駅員に止められた。最初山陰本線は1番ホームと言われたから、三江線に乗りますと伝えたら、三次駅までは出てないよと。
もちろん途中からは代行タクシーなのは知っているから、石見川本からはタクシーで行くと伝えると、いや、浜原駅までしかタクシーは出てないと。
一瞬でパニック状態になるというか、そのトラブルに、どうしよう…と本気で焦った。駅員はどうする?どちらにしろ返金するけど、どうする?と言うので、とりあえずお金を返してもらって、ちょっと考え直しますと一度ベンチに座って、浜原周辺の宿情報を調べることにした。
三江線の電車が来てしまったけど、自分は焦っているだけ。
てっきり代行タクシーは三次と江津の間を走っているとばかし思っていたけど、本来電車が途中までしか動かない便では、タクシーもその区間で運行しているということを理解していなかった。
結局途中に宿なんて一つもないから(カヌーの里おおちというアウトドア施設にはトレーラーハウスがあったが、当日のこの時間から予約できるような感じではなかった)、電車が行ってしまってからもうこの辺りのビジネスホテルに泊まることにした。
三次に着けば、そこからは芸備線で深夜には広島に着いてる予定だったけど、まあこの現状。
駅近くにあるスーパーホテルに予約はしていないが泊まれないかと飛び込んだ。おめめくりんくりんの可愛らしいフロントの女性が対応してくれて、泊まれるとのことで一安心。
その彼女は6時半からバイキングがあるけど、明日早いですよね…?とすべてを察してくれていた気がする。5時半からはドリンクバーがあるんですけどそれも…ですよね…?と。
いつもならビジネスホテルに1人で入るときって、テンションバカみたいに上がるのに、この時は焦りの余韻で、まだそわそわしていて落ち着かなかった。でもこういったハプニングもまた旅の醍醐味。これぞ旅、ということで別に落ち込んでいるわけではなかった。今日の宿を取っていなかったのは賢明だった。
スーパーホテルは初めてですか?という質問に初めてと答えたけど、そういえば以前使ったことあるわと思い出した。
でもスリッパを部屋の外でも使っていいのかは悩んだ。いかにも部屋専用かのような配置で惑わされた。
石見銀山で買ったパン。ちゅーちゅーみたいな名前だったはず。
広島ではネカフェにでも泊まろうと考えていたが、まあ温泉にも入れて気持ちよかったし、フロントの子可愛かったから良しとしよう()
でもベッドの横に長方形の鏡があるのはどうしたものか。カップルのお楽しみでの有効活用しか思い浮かばない。
なんだか疲れていたし、ずっと眠たかったけど明日も早い。でも早く寝ようと思いつつもだらだらと時間は過ぎてしまった。別に誰に責められるわけではないけど。
1月24日。
もう少し寝ていたかったが朝が来てしまった。
5時半頃に部屋があった6階から1階へ下りる際、エレベーターが到着するとちょうど同じフロアから男性1人が出てきて一緒になった。
朝食分の値段を損している気はするけど、ドリンクバーの時間には間に合った。冷たいものもいいけど、やはり温かいココアなんかが最高。朝の準備をしていた厨房とフロントのおばちゃんと挨拶をしてからホテルを出た。
旅っていうのは日常から離れている時間で、こんな数日でも、旅をしている間は何にも縛られずに過ごせるから嬉しい。自由で、気にしないでいいことを気にしていない。
大寒波が来ているという現実が外を歩いていると嫌でも感じられた。笑うほど寒かった。
三江線の車両は既に駅にいて、乗り込むと例のオレンジのおっちゃんがいた。やっぱり電車に乗りたかったんだろうけどどんな形で来たのだろう。
電車が出発した際は男性が約10人ほどいた。すべての人が三江線に乗るためという目的ではなさそう。
江津駅から石見川本駅まで。始発の時刻は5時53分発、7時2分着。
写真からは殺伐とした雰囲気を感じますが、そ、そんなことはありませry
まだ夜が明けていないから景色は当然そんなには見えなかった。でも昨日タクシーから見た光景で大体イメージはできる。どんな道を通っているか、どんな場所に駅があるか、そこから何が見えるのか。
自分にとって三江線は友人たちとの通学で使った電車でもないし、初デートで使ったものでもない。特に思い入れがあるわけではないけど、でも失われゆくものへの寂寥感のような感情はある。
上野からの寝台列車で車窓と若い女性が話していたことを思い出した。自分が通ろうとしているのに2人が話しているから道が塞がっていて困惑していたけど、でも話していた内容はこの時の自分の感情に近いものがあった。
乗客は自分と同じように車窓を見る人とスマホを触る人の2パターンが多かったが、その中でも温かい飲み物を飲みながら朝食のパンを食べ始めた人もいるし、先頭に行って電車が進む線路の先を見ていた人もいたし、ニューオレンジこと例のおっちゃんではないオレンジの男性は横になって寝ていた。
川戸駅では1人男性が降りて、女子高生が乗り込んで来た。よく見ると住宅が沢山あったけど、彼女は大学に進学となると確実に町を出るんだろうなと思った。
自分はというと、眠かった。
たまに白と青の2色の街灯が目に入り、残雪やその瞬間に少し降っている雪は見えていたが、正直ちゃんと車窓を見たかった。
でもあと3駅ほどの6時40分頃になると空が少し明るくなってきて、かなり見えるようになった。夜明けの三江線の車窓だった。
自分の反対側に女子高生は座っていたので、写真を撮る際に何を撮っているのかかなり見られていた。自分にとっては新鮮で名残惜しい風景を撮っていた。(外が暗くて中は明るいのでこんな風に手は焼いたけど)
寝ていたオレンジの男性は因原駅で降りた。電車が駅に着く前にしっかりと着込んでいたのできっと仕事だろう。運転手には定期を見せていたし。
終点の石見川本駅に着く頃には降る雪がとても強くなっていた。ここで電車とはお別れ。さようなら三江線。
雪が髪の毛や服に一瞬で積もるくらい降っていた。肝心のタクシーは雪の影響で遅れているとのこと。ここから乗り継ぐ人は5人で、揃って待っていたけど、皆揃って寒そうにしていた。
切符は石見川本駅まで購入していて、持っていた切符を窓口の駅員に渡し、広島駅までの切符を新たに購入しようとしたら、駅員はしばらく悩んだあとで、広島の方で精算してと言った。
電車の見送りも済ませた。
三江線が無くなるということはこの駅も廃駅になるということ。奥に見えるストーブはこんなにも味わい深いのに。
駅員のおっちゃんにやっぱり切符作る?と聞かれた。いや、作れるんかいと思ったが、「でもちょうどタクシー来たみたいなんで」と断った。
しかしここでハプニング発生。乗り込もうとしてもドアが開かない。
どうやら寒さで凍ってしまったみたい。駅員がやかんのお湯をかけたり、運転手が必死で開けようとするも駄目。自分も開けようとしてみたけどびくともしなかった。
なんと後ろも凍っているという悲劇。
待っていた乗客の1人が「一巡して面白くなってきました」と呟いたので、「これはこれでありですね(笑)乗れないのは困るけど」と返した。周りにいた人たちも笑っていた。
もう助手席から乗るしかないかとなったときに、車内で奮闘していた運転手が開いた!と叫んだ。一番前にいた自分がドアを開けてようやくみんなで乗り込めた。良かった。
うん、面白さと楽しさしかない時間だった。こんな笑えるハプニング普通じゃ経験できない。
待っている間に雪は更に降り積もっていた。運転も大変そう。
行き先はみな三次駅経由の広島方面行き。
こんな雪の日も確認しに行く運転手さんご苦労様です。普段のタクシーの運転では必要ない作業でもあるし。
なぜかはわからないけどこの乙原駅が一番可愛い。なぜかはわからない。
そして待っている間に感じたことは、風向き次第で雪が自分に向かって降っているような瞬間があって、それが素敵だったということ。
竹駅前で女子高生が傘を差して待っていたり(逆向きで乗りはしなかった)、隣に座っていた男性客が時刻表を見ていたり、プロスピAをやっていたり、窓に付いた雪が水滴となり窓の外の写真を撮りづらくなったり。
一面雪の江の川沿い。
また浜原駅で乗り継ぎ。1人逆方向のタクシーを待っている人がいた。
停まっている車両。
車からの視界も悪くなるほどの大雪だった。場所にとっては川の対岸はほとんど見えなかったし、黒猫もとても寒そうだった。
目にするとは想像していなかった光景。もはや美しい。
いくつも絵になる箇所がある。
川には障害物などほとんど見当たらないからカヌーの里や川の駅があるのも納得できる。きっと最高だろう。今の季節は置いておいて。
この場所ではなくても、雪が積もっている地域の電車に乗りたくなった。
そして宇津井駅。上が切れてはいるけど、美しい写真が撮れたと思う。
さよなら宇都井駅。もしまた来る機会があるとして、どんな姿になっているだろう。
一瞬こちらを窺った陽の光。
式敷駅で乗ってきたおじいさんはずっと背中を椅子にこすり続けていた。別の駅で中年男性が乗ってきて、雪次第でどこまで乗るかはわからないと言っていたけど、結局最後まで乗っていた。
三次駅に近づくと雪も収まってきた。
この快速のみよしライナーに多分みんな乗るつもりだったけど、もう時刻は10時40分。電車は遅れているらしいが、タクシーも遅れているので厳しそう。というか完全に間に合わない。
と思っていたら、まさかの展開で、三次駅でみよしライナーは停まっていた。
無線で連絡を取り合っていた職員が誘導してくれて、自分たちが乗り込むとすぐに発車したから、きっと待ってくれていたんだと思う。本当にありがたい話。
朝の出発のときから飲み物買い忘れちゃってて、喉乾いたなーと思い続けていて、まあここでも買いそびれたけど、1時間半後には広島駅に着いているし問題ない。
三江線での電車やタクシー車内での会話はほとんどなく、無言の時間がずっと流れていた。
どこからですか?とか、三江線は何回目ですか?という風に、話しかければきっとみんな話すんだろうけど(実際になんか話したそうな人もいたし)、歩き旅やゲストハウスと違ってどのくらいの距離感で接すればいいのかよくわからない。別に気にする必要なんてないんだろうけど。
そして芸備線。
山の陰になるような場所、寒い地域はやはり雪が残っている。でも降っていてもまったく積もってはいない所もあった。
広島駅に着いてからは、お好み焼き屋の行列を縫うように進んで、尾道ラーメンを食べた。
麻婆丼のセットにしたけど、正直半炒飯にしとけば良かったと思った。まずくはなかったけど期待していた味とは違ったし、そのわりにまあまあ辛かったし。
美味しいからオススメしとこう。最後の写真がこれというのがシュールだけど。
いろいろとハプニングはあったけど貴重で楽しい旅だったと思う。
去りゆく三江線にも乗れたは乗れたし、世界遺産の石見銀山にも行けたし。うん。
おしまい。