2月2日に福岡のROOMSで行われたKitri Debut Live Tour 2019「キトリの音楽会#1」に行ってきました。
いや、ちょっと待って、Kitriとはなんぞや。って人のために最初に説明しておくと、Kitri(キトリ)とは姉妹によるピアノ連弾ユニットで、基本的に姉のMONAがメインボーカルとピアノ低音部と作詞作曲担当、妹のHINAがコーラスとピアノ高音部、それとピアノ以外の楽器も担当したりといった役割。
ピアノ連弾ユニットではあるけど、演奏だけでなく歌声(+コーラスワーク)も本当に美しくて、自分が初めて彼女たちの曲を聴いたのはラジオから流れてきた「羅針鳥」なんだけど、なんだこの美しい曲は…と久しぶりに衝撃を受けて、すぐさま彼女たちについて調べていた。
メジャーデビューEPの「Primo」に収録されていて、発売前から九州のラジオでは各県で1月度パワープレイになっていた羅針鳥。
デビューツアーで福岡にも来ると知ればもう行かないという選択肢はないわけで、即座にチケットを購入して、当日は二列目で観ることができた。(自由席だったので座席と購入タイミングに関係はない)
右側だったから鍵盤は見えなかったけど、前列が小さな女の子だったということもあり、連弾中でも2人の表情がはっきりと見えていたし、右側のパーカッションにヒナが座っているときはたまに目が合うくらい近くて、そんな距離で演奏が聴けた・見られたことに満足。

まだパイロット版(配信限定)とメジャーで1枚ずつEPを出してるだけで持ち曲も少ないから、1時間ちょっとのライブではあったけど、カバー曲を含めると10曲以上は披露してくれたので物足りなさはまったくない。
会場に着くまでまったく読めなかったファン層は(ぱっと見は中年女性が多くて、若い男性が少ない印象は受けたけど)わりと老若男女幅広くいた。ピアノやってるんだろうなって幼い子供もいたし、家族で来ているおじいちゃんおばあちゃんの姿もあった。
雰囲気は、ピアノの発表会の延長線上と書くと失礼かもしれないが、あのお上品な空気感に包まれていて、知り合いの娘さんだとか学校の音楽仲間を見守っているかのようなアットホームさもあった。
ライブ自体は、幼い頃から弾いているピアノがやはり最も安定していた。でもそれ以外も一定のクオリティを保っていたし、生で聴く歌声は信じられないくらい透き通っていて、いつまでも聴いていたいと素直に思った。
ギターやパーカッションを主に、少なくとも7種類ほどの楽器を演奏していたヒナの努力を感じられた。ルーパーを扱う際におぼつかない場面があったりはしたけど、まだまだ成長中・慣れる段階だろうし、これから確実にパフォーマンスは向上していくだろうから期待感しかない。
既に完成度は高いのに、磨く余地のある原石でもあるという、この期待の新人っぷりよ。
個人的には「傘」のライブアレンジが一番気に入った。Spangle call Lilli lineのearly monsoonを初めて聴いたときに涙が出たけど、そのときの感動を思い出すようだった。ただただ素晴らしい。
MCは微笑ましさ全開というか、言ってしまうと、聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいだった。でもそれが可愛かったし、汚れを知らないおしとやかなお嬢さんってこんな感じだよな…と。
「水炊きって言おうとしたのにしらたきって言っちゃったんです」というエピソードが披露された際の会場のあたたかい笑い、あれはもう完全に優しい世界だった。
ジャンル的にはクラシカル・クロスオーバーかな。ピアノを使った単なる今風の弾き語りではなく、クラシックの有名曲がアレンジで組み込まれていたりする(羅針鳥の間奏ではドヴォルザークの新世界っぽいフレーズがある)ので、普段J-POPを聴かない層にもウケが良いだろうし、そこは強みだと思う。
童謡だけでなく、「硝子の少年」や「林檎殺人事件」といった歌謡曲のカバーも自分たちの曲(キトリっぽい楽曲)にできるのもわかった。要は何でもできるユニット。流行りのJ-POPに寄せるのは奥の手というか、今それをやる必要はないと思うけど、いざとなれば…という武器も彼女たちは持っているわけ。
でもカバーも良いけど、もっとオリジナルの曲を聴きたいと思わせるのはモナの作詞作曲能力の高さだろうな。特筆すべきは作詞の方、彼女のワードセンスかもしれない。彼女は既に彼女自身の世界観を構築しているけど、多分彼女の同世代のミュージシャンはまだ恋愛一辺倒の歌詞しか書けない。
なんていうか、彼女の感性が自分は好きなんだと思う。インディーズ時代の「Opus 0」の頃より成長を感じるし、これからどんな曲を書くのか、どんな言葉を選ぶのか、楽しみでしかたない。
ライブが終わった瞬間に、隣の女の子は「浄化された…」と呟いていたし、近くにいたおばちゃんは「もっと聴いていたいね」と話していたけど、どちらの気持ちも共感できた。あんなに濃い1時間もそうそうないだろう。
ライブ会場から出ると、通りでは酔っぱらいが大量にたむろっていて、見たくもないものも見ることになったけど、いつもなら、みっともねえ連中だな…と思うところ、この世界の美しい部分に触れた直後だったから、特に気にせずにすれ違えた。
そういえば、自分の隣に座っていたその20代前半の大分弁を喋る女の子たちが「今日モナに行くって連絡したよ」「え!うそ!言ったの!?」みたいな会話をしていた。
彼女たち(キトリ)の父親が転勤族で、大分に住んでいた時期もあるというのはインタビュー記事を読んでいたので知っていたけど、いつ頃・どのくらい住んでいたかとか気になる。隣の子たちは多分クラスメイトだとかそういう存在だったのだろう。多分。
ええ、僕はKitriに最大限の評価をしています。絶賛です。
ここ何年間かdigるという作業もほとんどしてなかったけど、それは心に響く音楽にあまり出会えなくなっていたから。最近活躍しているミュージシャンが原因なのか、自分が悪いのかはわからないが、とりあえず、メジャーデビューから2週間も経っていないけど、Kitriは現役で活動するミュージシャンの中で最も注目しているユニットになった。
もう本当に素敵だと感じているから、Kitriが現れてくれたことも、それを見つけられたことも嬉しい。またライブに行きたいし、新作も楽しみにしている。
あ、以上です。

