大分トリニータの片野坂知宏監督が先日退任発表され、チームは今日リーグ最終節を勝利で終え、監督の指揮・今シーズンも残すは天皇杯だけとなった。
片野坂監督は、J3へ降格したチームに2016年に就任し、J3優勝、J2優秀監督賞と共にJ1昇格、続いてJ1昇格初年度にJ1優秀監督賞を受賞と、
大分トリニータの監督として結果を残すだけでなく、日本サッカー界でも注目を集める功績を残してきた。
残念ながら今年はコロナ禍の影響で4チーム降格という変則的なレギュレーションで、J1残留を果たすことはできなかったが、天皇杯は過去最高成績のベスト4まで勝ち残っている。
ホーム最終戦後の挨拶では、悔し涙を流しながら、私の責任だとサポーターへ詫びていたが、片野坂監督、片さんに、謝ってほしいと思っていたサポーターなんて皆無だったと思う。
トリニータにお金がないがゆえに、移籍市場が開くたび、資金力のあるチームに、育成した・活躍させた主力選手から刈り取られ 、選手を直接説得しても出て行かれたり、
毎年毎年、浸透させた戦術・チーム作りを1からやり直す必要があったりと、
優秀な監督としてあまりに残酷な状況が続いていて、可哀想という言葉はリスペクトに欠けるかもしれないが、それでも、あまりに可哀想で、
個人的には、今回の退任発表には、どこか安堵する気持ちもあったというか、「辛い状況の中、トリニータを率い続けてくれて、ありがとうございました。本当にお疲れ様でした」というような気持ちになった。
片さんがトリニータを離れることに寂しさを感じていても、上記のそれに近い感情を抱くサポーターも少なくなかったはず。
片野坂監督のサッカーの特徴は、GKも参加してのビルドアップ・パスサッカー、加速と連動でのサイドからの崩し、ハードワークを基礎とした全員で戦うスタイル等が挙がるだろうか。
監督が指揮したこの6年間で、トリニータの試合を観戦してきて、純粋にワクワクするような面白いサッカーに何度も楽しませてもらった。
だが、選手層が削られていくと、やはり個々の能力・一つ一つのプレー技術が落ち、以前まではできていたことが攻守共に精彩を欠くようになったり、どうしても個の実力差が出やすいミラーゲームを苦としたり、
いわゆる違いを生み出せる選手が足りないと敵にも対策を取られやすく、速攻が成立しなくなったり、最後のフィニッシュの部分でもタレント不足は否めなかったというか、そもそもシュートにすらいけないことも多くなり、
今季に限って言えば、どれだけ粘り強く戦っても、相手の外国人FWに一発を決められて敗れる試合や、先制していても、選手層・交代選手の差で逆転負けが続いたりと、心の折れそうな試合が重なったように感じる。
それでも、完敗・大敗した試合なんて本当に僅かで、どの敗戦も惜しい試合ばかりだった。
また、チームが成熟してきた終盤は特に、まったく降格チームには見えない戦いっぷりで、夏場の補強が春先にできていたなら…という悔しさも感じる。
監督の責任だとは思わないし、元をたどればすべて”お金がない”というところにたどり着くのでフロントを責める気にもならないが、やはりそういった部分が降格の要因ではあったと思う。