サンティアゴ巡礼 -フランス人の道- Day 5

4月16日。
目が覚めてiPhoneを取りに行ったらまだ3時台で、それから数回寝ては起きてを繰り返した。雨が降ってる音がした。早く曇りになってくれ。泥は間違いなく残るだろうけど。
6時に島村さんのアラームのバイブが震え始めたのに、起きないぞ…と心配になったが、3,4分後に起きた。
昨晩メッセージアプリのピコピコ鳴る通知音を消していなかった夫婦の妻が、何かを落としてそれが転がる音がとても大きくて、皆に朝だと伝える目覚ましのようだった。

人前で下着姿になることに抵抗がなくなってきた。帰国したら夜道や電車の中なんかで実践したいと思う。
洗濯物は完全には乾いていなかった。トレッキングソックスなんてほとんど濡れたままだ。
外国人女性の中には人前で気にせず着替える人も少なくないが、隣のハンガリー女子はオリエンタルな柄のミニバッグを持ってバスルームに着替えに行った。そして戻ってきたときにめちゃくちゃ良い匂いがして、自分も他人も汗臭くなりがちな巡礼とは思えない瞬間だった。誰かがRainingと言ったときに彼女と顔を合わせて、うーん…というような表情の交換をした。

朝食は質素なものが多いんだな。ここはパンが固くて、切ろうとしたら粉みたいなものが大量に落ちるし、食べるのに苦労した。

島村さんは早く寝たから1時くらいに一度起きたらしい。彼の方が早く準備を終えていたので、僕はもうちょっと時間が掛かると思うんで…と見送った。

午後は多分降らないかな。仮に降ったとしても大雨ではなさそうだ。

今は降ってるけど。

熊野本宮大社で買ったお守りを付けた。これで日本人とわかるのではないか。貝殻&熊野のダブル世界遺産スタイルでもある。どやっ。

もちろん男女ともに適度に明るくて、感じの良い人の方が絡みやすい。このハンガリー女子はそんなに明るい雰囲気ではないが、でもはっちゃけてないというだけで、シャイなだけなんだと思う。彼女が出発する際には、Buen camino, Byeと笑顔で言ってくれたし。
そのあとに自分も準備体操をして、これから使えなくなるWi-Fiを用いてメッセージのやり取りをしてから、残ってる数人に挨拶をしてから出発した。
 
出発時で電池残量がすでに89%になっていてショックだったが、でも雨はほぼ降っていない。すぐに知り合いたちと再会することになるだろう。

朝、丘の上から町を見下ろすってのも悪くない。

橋の近くのベンチに座って靴紐を結び直そうとしていたら、サンタおじさんたちの後ろを歩いている人の姿を見て、あの姿は…と思っていたら、やっぱりロザンカだった。
昨日午後6時頃にこの町の教会付近で、Sonokoに5分だけ会ったらしい(宿泊したのは違うアルベルゲ)。それとブルガリアカップルに会って、先程自分に会ったということを聞いたらしい。てっきり前にいるものと考えていたが、後ろにいたんだな。また会えて嬉しいよと伝えたら、ロザンカも嬉しそうだったので良かった。


自分が靴を調整し直している間に、隣のベンチでロザンカは暑いからと一枚脱いでいた。自分より先に終えたので彼女の方が早く再スタート。今日は荷物をエステーリャという町まで送っているので目的地もそこらしい。

体の調子は良い。疲労は溜まっていくだろうが、このままであってくれたらいいな。
軽快な足取りで進む昨晩ディナーで一緒だったドイツ人のおっちゃんに追い抜かれるときに、Rain stopped! Wonderful!というシンプルだが最高に爽やかな気分になれるやり取り。

ロザンカに追いついて、かなり危険だねーと濁流が流れる川を指して言った。この川を見ていたら黒い物体が動くのが見えて、ワニか!?と驚いたが、ただ黒いゴミが流れているだけだった。こんなとこにいるはずもないのに〜。

歩行のペースはわりとゆっくりめだが、でもなんだか良い感じ。荷物の状態もそう。

ロザンカがたまに野草などを見るために立ち止まるから、昨日は春の花が沢山見れて良かったねと言ったら、きっと今日も見れるはずと返ってきた。
昨日泊まったアルベルゲにスタンプがなかったらしい。 教会も探したけどなかったとのこと。それはさぞ残念な気持ちだろう。

ロザンカはこの紫っぽい花を、これはブルガリアでも咲いてるわと少し摘んだ。(花を摘んだりするのは歓迎されることではなさそうだが…)

よく電話をする人なのだろう、このときも電話をしていた。昨日靴に大きなトラブルがあったらしく、多分誰かにそのことについての相談をしていた。ヨーロッパとかこの近くに知り合いがいたら協力も可能だな。

現在住んでいる町では緑は僅かしか見れないが、彼女が生まれた町のモンタナと、今歩きながら見ている風景はかなり似ているらしい。それはノスタルジックだねと言うしかない。

話すこともなくなったし、なんていうか、いつまでロザンカと一緒にいようかと考えた。行き先は一緒だけど。

暑くなったので、坂の前で荷物を一旦下ろし、着ていたポンチョとウルトラライトダウン(長いのでこれからULDに略す)を脱いでいたら、スペイン語話者のおっちゃんが来て、水を取ってくれないかと頼まれた。バックパックのサイドポケットに入れている水を取り出して渡し、彼が飲み終えると戻してあげた。
この坂がなかなかキツくて、さっきロザンカに、昨日と比べれば今日はフラットだったと思うと伝えたばっかりだったので、なんかごめん…と申し訳なくなった(先に行ったのですぐに訂正もできなかった)。後で標高差を確認しよう。

以前の巡礼旅でどの程度メモしていたかをはっきりとは思い出せないが、この旅のメモが多い気がするのは会話も多いからだ。会話の内容は心情と違って忘れるのが早いので、書き留めておかないといけない。

昨日のアルベルゲの受付でカードの暗証番号を入力する際に、思いきり他人に見られるようなオープン過ぎる状態だったので、ああいうのはもっと用心しないとなと思った。
それに前後して、皆ほとんど同じようなペースで進んでいることから、会う人はそんなに変わらないのかなということも考えた。新しい出会いはもちろんほしいが、そのためにはっきりとペースを変えるというのもあれだし、なんだか複雑。例えば日本人が近く(数日前や後)にいても、ペースが変わらなければ出会うことはないのだろうか。
そのこちゃんとの会話も思い出した。彼女が自分らしさや周囲との付き合い方について話しているときに、彼女が自分自身のことをはみ出しもののように語っていたのだが、でもその手の悩みは――彼女が特別でありたいと願っているなら申し訳ないが――自分らしさに悩む若者らしい、言ってしまえば、よくある悩みだと思った。
意識高い系の女性にも見えなかったけど、でも本気で悩んでいるならと、ordinarily peopleじゃなくても別にいいんじゃない?とこちらは言ったけど、自分の言葉は彼女の中でどう響いただろう。どちらにしろ彼女自身が決めることなので、無反響でも構わないんだけど。

新たな町に着く頃、右足小指に違和感を感じた。内反小趾とまではいかないが、ここ軽く曲がってるんだよなあ。
ちょっとだけ南国を感じる。そしてこの手のアパートっぽい建物はこちらでは珍しい気がする。

まだスタンプを探しているのか、前を歩いていたロザンカは教会の方へ行った。写真奥の車は即席カフェ。

迷路みたいに道が入り組む町ではあったが、手を挙げれば笑顔でニコっと微笑んでくれる女性もいて安心安心。

犬のフンだらけで残念だったが、でも日本の巡礼路だってラブホ街の近くを通ったりもするし、まあどちらもみっともないというか、気品には欠けるよな。

でんでんむしむし。(この日は巨大で極太で黒いナメクジも撮ったのだが、さすがにアウトな気がするから貼らない)

9時半前に約5km。微妙だ。

死が寄りかかる場所・死を預ける場所というのは、どこの国・人でも必要で、これから社会が変化していき、より形式的になったとしても、似たよう存在は残り続けるだろうなと、このお墓の横を通る際に思った。

Estellaまでは16.1kmか。まだ近くはないが、そんなに遠くもない。多分1日の歩行距離が短すぎても物足りないからちょうどいいだろう。快適なベッドと飲み物とベッド近くのコンセントとWi-Fiがあればいくらでも過ごせるけど。

4匹ほどの犬を散歩している地元の人が来て、その中の白い犬がやたらと前についていって離れないから、飼い主が名前を呼び続けていた。

灰色の子は自分が気に入ったようで何度もクンクンされた。ピットブルかな。子犬だから可愛いけど、成犬になったらあれなやつ。

いやらしい意味ではなく、日本の巡礼路も女の人が増えたら面白いのになと思った。若い女の子も歩くようになれば、様々な面でより爽やさや利便性が増すだろうし。
お寺や神社ならインスタ映えなんかも狙える気がする。四国の行政とかがインフルエンサー等に投資してみてはどうだろうと考えたが、でもそこから増える層だと、マナー違反も増えるか…。やっぱいいか…。と一人会議終了。


このヨーロッパ巡礼でも、近づくと鐘が聞こえるということがある。45分にいつも鳴るので、そのタイミングで町に近づいていれば、だが。

またまた細い路地が続いていたので(外敵から攻めづらいようにこんな作りなのだろうか)、カミーノマークを目印に歩いていく。

この門(と左にカフェ)がある場所で、マリア像の前にいた2人と会った。もう1人の若い方(といっても30代後半か40代前半)も明るく接してくれるようになった。

建物の下をくぐり抜けるようなこの場所もカミーノの道なのです。

10時の鐘も鳴った。

前にいた夫婦から、こっちの道かな?と聞かれた。多分そっちと教えるカミーノ1回目マン。(赤い格好だがロザンカではない)

マイルストーンを入れた写真をいつものように撮っていると、近くにいた紺色の服を着た若い男性に、このサインをすべて撮ってるの?と聞かれたので、いや、全部じゃないけど、でも沢山の写真を撮ってるよ、ブログのためにねと返すと、なるほどねって感じの笑顔で頷いていた。See you!


高架橋の上は風が強かった。

時刻は10時15分。涼しくて最高だと感じていた。道も悪くない。どこまでも歩いていけそうな気分だった。

先程の紺の男性と一緒だった白いおヒゲのおじさんは左の車道を歩いていたのであっさりと抜かれた。右の道はちと歩きづらい。

この鐘がある手作りレストエリアに、スウェーデンの奥さんがいた。おまけにTake On Meの頃のA-haのボーカルみたいな髪型のおにいちゃんもいたけど。


他にも左側の歩きやすい道を歩く人はいたので、誘惑に負けてここで自分も道を変えた。ふとへんろ道について思い出し、そして、カミーノウェイという言葉について考えた。へんろ道道みたいになってるよな多分と。

やっぱ歩くのは1人がいいわと思った。宿でも1人は寂しいかもしれないが、自分のペースで歩けるのは正直快適だ。1人の巡礼者も多いし。

転んでしまったのかスウェーデンの奥さんのお尻やバックパックの下の方が汚れていた。水の流れがあるところで何かを洗っていたので、大丈夫?と聞いたら、汚れちゃったのよと。その先には旦那さんがいた。彼の方は普通に元気そうだった。

親子3人の自転車カミーノが自分を追い越していった。1番大きな荷物を持っていたお父さんは泥が車輪で跳ねて、背中が汚れまくっていた。海外は日本に比べると自由だから、学校とかも休んでるんだろうな。昨日の少年たちもきっとそうだろう。

うん、疲れてきた。肩が重い。

東アジア系の60代くらいの夫婦を追い抜いた。顔で国がわからないときは近づいて会話を聞くけど、当然日本人ではなく韓国人のことがほとんど。

橋の上でかっこよく休んでいたのは、昨日隣だったハンガリー女子。最近の20代らしく自撮りもしていた。
調子を尋ねると、めちゃくちゃ疲れたと言っていた。自分は良い感じだよと返すと、Keep it up!(その調子!)と。



スペイン人が増えたと感じる。自宅からスタート勢がいるなら、これからもっと増えそうだ。

そして町に到着。ここがロルカか。


このベンチでしばし休憩することにした。もちろんさっき会った人たちが自分を抜いていく。
ハンガリー女子が笑顔でバイバイしてくれて可愛いかった。ドイツ人のおっちゃんはBreak?って。イングランド男子は今日は始めて会ったが、 レイナの一つ前の町に泊まっていたらしい。また会えることを願ってるよと伝えた。

昨日自転車の男性から貰ったチョコを食べた。狂気的なほどにクラクションを鳴らす車がどこかへ行ってからまた戻ってきて広場に駐車した。自分には気づかなかったが、ベネさんも水を取ってと頼んだおっちゃんとスペイン語で話しながら通り過ぎていった。

貝殻とお守りを見ていると、デザイン面で日本が西洋に勝つことはそう多くはないかもしれないが、熊野に限って言えば大勝利だなと思った。

休憩時間が長かったのでいろんな人に抜かれたし、充電するのは忘れていたけど、水は補給できたし、良い休憩になったかな。レインカバーも外した。
でもいつもの小指裏は痛いな。自分も他の人と同じように痛みありだ。だが大した問題ではない。これくらい誰でも抱えている痛みだ。(昨日1番痛かったのはさかむけだったが、ポケットのiPhoneを取り出すという作業を繰り返すという巡礼時あるある)

良かった10kmを超えていて。12kmだ。

珍しく靴紐をキツくしすぎていたので、再出発後すぐに緩めた。先程の広場の先にはカフェがあって、ドイツ人おっちゃんやスウェーデン夫婦などが休んでいた。


止まって撮ったら吠えるかなと予想していたのに、吠えなかったジャーマンシェパード。

あと7.5km。頑張ろう。

怪しげな杖(先端は髑髏になっていたかな…)を持ち、ピアスをつけて、絶対的にイカツイ、先程煙草を吸っていた男が前を歩いていた。
そして彼に近づいたとき、とてつもない泥道を前にしていて、This is terrible…を訛った英語で呟いていた。


バックパックを背負っていて巡礼者っぽいのに、逆向きに歩いてる人たちがちらほらいる。カミーノじゃない何かがあるのだろうか。家に帰るまでが遠足的なノリで、現代もなおサンティアゴから歩いて戻っているとしたら称賛すべきことだ。

あの町はエステーリャか…?(違いました)

ふと後ろを振り返ると、ピアスマンは杖を横向きにして両腕と肩を乗せる感じで歩いていた。頭はスキンヘッドだし、雰囲気が恐ろしすぎる。

足が痛そうなおっちゃんの先に、花の匂いを嗅いでいた韓国人の母娘がいた。アニョハセヨ~、ブエンカミーノ~。


ハンガリー女子が老夫婦と歩いてる姿が見えた。

教会前にいた東アジア人系男性は、自分にも老夫婦たちにも挨拶せず、さっーと去っていった。こういう場合ほぼ100%韓国人なんだけど、アジア人のイメージを下げるのは本当にやめてほしい。韓国や日本でやる分はいいけど、ここはヨーロッパなんだから。
あまり挨拶をする文化がないのだろうか。韓国人の中には突然走り出したりと突拍子もないことをする人もいるし、理解できない。


車に道を譲られて、2.4km。最後の数kmはいつも遅くなるが、まだ午後1時にもなっていない。良い感じだ。

もう到着も近いはずなのでペースは無理に上げず、3人の後ろを歩いていく。写真を撮りながら。


この橋の上でおしっこしたい…と思いつつ、ポカリか炭酸が飲みたいとも思った。500mlペッドボトルが欲しいな。そしたらアミノ酸のドリンクも作りやすい。

少し通り過ぎたあとに、やっぱり撮ろう…!と戻って撮ったのはハート。

とミッキーと言うには苦しい水溜り。

建物が見えてきた。多分この町だろう。

濁った水を飲んでいた白馬。

島村さん結局見ないままだなーなんて思っていたら、止まっている前の3人に追いついた。

ハンガリー女子は夫婦に写真を撮られていた。最初は前を向いていたが、振り返った方がいい?と聞いて、Yeeesと奥さんに言われたので、振り返ってはにかんでいた。
写り込んで邪魔するのもあれだしとその光景を止まって笑いながら見ていたら彼女から、今日はここでゴール?と質問された。ええ、同じです。

いちばん手前にあるアルベルゲを覗いたら島村さんがいて面白かった。後ろ姿的にそんな気はするなーと思っていたけどやっぱりそうだったか。

あの韓国グループもいた。アニョハセヨ!
これだけ団体で移動しているからほとんど自分のグループ内でしか絡んでなくて、韓国語でしか話す機会がない、外国人とは接することが少ない状況で、自分で言うのもあれだけど、多分なんか可愛いんだと思う。
(パンプローナで辛ラーメン食べる?と聞いてくれた女性を含む)買い出しに行っていた2人も、すれ違うときめっちゃ笑顔だったし。

韓国人たちにアニョハセヨと挨拶をしたのを聞いていたのか、宿のおっちゃんが自分に対してもアニョハセヨ〜と挨拶してきたので、ノー!と言うと、すぐにハポン?と聞かれ、「ハポン!」「コニチワ〜」 「コニチワ〜」
さっきの3人も遅れて来たけど、しかし前の韓国グループでいっぱいになったようで、ハンガリー女子にここはもうフルらしいよと伝えた。

泊まれないのなら他に行くしかない。しかし宿の受付の女性から勧められたのは900mも先のアルベルゲ。到着したと思ったのにまだ1km歩くのか…。

島村さんと一緒に移動することに。なんだか昨日と似た状況。

でもエステーリャの教会はかっこよかった。



エステーリャという町の名前はカスティーリャ語(スペイン語のこと)で「星」を意味する。11世紀後半に、流れ星に導かれた羊飼いが聖マリア像を発見したのが由来らしい。(スペインでは羊飼いがよく星に導かれてるな)

おっと。


同じアルベルゲを勧められた3人も後ろから来た。(写真奥はSUZUKI)

スマホの地図アプリを見ていたハンガリー女子に、ここを右だよね?と確かめたんだけど、奥さんがあの白いのが目印よ!と言うから、その通りに進んだら教会に併設するようなアルベルゲに着いた。

入り口付近で、ガイドしてくれてありがとうとハンガリー女子に言ったら、でもここ勧められたアルベルゲじゃないわと。(写真は後で撮ったもの)


受付にはスペイン語しか喋れない中年男性しかいなかったので、英語が喋れる人を呼ぶ間、手続きを始めるまで少し時間が掛かった。老夫婦からスタート。
腰掛けててと宿の人が言うからハンガリー女子がソファに座った。隣いい?と聞いて、もちろんとのことだったので並んで座って、泥がついた靴を見せ合うというハッピータイム。

気になっていたなんでカミーノを歩こうと決心したのかという質問をした。すると、とても複雑で難しい質問だわ…と置いてから、今大学が休みで、何かしたいと思って来たと。あなたは?と逆に聞かれると、例のごとく、日本にもこういうのがあんだよと説明。
サンティアゴで終える?と質問したら、そう願ってると返ってきた。そうだよね、無事にゴールできるかどうかはまだわからないしね。

受付はかなり聞き取りづらい英語を喋る、後ろ髪が長い系の気の強そうな若い男だった。支払いはカードも使えるけど、1€手数料が掛かるとのことだったので現金支払い。

もしかすると教会の中のような場所に泊まるのかもと予想していたがそうではなかった。定義が難しいが、宿坊に近い感じでもないし、いたって普通のアルベルゲだ。

これも後で撮った写真なので部屋に入った際と状況は違う。島村さんと自分が一番最初だったので他の人の荷物がなかったというだけだが。

コンセントは2つだけあって、その片方に最も近い右手前のベッドを確保できたし、シャワーは暖かくて嬉しかった。
シャワーを終えて部屋に戻ると30代と40代くらいのフランス人女性が2人いた。どこかで見たことある気がするが、話すのは初めてだ。そのうちの若くてまあまあ綺麗な方に、(自分のプラグはUSBの分配があるものなので)刺してない方を使っていい?と聞かれて、もちろんOKなので使わせるという流れになった。活躍してるわ。

洗濯物を干す場所がわからなかったが、島村さんに教えてもらって向かった。でも洗濯バサミを忘れていたので部屋に取りに戻ろうとしていたら、あのマリア像前のオーストリア女性のあまり絡んでない方と会った。そのときの彼女がかなり嬉しそうな笑顔だったのでびっくりして、思わず会えて嬉しいよと握手した。そのあとディナーの場所まで一緒に行くことになったので、洗濯物はここで干せるよーと教えた。
単に何度か会って親近感が湧いてきたのか、アジアンにはうんざりしてたけどおまえは違うなとわかった感じだろうか。わからない。とりあえずクール系の美人がデレてくれて満足です()

一枚では写せないサイズの庭。敷地面積の広いアルベルゲだった。

左がディナーのメニューで、右が朝食のメニュー。

ここが食事会場みたい。


部屋に戻ってベッドの上で寝転がっていると、足をくじいたというフランス人のおばちゃんが後ろ髪マンと入って来て、男が下のベッドが必要だから誰か移動してくれと言った。予期せぬ出来事に戸惑いつつも、確実にまだ何部屋も空いてるはずだから、他の部屋はもう下のベッドはないの?と男に聞いたが、頑なにNoとしか言わなかった。
男は絶対に嘘をついてるけど、変わってあげた方がいいだろうか。でももう荷物も広げてるし、面倒だな…うーん…と悩んでいたら、違う部屋に行くとすぐに出て行った。いや、やっぱあるんじゃねーか。なんだよ。
出て行かれてしまうと、すぐに譲れなかったことへの申し訳なさを感じた。それは自分だけでなく、他の2人も似た心境だったと思う。でも良心を試されるような状況ではあったが、明らかにあの男がふっかけてきてるのはわかっていたから誰も動かなかったというオチ。おばちゃんに直接頼まれていたら譲っただろうけど。

そのあと椅子に腰掛けているその女性を見かけた。フランス語しか喋れないから自分はコミニュケーションの取りようがなかったが、あとで島村さんが話していた。彼女は昔エールフランス航空で働いていて、出張で東京や福岡にも来たらしい。だが足を挫いたなら今日で終わりだ。

そういえば昨日の同部屋の男たちの1人(多分デンマーク)は下のベッドじゃないと寝ないぜと言っていたが、既に下は埋まっていた。そのまま彼もあの部屋で寝たはずだが、結局どうしたのかは知らない。別のおっちゃんはまだ空いているからともう一つ隣の部屋に行っていた。
そう、下のベッドのが遥かに楽だから人気なのです。早いもの勝ちで、先に来た人から埋まっていく。

寒いからULDを着たが、今日歩く際も着ていたので抵抗があった。でも防寒具は他に持っていないので仕方ない。

明日はワインの泉に行くから10kmくらいしか歩かないと島村さん。自分はモデルプラン通り、21kmのロス・アルコスかな。

眠たかったがこの町に到着して以降のメモをまとめたので寝なかった。いつもと比べると今日のメモの追いつきっぷりは良かった。(追いつけていないと箇条書きというか、ほぼ単語に近い一言が並んでいるだけ)

500mlペットボトルを探しに行くことにした。でも5時前なのに通りの店はどこま閉まりまくっていた。
とりあえず教会の方に歩いていたら、(今日泊まれなかったアルベルゲの先ですれ違った)韓国人2人が歩いていた。よく見たらあまり若くなかった女性が妻で、隣はその旦那だな。
スーパーマーケットどっちか知ってる?と単語とジェスチャーだけで尋ねると。なんか彼らも行くらしく?、トゥギャザー!と言われたのでついていった。ここから10分らしい。宿のWi-Fiでも全然調べていなくて適当に探そうと思っていた。小さい町じゃないから何かしらあるだろと。
あの3人家族には教えていたが、この2人までは伝わっていなかったようで、日本のどこ?と聞かれたので、福岡からと教えた。すると(話していたのはほぼ地名だけだが)九州は湯布院の温泉に行ったことがあると。他には黒川とか阿蘇の名前も挙がっていたので、九州旅行をしたことがあるのだろう。スマホの九州オルレのページも見せてくれたし。

ガソリンスタンドの洗車機前にいた親娘におっちゃんが道を聞いた。でも向かっていた方と逆を指差され、おかしいな…と店員に聞き直したら進行方向は間違っていなかったみたい。親娘には確実にお礼を言っていなかったので、自分がありがとうと手を挙げた。

スーパーマーケットに着いた。近づいてから自分もオフラインマップで見つけた店だった。夫婦は反対側の店に行ったのでカムサハムニダ!とお礼を言って別れた。

スーパーに入ると、1€の商品がめっちゃ並んでる!おもしろ!と写真を撮ったら、警備員の男性が近づいて来て、No pictureと言われた。ええ…と戸惑っていたら、追い打ちのように目で確認するから今消せというようなジェスチャー。仕方ないので指示通りに消した。簡単に復元できるんだけども…。
今からディナーだし何を買おうかなーと悩んだが、今必要なのは500mlペットボトルだけなので、1€のパワーエイドを一本買った。Graciasとレジの女性にお礼を言ったら一気に笑顔になったのが印象的だった。
店を出て一口飲んでみたら、もっとゴクゴク飲みたくなるような甘さで、かなり美味しかった。残りをいつ飲むか迷うな…。(パワーエイドはこのとき初めて飲んだのだが、今また飲みたい。Amazonにあるのはハワイからのお届けで16本が8000円もするので、ぜひ日本でも発売してほしい)
せっかくスーパーに来たので何か他にも買っておきたい気分だったが、まあ、またスーパーには来るだろう(それなりに大きな町ならある)。今は非常食も減らしてる段階だし。

一日歩き終わったあとだが、まだわりとスムーズに歩けている。30kmいかないペースなら溜まる疲労も少ないな。でも昨日はよたよたしてたし、わからない。山(峠)があったからだろうか。

アルベルゲに戻ってくると受付に後ろ髪マンがいたので、無視するのもあれだしHi,Holaと声を掛けた。お互いに遺恨は残さないタイプ?いいえ、どちらも気にしてません。

受付近くにあった宿泊者名簿を何枚か見てみたが日本人の名前はなかった。宿泊者全員が書くものではないけど。

洗濯物が入った袋を持って階段下に降りようとしていたあの怪我女性に、持ちましょうか?と聞いたが断られた。こっちは怒ってるだろうか。そんな様子ではなかったけど。

廊下の窓から外を見ていたら同部屋のフランス女性のおばちゃんの方が歩いて戻ってきていて、彼女の後ろに巡礼者グループがいた。あ、昨日の少年たちのグループだ。

夕食の時間になって会場に移動すると既にハンガリーガールがいた。昨晩は食べ過ぎた?って聞くと、うん、でも今はかなりお腹が減ってると。

自分が選んだメニューを貼っていこう。まずはパスタ。

友人に写真を見せたら全然美味しくなさそう、色が不味そうってな感じで酷評された、仔羊のステーキとポテト。

デザートはライスプディング。興味本位で頼んでみたが、なんていうか、あれだった。
お米・砂糖・牛乳という組み合わせがまず日本人的によろしくないよね。不思議となんかまた食べたい気はしてるけど、多分一口目で、もういいや…ってなると思う。

昨晩と同じく、隣にはハンガリー女子がいて、(斜め)前に島村さんがいたが、どちらも積極的に喋るタイプじゃないので会話が難しかった。ハンガリー女子と話すときは当然英語だが、島村さんと話すときは日本語で、どちらにも話しかけづらいという状況。島村さんは英語もできるから、そのこちゃんのときのように英語で話しかけてもいいんだけど、目上の人に突然英語で話し出すというのも変な気がして。(あと島村さんがちょっとクチャラーなのも正直昨日から気になっていた。自分だけならいいのだが、外国人がいる席ではね…)
まあ、どちらとも少しずつ話はしてたけど、このアルベルゲに一緒に到着した(カナダからの)老夫婦が同じテーブルに着いてからは(彼らが積極的に話す人たちだったので)かなり話しやすくなって助かった。
旦那さんが名前を聞いてきたので、その流れで外国人たちの名前も聞き返して、ハンガリー女子がレカという名前だと知った(最初はリコーに聞こえてしばらく勘違いしていたけど)。

レカの明日の目的地はロス・アルコスとのことで一緒だ。20kmちょいなら歩けると言っていた。
ぶりっ子とは違うけど、ふにゃふにゃした喋り方のおばあちゃん(奥さん)がしていた、ハバナ滞在中に、雨が上がって虹が出ているとき、テラスで笛を吹いてる女の子がいて、その子は虹を直接見ていないのに、Somewhere Over The Rainbowを吹いていて、とても素敵だったという話が印象に残っている。
カナダ夫妻はどちらも孫の写真を見せてくれた。夫婦ともに待ち受けにしていて、So cute…!と言うと、I know!と奥さんから返ってきて笑った。

実は昨日ドイツ人のおっちゃんにも言われたのだが、このカナダ人にも(自分と島村さんは)親子?と聞かれた。アルベルゲに着いてからは自分も眼鏡を掛けることが多いからかな。まあアジア人を見慣れてないってのもあるだろうけど。ちなみに寿司が食べたいと言っていたこのカナダ夫妻もどちらも眼鏡。
レカは何で歩こうと思ったの?という質問を夫婦からもされていた。若ければ若いほど聞かれるのかもしれない。一応カトリックではあるらしい。でも祈りに関しては、毎朝起きたら凍えるほど寒いから、今日のアルベルゲはホットシャワーが出ますようにと祈るくらいとレカが言ったのには笑った。
それにしても、アジアに比べれば総じてヨーロッパの人の方が語学力は高いが、レカの英語はもはやネイティブレベルだ。きっと頭も良いんだろうな。
ハンガリー語を喋っていたらロシア人かとみんなに思われると言っていたが、そういえば自分も最初、あの子ロシア語で電話してる…?と思ったもんな。

この旅の間(特に年配の方から)何度かされた質問だが、君は学生かい?いいえ。辞めてきたのかい?いえ、Self-employedです。というような会話がこのとき旦那さんと自分の間でもあったのだが、この夫婦や島村さんのようなリタイア層を除けば、ほぼ全員が仕事を辞めてカミーノに出発している状況もあり(一ヶ月以上旅が続くのだから当然っちゃ当然だが)、君はHappy boyだと言われた。ええ、自分でもそう思います…!今のところは…!

驚くことに、突如、ロザンカが1人で夕食会場に入ってきた。他のテーブルにも人はいたのだが、自分が座っているところに来たので、そう広くはない場所に6人が座るというカオスな状況に。
そのロザンカが深刻な様子で、Ryo, iPhone Xのカメラが撮れなくなった。ビッグプロブレムだと自分を頼ってきたので治してあげた。大したことはしてないんだけど期待に応えられてよかった。どうやら出発前に買い替えたらしい。
自分ではどうすることもできないトラブルが起きたときの心境を想像するのは容易いし、実際かなり困っていたらしく、ロザンカはめちゃくちゃ喜んでいた。その勢いでThank you very much!!!あなたの写真を撮らせて!となんか頼まれて、撮られることは正直好きじゃないけど、まあいっかとアホ顔ダブルピースで写った。

Sonokoとはこの町でも会ったらしい。誰か他の女性と一緒にいたと。パンプローナの朝は彼女を探したけどいなかったと言っていた。可哀想に…。
でもそのこ氏が悪いわけではないんだよな。最初にチームを組んだ相手とその後も歩かないといけないという決まりは当然ないし、既に解散したチームも少なくはないだろう。一緒に行くのかな~みたいな空気を気にせずに1人で行っちゃうマイペースな子ってだけ。しがらみとかは嫌う子だろうし、はっきりとした約束もしてない。うん、巡礼は自由であるべきだから、別に彼女が悪いわけではない。

新しい靴をこの町で買ったとか、教会も素敵だったよと教えてくれたのだが、スーパーは逆に行っちゃったからなあ。ブルガリアのカップルはまだ歩いてるか聞いてみたが、それはロザンカにもわからないらしい。
ロザンカと自分ばかり話していたので、レカにブルガリアには行ったことある?と振ってみたら、休暇でビーチに行ったことはあると言っていた。陸続きのヨーロピアンは気軽にいろんな国に行けていいな。
島村さんも過去に行ったことがあるハンガリーの地名を出していたが(~~~ってハンガリーだったっけ?みたいな感じで)、やっぱりいろんなところに行ってるんだなと思った。
そういえば毎日のようにハンガリーからの女の子に会うよと話したら、聞いていたカナダ人の奥さんが 「リョウ、気をつけなさい。それはサインよ」って言うから面白かった。サインなのかもしれない。

食事も終えて、明日の天気の話等、ネタが尽きてからの雑談になると、レカが私そろそろランドリーをチェックしないと言った。んんん…!ランドリーの場所知ってるの?と聞いたらあの小屋の中にあると。宿の人間はほとんど何も教えてくれなかったので、洗濯機があること自体みんな知らなかった。何かでタイミングでそれを聞き逃していたロザンカは先程洗濯機の場所を知りたがっていたので、(レカの手柄だけど)教えてあげたらまた感謝された。
その小屋の中に行ってみると室内に干せる場所があることも知った。屋外だと夜露で濡れてしまって乾かない可能性もあるのでありがたい。

夕食会場を出たあとに、島村さんに、どのタイミングで屋内に移すか迷いますねーと言うと、今移しちゃいますかという流れに。
洗濯バサミはあったけど、こういうのは(挟む力が)弱いと教えてくれたので、日本製に頼りますかと自分で言ったのに、少し間を置いて、あれ、中国製かな…?と続けると、日本の指導による中国製ですねと島村さん。それが正しいですね…と笑った。

空は昼間みたいでも、時間が遅くなれば寒くなる。実際にこのときも外はもう寒かった。

先程おやすみと言ったのに食事会場に戻る形になって、またロザンカに呼び止められた。なんと(あの馬鹿みたいなダブルピースしてる)写真をFacebookにアップしたよ~(o^∇^o)ノという報告だった。
さっきアップしそうなときにNooooooって言ったのにいいいいいい。島村さんと謎のツーショットもあげてた気がする。ひえええぇぇぇええええ。
もうそのフリーダムさに、ええええwwwww待ってwwwwwwまじかよwwwwwと笑うしかなかった。

そんな愉快で超ハッピーな夕食会場から戻って、歯磨きをしているときに鏡越しにふと肩を見てみたらかなり赤く腫れていた。男なのにこんな細い体してるんだから、そりゃ痛くもなるわ。巡礼中だけラガーマンみたいな体型にならねーかな。ならねーな。
部屋ではフランス人のおばちゃんの方がやたらと咳が出ていて怖かった。風邪なら伝染るかもしれないし。

まだ5日目なのにもう随分長いこと旅してるような気がする。でも巡礼者としての道が繋がっているのなら、もう2ヶ月になるわけだ。長く感じるのも自然だろうか。
9時半に眠りに落ちた。


今日の歩み
Puente la Reina – Estella / 22km


Scroll to top